表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
137/748

第70話-2 第八回戦

前回までのあらすじは、第八回戦の瑠璃チームの対戦相手が登場した。

今回で、第70話は完成します。

 「ほお~、貴賓席で見るのと、中央の舞台で(ここから)見るのとでは違うなぁ~。」

と、ニードは言う。

 「そうね。そんなことは最初からわかりきっているの、ニード。もう少しまともな感想を求めるわ。相手チームについて…とか。」

と、イルターシャはニードの感想に呆れながら言うのであった。

 そう、ニードの明らかにわかるでしょう的な答えではなく、イルターシャとしては、相手チームである瑠璃チームの強さとか、どれほど過去との実力で変化があるのとか―…。そういうのを望んでいた。

 (これだから―…、脳筋は―…。)

と、イルターシャは心の中で思うのであった。

 「だが、すでにわかっているじゃないか、イルターシャ。あいつらを舐めてかかるとこちらが負けてしまうぐらいのことは―…。」

と、ニードは言う。

 ニードは、最初に実感したことを口にして、イルターシャを呆れさせてしまったが、瑠璃チームの実力がわからないほどに馬鹿でもない。そんなのであれば、ニードは、ランシュから十二の騎士に選ばれることもなかったであろうし、実力としても中途半端なままであっただろう。

 だけど、ニードは、天成獣の宿っている武器での戦い方をしっかりと理解できているし、相手の実力を観察することもできるし、油断することもない。常に戦いに真剣である。ゆえに、実力を兼ね備えている。

 イルターシャは、ニードからまともな言葉が聞こえたので、

 「そうね。最初からそういうことを言ってくれればいいのよ。」

と、文句もあるような感じで言う。

 「で、ニーゲルデンはどう思っているの。相手チームを見て。」

と、イルターシャは、自らのチームの三人のうちのニードと自分以外の残りの一人に聞く。

 それは、ニードとは違う視点がわかるのではないかという期待を込めてのものであった。

 「そうですね。今までの瑠璃チームの戦いを見ていくと―…。」

と、少しだけニーゲルデンは考え、

 「アンバイドという人が強いの確かですね。それに―…、レラグさんに勝った松長瑠璃、そして、戦闘センスから言ってかなり厄介な山梨礼奈は、要注意ですね。当たれば、確実に競った戦いになるであろうし、一歩間違えれば確実にこちらの方が負けます。しかし、松長李章、クローナ、セルティー王女との対決では、こっちの方が勝つ可能性は高いですね。確実とは言えませんが―…。いや、確実といえるのは、松長李章でしょう。彼は、自身の武器を扱っていない。力をいくら最大にしても、本人は武器を使わないで戦うことの不利さを補えているとはいえない。以上、です。」

と、自らの瑠璃チームへの分析をイルターシャに向かって言う。

 それを冷静に、咀嚼し、解釈しながら聞いていたイルターシャは、

 「そうね。概ねそのような見方でも構わないわ、ニーゲルデン。ただし、勘違いしてはならないことがあるの。」

と、イルターシャはニーゲルデンの方を向き、顔を近づける。

 その行動に、ニーゲルデンは少しだけ、動揺するのであった。緊張感に包まれる。心臓がドクッ、ドクと速まる。心はドキッ、ドキッとする。頭の思考は回らなかくなる。そして、ニーゲルデンはイルターシャをただ見つめることになる。視線がすべてを支配して、他が何も機能しないかと感じられるように―…。

 ただし、イルターシャの表情は、誘惑させるものの艶やかさから真剣に何かを射殺しそうな感じのものとなった。

 「それは―…、私たちはどんな相手でも勝つということ。そして、戦いの中でも成長する者もいるの、私たちのチームにも、相手のチームにも。そこは計算に入れないとダメよ。」

と、イルターシャは言う。

 完全に固まってしまっていたニーゲルデンは、ぎこちなく口を動かし、

 「は…い。」

と、言うのであった。

 そして、イルターシャは、ニーゲルデンから距離をゆっくりととる。

 緊張感に包まれていたニーゲルデンは、イルターシャの顔が離れたことにより、我を完全に取り戻し、長時間水の中に潜っていたのではないかというぐらいに、呼吸を激しく、短い時間で回数を多くするのであった。ゼェー、ゼェー、とさせながら―…。

 イルターシャは、ニーゲルデンをニッコリとしながら見る。イルターシャとしても、自らが顔を近づけた時にニーゲルデンがどんな気持ちになったのかをニーゲルデンよりも詳しく知っている。客観的にみることができている。たとえ、理解していても、ニーゲルデンに言うことはないだろう。言う必要のないことであるから―…。


 リースの競技場。

 ここは観客席。

 そこの一角に、このランシュが企画したゲームの審判を務めるものがいた。

 そう、ファーランスである。今日も、審判の仕事をするためにここに来ていた。

 (そろそろ、時間になる頃ですね。両チームともにすでに来ているみたいだ。)

と、心の中で、第八回戦を戦う瑠璃チームとその対戦相手のチームが来ていることを確認する。

 ファーランスは、少しだけ溜息をつきながら、今日の審判の仕事を全うしようとする。表情も仕事をするための表情に戻して―…。

 「そろそろ、時間となります。これより第八回戦をおこないたいと思います。では、第一試合に出場される両チームからそれぞれ一名を四角いリング(フィールド)へ!!」

と、ファーランスは、第八回戦第一試合に出場する両チームからそれぞれ代表一名を四角リングへ向かうように促す。

 それを聞いた、両チームの代表がそれぞれ四角いリングへと向かって行く。

 イルターシャが率いるチームからは、ニードが四角いリングへと上がっていき、瑠璃チームからはクローナが四角いリングへと上がる。

 両者は、対戦相手である互いを見つめる。相手の強さを確認するために―…。

 「ほう、天成獣の属性が風の者との相手か―…。俺の方が天成獣の属性としては相性がいいみたいだな。だが、油断はしないので、互いに楽しい試合といこうじゃないか。」

と、ニードは挑発的にクローナに向かって言う。

 クローナのことは、ある程度イルターシャからどんな戦い方をするのかを事前に聞いていたし、実際に第七回戦で見てもいた。だから、ある程度の対策はすでにたてている。戦いやすい相手であることもわかっている。

 「そう。油断していない人間は、そんなに口数は多くないよ。足元救われないように―…。」

と、今度はクローナがニードに向かって挑発するように言う。

 さっき、ニードの挑発的な言い方に対する仕返しであった。

 クローナにとって、ニードは強い相手であることはすぐにニードの雰囲気から理解することができた。そして、ニードは、クローナのことを舐めてはいないが、相手として戦いやすいというと思っているのだと感じた。だから、クローナも相手に勢いで負けないように、ニードと同様に挑発的な言い方をして、それを食い止めるのである。

 クローナとニードの両者が四角いリングに立ってからしばらくして後、審判であるファーランスは、

 「両者ともに試合を開始してもよろしいでしょうか。」

と、第八回戦第一試合をおこなってもいいかと聞く。

 「さっさと開始してくれ。戦いたくてたまらないんだ。」

 「大丈夫だよ。」

と、ニード、クローナの順で言う。

 ニードは、今すぐにでも戦いたそうな表情をし、クローナは、元気よく試合を開始してもいいと返事をするのであった。

 クローナとニードの試合を開始してもいいという返事を聞いたファーランスは、右手を上にあげ、

 「これより、第八回戦第一試合―…、開始!!!」

と、言うと、上にあげた右手を下に向かって振り下ろす。

 こうして、第八回戦第一試合が始まった。


 試合開始後すぐに、動きがあった。

 ニードは自らの右手をクローナの方に向かって手のひらを広げる。

 そこからしだいに何かが形成される。赤い―…、炎が―…。

 「さあ、燃やすぜ。」

と、ニードは言う。

 そして、ニードの右手の手のひらから出た炎が、クローナへと向かって放たれる。

 「!!」

と、クローナは驚くが、すぐに何であるかを理解する。

 クローナはある程度、ニードが手のひらで展開しているのを見て、火ではないかということに気づいていた。だから、驚く時間も長くはなく、すぐに、避ける動作が必要であるとわかった。

 (七回戦でセルティー王女が戦った相手と、同じ属性。)

と、クローナは心の中で言って、とにかく今は、攻撃を避けることに集中する。

 そのためか、すぐに、ニードの炎の攻撃を避けることに成功する。その時、クローナは、右横に向かってジャンプするのであった。

 着地して、

 (火の属性の天成獣の場合は、相手に触れること。)

と、心の中でクローナは再度、思い出しながら確認する。

 それは、第七回戦第一試合でセルティーが実際に火の属性をもつ天成獣が宿っている武器をもつ者を相手にした時に使った方法である。

 その知識を使って、どのように勝利するかを考え始める。とにかく、火の属性を持つ天成獣は、炎で全域を覆うことができてしまい、そうなってしまうと、勝負に勝つこと可能性がかなり低くなってしまう。

 さらに悪いことに、クローナが持っている武器に宿っている天成獣の属性は風だ。風は火に対して相性が悪すぎる。風の力をいつも以上に使わないと、火を消すことができず、むしろ、いつもであると、火の威力を増大させてしまい、かえって自分自身を不利にしかねばいのである。

 結局は、クローナはかなり不利な戦いを最初から強いられているのだ。

 そして、ニードは自らの腰にさしている武器を鞘から抜く。そう、ニードの武器は剣である。剣の太さは、セルティーより小さいが、瑠璃よりかは大きい。そして、色は、剣の金属と思われる部分が赤い色をしているのだ。ニードの扱っている武器の天成獣の属性を表しているかのように―…。

 そして、ニードは、自らの武器である剣に炎を纏わせる。

 (炎の剣…。)

と、心の中でクローナは声を漏らす。

 そして、クローナの方も武器である右手、左手にそれぞれ、鎌の先にある金属の部分を模した武器を構える。

 クローナとニード、双方が臨戦態勢となる。戦いへとさらに集中させる。

 「そちらが攻めてこないのなら、またまた、こっちからいくぜぇ――――――――。」

と、ニードはクローナに五月蠅く聞こえるように言う。

 それは、クローナにとって、あえて聞かせるように言っている。自らの強さを示すために―…。細かい作戦を使うことはあまりなさそうだと考えて、力押しの方が良いと判断して―…。

 ニードにとっては、力押しの方がうまくいくと勘で理解した。あくまでも勘であることから外れることもあるが―…。

 ニードは、剣を振り上げ、すぐに振り下ろすのであった。刀で何かを斬るように―…。

 振り下ろされた軌道上に、炎ができ、その炎がクローナに向かって行く。

 (来る!!)

と、心の中でクローナは驚く。

 クローナはさらに驚いてしまうのである。

 それは、クローナに向かってくる炎がしだいに先端から、何かの生物の形へと変化していくのである。

 「炎竜。」

と、ニードは言う。

 そう、ニードは、今、形が変化している炎の攻撃の技名が炎竜なのである。

 炎竜は、クローナへ真っすぐに、一直線で向かって行く。クローナを燃やさんがために、それが己の使命であるかのように―…。

 「喰らえええええええええええええええええええええええええええええええええええ。」

と、ニードは叫びながら―…。

 (ここは―…。)

と、驚くのを終えたクローナは、すぐに、今、自らに向かってくる炎竜をどう対処するかということに頭の思考を働かせる。

 それでも、やることは単純なことでしかなかった。

 クローナは、自らの武器に風を纏わせ、両手の武器に纏った風のすべてを使って、炎竜に向かって、風を斬る動作をしながら放つ。

 クローナの武器から放たれた風は、炎竜に向かって行き、そして、炎竜と風の攻撃は衝突する。

 ドン、と大きな音をさせながら―…。

 そして、衝撃波のような風が、辺りへと広がっていく。それは、かなりのスピードであり、クローナとニードの双方が腕を目の前に出して覆うしかなく、前を見ることはできなかった。

 その時間が数分続くことになった。

 そして、数分後に、辺りの風がなくなる。

 ニードはそれを、確認しながら、前に出していた腕を戻し、剣を片手でぶら下げるようにする。

 (やるなぁ~、クローナ(あいつ)。炎の攻撃を相殺するなんて―…。力はあるってことだな。こっちも油断しないようにしたんだが、こうなってくると、確実に炎の威力をあげていかないとな。なら―…ッ!!!)

と、心の中で言いながら、これからどうするべきかをニードは考える。

 そのため、見落としてしまったのだ。

 クローナの風の攻撃をすぐに開始したことを―…。

 そう、クローナは、ニードが考え始めていることに気づき、すぐに弱いが、確実にダメージを与えることができて、相手を混乱させることができると思い、風の攻撃をしたのだ。両手に持っている武器で斬るような動作をして―…。

 ニードにとって見落としをしてしまったとしても、感覚で気づくのだ。そして、対処が可能であることを素早く判断した。

 それは、ニードが天成獣の宿っている武器での戦い方に慣れていることと、その経験をしっかりと自らものできているということだった。

 剣を持っていない片方の手を前に出し、炎の盾を展開する。

 炎の盾は、クローナの風の攻撃の二つを防ぐ。

 まるで、炎が風を飲み込むかのように―…。風が炎に接すると消えてしまったのだ。

 そして、炎の盾は消滅し、そこには、ニードの姿があった。

 「ほお~、なかなかやるねぇ~。だけど、俺は、お前らが前の試合で戦った、水の属性を操っていたレラグよりも強いんだぜ。」

と、ニードは自らがレラグより強いことを宣言する。

 本当に、ニードはレラグよりも強いのだ。それは、実際にレラグと戦ってわかっていることだ。ゆえに、クローナは、瑠璃が戦ってギリギリで勝った相手であるレラグよりも強い相手、そう、十二の騎士の一人である人物と戦っていることになる。

 決して、有利とはいえない戦いを―…。


 【第70話 Fin】


次回、炎竜再登場!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第71話は分割しないで済みそうです。第67話、第68話、第69話、第70話と4話連続で分割がするほどに、内容量が多くなってしまったので―…。

では、次回の更新で―…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ