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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第67話-4 肖像画

前回までのあらすじは、覗きはいけないことなのでやめましょう。そして、覗いた結果、覗かれたセルティーにそれがバレるのだった。

今回で、第67話が完成します。

 「どうして瑠璃さんが、ここに!!?」

と、セルティーは言う。

 「え~と。」

と、気まずそうにする瑠璃。

 そう、瑠璃は気まずかったのである。

 (どうしよう。とにかく、ここは嘘をついて、ちょっと眠れなくて―…。なんて―……、いや、それだと簡単に気づかれてしまうのではないか。エリシア(あの女医さん)と同じように―…。)

と、瑠璃は心の中で思う。

 思わずにはいられなかった。医務室から出る前にエリシアと会話をしたのだ。そう、瑠璃がエリシアの言うことを破って修行を明日から無理矢理再開させようとしていることを、エリシアにすぐに見破られてしまったのだ。その衝撃は瑠璃にとって、今現在において、最も主要な経験として占めていた。

 だから、その影響が尾を引いてしまったのだ。そのせいで、瑠璃は、嘘を付くことに、それがバレるのではないかという不安を抱いてしまったのだ。嘘を付くという罪悪感が物凄く強くなってしまっていた。

 ゆえに、結論として、

 (だから、うん、正直になろう。正直になればきっと、許してくれるよ、セルティーさんだって―…。)

と、瑠璃は心の中で言う。

 「いや~、たまたま夜風にあたろうと思っていた移動してたら、ドアが開いていたもので気になって―…。」

と、瑠璃は正直に言った。

 続けて、

 「そうすると、セルティーさんがここにいたので、どうしているのかなぁ~って気になって―…。」

と、言う。

 瑠璃は、正直に言っていたし、本当に素直な気持ちであった。

 その言葉を聞いたセルティーは、

 「あまり、ここいるのは見られたくはないんですが、扉を完全に閉めていることの確認を怠ったのは、私の責任です。」

と、言う。

 その間にセルティーは、扉を完全に閉めるのであった。ただし、瑠璃を閉じ込めて―…。秘密を知ってしまったために、監禁するのではない。セルティーにとっては、少しだけ話さないといけないと思ったのだ。

 「はあ~、見られた以上は仕方ないです。私はあの肖像画を見ていたのです。」

と、セルティーは白状するかのように言う。

 セルティーに言った後、瑠璃は扉から奥にある一つの大きな肖像画を見上げるのだった。

 「この肖像画は一体、誰の肖像画なのですか?」

と、瑠璃はセルティーに肖像画に描かれている人物が誰なのかを尋ねる。肖像画である以上、描かれた人物が何者なのか、実在した人物もしくは誰かをモデルとして描いている可能性があるからだ。そのために、瑠璃は一応聞いてみることにした。

 「それは―…、私の父です。先代のリースの王、レグニエドです。」

と、セルティーは肖像画に描かれている人物の名を告げる。

 セルティーにとって、この人物は血の繋がった父親であり、先代のリースの王でもあったのだ。

 「へぇ~、でも、セルティーのお父さんには一回もあったことはないよ。」

と、瑠璃はセルティーに疑問を尋ねるのだった。

 実際に、瑠璃は、セルティーの父親には一回も会ったことはなかったのだ。セルティーの母親に関しては、なぜか出家していたのだ。そのため、リースの城ではなく、近くの教会にいるそうだ。この話は、メイドの二人が教えてくれたことだ。だが―…、メイドの二人は、どうしてそうなったのかについてまでは教えてくれなかったのだ。そこでは、これ以上尋ねないことにしたが、それでも気になってしまっているのだ。だから、今、瑠璃はセルティーにどうしてかを聞いているのだ。

 さらに、続けて、

 「ランシュという人に対する気持ちを抑えているようだけど、何か、憎んでいるというか、それとは反対なのも、何か単純で複雑なようなものが―…。リースを乗っ取られる以外の何かを―…。」

と、瑠璃は言う。

 「…………。」

と、セルティーは沈黙する。

 セルティーは考えていた。あの二年前の事件のことを話していいのか。

 (あの事件に関しては、あまり話したくはない。だが、このことをすでに、リース王国以外にも知られている。今のところは、何とか私がまだ王として即位するのがまだ時期尚早などの対立と、他に王になる者の候補者を擁立できていないことで、何とか命脈を保っている。それに―…、ランシュはどういうわけか、二年前からリースの王という地位に誰も就けようとしていない。理由はわからないが―…。自らの即位に時間をおくためか?)

と、セルティーは心の中で言う。

 先代の王レグニエドの後を、この二年間、誰も即位させようとはしなかった。さらに、自らが王位を奪取しようとしていなかった。セルティーはその理由はわかっていないようだ。そして、この二年間、ランシュが実質としてリースのほとんどを掌握している状態であった。つまり、ランシュには、王位を誰かという決定を実質的に下すことができる権利を有しているのに、である。

 そのため、リースはなぜか二年の間、他国から攻められることがなかった。むしろ、逆の方が多いにもかかわらずだ。王位に誰も就けない状態では、内戦となり、それを利用して候補者の一人との協力を得て、その人物を王位に就けて、実権を掌握して、しだいに自らの国の中に併合しようとする他国が出てもおかしくはなかった。

 実際は、その勢力をランシュが排除していたのだが―…。それは、セルティーに知られないようにしてのことである。現在においても、セルティーはそのことを知ってはいない。知ることすらできないほどであった。それほど、ランシュの部下における情報操作能力が優秀であるということだ。

 (話が逸れてしまった。うん、話しておくか。これ以上、疑問に思われでもしたら、探ろうとされるかもしれない。)

と、セルティーは心の中で言う。

 瑠璃という人間に二年前のあの事件について話さないという選択できる。しかし、それだと、何かあるごとに瑠璃から尋ねられる可能性があるし、探られる可能性が存在する。

 むしろ、話してしまったほうがかえって、変なことをされないという思ったのだ。そのような考えのために、セルティーは話すことを決意した。

 「仕方ありません。瑠璃さん、こういうことに関しては、今は、秘密のまましておいてください。あなたの仲間には特に―…。」

と、セルティーは言う。

 ここで、リースや他の諸国の中心部の人々には知られているということを言わないようにした。そのようなことを言うと、瑠璃が周りに簡単に話してしまうからと警戒していた。瑠璃の仲間である李章や礼奈に関しては、何も知らなそうだったのであり、クローナも気にしていなかったとセルティーは感じていたのである。一方、アンバイドは、たぶんだけど、すでに情報を握っている。言わない理由についてはセルティーにはわからないし、知りたいとも思っていなかった。とにかく、瑠璃にだけ話して、そこで終わらせたかったのだ。自らの中を覗きませてしまうようなものであったからだ。

 「わかりました。」

と、瑠璃はセルティーの言うことに了解する。瑠璃自身の仲間に対して―…。

 「ありがとうございます。」

と、セルティーは瑠璃に向かってお礼をする。そのお礼は、話さないでいてくれることへの感謝の気持ちであった。

 「なぜ、私が瑠璃さんのチームで参加したと思いますか?」

と、セルティーが瑠璃に尋ねるように言う。

 「前に私たちが異世界から来たことが水晶を見せたことがあるだけで―…、理由まで聞いてなかった、あの時、第一回戦に誰が出場するのかを決めるので、アンバイドさんが話を遮ったから―…。」

と、瑠璃はあることを思い出していた。

 それは、瑠璃、李章、礼奈が異世界から来た人間であることをセルティーは知っていた。ローからその三人がいることを聞いていたし、その時に示された水晶を見せて、その色からローの言っているものと一致したからだ。だけど、どうしてセルティーが瑠璃とチームを組んだかという理由まで知らなかった。アンバイドが第一回戦に誰を出場させようかを決めることを急かしたためだ。それ以後、聞けていなかったのだ。

 でも、瑠璃はこう思っていたし、確信していた。そう、ランシュからリースを奪わせないために、そして、ただ他人である自分達にリースの運命を任せっきりにするのは良くないと考えたからであろう、勝手に解釈していた。

 「たぶん、瑠璃さんが考えている理由であっていると思いますよ。リースを守るため、それが理由に含まれていますから。それと―…、私は、父を二年前の誕生日会で殺したランシュを、殺すことができるチャンスと、ルールを聞いた時に感じたからです。」

と、セルティーは言う。

 瑠璃の考えていることのすべてがセルティーの瑠璃とチームを組んだ理由ではなかった。だけど、大きな意味では、正確なものであった。

 ここで、瑠璃は自分の言っている予想が当たっていたので、そうなのかと頷くことになるだろう。そんなことにはならなかった。

 瑠璃は、驚愕なことを知らされたような顔、そう、目を大きく見開いてしまったのだ。普段のセルティーから感じられなかった怒りような憎悪のような言葉を聞いてしまったのだ。何かの憎しみ苛まれているような―…。ある出来事から一歩も踏み出すことができていない人のような―…。

 瑠璃は、その後、無理矢理にでも心を落ち着かせ、考えるのだった。

 (たぶん、今のセルティーさんに言うべき言葉は、今のところ浮かばない。なら―…。)

と、瑠璃は心の中で決意をし、

 「まずは、セルティーさんの殺された、二年前のことを含めて聞かせてください。ランシュという人に復讐するような気持ちになった理由を―…。」

と、真剣な表情で言う。

 その表情は、セルティーの嘘を言わせるような隙を与えないためであり、セルティーの言葉を聞いて、瑠璃自身がどうすればいいかを判断するために―…。

 セルティーは、その真剣な瑠璃の表情に嘘を付けないことと、セルティー自身が知っている事実を話さないといけないと思わずにはいられなかった。それほど、瑠璃の表情には、セルティーの心の奥を見られているような感じがしたのだ。

 「……、これから話すことは、私にとっては辛い過去のことでしかありません。真実を話して、どう思うか瑠璃さん、あなたの勝手ですが―…、私へのランシュを試合の中で殺すことを止めないでください。」

と、セルティーは言う。

 もし、瑠璃が今からの話しを聞いたなら、止めるかもしれない。セルティーがランシュを試合の中で殺そうとすることを―…。それでも、セルティーは―…、いや、これ以上は今は言うまい。言わなくてもわかることであろう。

 だから、今は、過去へと時を遡ることにしよう。今、瑠璃とセルティーのいる時間においては、変えることのできない過去(うんめい)に―…。あの日の過去(うんめい)に―…。


 【第67話 Fin】


次回、恋を知る少女と復讐で視野を狭くする青年と!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第68話も確実に分割しそうです。ようやく、リースで起こったある事件の内容に入れます。

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