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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第7話 領主フォルゲン=デン=ベークドの力

前回までのあらすじ。ついに領主の元へ辿り着いた瑠璃、李章、礼奈であった。

 瑠璃、李章、礼奈は、玉座のようなものにいる領主フォルゲン=デン=ベークドを見る。

 領主フォルゲン=デン=ベーグドも瑠璃、李章、礼奈を見る。

 李章は、


 (……………この人が領主?)


と、領主であるのかどうかを気にしていた。

 それは、誰が狙っているのかを聞くために―…。

 そう、レクンドとシークドとこの領主の館の人間がそれぞれ単独もしくは集団で狙ったのか。その狙いに関して領主は関与しているのか、いないのか。また、領主自身の命によって狙われたのか。

 一方で、礼奈は、


 (この人…強い!!!)


と、心の中で思うのであった。



 【第7話 領主フォルゲン=デン=ベークドの力】



 領主フォルゲン=デン=ベークドが玉座のようなものから立ち上がる。

 ベークドは、瑠璃、李章、礼奈に向かって言う、


 「よく、ここまでこられました。そして、あなたがたに言わなければならないことがありました。」


と。

 ベーグドは、丁寧な言葉遣いであるが、ランシュの命を果たすことができると感じていた。そう、自らの手によってである。そうすれば、手柄を独り占めすることができ、自らの部下に恩賞を与える必要がないからだ。ランシュからだけでなく、ランシュとは敵対する一派からも恩賞をもらうことができる。


 「それは―――――――――………」


と、ベークドは一回、間をおき、


 「瑠璃、李章、礼奈(あなたがた)をここで殺し、ランシュ様の命を私の手で果たします。そして、私自身が最強であることを示すのです。いや、それを見せつけるのです。そのために、さっさと確実に私によって殺されることです」


と、言った。

 このベークドの言葉には、自身の欲望とそれを他者に示したいと自己顕示欲の塊であり、丁寧な言葉遣いがよりそれをより強いものだと強調していた。

 それは、瑠璃、李章、礼奈にとって領主ベークドを気味悪いものとして印象を強く与えた。


 「返事がないようです。私によって殺されることは名誉なことです。なのにあなたがたは、うんとすら返事をしない。これは許しがたいことです。よって、ランシュ様の命のために、あなたがたを殺させていただきます。私の力を使いまして――!!!!」


と、自己中心的な性格を隠すこともせずに、言葉の中にベークドはだしていく。

 ベークド自身にとってのみ都合がよく、それ以外の者の都合などお構いなしに―…。

 この言葉は、瑠璃、李章、礼奈が領主ベークドをより気味悪い人物で、横柄であると感じさせた。

 ゆえに、瑠璃、李章、礼奈は素早く戦闘態勢に入った。領主ベークドの言葉を従おうと、従わなかろうと、結局は、ベークドが瑠璃、李章、礼奈を殺しにくることは確定していることでしかない。だから、瑠璃、李章、礼奈は、生き残るためにも領主ベークドとの戦いを選択した。

 領主の館での罠は領主の命であったということを間接的にではあるが、ベークドは発言によって認めたようなものであるから―…。


 「私の力を堪能させてやろう」


と、ベークドが言うと、すぐにベークドは消えた。

 これには、瑠璃、李章、礼奈は驚くしかなかった。瑠璃、李章、礼奈が、(消えた!!)と同時に心の中で思うぐらいには―…。


 (一体、どこへ消えました)


と、李章がさらに心の中で言った。その心の中の気持ちは表情になっていたのか、ベークドは、


 「ここだ」


と言う。

 李章は、「!!!」となるが、時すでに遅く、ベークドの右手のパンチを一発喰らった。

 そのパンチは、李章の背中に直撃していた。顔面から李章は倒れていった。


 「ぐっ…」


と、ベークドの攻撃による衝撃によって、李章は声をもらしていた。

 ベークドは、自らの右手のパンチ一撃で倒した李章を見た。

 そして、


 「まあ~、こんなものですか。天成獣の力を武器も使わず使用しようとするのですから―…。弱いのは当たり前ですか」


と、ベークドは言う。

 ベークドは、李章が自らの持っている剣を使用していないことに気づいていた。もし、剣から天成獣の力を借りているのであれば、武器を使用したほうが明らかにその力をうまく発揮することができる。しかし、李章は一切、武器である剣を使用していない。だから、ベークドはある結論に達する。そう、武器を使用することを拒んでいるか、あるいは武器を使用しなくてもベークド自身に勝つことが出来るのだと思っているのか。実際、戦ってみてわかった。李章は剣の使用を拒んでいるのだと。

 ならば、こいつはすぐに倒して、殺してしまえばいい。ベークドは、はやく数を減らせば、戦いが長引けば長引くほど、ベークド自身が不利になってしまうからだ。

 ベークドが少し言葉を言い、思考している間に、今度は礼奈がベークドに向かって攻めてきた。

 礼奈はベークドの近くで槍を振り上げ、振り下ろす。

 だが、礼奈の槍の振り下ろす速度では、ベークドにとっては反撃のチャンスを与えるのみであった。

 そう、


 「いない!!!」


と、言って、礼奈は槍を振り下ろした槍先には、ベークドがいなかった。


 「じゃあな」


と、ベークドの声が聞こえた。

 そうすると、ベークドは今度は左手でパンチを繰り出す。

 だが、それは、礼奈にあたることはなかった。礼奈は氷壁を自らの後ろ側に築いていたからだ。

 礼奈は、ベークドが李章への攻撃から後ろをとって攻撃するということがわかっていたからである。ゆえに、あらかじめ目に見えないほどの氷の結晶をすでに礼奈自身の周囲に形成していたのである。それを青の水晶の力を使って急激に成長(大きく)させることで氷壁を築くことができた。

 その氷壁によって礼奈は、ベークドの攻撃から自らを守ることができたのである。


 (氷壁!!)


と、ベークドは自らの左手から冷たさを感じた。そのことから、今、自身の攻撃を防いだのが氷であることを理解した。

 そして、ベークドは次はどのように攻撃を仕掛けようかと考えていた。

 だが、ベークドは気づく。ベークドに近づき攻撃を使用とする者がいることを―…。ゆえに、素早く回避行動をとる。

 さっきまでベークドがいたところでは、李章が右足で蹴りを入れていた。そう、ベークドへと攻撃しようとしたのは李章であった。

 李章は、ベークドの一撃を受けて、倒れたが、すぐに気がつき、ベークドの隙をうかがっていたのだ。そうして、礼奈がだした氷壁で思考をめぐらせたベークドの隙をつき攻撃したのだ。


 (また、消えた。一体、どこへいったのですか?)


と、李章は心の中でこのように言った。

 一方で、礼奈は、


 (何となくだけど、倒せる方法はあるし、すでに仕込んでもいる)


と、礼奈は心の中でそう考え、ベークドを倒すための機会を待つことにする。

 ベークドは、李章を見て、

 「まだ、私の一撃を受けて立てるのですか」


と、ベークドは驚きとともに、少し楽しくなってきてもいた。

 久々に、ベークド自身とはりあえる相手が出現したことを―…。実際は、3対1であるが、これではりあえるのであるから、ベークドにとっては満足なのである。ここしばらくは弱い相手ばかりであったからだ。

 ベークドが言葉を言い終えると、


 「この雷で、あなたの負け」


と、瑠璃が言う。

 そして、


 「征け」


と、瑠璃が言うと、ベークドの真上から雷が落下した。


 「があああああああああああ――――――――」


と、ベークドの叫び声が聞こえた。

 礼奈が氷壁で防いだときに、赤の水晶の能力で別空間からベークドを攻撃するための空間接続をおこなっていた。このときおこなわれた空間接続は、瑠璃と目の前とベークドの真上に展開するものであった。真上の展開に関しては、ベークドが李章の攻撃を回避して移動した位置を瑠璃が確かめてからすぐにおこなった。この空間接続を使って、仕込み杖の水晶玉から雷をだして、空間を通って攻撃したのである。



 ◆◆◆


 

 瑠璃によって放たれた雷の攻撃を受けたベークド。

 だが、自らの天成獣の力を借りて何とかダメージを少なくすることに成功した。


 「はあ、はあ、はあ、やるじゃないですか。しかし、この私を倒すことは……はあ、はあ、……不可能だ」


と、ベークドは言う。

 ベークドの表情はすでに、瑠璃の雷の攻撃によってすでに大ダメージを受けたに近い状態を示すかのように、息をきらしているであった。

 そして、ベークドはまた消える。


 (……ベークド(あの人)の天成獣の能力の属性は、時。時間を操作するもので、戦い方はたぶん単純。言動や戦闘行動から考えて、それは確か。そして、私たちへの時間の干渉はできていないし、氷壁の()()()()()()()()()()()()()()。なら、やることは一つ)


と、礼奈はベークドの天成獣の能力の属性を心の中で推測する。



 ◆◆◆



 天成獣には、それぞれ属性というものがある。前にも魔術師ローが言っていたが、炎、水、闇、風、地、光などの属性能力と、幻や時などのトリッキーなものある。これは、すべて天成獣の属性である。つまり、天成獣は、炎、水、闇、風、地、光、これに付け加えて鉄、生があり、幻、時というトリッキーな能力の属性が存在することになる。そして、天成獣の中には、複数の属性を操るものもいるといわれる。複数属性をもつ相手はまだここでは出てくることはないだろう。蛇足となってしまったが―……。

 語りを戻して、時について少し説明しておく必要がある。この能力は端的にいって時間を操作する能力である。この能力の天成獣は強大な力をもつが、この力を借りて行使するには、それなり、天成獣の能力を借りた者の体力をその他の属性の天成獣の能力を借りる者よりもより消費しやすい。ゆえに、時の属性の天成獣の能力を借りて戦う者は、体力が常人以上でなくてはならない。そう、ベークドのように―…。さらに、時の能力の行使は、他者へと直接的に影響を与えていくものが強いほど体力の消費も激しくなっていくのである。ゆえに、時の属性をもつ天成獣の能力を扱う者は、体力配分をしっかりするものが多い。

以上で、簡単な捕捉を終わることにする。



 ◆◆◆



 ベークドは、自らの天成獣の能力である時を使用し、礼奈の背後へと回る。


 「この俺の時の属性が、破られわけがありません」


と、ベークドは言う。

 そして、足を踏み出して攻撃しようとし、構えをする。


 「凍れ」


と、礼奈は小さな声で言った。

 ベークドは、右手で礼奈に向かってパンチをだそうとする。

 そのとき、ある違和感をベークドは感じた。攻撃を途中で止めて自らの顔を下にむけた。


 (!!!! 俺の足の周りに、氷が!!!!! 俺が凍っているだと……)


と、ベークドは驚くのであった。

 そう、ベークドの右足の一部はすでに凍らされていたのである。


 「私を凍らせて……」


と、ベークドは言う。

 そして、その間にも氷が徐々にベークドの体を覆いつくそうとしていく。


 (このままだと俺は―…、凍ら……)


と、ベークドは焦りを見せるが、すでにベークドは体のほとんど凍らされていた。

 そして、ベークドは礼奈によって凍らされたのである。

 ベークドが氷壁に触れた時点ですでにベークドの体の一部にはすでに氷を貼り付いていたのだ。

 それを、青の水晶で氷を成長(大きく)させて凍らせたのである。



 ◆◆◆



 一方、瑠璃、李章、礼奈とは別行動をとっている人物が一人いる。

 魔術師ローである。

 ここは森。そう、瑠璃、李章、礼奈たちが到着した村とは方向としてはやや逆の方向である。


 「年をとると忘れぽくなった困る」


とローは言う。

 ローという人物の生きてきた長さを考えれば当然であろう。だが、それをこの世界で知っているのはほとんどいない。

 話を戻して、ローは、


 (まあ、そろそろじゃのう~)


と、心の中で言う。

 ローは、一般の成人が歩く速度よりも遅い速さで歩いていた。そして、景色はすでに夜が今そこまで来ていた。

 ローは、ふと歩きを止め、前を見る。

 そこには城壁で囲まれた町があった。



 ◆◆◆


 

 ローは、町の城門へと向かった。

 この町は、瑠璃、李章、礼奈が行った村とは領土の上では異なった場所である。

 つまり、瑠璃、李章、礼奈はリースという首都を中心とする王国(?)が支配する村であり、ローが着いた町は領土的にそうではない。


 「あいかわらず、ここから見ると――……、すごい、城壁じゃの~う」


と、ローは、町の城門の壮大さに感想を述べざるをえなかった。

 そして、ローは、惚ける。

 すぐに、自らが行わなければならない目的を実行するための行動をローはとる。


 「あの~、すまんのじゃが~」


と、ローが言うと、城門を守衛していた人の一人が、


 「一体何者だ。名を名乗れ!!」

と、警戒心をだしながら、声を強くして言う。


 「ふむ、こういえばわかるかの~う。儂は、魔術師ロー、と言えばの~う」


と、ローは自らの名を名乗る。

 そう、魔術師ローと言えば、たいていの人々は知っている。いろんな国に対して古くからその人脈を持つという点で―…。

 それゆえ、


 「お前が魔術師ロー本人であることを示してもらおうか。」


と、挑発の感じもしないでもない声で守衛の一人は言った。

 魔術師ローは有名であるが、それを語る偽物も多くいるということをこの守衛は知っている。だから、問いかけたのだ、()()()()()()()()()()できないということを―…。


 「これが証拠じゃ」


と、ローは言って、別の空間から杖を取り出した。

 そして、その杖は、先端に羽のようなものが二つあり、そこに水晶玉があるものだ。ローは、杖にある水晶玉に自らの念を込めて、創り出したのである。透明な一つの水晶を―…。水晶を人が人工的に創り出すことはできない。唯一できるのは魔術師ローのみである。それを見た守衛たちは、その光景に驚く。魔術師ローが、本当に水晶を創り出す光景を見るのは守衛たちによって始めてであったから。

 そして、ローに話かけてきた守衛が、


 「わかりました。あなたが本物の魔術師ローだということが―…」


と、言った。


 「そうか、そうか。わかってくれたのでよい。この町へと入らせてもらえないかのう」


と、ローが言う。


 「はい、わかりました」


と、守衛はローに言った。そして、守衛たちは城門を開け、ローを城門の中へ通した。

 その後、城門は守衛たちによって閉じられたのである。それは、夜と言われるときになったちょうどその時であった。


 【第7話 Fin】


次回、伝説が一つできるのか?

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


2022年10月26日 以下などを修正もしくは加筆。

①「ベークドは、瑠璃、李章、礼奈にむかって言う」を「ベークドは、瑠璃、李章、礼奈に向かって言う」に修正。

②「ベーグドは、丁寧に言葉遣いであるが」を「ベーグドは、丁寧な言葉遣いであるが」に修正。

③「そうすれば、手柄を独り占めすることができ、自らの部下に恩賞を与える必要がないからだ」の後に、「ランシュからだけでなく、ランシュとは敵対する一派からも恩賞をもらうことができる」を加筆。

④「領主ベークドの言葉を従おうと、従わなかろうと結局は、ベークドが瑠璃、李章、礼奈を殺しにくるのだから」を「領主ベークドの言葉を従おうと、従わなかろうと、結局は、ベークドが瑠璃、李章、礼奈を殺しにくることは確定していることでしかない」に修正。

⑤「今度は礼奈がベークドにむかって攻めてきた」を「今度は礼奈がベークドに向かって攻めてきた」に修正。

⑥「前にも魔術師ローが言っていたが、炎、水、闇、風、地、光などの属性能力と、幻想や時間などのトリッキーなものある」を「天成獣には、それぞれ属性というものがある。前にも魔術師ローが言っていたが、炎、水、闇、風、地、光などの属性能力と、幻や時などのトリッキーなものある」に修正。

⑦「つまり、天成獣は、炎、水、闇、風、地、光、これに付け加えて鉄、生があり、幻想、時というトリッキーな能力の属性が存在する」を「天成獣は、炎、水、闇、風、地、光、これに付け加えて鉄、生があり、幻、時というトリッキーな能力の属性が存在することになる」に修正。

⑧「すごい、城壁だ」を「すごい、城壁じゃの~う」に修正。


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