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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第69話-6 行く末を見守る者の始まり

前回までのあらすじは、傷心状態であったリーンウルネの前に現れたのは、魔術師ローとギーランであった。ローは、ランシュの過去について話した。それは、ベルグについてローが調べていくなかで知ったことであった。ランシュの過去を知ったリーンウルネは、ランシュの元へと向かって行き、ランシュを見つけるのであった。

今回で第69話が完成します。

 「どうなされましたか。」

と、ランシュは目の前にいるリーンウルネに向かって言う。

 「聞いたぞ。お前の過去を―…。」

と、リーンウルネは率直にランシュに向かって、ランシュの過去を知っていることを言う。

 ランシュは、すぐに、目を睨みつけるようにし、リーンウルネを見た。

 それでも、ランシュは、冷静に、

 「それをどこで知った。」

と、リーンウルネに尋ねる。

 ランシュにとっては、知ってほしくないことであった。それは、もう終わったことなのだから―…。ランシュの過去であり、復讐を果たし終えた以上は、何も意味のないことである。たとえ、ランシュの中に、何も実感というものがなかったとしても―…。

 「いや~、さっき優しい魔術師様が教えてくれての~う。まあ、それで知ったことから推測すると、何も実感を感じていないのだろ、今―…。それはそうだろう。だから、私は決めたよ。しばらくの間、修道院に入って、引退させてもらうよ。政治から―…。これで、ランシュ、お前は思い通りに政治をすることができる。だけど、思い通りになることは百パーセントとしてない。そして、お主がもし復讐に対して贖罪を感じているのであれば、悔いることだ。そして、恨みをかわれたとしても受け止めることだ。私は、今、行く末を見守る者だ。そうでしかない。っと、話を長くしてしまったが、またの。会えることを楽しみしている。」

と、リーンウルネは言う。

 それは、リーンウルネが魔術師ローからランシュの過去を聞いたこと、そして、これから、自らがどうするかをランシュに宣言するのだった。

 ランシュを救うのは、まだしばらく間、時間がかかることであろう。焦ればいいというものではない。その適切なタイミングでなければ意味がないのだ。そして、ランシュが救うべき人物はリーンウルネ自身でないことにも気づいた。救うことができる人物がそれに気づくのを待ち、終わらせるべき人物がちゃんとケリというものをつけさせる、その時まで、リーンウルネは、これからの行く末を見守る者となったのだ。そう、行く末を見守るの者の始まりであった。

 リーンウルネは去っていく。意気揚々としながらというわけではないが、そのような感じなのだ。何か心がすっきりしたような―…。そして、どうなるのかを見守るための―…。

 ランシュは、その様子に、

 「……。」

と、言葉にすることができなかった。

 ただ、ランシュが思ったのは、相変わらずリーンウルネの考えていることは意味不明で、わからないことであった。

 たぶん、その原因は、リーンウルネが先のことがある程度わかっているためで、それは常人が考えるよりも先のことを感覚的に認識できるからであろう。多くの人々が現状から考えられる経験から一を見るとしたら、リーンウルネは十から二十を見ることができるのだ。

 「いくぞ。」

と、ランシュは言って、執務室へと向かって行くのだった。


 その日、リーンウルネが修道院に入ることが、リースの城から布告として出され、その日のうちに、リースの近郊にある修道院へとリーンウルネと一部の側近は、向かって行ったのであった。リーンウルネの部下の多くは、リースの城に残り、以後、セルティーの護衛や部下となっていく。リーンウルネの頼みにより―…。

 リーンウルネとともに修道院に向かった一部の側近の中には、アルミルカも含まれていたという―…。

 そんな道中、リーンウルネは、リースの市内を見ながら、

 (セルティー。今は私がどうして、出家するような真似をしたかあなたには言いません。でも、いずれ、あなたが自分がどうあるべきか自らが気づいた時に言いましょう、その時に、聞きましょう。あなたの道を―…。)

と、心の中で言ったという。

 それは、まだ、リーンウルネの心の中だけのものであった。


 リースの城の中。

 セルティーの部屋。

 「お…お母様が!!!」

と、セルティーは驚く。

 驚かずにいられないだろう。セルティーは、リーンウルネがリースの城を出た後にそのことについて聞かされたのだ。リーンウルネが修道院に入ることを―…。

 (なぜ、城を出る前に、何も言ってくれないのですか。お母様。)

と、セルティーは心の中で愚痴を言うのであった。

 セルティーとしては、どうして、修道院へ入るということをしようとしているのか。出家しているのか。理由は何となく想像できる。夫であるレグニエドがランシュによって殺されて、そのショックでここから出たかったのだろう。または、レグニエドを供養するために、修道院へと出家したのか。

 このようなセルティーの考えは、前者はまったくの間違いで、後者は一部として合っていることになる。リーンウルネが修道院へと出家したのは、レグニエドの供養もあるが、これからのリースの行く末を見守ろうとしたのだ。

 そう、ランシュがどういう道を歩み、セルティーがどういう行動をするのか。時が来たときに後悔をもう二度と、レグニエドが暗殺された時のようなことをしないために―…。

 セルティーは、一部を合わせるだけで精一杯であった。

 そして、セルティーは、ランシュへの復讐を誓うのであった。

 (お父様を殺した、ランシュ。あなたは―…、あなただけは―…。まず、機を窺うべきです。力もつけていくべきですね。)

と、心の中でランシュへの復讐を果たすための方法を考え、どうするべきかを決めるのであった。

 ランシュが復讐を果たし、今度はセルティーが復讐へとはしるのであった。まるで、復讐は連鎖するように―…。


 そして、時は、瑠璃とセルティーがいる場所へと戻る。

 「―と、以上となります。」

と、セルティーは話し終える。

 瑠璃は、セルティーの話を聞き、重要な点でわからないことがあった。それは、語る上では第三者の視点で文章を書いたために、セルティーが話した以上に詳しい内容であり、瑠璃はセルティーから話しを聞いたので、以上で触れていない部分もあるのだ。セルティーが泣いてしまった時のようすとか、セルティーが気絶した後のこととか、リーンウルネの内面やメタグニキアを意地汚さとか―…。

 挙げていけばきりがない。

 だけど、瑠璃は何となく、重要なことを理解していた。

 「二年前の事件のことについてはわかりました。だから、言えることがあります。セルティー王女、あなたは本当にランシュという人に復讐がしたいのですか?」

と、瑠璃は疑問をぶつける。

 瑠璃にとっては、セルティーに同情できる部分もあった。それでも、どうしてランシュがレグニエドを殺したのかという理由はわからなかった。この二年の間、力をつけるということ、機を窺うことはしていたが、ランシュがレグニエドを殺した動機については調べていないようだった。

 どんなに復讐するといっても、相手にだって事情が存在する可能性がある。その可能性について調べようと、なぜセルティーはしていないのか。たぶんだけど、復讐には力が必要だと感じて、それ以上に考えがおよばなかったのだろう。ランシュを斬ろうとするが、あっさりとランシュによって気絶させられたのだから、そう強く思ったのかもしれない。

 「私のお父様であるリース王国の先代の王を殺したからです。その無念を晴らすために、ランシュを殺して敵討ちをしないといけません。」

と、セルティーははっきりと一言一句正確に言う。

 まるで、それが、あまりにも決まりきった文句であり、何も考えずもしくは無理矢理に納得させて言っているようであった。

 瑠璃は、そのようなことを感じた。

 だから、

 「セルティー王女、私が聞きたいのはそのような言葉ではありません。セルティー王女の本当の気持ちを聞きたいのです。だって、セルティー王女…、あなたがお父さんが殺される前までのランシュについて話すときは、なぜか嬉しそうな表情じゃなかったですか。まるで、その人に恋しているみたいな。私もそれはわかります。私にも好きな人はいますから。」

と、瑠璃は最後の方で表情を暗くさせる。

 理由は、李章と礼奈が一緒にいたところを見たことを思い出したからである。そこで瑠璃は勘違いしてしまったのだ。李章と礼奈が付き合っていることを―…。それでも、瑠璃は無意識のうちに心の中で李章への恋心を捨てることができずにいた。それが、結局、瑠璃の表情を暗くさせたのだ。

 セルティーは、瑠璃が表情を暗くさせるのに気づき、

 「大丈夫ですか、急に表情が暗くなりましたが―…。」

と、心配しながら瑠璃に声をかける。

 瑠璃は、何か変なことを聞かれるのではないかと、ハッと思ってしまい、

 「うう~ん、何もないよ。それで、さっきの質問に対して答えてもらえますか。」

と、話を逸れそうになったので、本筋に戻そうとした。

 瑠璃にとって、李章と礼奈が一緒にいた事実は、まだ心の中で無理矢理整理して、納得させていたが、本当の意味でまだ、心の中で終わったことにはなっていなかった。それは、まだ、李章に恋しているがためであろう。

 一方で、セルティーは、何となくだけど、瑠璃が誤魔化そうとしているのではないか気づく。それでも、今は自分が瑠璃に質問されたことに答える必要があると感じていた。そっちのほうを優先した。

 「さっきも答えた通りですが―…、と言いたいところですが、瑠璃さんはそのような解答には納得しないですよね。」

と、セルティーは言う。

 セルティーは、さっきと同じ解答をした場合は、瑠璃が反論してくるのはわかっている。瑠璃がセルティーのランシュが好きだったという気持ちを理解してしまっていたのだ。瑠璃の勘というところもあるが、気持ちの面で見破られている以上、簡単な答えることはできない。

 セルティーは、考え始める。

 (私は、今、どう思っているのですか。ランシュのことを―…。)

と、心の中で発しながら、考え、時間を消費していく。

 その間、瑠璃は待つことができた。セルティーが真剣に考えていることに気づいていたからだ。理解できているからだ。

 数分の時間が流れた。

 セルティーは、

 (結局、考えてみたけど、わかりませんでした。自分の気持ちは―…。これを正直に伝えるべきか。う~ん。)

と、心の中で考えても結論をだすことはできなかった。

 そんなに簡単に結論をだすことができるとは限らないし、結論というもの時間に左右されないゆえに、ストーリーをつくるときと同じように閃きに近いもので、答えなどふとした瞬間にしかでてこないのだ。

 そう、セルティーは、今、どうしようとしても結論をだせないし、本当の気持ちもわかりはしないのだ。

 だから、

 (言った方がいいかもしれません。)

と、瑠璃の表情を見て思うのであった。

 瑠璃の表情を見ていると、本当の気持ちを言わないと納得してくれないであろうから―…。

 ここからほんの数秒の間があく。それは、セルティーが覚悟を決めて話すために、必要な時間であった。覚悟を決めたとしても、実際に話すには少しの間だけど、迷う、本当の良いのかという気持ちが完全に消えず、声に出すことをわずかにではあるけど、残すのだ。

 「私には、今、ランシュのことをどう思っているのかはわかりません。復讐をしたい気持ちも、恋している気持ちも―…。だから、どうしていいのかも―…。さっきまでは、復讐だけを無理矢理考えていたけど―…。」

と、淡々とセルティーは語るかのように言う。

 少し、冷静になったのか、わからないので、言葉に不安があって、それを出そうとすることを無意識のうちに抵抗したのからかもしれない。セルティー自身も、わかってはいなかった。

 結局は、自らの気持ちなど完全にわかることはない。それでも、まるで繋がるかのようになって、自らの気持ちを理解することがあるかもしれない。今のセルティーは、そんな状態ではなかった。

 セルティーの言葉を聞いた瑠璃は、

 「わからないでいいと思いますよ。気持ちなんて不安定で移ろいやすく、時に、持続して持ち続けるものですから。」

と、矛盾しているようなことを言う。

 瑠璃は理解していたのかどうかはわからない。だけど、気持ちなんて、変わりやすいこともあれば、長く続くものでもある。

 そう、セルティーがランシュへの復讐の気持ちを強く持っていたことは瑠璃の一言でわからないというふうに変わり、瑠璃が李章が好きだという気持ちが長い間変わらないように―…。

 瑠璃は、続けて、

 「だから、いろんな複雑な気持ちがあってもいいし、気持ちが変わってもいいと思うんです。だけど―…、復讐というのはやめたほうがいい。結局、何も得るものはないし、復讐した相手と親しい人がセルティー王女を復讐の対象にすると思いますから―…。もし、セルティー王女が復讐のためにランシュという人を殺そうとするのならば、私は―…、あなたの復讐を全力で止めにいきます。」

と、セルティーを諭すように言い、最後は、はっきりとさせたような声で言う。

 それは、復讐がいけないことを理解していたからだ。復讐をした経験があるわけではない。だけど、第三者だからこそ、冷静な目で見ることができた結果、こうなるのではないかということがわかる。

 だからこそ、セルティーが不幸になる選択肢をしようとしているのを止めるべきだと―…。ゆえに、瑠璃は、はっきりといったのだ。セルティーがランシュへと復讐するのであれば、全力で止めにいくことを―…。そう、覚悟はすでにあるという意味を込めて―…。

 瑠璃の覚悟の感じたセルティーは、だからこそ、

 「瑠璃さん。」

と、言う。

 呼ばれた瑠璃は、

 「は…はい!!」

と、声が上擦る。

 それは、急に名前を呼ばれたことによって、瑠璃がビックリがしたからだ。

 「瑠璃さんは、倒すことができるということでいいですよね?」

と、セルティーがランシュを倒せるのかと聞く。

 それは、セルティーが復讐を諦めたというよりも、瑠璃はランシュを倒せることができ、かつ、セルティーがランシュに対して復讐すること以上に納得できる結果を示すことができるからということの意味を込めていた。

 そうしなければ、セルティーだって、納得することのできないものであるから―…。たとえ、セルティー自身が、今、ランシュに復讐したいのかという気持ちがわからなくなってしまったとしても―…。

 瑠璃は、何となくではあるが、セルティーの気持ちを汲んで、

 「できるよ。」

と、短く、強い意思をはっきりとさせ返事をするのだった。

 こうして、セルティーと瑠璃の話しは明け方近くまで続くこととなった。


 【第69話 Fin】


次回、第八回戦が始まる!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


やっと、第八回戦の内容に入ることができます。では、後書きは短めですが、次回の更新で―…。

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