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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第63話-3 十二の騎士との初対戦

前回までのあらすじは、ようやく第七回戦第六試合が開始されました。レラグの実力はいかに!!?

今回で、第63話が完成します。

 試合開始後―…。

 瑠璃とレラグは、互いを見る。

 それは、相手の隙がどこかを見るために―…。

 そして、相手の隙に対して攻撃するために―…。

 「…………………先に攻撃をさせてもらいましょう。」

と、レラグは言う。心の中ではなく、はっきりと口で言ったのだ。

 瑠璃にも、レラグの言葉は聞えた。瑠璃は、親切な人だとレラグを思うが、戦いの場でそれは馬鹿な行為でもあると感じた。言ってしまえば、対策をとることが容易だからだ。

 瑠璃は、それでもレラグの方を見ると、レラグが消えたのだった。

 「!!!」

と、瑠璃は驚く。レラグが瞬間移動をしたのではないか、ワープしたのではなく、超高速で走りながら移動しているのだと予測する。瑠璃のように赤の水晶の別の空間を使わない限り、空間移動はできないのだから―…。ただし、能力を持っている人間の中に、空間移動できるものがいれば別だが、そんな人間は、この異世界ではその出現から今までの時間の中でほとんどいないといっていい。両手で数えられるほどであろう。

 瑠璃は、レラグが超高速で移動している予測をしたが、実際に、レラグは超高速の移動であった。レラグが空間移動をすることはできないし、その能力も持っていなかった。

 そして、瑠璃に衝撃がはしる。

 「ガァ…!!」

と、声が勝手にでてしまうぐらいのものだった。

 瑠璃にはしった衝撃は何だったのか。今、それを瑠璃は知ることになる。視線でわかったのだ。そう、レラグは目の前にいて、瑠璃の腹部に向かって、両手をグーにして、押したのである。そのため、瑠璃の腹部にあたった時、瑠璃に衝撃が体にはしったのだった。

 (見えなかった。移動するのも、攻撃するのも―…。レラグの天成獣の属性は生!?)

と、瑠璃は心の中で判断した。


 中央の舞台。

 瑠璃チームのいる場所。

 「瑠璃さん!!」

と、李章は叫ぶ。李章はわかった。瑠璃と同じ解答で―…。それでも、瑠璃と違うのは、レラグの超高速の移動が目で追えたということである。そして、同時に気づいてもいた。

 (あの動きは、体術!!? それも、天成獣の属性ではなく、操ることによって上がる身体能力だけで!!!)

と、心の中で李章は驚く。李章は、レラグという人物の強さをはっきりと理解してしまう。李章自身が戦っていたら、ほんの数秒で負けてしまうということを―…。

 「ありゃ~、天成獣の属性を使わずに、天成獣を扱う者が誰でもできる身体能力の上昇を利用して、攻撃したのか。レラグ(あいつ)―…、体術も使えるのか。瑠璃にはこれだけでもきついことこの上ない。」

と、アンバイドは言う。レラグに感心しながらも、瑠璃がレラグに一方的に負かされていることに納得するのである。さらに、体術の攻撃に対抗するのにも瑠璃は苦戦しそうだとアンバイドは考える。

 「えっ!! 天成獣の属性を用いての攻撃じゃないの!!!」

と、クローナは声を上げてしまう。

 それを聞いたアンバイドは、

 「そうだ。あの―…、レラグ(あいつ)の攻撃は、明らかに、超高速で瑠璃の前まで移動し、手をグーの形にして、押して攻撃したにすぎない。」

と、クローナにレラグがどのようにして瑠璃に攻撃をしたのかを解説した。

 「天成獣の属性を用いずに―…。でも、それじゃあ、天成獣の力を半分しか使用していないことになるが、どうやって?」

と、今度は礼奈の方がアンバイドの解説を聞いて、不思議に思う。

 「あれは、武術などの経験があるものの動きだ。それに―…、李章のように天成獣の能力を半分も使っていないのではない。ちゃんと、天成獣からの信頼を得ていて、かつ、天成獣と互いに試合の中でも意思疎通することができているからだ。」

と、アンバイドは言う。あくまでも推測でしかないが―…。実際に、レラグに確認をとってもいないし、それがわかる確実な証拠を見たわけではないから―…。

 「天成獣との意思疎通?」

と、クローナは疑問に思い、

 「それって何ですか? アンバイドさん。」

と、礼奈も尋ねるのであった。

 セルティーも天成獣との意思疎通に関しては、知らなかったので、興味をもっていた。

 「お前らもやっただろう。俺がしばらくの間、戦うことも動くこともできなくなったあれを―…。」

と、アンバイドがさも知っているだろうという風に言う。

 それを聞いた礼奈、クローナ、セルティーは、

 「「「ああ、あれ。」」」

と、同時に言いながら思い出すのであった。

 それは、過去にアンバイドが、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティーに一回だけおこなったことのあるものだ。そう、天成獣との話し合いである。自らの天成獣がいる空間に行って、話し合うことだ。そのことを礼奈、クローナ、セルティーは思い出すのだった。そして、自らの天成獣のいる空間に行くために、アンバイドが術をおこない、その代償を受けたのだ。

 「で、それをこっちでも会話だけを可能にするのが天成獣との意思疎通だ。常時会話できるかどうかでは、戦闘においての力の匙加減が効率性に関わってくる。常時会話ができるのであれば、天成獣の話し合いで、戦闘の中で今必要な力をうまく調整でき、長時間の戦闘も可能にする。もちろん、俺はできるがな。」

と、アンバイドは言うのであった。

 「えっ、なら、やり方を教えて!!」

と、クローナが言う。そんな便利なことができるのなら、早急に使いたかったし、さらに、方法を知りたいと思った。

 そんなクローナの気持ちに対して、

 「そうですね。さっさとその方法を教えてください、アンバイドさん。」

と、礼奈も冷たい口調で言うのであった。

 (それあるなら、さっさと教えなさい。)

と、心の中で礼奈は言葉にする。実際に口に出して言うことはないのであるが―…。

 「天成獣との意思疎通は、こちら側からはできないんだよ。向こうから勝手に話しかけられることによって、双方に意思疎通することが可能になる。ただ、天成獣のいる空間にいったからといって使えるわけではない。それに―…、天成獣は、自らが宿っている武器を扱っている者に起こっていることを、その人物の視線で常に見ることができる。」

と、アンバイドは説明する。その中には、天成獣のいる空間に行った交渉することができたからといって、天成獣との意思疎通ができるとは限らないのだ。例外は、もちろん存在する。天成獣といっても、属性や武器に特徴があるように、共通してできるものに対する方法と発現に関しても違いが存在するのである。そう、天成獣にも個性があるのだ、人と同様に―…。

 ゆえに、アンバイドが、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティーに対して、彼らのそれぞれの天成獣のいる空間に術を使って行かせたとしても、必ずしも、天成獣との意思疎通ができるわけではなかった。だから、アンバイドも天成獣との意思疎通に関しては教えなかったし、教えたからといって、その力を習得することができるわけではなかった。

 実際は、言うほどの時間が存在していたわけではなかった。それに、説明するよりも、自らの武器に宿っている天成獣の声を聞くことができるようになって、説明した方が理解しやすいとアンバイドは判断したからだ。

 (実際に体験しないとわからないだろう。あんなの―…。何かにとり憑かれたか、変な力に目覚めたか、幻聴が聞こえるようになったと思うだろ。それに―…、そんな声が聞こえるなんて説明したら、頭が可笑しくなったと絶対に他人から判断されるんだよ。お前らからもなぁ!! それが嫌なんだよ!!!)

と、アンバイドは心の中で激しく苛立つのであった。特に、後半の方は、言葉にして、実際に言っていたのではないかと思われるほどだ。それでも、アンバイドは何とか気持ちで抑えることができた。理由は、この戦いで死者がでるとアンバイドが思っているからだ。推測しているといったほうがいいだろう。実際、どっちになるかはわからないけど―…。

 「そういうこと―…。」

と、礼奈がふ~んというような雰囲気で言う。礼奈も気づいていた。アンバイドが言わなかった心の中の理由をある程度、正確にわかっていたのだ。アンバイドの今までの言動から何となくであるが―…。

 「そういうことなんだ。実はアンバイドは、どこからか声が聞こえるとか言うと、何か俺の内なる力が目覚めたのか、あるいは、幻聴が聞こえるようになったのかと思われるのを嫌ったんだ。アンバイドって、意外と普通の人?」

と、クローナが言う。それは、ほとんどが余計なことでしかなかった。礼奈のように空気を読んで言うことができなかった。いや、あえてしなかったということだ。半分挑発をかけるように言ったのだ。さっき、自分達の心に嫌な事を言ったからだ。瑠璃が第七回戦第六試合でレラグに殺される可能性があるということを―…。ゆえに、ちょっとした嫌がらせの意味を込めて―…。

 「ほ~う、クローナよくわかっているじゃないか。明日以後の修行―…、倍な。」

と、アンバイドは冷静に言いながらも、頭のおでこ部分にいくつかの怒りマークを浮かべるのであった。クローナの挑発めいた言い方に対して―…。こっちは、冷たくして、嫌われ役をして、空気を読んであげたのに―…、という雰囲気をアンバイドは漂わせて―…。

 (天成獣との意思疎通―…。これは、運という要素が必要なのですね。)

と、セルティーは心の中で思う。天成獣との意思疎通には、天成獣側との関係による運が必要であるということを感じたのである。


 四角いリングの上。

 「ガ……ぁ。」

と、瑠璃はレラグの攻撃を声をだす。

 (このままじゃ、簡単にやられてしまう。)

と、心の中で苦々しそうにする。

 瑠璃にとっては、自らをレラグによって殺されるという結果なんて望んでいない。

 もがいて、もがいて、勝利を掴みたい。ゆえに、杖を四角いリングの表面につけて耐えるのだった。

 「はあ…、はあ…、ふう~。」

と、瑠璃は息をあげるが、なんとか落ち着かせる。

 そして、瑠璃はすぐに、杖を四角いリングの表面から離して、攻撃に移行する。今、レラグのいる方向に向かって―…。

 瑠璃は、レラグに向けて雷の攻撃を放つ。

 レラグは、

 (なるほど、そうきましたか。避ける必要はありませんが、あえて、避けて、雷の攻撃を避ける必要がある相手と思わせましょう。)

と、心の中で思うと、すぐに、横に向かって、避けるのである。

 そして、レラグが避けたことに瑠璃は気づき、

 (避けられた!!!)

と、心の中で言うのであった。

 「瑠璃(お嬢さん)の天成獣の属性は雷ということですか。面白いですが、実力がこれほどとは―…、この私の一撃で殺されてください!!」

と、レラグは冷静に余裕があるように言う。実際に、レラグは余裕がある。それに、瑠璃の武器に宿っている天成獣の属性は雷だとは思っていない。雷という属性は存在しないのだから―…。レラグはだから、予測していた、答えを―…。

 (あの瑠璃(お嬢)さんの天成獣の属性は、光だ。今までの試合で、光を使っている場面はないみたいだから、使えないのか―…、それとも、使えるけど、使っていないのか。まあ、これで決まれば関係はないのだけど―…。)

と、レラグは心の中で言う。瑠璃がなぜ、自らの天成獣の属性の光を使っていないのか。それを考えてもみたいのだけど、それでも、今はその相手と戦っているので、考える時間を確保することはできない。さらに、今の一撃を決めれば、瑠璃を倒すことができ、かつ、決着がつく前に、任務のために瑠璃を殺すことができるのだから―…。瑠璃がなぜ、自らの天成獣の属性である光を使わないのかを考えても意味がないと割り切ったのだ。

 そして、レラグは瑠璃の目の前に現れ、両手をグーについて、瑠璃の腹部を突く。

 「ガァ。」

と、瑠璃は短い声を吐き出す。吐き出さざるを得なかった。レラグの攻撃は、瑠璃の体が悲鳴をあげそうなほどに痛みが襲ってくるからだ。

 それでも、瑠璃はただ、レラグの攻撃を受けたわけではなかった。瑠璃はこれを一種の好機ともみていたのだ。

 そう、レラグが目の前に現れた時点で、自らの武器である杖をレラグに向け、狙いを定める。雷の攻撃をあてるために―…。

 そして、瑠璃は自らの武器である杖から雷の攻撃を放つ。

 レラグは気づくが、避けることはできなかった。少しだけ、反応するのに時間がかあり、それに加えて、瑠璃の意図に気づくのにも遅れてしまったからである。

 (!!! わざと攻撃を受けたのですか。その考えには侮れませんが、それでは無理です。私もわざと雷の攻撃を避けたのですから―…。)

と、心の中でレラグが呟く。

 そして、レラグは、右手を前に出し、自らの武器である羽衣に力を込めて、展開する。

 「純水の盾」

と、レラグが言うと、レラグの目の前に水の盾が出現する。

 「!!」

と、瑠璃は水の盾の出現したのに、驚く。

 そして、瑠璃の放った雷の攻撃は、水の盾によって防がれてしまうのであった。

 雷が消えると、純水の盾は消滅した。

 (防がれた!!)

と、瑠璃は心の中で驚く。それでも、瑠璃は経験していないわけではない。ゆえに、それほどまで強く動揺することはなかった。

 レラグは、

 「通用などしません。雷の攻撃なんて―…。」

と、言うのであった。瑠璃の雷の攻撃など通用するわけがないという雰囲気を漂わせて―…。


 【第63話 Fin】


次回、また、瑠璃は閉じ込められる!!?

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。

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