第61話-3 氷VS光
前回までのあらすじは、いよいよ第七回戦第五試合、礼奈VSレッラーの戦いが始まるのであった。
今回で第61話が、完成します。当初の予定よりもかなり長くなってしまいました。
瑠璃チームのいる場所。
アンバイドは、礼奈の対戦相手を見る。
アンバイドは、
(礼奈の対戦相手は、レラグではなかった。ということは、レラグの対戦相手は、瑠璃に決まったということだな。まあ~、戦力的に言うと、礼奈と瑠璃、どちらを失うのが最も被害が多くなるといえば、礼奈だろうな。戦いのセンスでいうと―…。ふう~、ここはそう割り切るか。)
と、心の中で言うのであった。
アンバイドにとって、瑠璃と礼奈を比較して、戦力として失うとどちらがダメージが大きいかと考えると、礼奈であろう。礼奈の方が瑠璃よりも戦いのセンス、戦い方において上であり、ランシュの企画したゲームを勝利するために確定的要素でのみで考えるとそうなってしまうのだ。
(だが―…、一方で瑠璃は、俺でも計ることのできない何かを感じるだんよなぁ~。運とか数値することのできない面で―…。)
と、さらに付け加えて心の中で思う。
アンバイドは、瑠璃に対する何かアンバイドの経験上および確定的にできる要素とは違う何かを感じていた。それは、アンバイドの直感的なものであり、信じていくことは必要であるが、明らかにレラグの差があると考えると、その不確定な要素を全然関係ないものと思ってしまうのである。それに、レラグに瑠璃が勝つ可能性は、現時点で、確定的要素では一パーセントもなく、不確定要素を加えてもそんなに差はないだろう。ゆえに、今、戦っているわけでないアンバイドは、他者に対しては、ほとんどの面で確定的、計算できることで判断せざるをえなかったのだ。
そんな思考を続けているアンバイドはあることに気づく。
アンバイドは、貴賓室をふと見たのだ。そして、知っている顔を見つけたのだ。
(どういうことだ。なぜ、あいつが―…。ランシュ側についている。ベルグとの関係のあるされているランシュ側に!!! ギーランの馬鹿野郎は何をしているんだ!!!!)
と、アンバイドは心の中でありえないことに驚き、知っている男に悪態をつくのであった。
その知っている男であるギーランは、確実に魔術師ロー側のために、ランシュやベルグ側にわざわざ知っている人物を付けるわけがないのだ。ありえなさすぎて、驚くことしかできなかった。
それでも、アンバイドは、
(まあいい、あいつとの試合終了後に、問い詰めればいいし、ギーランの奴に会ったなら、聞けばいい。)
と、心の中で思うのであった。ギーランにどうして、ランシュ側にいるのかの理由を尋ねるために―…。
~瑠璃に似ている少女 View~
私は貴賓席といわれるところにいる。
なぜ、ここにいるかって。
それは、私たちから家族としての幸せを奪った瑠璃に復讐するために、瑠璃の戦い方を見るためよ。
いなくなりやがって―…。
それと―…。
(!!)
と、誰かがこっちを見てる。あれは、アンバイド? げっ!!
あいつの父親かよ。つ~か、どうにかしろよアンバイドの息子を―…。
私にとってはとても迷惑なんだよ。あいつと会うと、精神的に疲れてしまうんだよ。
まあ、そんなことを心の中で思ってしまっても意味ないしね。
アンバイドの奴は、殺された自らの奥さんの敵をとることしか考えてないものね。自らの子どもたちを見捨てて―…。
私の父親も言えたことではないけどね。私と母さんを捨てたようなものだし。私の行方不明になった妹のために―…。十数年も探し続けているのだから―…。
私の知っている男という生き物は、家族愛や愛した人を失った場合、もう一度自分の元に戻ると思って―…。
まるで、人に創られし人をつくったあの人のように―…。
~瑠璃に似ている少女 View了~
第七回戦第五試合開始後すぐ。
四角いリングの上。
礼奈は、すぐにレッラーに向かって行く。走りながら―…。
もちろん、礼奈はレッラーに攻撃するために、そこへと向かって行く。
礼奈は、レッラーに自らの武器で攻撃であてることができる範囲へ到達すると、自らの武器である槍を振るうのであった。右側から横に左へ向かって―…。
その間に、レッラーは、右手に光る球状のものを展開し、形成していく。そして、同時に、礼奈の槍の攻撃を避けるために、左側に礼奈の槍の攻撃範囲から離れるようにして移動し、避けようとする。
レッラーの回避行動はうまくいき、礼奈の槍の攻撃を避けることに成功した。
礼奈は、自らの槍の攻撃をレッラーに避けられながらも、冷静でいたし、レッラーが光る球状のものを展開し、形成していることにも気づいていた。それは、レッラーが展開する時からだ。
(あの光―…、強くなってる。)
と、礼奈は心の中で言う。
一方で、礼奈が光る球状のものに気づいていたことを、レッラーも気づくのである。
(槍の攻撃は単調といってもおかしくはない。だけど、槍の攻撃中の時に、私の今展開しようとしているものに気づくなんて―…。油断なりません。それでも、これさえ発動させることができれば、こちらの勝利は確実なものとなります。今は、光る球状を発動させるために力を注ぎ続けないといけません。発動には、時間がかかります。)
と、心の中でレッラーは言うのであった。レッラーは冷静に光る球状のものを発動させるのに、時間がかかること、それは、光る球状のものに注げる自らの力の量がある程度で決まっており、それを超えて自らの力を注ぐと光る球状のものは消えてなくなってしまうからだ。ゆえに、レッラーは、今は只管、礼奈の攻撃をかわし続けていくしかないのだ。それでも、やるべきことがわかっているので、それに集中していけるので、気持ち的な苦痛というものは感じなかった。
礼奈は振るった自らの武器である槍を今度は、左から横に右へと振るう。その時、レッラーに攻撃をあてることができる範囲に入っていたことは言うまでもない。
レッラーは、今度も礼奈による槍の攻撃をすぐに避ける。
避けられたと感じた礼奈は、冷静であり、再度、攻撃を仕掛ける。槍を構え直し、今度は突きの攻撃へと移行する。その時、一歩前へ右足を踏み出し、槍を前へと伸ばした。その槍の直線上にレッラーがいたからだ。
「!!」
と、レッラーも礼奈の槍の攻撃にはすぐに気づくことができた。いや、気づかないことの方がおかしいであろう。レッラーは、光る球体のものに自らの力を注ぎながらも、視線に関しては、礼奈の方にずっと向けていたのだ。そうしないと、礼奈の槍の攻撃を受けてしまうからであろう。
(何度も、何度も攻撃してくるが、やっぱり単調でしかない。槍の扱いにはあまり慣れていないようだ。これなら、光る球状を発動まで持ちこたえることができる。あと、ちょっとだ。あと、ちょっとで発動までいける。)
と、心の中でレッラーは言うのであった。
レッラーは心の中で言っている間にも、礼奈の槍の突き攻撃をすぐに避けるのである。後ろへと下がることによって―…。
礼奈はただ、槍による単調な攻撃を繰り返していたわけではない。まだ、礼奈は槍の使い方には慣れていない。槍が重く、うまく長時間持って、動かすことができないし、少しは速く動かせるようになっても、槍の重さのために、すぐにスピードが遅くなってしまうのだ。それは、礼奈がまだ、子どもで、体の成長期に該当し始めようとしているからだ。それでも、槍の攻撃は単調に見せかけることはできる。礼奈は狙っているのだ。
今度も同様に、
(全力のスピードで!!!)
と、心の中で礼奈が呟く。
そして、礼奈は再度、同様に槍の攻撃をおこなうのであった。さっきの突きの攻撃のスピードより少し速くして―…。
「!!」
と、レッラーは驚く。驚かずにはいられなかった。いや、油断すべき相手ではないことを再度認識させたのだ。
「これにあてることを狙っていたのか。目の付け所がいいね、礼奈。」
と、レッラーは言う。
礼奈が狙っていたのは、レッラーが展開しようとしていた光る球状のようなものであった。それに実際に礼奈は、自らの武器である槍を突かせることに成功したのだ。そう、槍で突くということができ、突き抜けるというわけではなく―…。
「本当に油断できないなぁ~。光る球状を展開するのにすぐに気づくのだから。でも―…、後少し遅かった。光る球状は発動させている状態になっているのだからなぁ~。」
と、レッラーはニヤリとしながら言う。そう、礼奈は遅かったのだ。すでに、光る球状のものはすでに十分に発動するためのレッラー自身の力の量をすでに注ぎ込み終えてしまって、発動を開始していたのだ。
レッラーの言葉を聞いた礼奈は、すぐに槍を光る球体のものから離し、レッラーから距離を取るために下がった。
(……………………。)
と、礼奈はレッラーの光る球状のものを観察する。その時、心の中でさえ言葉にしなかった。それほど、集中していたのだ。言葉にする時間をも、光る球状のものの変化を観察するほうに費やすべきだと判断したのだ。
そう、レッラーの持っている光る球状のようなものの形が変化していたのだ。その形はしだいに、レイピアのような形になっていくが、レッラーは光る球状のようなものを持っていない片方の手で、レイピアを抜き、光る球状のようなものに差し込むのであった。そして、光る球状のようなものはレイピアの全てを覆うのであった。金色をしているレイピアが光りを得て、黄金のように眩しい輝きをもつようになっていったのだ。礼奈にとって、レッラーを見ることができないほどの眩しさだと思わせたのだ。
(眩しい。)
と、礼奈は心の中で言うのであった。
「この光輝く球体は、俺の金色に輝くレイピアに覆われ、誰でも俺に視線を向けられないほどの輝きとなるのだ。さあ~、いくぜ。これが俺の実力だ。」
と、レッラーは、得意げに自らが今おこなった自身の武器であるレイピアを光る球体のようなものによって覆うことについて言う。
さらに、レッラーは、攻撃を仕掛けるのである。今、自らがいる場所から一歩も動かずに―…。
レッラーの武器であるレイピアを覆った光る球体のようなものは、四角いリング全体を光で覆うのであった。四角いリングの上で戦っている礼奈を飲み込むように―…。
「やばい!!」
と、礼奈は危機感を滲ませる。そう、レッラーの今の攻撃を受けてしまえば、礼奈自身もダメージを受けてしまうのではないかという直感を抱いたのだ。ゆえに、礼奈は攻撃が避けられない以上、自らの身を守ることに専念するのである。
礼奈は、自身の周囲に、氷を六つ展開し、形成する。形は、針のようなかたちをしたものである。
「いけぇ―――。」
と、礼奈が言うと、六つの氷はいっせいにレッラーに向かって放たれるのである。レッラーを貫かんがために―…。
その攻撃を見たレッラーは、動じることはなかった。
「無駄だ。そんな氷ではなぁ~。それに―…、逃げられやしない。俺の光からは―…。」
と、レッラーは言う。
そして、その間も、ずっと、光は拡大していっていった。四角いリングをひたすら包み、飲み込んでいたのだ。
礼奈の放った六つの氷は、レッラーの拡大させている光に触れるすぐに消えていったのだ。
その様子を見た礼奈は、
(やっぱり、この程度の攻撃ではダメか。予想は付いていた。だから―…。)
と、心の中で六つの氷の攻撃が最初から意味のないことではあることを理解していたことを言う。それでもなぜそのような攻撃を礼奈はおこなったのか。それは、確かめるためだ。本当にダメなのか、と。実際に、目の前で六つの氷は、光に触れて消えていったのだから、自らの予想は正しかったということを証明した。ゆえに、礼奈は次の手に出る。準備もしていた。六つの氷を放った時から―…、このことを見通して―…。
そして、礼奈の目の前から大きな分厚い氷が数メートルの長さと数メートルの高さで展開されていくのであった。実際は、三メートルぐらいの高さがあり、長さは五メートルほどあり、厚さは一メートルを超えるものだった。
「なんだあの氷は―…。さっきの攻撃はこの時までの準備を悟らせないためなのか。まあ、それでも飲み込みますよ。」
と、レッラーは動揺すらしなかった。するわけがない。今、レッラーは、自身の中でもそれなりに自信もあり、威力のある攻撃をしているのだ。それを破られたとしても、より強い攻撃で応戦することができるのだから―…。すでに、光る球体のようなものがレイピアを覆っているという時点で―…。
そして、レッラーが放ったレイピアからの光は、四角いリングのすべてを覆ったのである。
観客全員、および瑠璃チームのメンバーは眩しさのために、まともに四角いリングを見ることができなかったのである。
数分の時間が経過した。
光は徐々におさまっていく。
四角いリングの全容がどうなっているのかがわかるのようになっていった。
そこには、レッラーが立っていった。
(やったか。)
と、レッラーが心の中で言う。レッラーは、この自らの光の攻撃で、礼奈を倒せたのか気になっていた。威力に関しては、十分なものだ。それでも、実際に、この目で確認しないとわからない。戦いは、決着が付くまで何が起こるのか分からないのだから―…。
そして、完全に光がおさまると、
(まだか―…。)
と、レッラーは悔しそうに心の中で言う。
そう、礼奈は生きていたのだ。大きな分厚い氷の壁をすべて消費して自身を攻撃から守ったのであった。
【第61話 Fin】
次回、光で覆われたので、凍らせます。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。