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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第61話-1 氷VS光

前回までのあらすじは、クローナが、ミーグールの針先のような形をして展開した鉄を真っ二つに切ることに成功し、風でミーグールを四角いリングの外へと飛ばして勝利するのであった。

第61話は分割することになりました。いろいろと内容を追加してしまったことが原因です。当初の予定よりも長くなっているような気がします。

 【第61話 氷VS光】


 ここは、リースの競技場。

 そこにある観客席は、観客の声でわいている。

 それは、今のおこなわれた試合に勝者がでたからだ。

 そう、第七回戦第四試合の勝者がクローナに決まったからだ。

 そして、ファーランスは、

 「さらに―…、第七回戦の勝利チーム―…、瑠璃チーム!!!」

と、第七回戦に勝利したチーム名を宣言するのであった。第七回戦は六対六であり、すでに四試合がおこなわれ、その四試合とも瑠璃チームのメンバーが勝利したからである。勝利したのは、セルティー、アンバイド、李章、クローナの四人だ。

 観客による歓声の中、クローナは、四角いリングを下りていく。この時、クローナの意識に関してはある程度はっきりしていたが、あくまでも、自らのチームへと戻ることに集中するぐらいであった。

 ミーグールによる攻撃のために、血はまだ流れていたが、少しだけ、最初のよりは流れるのは弱くなっていた。それでも、血の流した量から考えると、早く治療しないと命にかかわることに違いない。本能的にそのことがわかっているのか、クローナは、一心不乱に戻っていく。足はまだフラっとした感じはなかったが、それでも少したどたどしいものを感じさせた。

 試合の終了後、クローナが瑠璃チーム側に向けて顔と腹部を向けて、歩いている時に、礼奈は気づいた。いや、すでに気づいてはいたが、それほど酷いものとは思っていなかった。しかし、実際の状態を見てすぐに自らの勝手な憶測よりも酷いものであると認識した。そう認識せざるをえなかった。だから、クローナは認識したらすぐに、クローナの元へ走るのであった。

 礼奈は、クローナが四角いリングから下りて、ほんの数歩歩いた時に、礼奈の手で触れる位置にまで達する。

 その時、クローナの表情は、笑顔であった。怪我しているように感じさせない、さらに、血を流している今にも意識を失い、命に関わるかもしれないということを感じさせないものだった。

 一方で、礼奈の表情は、焦りを心配を感じさせるものであった。自らの予測よりもクローナの怪我が酷く、腹部の部分から血が流れていたのだ。礼奈は、ミーグールの攻撃の中の鉄が曲がった時のものによって怪我を受けたのではないかということを理解していた。そこから、考えるとすぐに治療しないと命にかかわるために、一秒でも時間を多く欲しかったのだ。

 「クローナは、今すぐ治すから。」

と、礼奈ははっきりとした声で言う。その声には、クローナに有無を言わせないようなものが含まれていた。

 「はい、怪我をしてごめん。」

と、クローナは、驚きながら言うのであった。

 (礼奈、ごめんなさい。そして、礼奈の表情~…、あの時のあれだよ~。)

と、心の中で言う。半分怯えというものを抱きながら―…。そして、第六回戦第一試合でファーキルラードによって受けた傷を痒くて手で掻いてしまい、翌日に傷跡を酷くした時に見たの礼奈の表情と威圧であるということを思い出すのであった。

 礼奈は、すぐに、

 「青の水晶(すいしょう)。」

と、言って、青の水晶の能力を使うのであった。そう、青の水晶の能力である回復を―…。

 礼奈は、自らの両手をクローナの腹部に近くにあてる。回復するべき場所へと―…。

 青の水晶の回復の能力によって、クローナの腹部の部分にある傷口はしだいに塞ぎ始めていく。

 そんななかで、クローナは申し訳なさそうになる。それは、礼奈が次の第七回戦第五試合に出場するからである。青の水晶の能力を使って、かえって礼奈の集中力と戦う気力を奪ってしまっているのではないかと思ったのだ。ゆえに、

 「礼奈―…、ごめんね。大事な試合の時に、私なんかのために―…。迷惑かけて―…。」

と、申し訳なさそうに、落ち込みながら言う。

 そのクローナの言葉を聞いた礼奈は、

 「怪我をするのはしょうがないことだと思ってる。真面目に戦っての怪我なのだから、申し訳なさそうにされても困る。あの時みたいに、私の治療の後に傷痕を悪化させるようなことをしなければ怒らないよ。」

と、第六回戦第一試合の時の怪我の傷痕を痒くて掻いて、翌日に傷痕が悪化していたことの出来事を付け加えて言うのであった。治療後に、痒いことを言わず、掻いた余計な手間をかけさせたことを根に持っているとあえてクローナに思わせるように―…。

 (これだけ、言っておけば、クローナも、痒くて変に傷痕を掻かずに、私に言ってくれるだろうし、医務室にいるお医者さんに相談すると思うし。)

と、心の中で礼奈は言うのであった。これ以上、傷痕を悪化させるような行為を自らしないようにするために―…。第七回戦第四試合もこれに該当するかもしれないが、それは、クローナの状態を見破れなかった礼奈自身にも非があったので、ノーカウントにしたし、クローナが一生懸命真面目に戦っていたので、それを攻めるのはよくないとも礼奈は思ったからである。

 「はい、以後は気をつけます。」

と、クローナは言う。その時、言葉がガクガクのようになったのは、申し訳ない気持ちがあって、さらに、気を落とすことができなかったからだ。

 こうして、礼奈によるクローナの応急的な治療よりも本格的な治療がおこなわれた。時間にして、十分程度の時間であった。


 一方、第七回戦第四試合が終了してすぐのことであった。

 観客席にいて、ランシュの企画したゲームの審判をいたファーランスは、

 (あそこだけ、微妙に四角いリング(フィールド)が傷ついていますね。四角いリング(フィールド)が完全に修復されるのに、二十分ほどの時間がかかるみたいだな。)

と、心の中で言うのであった。そう、ファーランスが心の中で言った通り、四角いリングは一部だけ傷ついていたのである。これは、ミーグールの最初の攻撃によるものであった。そして、ミーグールの鉄の展開のために、一部四角いリングは細かい傷があちこちにあり、完全に修復する時間を延ばすものとなったのだ。そのため、礼奈はクローナの治療をおこなうのに十分な時間を確保することもできたのであった。

 「短い時間ですが、次の試合まで、休息の時間とする。」

と、ファーランスは言う。


 観客席の中にある貴賓席。

 そこには、ランシュらなどの瑠璃チームの敵側の人間がいた。

 瑠璃に似ている少女以外の全員は驚いていた。

 「おいおい、あの本当に風で鉄を切ったのか。ありえねぇ~。一体、どんなトリックを使ったんだ。」

 「私にもわからないよ。何なのあれは―…!!!」

 「俺にもわからねぇ~。どういうことだ。」

 「私にもランシュ様と同様に、わかりません。クローナ(あの少女)は一体何者!!!」

と、ニード、イルターシャ、ランシュ、ヒルバスの順に言う。

 彼ら四人とも、クローナが鉄を切ったあの風の攻撃を理解できなかったのだ。白の水晶で展開した円盤状のものの色が透明であったがために、四角いリングから距離のある貴賓席ではそれをはっきりと見ることができなかったのだ。

 ゆえに、ランシュ、ヒルバス、イルターシャ、ニードには、どう考えても理解できなかったのである。

 その中で唯一、正解に近い解答を理解することができたのは、瑠璃に似ている少女であった。

 (たぶん、あれは、水晶によるもの。だけど―…、ローが瑠璃チーム(あいつら)の何人かに渡したのは、クローナ(あの子)以外は予想がつく。今、試合にクローナ(勝利した子)を治療している礼奈()は、青の水晶。明らかに回復と考えられるのはそれしかない。後は、瑠璃(私の復讐対象)は、聞いた話の中で、瞬間移動のようなもの、明らかに走ったりしたような様子がないことから赤の可能が高い。放った雷が瞬間移動のようなものをしていたから事実だ。他に魔術師ローが持っていたのは、危機察知の緑の水晶と、それとも、紫の水晶? いやあれはそんな能力はないし、黄色の水晶は完全にありえない。そうなると、黒の水晶? 白の水晶? でも、この二つはそんなものじゃないし。う~ん、そうなってくると、魔術師ローは、新たに水晶を作ったっていうの?)

と。

 実は、この中のうちの白の水晶が正解なのであるが、瑠璃に似ている少女は白の水晶の能力を知っているがゆえにありえないと考えていた。瑠璃に似ている少女は、魔術師ローが水晶を使っていたのを実際に、この目で見ている。その時、白の水晶は防御の能力有しており、ローはテント状に防御壁を展開していたのだ。それ以外の使い方をしていなかった。ゆえに、クローナのような使い方は頭の中に浮かばなかったのだろう。さらに、透明であったのがよりそれに拍車をかけたのかもしれない。

 これ以上、いくら考えようとも、瑠璃に似ている少女には、完璧な解答など出すことはできない。

 そして、ランシュ、ヒルバス、イルターシャ、ニードも同様の結果でしかなかった。

 ゆえに、瑠璃に似ている少女を加え、五人ともが、頭の片隅にそのことを追いやるのであった。


 第七回戦第四試合終了の直前のことであった。

 レラグは駆けていた。それは、ミーグールがクローナの攻撃によって飛ばされたのだ。四角いリングの外へ―…。

 (くっ!! これで、俺たちのチームの負けが決定か…。それでも良くやってくれた。後は、俺とレッラーが勝って、後の回戦に負けたお前たちの意志を繋ぐ。だから、今、ミーグールを助ける!!)

と、レラグは心の中で言いながら、ミーグールが衝突する場所と思われる中央の舞台と観客席を隔てる壁へと向かって行った。

 そして、ミーグールが中央の舞台と観客席を隔てる壁に衝突する。ドオーンと音をたてながら―…。はっきりと言葉にして表すことなどのできないぐらいに―…。

 ミーグールが壁に衝突した時の音は、その近辺にいた観客をビックリさせ、その近くから離れる者をだすほどであった、

 ミーグールが地面へと落下していく。

 その間に、レラグは、ミーグールが落下するかもしれない真下へと辿り着くことに成功する。

 そして、ミーグールをキャッチすることに成功する。手に抱きかかえるようなかたちで―…。

 レラグはミーグールをキャッチした後、ミーグールの様子を見る。

 (ミーグール!! 気絶している。さっきのクローナ(少女)の攻撃でか―…。それでも、良くやってくれた。お前の分の意志も、俺とレッラーが達成してやるからな。)

と、レラグは心の中で言うのであった。

 レラグは、ミーグールを抱え、自らの率いるチームのいる場所へと戻っていくのであった。


 瑠璃チームのいる場所。

 そこでは、礼奈がクローナの治療を終えたところであった。

 「これで、簡単な応急的な治療は終わり。後は、傷痕が痒くても、手で掻かないこと。傷口が広がってしまうからやめなさい。」

と、礼奈はクローナに向かって、注意もしくは警告するように言う。これ以上、礼奈自らの手を(わずら)わせることのないように―…。後に自分と、瑠璃にもし何かあったときに青の水晶の能力を使えるようにしておかないといけないのだから―…。

 「はい、何度も言われたような気がしますが、以後、あのようなことをしないようにしたいと思います。」

と、クローナは言う。礼奈の表情は、第六回第一試合の時に受けた傷を掻いてしまい、翌日に礼奈にバレた時の礼奈の恐ろしい表情と同じものであった。それをクローナが思い出してしまい、確実に馬鹿なことができないと思ったのである。そうしてしまうと、クローナに何をされるかわからなかったからだ。そう

クローナは、礼奈の今の表情に恐怖を感じてしまっていたのだ。

 そして、礼奈は、クローナの腹部に近づけていた両手を離し、青の水晶の能力の発動を止めるのであった。

 クローナの治療が終わるのを見計らって、瑠璃がクローナの元へと駆け寄って来た。

 何か駆け寄って来るのがわかったのか、クローナはそっちの方へと体を向ける。その向けた視線の先には、瑠璃はいたのだ。

 「瑠璃―……。」

と、クローナは言うのであった。

 そして、瑠璃はクローナに近づき、ほんの一メートル強の間で、瑠璃は駆け寄るのやめ、クローナの見つめる。クローナも瑠璃を見つめるのであった。

 こうして、数秒の時が流れた。瑠璃とクローナの二人にとっては、何時間にも体感的に感じられるものであった。

 (あれ、瑠璃にどうしたの。駆け寄って来たのに、近くにきて止まって、見つめてきて―…?)

と、クローナは瑠璃の行動に対して心の中で疑問に感じるのであった。

 この瑠璃とクローナにおける静寂を打ち破ったのは、瑠璃の方だった。

 「えっ。」

と、クローナは驚く。驚かずにはいられなかったのだ。

 急に、瑠璃がクローナに抱きついてきたのだ。それも、クローナが怪我している思われる腹部に触れないようにしながらである。

 「クローナ、怪我の方の痛みとかない。」

と、瑠璃は心配そうに言う。

 「いや、礼奈が治療してくれたからないよ、瑠璃。」

と、クローナは、ミーグールの攻撃による怪我による痛みが今はもうないことを瑠璃に言う。実際に、礼奈の青の水晶による治療によって痛みはほとんどなくなっていたのだ。無理をしなければ大丈夫なぐらいに―…。

 そして、瑠璃はクローナにしばらくの間、抱き着くのであった。クローナは優しく、瑠璃の髪を撫でながら、

 「よしよ~し。私は大丈夫だからねぇ~、瑠璃~。」

と、言いながら―…。


第61話-2 氷VS光 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。

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