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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第71話 炎竜

前回までのあらすじは、第八回戦第一試合が開始された。クローナ対ニードの戦いは、ニードの扱っている武器に宿っている天成獣の属性が火であることから、クローナは不利な展開となる。さらに、ニードはレラグよりも強いのであった。

 そこには、絶望に近いものがあった。

 ニードが言った言葉が正しければ、ニードはレラグよりも強い。

 そんな対戦相手に対して、クローナは、恐怖するだろう。

 もしも、レラグという名前を知っていて、かつ、第七回戦までのクローナの実力であれば、であるが―…。

 (レラグ? 誰、それ? 水って言ったようね―…。そうなると、瑠璃が戦った人…。ってことは―…、レラグ(それ)より強いの、今、戦っている筋肉ムキムキが―…!!!)

と、クローナは心の中で、レラグという名前ではわからなかったが、水と前の戦いというキーワードで瑠璃が戦っている相手がレラグであることに気づく。

 そう、クローナはレラグの名前を知らず、水や前の戦いのキーワードの方がレラグという人物を本当に思い浮かびやすかったのだ。

 結果、それで、

 (それでも、嘘か本当かなんて関係ない。ニード(あの人)の天成獣の属性が火である以上、私が不利なことに変わりはない。)

と、心の中でクローナは冷静に、ニードの言っていることが事実でも嘘であったとしても、自らの天成獣の属性が風である以上、不利であることに変わりはなかった。

 ゆえに、とにかく、今はどうするかを考えないといけないと気づき、さらに考えるのであった。


 【第71話 炎竜】


 中央の舞台。

 瑠璃チームがいる場所。

 アンバイドは、

 (ほお~、言うだけのことはあるな。ニード(あいつ)は確かに七回戦で瑠璃が戦った奴よりも強い。雰囲気から何となくだがわかる。今のクローナではかなり難しいだろう。が、クローナも修業はしっかりとしている。そんな簡単に負けやしないし、勝利する可能性も低くはない。ここで厄介なのは、風は火との相性がかなり悪いことだ。それをどうにかしないといけないし、風の攻撃もいつもより強くしないと火の攻撃を相殺することもうまくできない。この戦いは、長引くな。)

と、心の中で、第八回戦第一試合のクローナとニードの戦いについて考察する。

 アンバイドとしては、第七回戦第六試合よりもクローナが勝つ可能性が高いのは、経験から踏まえてわかっていた。第七回戦以後の修行でも、レラグほどの実力に対して、互角もしくは調子が良ければ倒すことができるぐらいにはもっていっているし、実際にそうすることが可能な状態になっている。無理をせずにである。

 (ニード(あの人)って―…、どこかで見たことがあるのだけど―…。偶然ですね。)

と、セルティーは心の中で思うのだった。

 実際は、セルティーはレラグとも、ニードとも会ったことがあるのだ。リースの城の廊下ですれ違う程度であったが―…。

 さらに、セルティーは、元リーンウルネの部下である人たちから、現在の十二の騎士についての情報を聞かされている。その中に、ニードやレラグの名前があったのだ。セルティーは、実際にレラグとニードから名前を聞かされていないから、気づいていないだけなのだ。第四回戦で戦ったネリワッセも実は十二の騎士であるのだが―…。ネリワッセの偽装により未だに気づいていないのであった。

 「ニード(あの人)の天成獣の属性が火ってことは、クローナは不利ってことね。風じゃ、対抗するのはなかなか難しいね。」

と、礼奈は冷静に言う。

 礼奈としては、クローナが不利であることに変わりないが、十分ニードと渡り合って戦うことができると思っていた。そして、第八回戦第一試合を拮抗させることが今、現状で、できているのだ。

 「うん、クローナは七回戦で出場した試合も、相手の天成獣の属性が鉄だったもんね。二回続けて、自分と不利な相手と当たるなんて―…、少しだけ同情しないといけないかな。」

と、瑠璃はクローナのくじ運の悪さに同情するのであった。

 瑠璃チームの誰もがクローナとニードの戦いを観戦することに夢中になるのであった。李章を除いては―…。


 中央の舞台。

 イルターシャとニーゲルデンのいる場所。

 (互角ってところかしら。この一週間で成長しているみたいね。瑠璃(あの)チームの子たちは―…。油断はできないね。私としては、李章(あの子)なら簡単に倒せるだけどね。)

と、イルターシャは心の中で思うのだった。

 イルターシャとしては、李章が瑠璃チームの中で弱いということがわかっていた。それは、李章が自らの武器である刀を抜かずに戦っているからだ。

 それ以外の瑠璃チームのメンバーは、倒すのに苦労しそうな感じである。アンバイドとの対戦になったら、確実に負けることは目に見えている。アンバイドが現時点で、瑠璃チームの中で一番強いということがわかるからだ。

 (アンバイドに当たったら、全力でいって、敗れよう。その方がいいね。)

と、イルターシャはアンバイドと当たりたくないと思い、もし当たったのならば、全力でやって倒されようと思うのだった。


 四角いリングの上。

 ここでは、クローナとニードが試合をしている。

 「いくぜ。」

と、ニードは言う。

 その後、すぐに、剣を振り上げ、振り下ろす。

 振り下ろされる剣の軌道上から、炎が発生して、それが、クローナに向かって行く。そう、クローナを燃やさんがために―…。

 ニードが剣を振り上げ、振り下ろす動作から、攻撃してくることがわかったクローナは、攻撃する前から準備していた。自らの武器に風を纏わせて―…。

 そして、クローナは、右手に持っている武器を横に右から左へ向かって振り、風の攻撃を放つ。いつもよりも強く―…。

 ニードの武器である剣から放たれた炎の攻撃とクローナが放った風の攻撃が、数秒の時間の経過後に、衝突する。衝撃音をさせながら―…。

 その衝撃音は、ニードが炎竜で攻撃した時よりも、小さかった。それは、あえて、ニードが弱く炎の攻撃をしていたからだ。

 理由は簡単なことだ。そう、次の攻撃がニードにとっての本命の攻撃の一つとなるからである。

 その準備のために、あえて、弱い炎の攻撃をして、衝撃で風を発生させて、目の前の視界を奪う必要があった。これは、クローナにニード自身がしていることに気づかせないためでもあった。しかし、ニードもクローナがしていることに気づくことできないというリスクを負うことになるが―…。ニードはそのことを理解したうえで、実行していた。

 なぜなら、クローナが何かをしてくる可能性を減らしておく必要があったからだ。そう、ニードの次の本命の攻撃には、時間が少しだけかかるのだから―…。


 時間として、数十秒が経過した。

 辺りはやっと衝撃によって発生した、衝撃のあった場所から離れるようにふいた風が止んだ。

 クローナは、前を覆っていた手をどける。

 辺りがどうなっているのかを確認しようとする。

 その中で、すぐにニードがいるのがわかった。ニードはクローナの目で見える方向にその姿があった。

 しかし、何か変な感じがする。

 その変な感じがする方へと視線をクローナは向ける。

 「!!」

と、クローナは気づく。

 (何!! さっきよりも剣に纏っている炎が大きくなってる!!!)

と、心の中でニードが持っている剣に纏われている炎の量、大きさが大きくなっていることをクローナは心の中で言う。

 大きさに関しては、体積にして、二倍ぐらいであった。大きさが大きくなったことよりも恐ろしいのは、炎が凝縮されているのだ。

 「また、こっちからいかせてもらうぜ。」

と、ニードは言うと、剣を今度は横に左から右へと向かって振るのであった。

 剣が振られる軌道上から炎が放たれる。クローナに向かって進んでいく。

 炎はしだいに変化していく。それは、第八回戦第一試合の最初で、ニードがクローナへと攻撃した時に、炎が変化した形と同じであった。

 そう、炎竜だ。

 ただし、今度は大きさがさっきのより何倍も大きく、さらに、炎竜には、前足が今度は存在していたのだ。

 炎竜は、今度はまるで自らの意思のようなものをもっているように感じさせるほどに、生き物じみていた。

 炎竜は、クローナへと向かうのをやめる。

 (!! 動きが止まった!!?)

と、心の中でクローナは不思議に思う。

 クローナとしては、ニードの炎竜から攻撃されたら一たまりもない。攻撃されないならそれでいい。

 だけど、このまま何もしないということにしておくことはできない。そんなことをしてしまえば、いつ攻撃へと変わるかはわからない。

 そう、早く炎竜を消しておくにこしたことはない。

 クローナは、武器に纏わせている風を最大限にして、炎竜に向かって攻撃する。炎竜に攻撃の隙を与えないようにして―…。

 そして、クローナは、右手に持っている武器を右から左に向かって横に振る。振っている軌道上から風が放たれる。炎竜に向かって―…。

 「これで、相殺する!!!」

と、クローナは感情が高揚したのか、声に出して言う。

 ニードは、

 「!!!」

と、驚きながら、

 (だが、これだけの風では、炎竜は破壊されない。)

と、心の中で言う。

 ニードとしては、余裕は決してできるはずのものではなかったが、それでも、クローナの片手だけの風の攻撃だけでは炎竜を破壊されないし、破壊されたとしてもいいぐらいの対策はすでにしている。

 ニードは、経験上、炎竜を破壊されることもあるからだ。相殺という方法をニードがこれまで戦ったことのある相手の中で、実際に成功させてしまう者がいた。ゆえに、炎竜が破壊されたようの対策は最初からうっていたのだ。

 まだ、ここでは、ニードの炎竜がクローナによって破壊されるかわからない。それでも、数秒後にはその結末を見ることになる。ほぼ確定的に―…。


 そうして、数秒の時間が経過し、その結末が訪れた。

 ほぼ確定的でなく、確定したものが―…。

 そう、ニードの炎竜は破壊されたのだ。というよりも、斬られたのだ。炎竜の前足が―…。

 斬られた前足は四角いリングの上に接する前に消滅する。

 クローナは、

 「前足しか斬れなかったか。」

と、悔しそうに言う。

 クローナとしては、今の攻撃で、炎竜を確実に消滅させることに成功するはずだった。

 しかし、現実には前足を斬っただけであった。予想以上に炎竜というものは、クローナのさっきの攻撃で消滅させることができないほどの力の量をもっていたのだ。

 「ほお~、炎竜の前足を斬るとは大したもんだ。関心するね。だけど―…、そんな奴は、俺と戦った奴の中にもいたよ。一割ほど…な。そんな奴がいた時の対策も十分しているんだ。」

と、ニードは言う。

 そうすると、炎竜の前足が修復されるのだ。斬られた部分から再生するかのように―…、再度形成された。

 その光景を見ているクローナは、

 (…、ニード(あの人)が攻撃で生んだ炎竜(りゅう)だ。炎でできているのだから、修復すら自らの炎ですればいいんだ。だから、前足を斬っただけではダメなんだ。なら、消滅させるほど最大限の威力がある風の攻撃を放たないと。それに―…、白の水晶(すいしょう)も使用していかないと―…。)

と、心の中でクローナは何をするべきかを考える。

 水晶のことがバレたとしても、白の水晶を使わないといけないときだと考える。それは、ニードの炎竜がそれだけ強い力の量を使って形成されたものであり、クローナの見立てよりもはるかに上をいっているからだ。そうなってくると、白の水晶の能力を使わないと防御することができないのは明白なことであった。

 ゆえに、後のことよりも、今をどうにかすることが絶対であると判断する。そう、クローナがニードに勝つために―…。

 「考えている暇を与える気はない。」

と、ニードが言う。

 そうすると、炎竜は口と思われる部分を開き、そこから、炎を形成する。

 その様子に、何か嫌な予感を感じたクローナは、気づく。

 (竜…ってことは、息吹(ブレス)!!!)

と、クローナが心の中で予測する。

 クローナは何となくだけど、大きな攻撃を自身に向かって放ってくるのではないかということがわかった。

 クローナは、昔、読んだことのある話の中で、竜という生き物は息吹を放つと聞いたことがあるのだ。ゆえに、それではないかと思った。

 「さあ、いけ!!!! 炎竜!!!!!」

と、ニードが叫ぶように言い、続けて、

 「火炎放射。」

と、言って、クローナ向かって、炎の砲撃を放つのであった。


 【第71話 Fin】


次回、最大限の攻撃を!!! 

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


クローナVSニードの戦いの部分は、話数の分割はないと思います。一応、これを更新する時に終わることができました。つまり、第73話までは、確実に分割ありません。第74話は今のところ、分割するかはまだわかりません。書いてみないことには―…。

では、次回の更新で―…。

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