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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第65話-2 もう一つの方法と自らの積み重ねを

前回までのあらすじは、もふもふさん(グリエル)が話しかけてきた。ついに、瑠璃に天成獣との意思疎通が可能になったのである。瑠璃本人はそのことを知りませんが―…。

 四角いリングの上。

 レラグは、見ていた。水の卵の中を―…。

 そこには、レラグの対戦相手である瑠璃がいた。

 その様子を見ながら、何かをしてきていないどころか、ときどき、今、戦い中だよな、というように試合中の雰囲気ではないような表情をしていた。

 その理由は簡単だ。グリエルと会話のためだ。そんなことがレラグにとってわかるはずがなかった。他人の天成獣との意思疎通を聞くということはできないのだから―…。

 ゆえに、

 (何なんですか。これは―…? まあ、ランシュ様が受けた任務である瑠璃、李章、礼奈(三人組)の討伐の一人の討伐を完了させればいいのですが―…。)

と、レラグは心の中で言うのであった。


 一方、中央の舞台。

 瑠璃チームがいる場所。

 そこには、瑠璃以外の李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがいた。

 「予想以上に粘れているようだな、瑠璃は―…。」

と、アンバイドが言う。

 「ふん、瑠璃があっさり負けることなんてありえないのだよ、アンバイド君。むしろ、礼奈を見習うとよいのだ。」

と、クローナが、どこかの賢そうで、偉そうな人のような言い方で言う。その時の動きも、腕を組み、うんうんと唸るようにであった。口調も「~のだよ」とか「~のだ」になっていた。クローナにとっても、そのほうが賢そうに感じるのであえてしたのであったが―…。

 「だがな、クローナ。瑠璃は予想以上に粘っているのであり、形勢を有利に進めているわけじゃない。現状は、何とか耐えているといったほうが正しい。瑠璃は、レラグを倒すための決め手に欠いている状態だ。現に、水の中に何度も閉じ込められていて、水を打破する方法を見つけられていない。」

と、アンバイドは冷静に言う。このアンバイドの分析は、今の第七回戦第六試合の状況をうまく表していた。

 瑠璃は、今、レラグに優位に試合を進めているわけではない。何とか耐えている状態であり、不利な状況であることに変わりはない。瑠璃は、水の卵を何とかする方法はあるが、その後にどうやってレラグを倒すかという方法に関しては、今だに見つけられることができていないのだ。その力さえ、現状、ないといったほうが正しいのかもしれない。ゆえに、水の卵を攻略しないようにしているのだ。わざと何度も受けることによって―…。

 「では、聞きたいのですが、アンバイドさんなら、どうするつもりですか。今の、瑠璃さんの状況の中では―…?」

と、セルティーがアンバイドに質問してくるであった。

 「まあ、俺の場合は、水の中に閉じ込められたのならば、武器を展開し、反射したり、放ったりして、抜け出す道をつくり、そこからの脱出と同時に、相手に方へ攻撃を仕掛ける。これは、あくまでも、俺の武器に宿っている天成獣の属性が生で、自分の天成獣の特性を考えればだがな―…。」

と、アンバイドは言う。アンバイドが同様の状況下におかれたのであれば、必ず超高速が仕える状態にして、相手が守りに入らざるをえない状況をつくりだし、相手の水の卵を二度と発動させないようにして、相手の次の手を打たせるようにする。その手を打っている時間を用いて、打開策を考えるのが一番である。

 「でも、瑠璃さんは―…。」

と、セルティーは言う。セルティーが指摘したいことは、瑠璃の持っている杖に宿っている天成獣の属性が生ではないということである。そう、アンバイドの天成獣の属性と瑠璃の天成獣の属性は違うのだ。そうなってくると、対処の仕方にも違いが生じてくるのではないか。アンバイドと同様の対処はできないのではないか、と。

 「まあ、だから―…、俺の場合と言ったんだよ。セルティー王女。ここからは、俺の推測でしか語ることはできない。」

と、アンバイドは言う。確定的に瑠璃の立場での対処法を言うことができない。

 「なぜですか?」

と、セルティーは疑問を感じ、尋ねる。

 「理由はなぁ―…。瑠璃が戦いの時に使っているのは雷の攻撃であることを知っているな。」

と、アンバイドが言う。その時、セルティーは、首を縦に振って肯定する。

 続けて、アンバイドは、

 「天成獣の属性に雷は存在しない。」

と、言う。そう、天成獣の属性に雷は存在しない。

 「えっ、どういうこと、アンバイド。現に、瑠璃が雷で攻撃しているじゃない。」

と、クローナは言う。そう、瑠璃は、今までの戦いの中で、雷で攻撃しているのだ。それは、クローナにとっても何度見たし、アンバイドも見ている光景であった。

 それでも、アンバイドは、

 「ないんだよ。天成獣の属性は、決まっているんだよ。百パーセントといわないまでも、それぐらいの確率でな…。」

と、言う。アンバイドは、知っていた。知る必要があった。戦いをしていくうえで、天成獣の属性に何があるかは、基本的なことであるからだ。この属性を知っているかどうかで、どのように対処すべきかということで差が出てしまうからだ。それに―…、瑠璃、李章、礼奈、クローナに対しては、ローを含め、アンバイドも教えていたのだ。試合と試合の合間で―…。一方で、セルティーは、すでに知っていたので、復習程度のことでしかなかったが―…。

 「ってか、教えただろう。天成獣の属性については―…。火、水、風、土、鉄、生、光、闇、幻、時というふうに―…。」

と、アンバイドは言う。

 (ちゃんと聞いていたのか、クローナ(こいつ)は?)

と、心の中で思いながら―…。

 「クローナさん。さっき、アンバイドさんがあげた以外の属性は、ないというの一般的です。つまり、雷という属性は存在しないのです。礼奈さんみたいに、水を凍らせて使っているような感じです。」

と、セルティーは言う。

 「えっ、っていうことは、瑠璃、天成獣の属性の何かを雷にさせて使っているってこと?」

と、クローナが疑問を浮かべるように言う。そう、クローナは、礼奈が水を氷にして使っているように、何かを雷に変換して使っているのかなと思ったのだ。

 そのクローナの考えをアンバイドは、

 「いや、違うな。なぜだかわからないが、雷以外使ったところを俺の記憶が正確であれば、使っていない。クローナも見ててそう思うだろう。」

と、アンバイドは同意を求めるように言う。瑠璃が雷以外の攻撃を一度もしていないということをいって、クローナの考えを否定したうえで―…。

 「そうだけど―…。」

と、納得いかないようにクローナは言う。

 「私もどうもアンバイドさんの「違うな」ってところには、納得できないですが―…。」

と、セルティーもクローナの納得いかない面に同意する。

 「そうね。私も瑠璃が、雷の攻撃しか、しているところを見たことがない。ローさんとの修行時も―…。それでも、ローさんは何も言わなかったな、そのことについて―…。」

と、礼奈が混ざってきた。

 「そうなのか。」

と、アンバイドは驚きを若干させながら言う。魔術師ローが瑠璃に修行をつけていたことに少し驚きはあるが、それでも冷静になって考えれば、接点があれば、それぐらいするだろう―…と。瑠璃、李章、礼奈の目的を考えれば、そうなるだろうということはわかっていた。そして、ローが瑠璃に修行をつけている時に、一切、雷のことについて、いや、天成獣の属性に雷がないことに触れていなかったことだ。

 アンバイドの少しの驚きの理由をなんとなく理解できた礼奈は、

 「属性に関しては、私が水であることは教えてくれましたが、瑠璃に関しては、瑠璃の天成獣の属性については何も言っていませんでした。ほう~、ぐらいしか。」

と、付け加えるかのように言う。そう、実際、魔術師ローとの一週間にわたる修行で、瑠璃の天成獣の属性について一切、何も触れなかったのだ。雷の属性を使った時に、「ほ~う、それがか」ということしか言っておらず、瑠璃についての天成獣の属性に関して魔術師ローは、「わからない」と言って、はぐらかしていたのだ。一方で、李章と礼奈の天成獣の属性に関しては、すぐに生と水であると言っていた。それに、天成獣の基本的な属性に関しても教えてもらったのだ。ほんの基本的なところでしかないが―…。

 「そうか。なら、推測でしか話せないか―…。」

と、アンバイドは言いながら、少しだけ息を吐き、続ける。

 「たぶん、だが―…、礼奈のように水を氷に変換しているのではない。何かをあえて、特化させることによって初心者でも扱いやすくしているのだと思う。そうしないと、瑠璃の持っている武器に宿っている天成獣の本当の属性を扱うことができず、暴走させてしまうからだろう。」

と。

 「暴走って…。それは―…。」

と、礼奈が驚く。その驚きは礼奈以外のクローナやセルティーにもあったのだ。

 (瑠璃、どんだけなんだよ。)

と、クローナが心の中で思う。

 (瑠璃さん。確かに、剣術はたいしたことはなかったけど、天成獣の力もそれほど強くは感じなかったけど、何か途轍もないものを感じました。)

と、セルティーには何かアンバイドのさっき言ったことに関して、思い当たるふしがあった。そう、瑠璃は、剣術に関しては初心者ほどの実力しかなく、その初心者といっても普通かそれぐらいでしかなかった。セルティーとの稽古のなかで、素人より少しだけうまくなったというぐらいの水準に、今現在において、なったというところであろう。それでも、瑠璃が稽古の中で、杖の中にある剣を引き抜いた時に、何か途轍もなく強い力を感じることがあった。何か、光りそうな感じの―…。

 「言っておくが推測でしかない。それに、俺の推測が正しいとすれば、瑠璃の天成獣の属性は―…。」

と、アンバイドは、自らが推測した瑠璃の天成獣の属性を言うのであった。前からある程度は、推測することはできていたのであるが―…。


 ~松長瑠璃 View~


 水の中です。

 はい。

 そして、私の幻聴の正体がわかりました。

 その正体とは、もふもふ さんでした。いえ、グリエルさんです。

 あの―、その睨みつけるような視線みたいのやめて、お願いです。

 目を実際に向けられているわけじゃないけど、そのような感覚がします。

 「そうか、これ以上、馬鹿やってても埒があかない。だから、端的に言うぞ。」

 何ですか、それは―…。

 「仕込み杖の剣を抜け、瑠璃。」

 剣をですか―…?

 「そうだ、瑠璃、お前ならもう扱えるだろう。俺の本当の属性を―…。それぐらいには十分成長しているはずだ。」

 本当の属性って、グリエルの言っていたあれ。

 「そうだ。」

 うん、思い出してみよう。


 記憶の中、あるセリフが思い浮かんできた。

 

 「俺の天成獣としての力は、雷が主である。そして、属性は―…光だ。」


 そのセリフがでてきて、記憶の中から戻ってくる。


 グリエルの属性が光ってこと。

 「そうだな。俺の属性は光だ。だが、俺の力を大きいのか、最初に俺を扱う者は、力をうまくコントロールすることができない。慣れていないのが原因だろう。だから、力を最初は大きくさせずに、弱いままして、成長していくごとに俺が判断を下して徐々に力の解放をおこなっていった。瑠璃、お前も例外ではないがな。」

 へえ~、そうだったんだ。なんか、少しずつだけど、雷の攻撃の威力が上昇していると思ったら。

 「そうだぞ。俺が毎日、瑠璃の天成獣での戦いの技量の成長具合を確かめながら―…、どれくらい解放するのかを、な。」

 ストーカーがここにいたよ。

 「ストーカーが何かは知らんが、俺を貶めようとしているよな。その言葉―…。まあ、そんなことよりも、瑠璃、今のお前なら、俺の力を本当の属性をだして戦うことができる。だから、剣を抜け!! それが今、この最悪の状況を切り抜けるための唯一の方法だ。レラグ(あの男)に勝つためのな―…。」

 ・・・…………考える。

 結論は、決まっている。それが最も倒せる確実なら、やるよ、グリエル。

 「そうか、空間移動を使って脱出した後に、集まる前に消滅させろ。水を―…!!!」

 うん!!!


 私は頷いて、レラグ(相手)を倒すための一手をうつのであった。


 ~松長瑠璃 View了~


 四角いリングの上。

 レラグは、あることに気づく。

 そう、瑠璃が黒い物体に飲み込まれていったのだ。

 その様子を見たレラグは、理解する。空間移動するのだ、と。

 (再度、水の卵(エッグオブウォーター)に閉じ込めるだけ!!)

と、レラグは心の中で言い、真後ろを向いた。

 「!!」

と、レラグは予想外の事に直面する。

 (いない!!)

と、心の中で言うのだった。そう、瑠璃が空間移動した時に、レラグの真後ろにいたので、兆候を見た時は後ろへと向いたのであるが、そこに瑠璃はいなかったのだ。

 (一体、どこに!!!)

と、心の中で再度、レラグは言い、辺りを見回しながら瑠璃を探すのであった。

 「光剣 一閃」

と、声が聞こえる。

 そして、レラグは、水の卵のあったほうを向く。

 「!!!」

 そうすると、そこで、水の卵は斬られて、消滅したのだ。瑠璃の持っている仕込み杖によって―…。


 【第65話 もう一つの方法と自らの積み重ねを】


第65話-3 もう一つの方法と自らの積み重ねを に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の更新あたりで、久々にあの方が登場するかもしれない。いろんな意味で放置してはいけない人だけど―…。

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