第65話-1 もう一つの方法と自らの積み重ねを
前回までのあらすじは、瑠璃は、水の卵の中に閉じ込められてしまうのだった。対処できそうではあるが―…。そんななか―…瑠璃には―…。
第65話は、当初の予定である内容が長くなったことと、変更が発生したことにより、分割することにします。
追加:松長瑠璃 View の中にある「●」は、瑠璃が実際に聞き取る事ができなかった箇所となっております。
~松長瑠璃 View~
水の中に閉じ込められてしまった。
息をゆっくりと出しながら、何とか耐えています。
赤の水晶を使えば、簡単に脱出することはできます。
それでも、脱出したとしても、たぶん、そこに何かを罠があると思う。
だから、今は、少しだけ考えたり、対策したりしてのぞみたい。
「―――――●い!!」
と、何かが聞こえてくる。こんな中で? ありえない、ありえないよ。ありえるわけがない。
「―――――●い!! ●●え●る●!! おい!!!」
と、まだ聞こえてくる。何!! 私、実は―…、って、ありえるわけないよね。ありえない。うん、それよりも考えよう。とにかく、ここを抜け出した後どうやって攻めるのか。罠に対してできる方法は―…。
「●●よ!! おい!!!」
うるさいなぁ~。本当、今、集中しているんだから―…。
息の少しずつ出すのだけでも大変なのに―!!
あっ、少し息がヤバい。
一回出よう。
赤の水晶。
ぶわぁ~と光って、自分を黒い別空間をつくって、四角いリングのレラグという人の真後ろにイメージで設定して―…。
よし!! では、行きますか。
一歩を踏み出して、空間移動をする。
はあ~、息苦しい、水の中―…。
~松長瑠璃 View了~
四角いリングの上。
レラグは見ている。
水の卵の中を―…。
レラグは、
(何だ。あの黒いのは? さっきも水球で攻撃する時に見た!!?)
と、気づく。そう、黒い丸い何かに―…。
(!! 移動している!!! どういうことだ!!!!)
と、水の卵の中で黒い丸い何かに向かって行く瑠璃をレラグは見た。
そして、黒い丸い何かに移動した瑠璃が黒い丸い何かに飲み込まれたのだ。
(えっ!!)
と、レラグは驚く。そして、あることを思い出す。そう、さっきの出来事である。レラグは瑠璃に向けて五つの水球を放った時、瑠璃は雷の攻撃を放ったが、水球と雷が接した場所に、黒い丸い何かが出現して、水球はその黒い丸い何かに飲み込まれて、その後、黒い丸いのがレラグの後ろに出現し、そこから、飲み込まれたはずの水球が出現して、レラグに向かって来たのだ。
そのような経験とそうなるという勘から、レラグは、すぐに自らの真後ろに視線を振り返るのであった。
そこには、黒い丸い何かがある。
(もし、そこから、瑠璃が出てくることがあれば、黒い何かは空間移動させるもの。そして、瑠璃は空間移動が使用できる特殊な能力を自らにもっているということですか。魔術師ローのように―…。)
と、心の中で瑠璃が発動させた赤の水晶の能力について予想する。ただし、レラグは、瑠璃が赤の水晶を持っていることを知らない。そして、それを魔術師ローから貰っていることも知らない。ゆえに、レラグは、瑠璃が魔術師ローと同じような特別な能力を持った人物であると判断せざるをえない。人は自らの経験や知った事などでしか判断することができないように―…。
そして、レラグの予想は当たる。そう、瑠璃が黒い丸い何かから現れたのである。レラグが振り向いた視線の先にある黒い丸い何かから―…。
(罠はないみたいだけど―…。出るところを当てられるなんて―…。迂闊に、赤の水晶の能力をできないみたいだね。)
と、心の中で瑠璃は言う。それは、レラグが瑠璃の黒い丸い何かから出現した場所に向かって視線を向けていたからだ。それでも、罠がなかっただけましだと思った。
「瑠璃が、特殊な能力を自らに持っていたとは―…。だけど、予想をできた時点で準備することはできた。残念でした。」
と、レラグは言う。そう、レラグは、瑠璃が出現するほんのわずかな時間で、罠を準備し終えていたのだ。
「集まれ、水の卵。」
と、レラグは言う。
それを言い終えると、一斉に、水の卵があった場所でそれを構成していた水は瑠璃の元に集まって、再度、水の卵を形成しようとするのであった。
(赤の水晶の能力を使えば、空間移動で対処可能だけど―…。それをしても根本的に意味がない。また、狙われるだけ!! 今は、とにかく考える時間が欲しい!! だから、赤の水晶は必要最小限にしないと―…、使用回数を―…!!!)
と、瑠璃は心の中で言いながら、目一杯に空気を吸うのであった。
そして、瑠璃は再度、水の卵の中に閉じ込められるのだった。
その様子を見ていたレラグは。
(空間移動をしてきても無駄です。いくら空間移動しても、私の水の卵がどこへでも追いかけます。なぜなら、瑠璃は触れてしまったのです。私の水を、水の卵で受けてしまったのだから―…。)
と、レラグは心の中で言う。そう、いくら瑠璃が赤の水晶の空間移動を使ったとしても、瑠璃が水の卵によってレラグの展開した水に触れている以上、濡れて残った部分に水を狙って、そこに集めることができるのだから―…。
観客席の中の貴賓席。
ランシュ、ヒルバス、イルターシャ、ニード、瑠璃に似ている少女がいる場所。
「なるほどねぇ~。そうきたのね。レラグも本当、残酷ね。見た目ではなく、優しさを出す分のね。」
と、イルターシャは言う。美しい姿のままで殺すという面では、レラグのやり方にはあまり賛成できなかった。むしろ、奇麗に着飾ってもらったほうがよい、と思っていた。それでも、イルターシャも死にたいわけではない。たとえ、奇麗であったとしても、いつかは、見た目は奇麗でなくなっていく。それに、恐怖は感じない。見た目よりも中身において奇麗であり、酸いも甘いもわかっているのが一番良い。そして、人はいつかは死という結末を迎える。だから、自らの世界という幻に溺れているほうがいいし、現実知ったうえで―…。他者に見られることを気にするよりも―…。
「優しいねぇ~。優しさってのは、結局、自分の価値観を他者に押し付けるという面が存在する。その他者の価値観を完全に理解できずねぇ~。」
と、ニードは言う。ニードにとってレラグの優しさは、嫌いではないが、結局ところ、自身の価値観を相手に対して押し付けているのではないかという面があると思っていた。それが、他者が受け入れられるものであれば問題はないのであるが、そうでなければ自分勝手なものにすぎない。そう、瑠璃を水の卵の中で溺死させようとしている所から考えると―…。
「人なんて、いつも自分勝手な生き物だ。自分勝手で他者に協力し、裏切り、私欲のために、他者を殺すのだからなぁ~。なら、俺もあいつらも同じかもしれない。なら、俺は俺のために生きるし、俺を突き従う者に対して、恩恵を与え、危害を加える敵を排除する。あいつらもしてきたようになぁ~。」
と、ランシュは言う。話しているうちに、自らの思いというものが、話を逸らすようになるという結果を生み出した。
「ランシュ様、話が逸れています。」
と、ヒルバスは言う。そこには、感情のあると感じさせる言い方はなかった。事務的に連絡するかのように―…。
「そうか。ついな。まあ、結局は、優しさなんてものは、自分勝手な価値観の押し付けでしかない。それでも、人は自分という存在の安定が自身にとって保障されていることを感じない限り、他者になんて構ったりはできやしないがな。大抵は―…。」
と、ランシュは言うのだった。
そして、その後、ランシュ、ヒルバス、イルターシャ、ニード、瑠璃に似ている少女は四角いリングの方を見るのであった。試合が動きそうな予感がしたので、話を区切って―…。
~松長瑠璃 View~
う~ん。
どうしようかな。
雷を使えば、こっちがビリビリしそうな予感がする。
水の卵を空間移動で出て、攻撃したとしてもねぇ~。服が濡れているし―…。着替えとか持ってきてないよぉ~。
「―――――――●い!!」
と、何かまた聞こえる。水の卵の中に入ると、幻聴でも聞こえるのかな。
私って、今、溺れる以外にヤバい状況? まさか~、そんなわけあるわけがない。うん、ない。
そう、私の心の弱さが見せるものね。気にしてはダメ。うん。
じゃあ、どう倒そうかな。う~~~~~ん。
浮かばないなぁ~。あんなに強い人と戦うのだから、剣を抜いて戦っても、勝てないと思うんだよねぇ~。
う~ん、とにかく、もう少し考えてダメなら、赤の水晶の力を使ってでて、空気を吸お。
「――――――――――●●や、おい!!!」
また、聞こえてきたよ。はい、はい、私の幻聴、今は幻聴に構っている暇なんてありまんせよ~だ。
本当、私の幻聴にも困ったものね。幻聴の事を気にしている間にも考える時間が奪われていくのに―…。
一回、赤の水晶の空間移動で外にでますか。また、あの水に閉じ込められると思うけど―…。
赤の水晶。
そして、私は、一回、外に出ます。息を整えるために―…。今度は少しだけ避けるとしましょうか。うん、息を少し長くしたいしね。
~松長瑠璃 View了~
四角いリングの上。
レラグは、感じた。今度も後ろからだと。
レラグは視線を今、自分が見ている場所から真後ろへと向けた。
そこには、すでに、空間移動した瑠璃がいた。
(脱出できました。空気がおいしい~。)
と、瑠璃は心の中で呟いた。そう、久々の呼吸に、少しだけ気分が良くなっていた。なぜなら、レラグの水の卵によって、水中にいて、呼吸ができなかったからだ。
瑠璃は、そこからいつでも脱出することができる。赤の水晶の能力である空間移動によって―…。
それでも、瑠璃は油断することができなかった。ゆえに、気分が良くなるということもそう長くは続かなかった。続けることができないのだ。
(たとえ、赤の水晶の能力で脱出したとしても、また、集まってくる。水の卵が―…!!)
と、瑠璃は心の中で言うのだった。
「脱出しても意味などありません。」
と、レラグは言う。そう、レラグは、瑠璃が空間移動で脱出してくるのは想定していた。ゆえに、再度、水の卵を形成しようとする。そう、さっきまで、水の卵を形成してところから、再度、瑠璃のいるところを狙って、その水は向かって行く。
(やっぱり、来た!! すこしだけ、避ける。捕まるのはしょうがない。それでも、どこで、どのタイミングで捕まるかが重要。)
と、瑠璃は心の中で言うと、左横へ視線と体の向きを変えて、走りだす。
(たぶん、あの水を空間移動でレラグ近くに移動させてもいいが、あれはレラグが展開したものだ。消されて次の攻撃にすぐに移行されてしまえば、こっちが不利!! 今はあの水をレラグに消させないようにしないと―…!!!)
と、瑠璃は心の中でそう考えるのであった。むしろ、瑠璃が警戒しているのは、レラグの体術による攻撃であった。あれを今の状態では、一から二発分を避けるの精一杯だった。それだけ、レラグの体術によるダメージが残っているのである。痛みが今もある。それでも、レラグに勝たないと自らの命が危うい。ゆえに、必死だったのだ。痛いとか言っていらないほどに―…。生きたいという希望によって、無理に体を動かして戦っているのだから―…。
瑠璃に向かってくる水は、瑠璃が移動する向きを変えるのであった。向きを変える時の速度は、直線で移動するよりも、直角に曲がるために、少しだけ速度が遅くなっていた。
(でも、方向を変えて向かってくる。追尾システムありですか!!)
と、瑠璃は心の中で呟く。それはないでしょ、というような感じで―…。
(ここまで来れば、呼吸を整えて―…。)
と、瑠璃は心の中で言いながら、目一杯空気を吸う。
そして、瑠璃は水の卵の中に閉じ込められるのであった。
一方で、レラグは、
(なぜ、避けた。それにまた、止まった。何かあるのか?)
と、心の中で瑠璃のさっきの行動について疑念を抱くのであった。なぜ避けたのか。そして、どうして、少しだけ移動して止まったのか。そこに何か瑠璃の意図が存在するのではないかとレラグは考え始めたのだ。実際、意図はあったが、戦局を左右させるほどのものではないのであるが―…。
~松長瑠璃 View~
またまた、水の中。
今日、腹部突かれるわ、水の中に閉じ込められるわ。
本当、嫌な日だなぁ~。もしかしたら、今日の占いがあったら、最下位だよ。本当~。ラッキーアイテム何かな~。
って、そんなこと考える場合じゃないよ。余裕も余裕で怖いね。
こんな油断が生じさせるのだから―…。少しだけ反省。
では、考えていきましょう。どうすれば、倒せるのか。
う~~~~~~~~~~~~ん。
あれじゃ、ダメ。これでも、ダメか。
浮かばない。どうしよう。
「―――――――――――●い!!」
またまた、聞こえてきましたよ。幻聴。
面倒くさいね。本当。
やっぱり、占いでこう書かれているはずだよ。今日のあなたは、幻聴が聞こえてくるでしょう。その幻聴はあなたの日頃からの疲れかもしれません。今日はゆっくり体を休めて、リラックスしよう。なんてね。
「―――――――――――●けよ、●の●しを!!!」
止まないなぁ~。幻聴。
「幻聴●●●ぇ――――――――――――――!!! いい●●にしろ●、瑠璃おめぇ―――!!」
えっ、私の名前知っている。うん、私の幻聴だから知っていて当然だね。そうそう。
「ほぉ~う、●●か―…、それなら●●っ●ぞ。瑠璃、お前にやっている●からの天成獣の力を貸してやらねぇからな。じゃあ―…。」
あれ? この言葉・・・聞いたことがあるような―…。天成獣の力を貸してやらない…。
って、ちょっとまって、この声って、まさか、まさか、
「もふもふ、さん。」
「もふもふ、さんじゃねぇ――――――――――――――――――――――――――――――――。」
もふもふ さん、じゃ、ない。でも、もふもふ さんだよねぇ~。私の杖に宿っている天成獣は?
「名前は、確か―…、うん、そうだよ。」
「おっ、思い出したか、瑠璃。」
「もふもふ さんだぁ。」
そうだ、そうだ。もふもふ さんだ。そう、そう、黄色い。
「グリエルじゃあ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」
すごい叫び声。
そうだった。グリエルだ。もふもふ さんの名前。
~松長瑠璃 View了~
第65話-2 もう一つの方法と自らの積み重ねを に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
当初、瑠璃がもふもふさんって、グリエルのことを呼ぶ予定はなかったのですが―…。なぜか、頭の中で浮かんで、自分自身の心の中で笑ってしまったのか、内容として追加してしまいました。