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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第69話-5 行く末を見守る者の始まり

前回までのあらすじは、レグニエドが暗殺され、セルティーもランシュへと斬りつけようとするが、気絶させられた。もう、リース王国はランシュの手中の中に―…。

次回で第69話は、完成すると思います。

 悲鳴が響き渡る。

 悲鳴をあげる者は、今時点でそうあるものは、全員ではないにしても、多くが人が殺されるのを見たことがないのだろう。

 人が殺されるのに遭遇することがあっていいとは思わないが―…。

 それでも、人が殺されるのを見た衝撃というものは、言葉にすることができないほどのものである。たとえ、冷静に分析をしたとしても―…。

 悲鳴は数秒にして止む。その間、ランシュは一切声を発さなかった。

 どうして、悲鳴がでるのかということは理解できていた。人の死というものは辛い。殺されるのまじかで見ることなどなかったのであろう。戦場もしくは殺人などの現場に遭遇しなければ見ることができないのであるから―…。現実として、誰もがそれを見たいとは思わないだろうし、見せたいとも思わない。

 ランシュにしても、そうだ。見たくて見せているわけではない。そうする必要があったからだ。悲鳴をあげてしまったものに対しては、申し訳ないという気持ちではあるが―…。

 「これで、もう殺さなければならない者はいなくなった。後は、リース王国の実権は俺がしばらくの間もらうことにする。安心するがいい。さっきも言ったが、リース王国の領土に攻めなければ、他国や他領に関しては、こちらからは侵攻しないことを約束する。ただし、リース王国に攻めてきた場合は、お前らの領土に対して、こちらからも攻めようと思う。その領土のすべてを―…、な。貿易、交易に関しては、その国と領とリース王国の慣例を踏襲するものとする。その中で、変更したいところがあれば、別途交渉していくこととする。リース王国に関しては、しばらくの間、王位を空白とし、私、ランシュが臨時で代行することにする。王位は適格ありとされる王族がその地位に相応しいとされた時に、その者を王位につける。以上だ。そして、それを飲んでもらうぞ、リーンウルネ王妃。いや、元王妃。」

と、ランシュは言う。

 ランシュは、再度、他国、他領に対する条件について述べる。それは、確認という意味を込めて―…。

 さらに、リース王国の王位に関する、今後について、王位をしばらくの間、空白のものとすることを言う。それは、ベルグがしばらくの間、リース王国が混乱している方がベルグがおこなっている研究にリース王国の介入で失敗する可能性を減らすことができるとベルグに頼まれたからだ。命令と言ってもいい。

 ランシュは、ベルグが協力者であり、立場がランシュ自身よりも上の人間である以上、彼の意見には従う。別に、ランシュにとって、不都合なものではないからだ。

 「……、わかった。」

と、リーンウルネは言う。

 そういう言葉しかいえなかったのだ。もう、完全に打つ手などなかったし、浮かぶはずもなかった。リーンウルネは後悔をし続けていた。思い詰めてしまうほどに―…。

 こうして、リース王国におけるレグニエド王暗殺事件は終わることになる。

 その後、招待された客は、誰も殺されることもなく、自らの国や領へと帰っていくことができた。そして、ランシュの言った内容を報告した。

 結果、多くの国や領は、ランシュの言った内容に従うことを表明したし、貿易の条件で改善してほしいところに関して意見したところもあるが、滅茶苦茶な要求はしなかったという。それは、ランシュの強さを目で見たものがリース王国に不利になることをすれば、どれだけ危険かを必死に伝えたことによる―…。

 しかし、少数ではあるが、リース王国の混乱を利用してリースへと攻めた。その結果は、目で見るよりも明らかであった。ランシュとそれに率いられた十の騎士と傘下となったリース王国の騎士たちによって圧倒的な差で倒され、領土はリース王国のものとなるのであった。

 この二年の間のリースと、他の近隣諸国による出来事である。


 一方で、リースの王国内。

 レグニエド暗殺事件から二日後。

 リーンウルネの部屋。

 「リーンウルネ様。王様が殺されてショックなのはわかりますが、そろそろ、表の舞台にでたほうがいいのではないでしょうか。そうしないと、リースの民はあなたのことを心配されます。」

と、アルミルカは言う。

 「……。」

と、アルミルカの声が聞こえないほどに、外をリーンウルネは眺めていた。

 いや、思い詰めたっと言ったほうがいいだろう。早く行動していれば、クーデタを起こしていれば、レグニエドの命は救われていたであろし、恨まれたとしても、生きている以上は和解する機会だって訪れたのかもしれない。

 そんな今となっては、ありもしない未来を考えるのであった。いくら考えたとしても、叶うことは必ずないだろう。頭の中でつくって思い浸るしか―…。

 「そうですか。一昨日の事件でリーンウルネ様、あなたの弱さを知りました。あなたは他人を振り回しながらも、他人のために生きてきました。それでも、私に言えることがあります。」

と、アルミルカは少しの間をあけ、

 「リーンウルネ様(あなた)は我が儘で自分勝手です。自分一人ですべてを背負い込んで、自分の言葉や行動ですべての人を救えるなんて、傲慢な考えで勝手に振り回さないでください。失敗したら、一人で勝手に何も弱音を吐かず塞ぎ込まないでください。」

と、アルミルカの目からはしだいに涙が溢れだし、

 「もっと、私たちの言葉を聞いてください。信用してください。信頼してください。気持ちを共有させてください。」

と、自らの思っていることを最後は流れるがのごとく言い続ける。

 リーンウルネは、自らの側近に命令することもある。だけど、それは、リーンウルネが心から信頼されているよりも、命令したことを確実に安全に命を危険さらすこと危険さらすなくすることができ、かつ、それ以上の最悪の結果にならない。むしろ、逆に、それ以上の良い結果になることは、プラスのことであるので喜んだりもする。つまり、リーンウルネが自らがすべての悪い面を背負い込んで、他人はそれをさせないようにしているからだ。すべての悪い部分は、リーンウルネだけが責任を負えばいいと―…。

 それは、リーンウルネが、他人に幸せであってほしいと思うからだ。だから、他人にその責任を負わす行動をさせたがらないのだ。共有させようとはしないのだ。

 ゆえに、部下から見れば、リーンウルネは、何か思い詰めている表情をしている人だと感じるのだ。他人が心配してしまうほどに―…。

 アルミルカは、傍でよく見ていたからわかるのだ。だからこそ、もっと、頼って欲しいと思ったし、信頼して、話してほしいと思った。たぶん、アルミルカも理解することはできていた。それでもリーンウルネは、一切話さないだろう。

 「ほ~お、リースで王が暗殺されたから急いで来たものの、リーンウルネ、お主。旦那を殺されて、悲しいのか。それはわかるぞ。儂もその経験があるからなぁ~。」

と、老婆の声がする。

 アルミルカは、リーンウルネの部屋の入口の扉の方面に体を向けると、そこには魔術師ローとギーランがいた。

 「ロー様!!」

と、アルミルカは驚くのであった。

 「それに、ギーラン様も!! 気づかずに失礼しました。」

と、アルミルカは謝罪するのだった。

 「気にしなくてもよい。勝手な入ってきたのは儂らじゃからの~う。で、リーンウルネ、お主はショックで考え事か。まあ、儂が言えることではないが、他者だからこそ、自身が同様の経験として気づくこともあるのじゃろう。だから、ありもしない未来に思いを馳せる暇があるのなら、今これからのことを必死に考えてみるべきじゃないのか。」

と、ローは、諫めるかのように言う。

 ローという人物の過去をここで語ったとしても意味はない。だが、ローが言いたいことは言っている言葉からわかるだろう。

 それは、いくらありえない幸せの未来を思ったとしても、何か現実が変わるわけではない。ならば、今の現実を受け入れたうえで、自分がどうするべきかを考えて行動したほうがいい。過去の失敗を乗り越えるためには―…。

 このことが一番できないのは、リーンウルネではなく、魔術師ローのほうではあるが―…。

 ローの言葉でもリーンウルネは外の方を眺めたままでいるが、反応はあった。

 「そうか。ならば、私はそのように行動するためには、どうすればいい。心はもう、砕けてボロボロだ。」

と、リーンウルネは言う。

 たぶん、リーンウルネは、アルミルカの言葉とローの言葉をごちゃまぜにしたうえで、整理したうえで考えたのだろう。だから、混ざってしまったもののこたえになってしまっていた。

 それでも、ローは理解したかのように、

 「心が砕けておるのなら、今は、別のことをやるしかないじゃろう。向き合うには時間がかかるじゃろうし。そのような状態では―…。それに、レグニエドを殺したランシュという人物、いろんな意味でただの加害者というわけではないだろう。ランシュの経歴を見ると―…。」

と、ローは言う。

 ローは、リーンウルネの精神的状態が回復するには時間のかかることであろうと思っていた。だから、今は思い出したくないという気持ちであってもしょうがないし、しっかりと向き合いと思うまでは蓋をしておくのも生きていく上では必要であった。

 さらに、レグニエドを殺したランシュという人物の本当の過去をローは知っている。ローも実際に聞いたことがあるし、ベルグについて調べていく過程で知ったのだ。ランシュがレグニエドを殺す動機を―…。少し前にリース王国によって滅ぼされた国の中で王がランシュによって殺される時、偶然聞いてしまった人物から―…。

 そのランシュの経歴に関して、リーンウルネは過剰に反応したのだ。ランシュに復讐がしたいのではなく、ただ、ランシュをも救おうとして、そう、ローの言う今、これから必要なことがやっと決まったのだ。娘が好きな人物であるランシュを救って、罪を償わせ、本当の意味でランシュという人物の未来のために―…。つまり、リーンウルネの心は、再度修復していくのであった。

 「教えな、ロー。」

と、リーンウルネはローに詰め寄るのだった。

 ローは、リーンウルネの真剣な表情が近くにあるので、逆に緊張してしまう。それでも、言うべきことであるので言う。

 「実は―…。」

と。


 リースの城の中。

 セルティーの部屋。

 セルティーは、ランシュによって気絶されて後、二日ほどの期間、気絶していたのである。

 その間に、服をメイドによって着替えさせられ、体も洗われていた。

 そして、セルティーは意識を取り戻る。一瞬の黒は終わり―…、光景は、自らの部屋となる。

 バサッ!! と音がする。

 これは、毛布を動かす音だ。

 そう、セルティーが上半身を急に起こしたのだ。

 「ここは―…。」

と、セルティーは言う。まだ、意識が完全に回復はしていなかった。ぼや~としていた。

 「私は―…。」

と、セルティーは言いながら思い出そうとする。

 どうして、ここにセルティーがいるのかを―…。

 そうして思い出す。

 (そうだ。あの時、お父様がランシュによって刺されて、それで、ショックで―…、その後、騎士たちがたくさん倒れているのを、さらに、私の真上に何か透明な物体があって―…。そう、ランシュが私を殺そうとしていたからムキになって、斬りつけようとした。ランシュは最初から、私たち王族の命を狙って―…。なら―…。)

と、セルティーは心の中で決意を固める。

 そう、ランシュをいくつか機会を狙って殺そうと―…。父親を殺した恨みというものを最大の理由に偽装して―…。複雑な気持ちなど抱くことができずに―…。見聞を広くもてなかったがゆえに―…。


 リースの城の中の廊下。

 ランシュは歩いていた。幾人もの人たちを引き連れて―…。

 ランシュにとっては、あくまでも仕事の確認であり、この人々を引き連れることによって、自分が何もかもを支配したなど思いはしなかった。

 すれば、レグニエドたちのような愚かな人物と変わりなくなってしまうのだから―…。

 (やるべきことが多すぎる。だが、他の者を宰相として昇進させるべきだったかぁ~…。今のところ、有用な人材はいないな。腐敗がかなり進行していたってところだろ。しばらくは人材確保と、自らの軍事力の確立だな。十の騎士でも限界は存在する以上、数は集めないとな。)

と、ランシュは心の中で考える。

 これから必要なことを―…。ランシュは復讐をほとんど果たした。後はベルグの命令を守りながら、リース王国をうまく運営することであった。これは、目標ではなく、義務であった。

 ランシュの復讐に巻き込まれた償いでもあった。

 「ランシュ様。貿易に関することですが―…。」

というように話は進んでいく。

 そして、

 「ランシュ。」

と、一人の女性の声が聞こえた。

 「リーンウルネ様。」

と、ランシュは言うのだった。

 そして、ランシュの目の前には、リーンウルネがいた。


第69話-6 行く末を見守る者の始まり に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


かなり、陰惨とした展開になったような―…、かなり内容の追加となったような気がします。

最後に、次回の更新は2021年3月3日になる予定です。ストックがなくなってきたので―…。はい。では―…、次回の更新で―…。

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