第59話-2 第七回戦第四試合
前回までのあらすじは、第七回戦第四試合が始まった。クローナVSミーグールの戦いであった。
今回で第59話は、完成します。
試合開始されてすぐ、ミーグールは走る。
自らの対戦相手であるクローナに向かって。
ミーグールは自らの武器である薙刀を両手で持っており、
「さあ~、狩りの時間だぜぇ~!!」
と、叫びながら言う。叫ぶとクローナが簡単に避けてしまうのではないかと考えられなくないが、ミーグールはこの自らの不利をも楽しんでいたのだ。
ミーグールが動いて、クローナに向かっているのを見たクローナは、
(こういう相手は、どこかに隙があるはずだから、それを探していけば―…いい!!)
と、心の中で呟き、自らが今すべきことを確認する。
ミーグールは、数秒でクローナに自らの武器があてられる範囲まで近づく。
右足で踏み込み、薙刀を使っての攻撃に移る。この時、斬るという動作ではなく、突くという動作での攻撃である。薙刀は、両手から右手でのみで持つようにしていた。
そして、
「いっくぜぇ――――――――――――――――――――――――――――――。」
と、叫び声を上げて、クローナに向かって突く攻撃をするのであった。
しかし、その突きの攻撃は、クローナには当たらなかった。クローナは避けていたのだ。ミーグールの方を向きながら後ろに数歩足を進め、ミーグールの突きの攻撃のあたる範囲の外へと逃げていたのだ。
クローナが避けるのを見たミーグールは、
(!!! これぐらいは避けるか。俺の攻撃スピードは平均よりも少し速いぐらい。レラグの情報によると、クローナの天成獣の属性は風だからなぁ~。動きも速いわけだ。もうちょっと様子見をするとするか!!)
と、心の中で呟く。ミーグールは、事前にレラグから瑠璃チームの情報を得ており、セルティーと礼奈以外の天成獣の属性は把握していた。ゆえに、第七回戦がおこなわれる日までに、ある程度対策をたてることができたのだ。
ミーグールは数歩を進む。次の攻撃をするために―…。
そして、ミーグールは、クローナに自らの攻撃をあてることができる範囲内に入った。
ミーグールは薙刀を振り上げる。
クローナも、ミーグールの移動と薙刀を振り上げているのに気づく。
(!!)
と、クローナは心の中で驚きながらも、心は冷静そのものであった。ミーグールの隙を見つけ出すために―…。
振り上げた薙刀をミーグールは、
「喰らえええええええええええええええええええええええええええええ。」
と、言いながら、地面に向かって垂直になる感じで振り下ろすのであった。
(くる!!)
と、クローナは心の中で言うと、後ろに向かって、下がる。この時、視線と体の向きはミーグールの方を向いていた。
振り下ろされる薙刀は、クローナが後ろへと回避したので、クローナに直撃することも間接にあたることもなかった。
その代わりに、四角いリングの表面にあたり、薙刀の先が四角いリングの表面に突き刺さっていた。そこから、周囲数十センチメートルほどの範囲で、四角いリングの表面がいくつにも砕けたのである。バッ…ンと、音をさせながら―…。
その様子を見たクローナは、
(あの薙刀の先に触れるのもあたるのも危険ってこと!! ミーグールの天成獣の属性は生!?)
と、今のミーグールの攻撃から、ミーグールの天成獣の属性は生ではないかと予測した。さらに、ミーグールの攻撃にクローナの体が触れること、あたること双方が自らの第七回戦第四試合での敗北につながる可能性があるとして、危険であるとクローナは感じた。そして、ミーグールの攻撃を受けないようにしようとするのであった。
(くっ!! あっさりと避けられたか!!! …まあいい、次、攻撃をあてればいい―…、それに俺の武器は振るったり、突きをするだけが攻撃方法じゃあない。それをだすために、しばらくの間は武器による直接攻撃に徹しようか。)
と、ミーグールは心の中で言う。それは、ミーグールの天成獣の属性と戦い方のレパートリーを相手に対して、薙刀を振るったり、突きしたりように思わせて、相手の油断を誘い、そこで、第三の攻撃方法で倒そうと考えたからである。
ミーグールは、自らの攻撃後、すぐに再度攻撃へ移行する。クローナに向かって―…。
ミーグールは走り、クローナに自らの薙刀があたる範囲に辿り着いた時、今度は左足を前に付け、自らの右横に武器を構える。
「そこだああああああああああああああああああああああああ。」
と、ミーグールは叫びながら、左側へ向かって薙刀を横に振るうのであった。
そのミーグールの攻撃を、クローナは、後ろへと避けた後、今度はミーグールの後ろへと素早く移動する。この時、最終的にミーグールとは約四メートルほど離れていた位置のミーグールの後ろ側へと達するのであった。
クローナのこのような移動に対して、すぐに、ミーグールはクローナと視線を合せるように向きを反対方向へと向ける。
(危なかった!!)
と、クローナは心の中で少しだけ驚く。冷静さを崩すほどではなかった。
クローナは、さっきのミーグールの薙刀の横振り攻撃は、少し意外なことであったので、少しだけ避けるタイミングを遅くしてしまった。それでも、無事に避けることに成功して、後ろへと下がり続けると四角いリングの端に辿り着いてしまうために、ミーグールの後ろへと向かったのである。その時に、ミーグールに攻撃されないため、スピードを速くして―…。あまり、大勢の前では白の水晶を使わないようにするために―…。
(くっ!! 今度も避けられたか…!!! 早えなぁ~、おい。今度も俺が―…、!!!!)
と、ミーグールは心の中でクローナの攻撃に対する避けに感心するが、同時に、今起こっていることに気づく。
クローナが自らの武器に、風を纏い始めていたのだ。二つの持っている大鎌の刃先のような形をした武器に―…。
数秒の時間を消費することで、クローナは、自らの武器に風を纏わせることに成功する。
そして、それと同時に、ミーグールに向かって駆けだした。ミーグールに風の攻撃を与えんがために―…。
それに気づいたミーグールは、すぐに落ち着いて―…、
(そっち攻撃を仕掛けてくるのなら―…、こっちも攻撃だ―――――!!)
と、心の中で闘争心を燃やすかのようにして言い、攻撃へと再度ミーグールは移行するのである。
そして、ミーグールとクローナの両者は、それぞれが攻撃をすれば、相手に攻撃を与えることができる範囲へと到達すると、両者ともに攻撃をする。
クローナは、右手で持っている武器を横に振るという動作で―…。
ミーグールは、薙刀を振り上げて、
「はああああああああああああああああああああああああああ。」
と、言いながらそれを振り下ろすのであった。
ミーグールの「はああ」という叫びのような声を聞いている時、
(うるさいなぁ。)
と、心の中で怒りを露わにしていた。それは、クローナの表情にもでていた。
そして、ミーグールとクローナの攻撃をしようとした武器が、衝突する。まるで、波長を合せたかのように―…。
衝突は、キーンという金属音をならせる。
そして、ミーグールとクローナの攻撃は、双方とも互角であり、均衡していた。
ゆえに、数秒いや、十数秒の両者により、せめぎ合いがあった後、ミーグールとクローナは、双方ともに距離をとる。
結果として、クローナとミーグールはそれぞれにおいて距離をとることができた。
(クローナの攻撃は、やっぱり、事前に知らされたとおりの風であった。力をためるのに時間を消費しやすい。最初に攻撃を避けたのは、風をためるのに時間を要していたから―…。)
と、ミーグールは心の中で分析していた。天成獣の属性が風を扱っている者は、攻撃するための風をためるのに時間を要する。ゆえに、試合開始後の初動攻撃によって相手の攻撃を受けてしまえば、簡単に倒されてしまう。それでも、スピードがかなりあるために、避けることができる。
そして、クローナが、ミーグールの最初の攻撃、次の攻撃、そのまた次の攻撃を避けていたことから、その三つの攻撃をした合計の時間が、風をためるのかかる時間であるとミーグールは推測した。ある意味では、正確性のあるものであった。
(第三の攻撃はまだだな。)
と、ミーグールは心の中で呟く。
一方、クローナは、
(ミーグールの攻撃―…、天成獣の属性が生の人とは違うような気がする。明らかに完全にパワー押しのようであるが、経験からみると、物凄くパワーを強化して攻撃してくるはずだ。それがないとなると、別の属性も考えないといけない。)
と、クローナはミーグールの天成獣の属性について、自らの最初の推測と違うのではないかと思っていた。それは、ミーグールが攻撃ごとに攻撃の威力を増大させずに、同様のレベルでの攻撃をしていたからだ。大抵の者およびクローナが経験したうえでは、最初の攻撃から最大限でくる相手はほとんどいない。そんな人間は、馬鹿のように戦う人間か、最初の一撃で倒すことを戦略としている者だけであろう。さらに、二撃目、三撃目においても同じ威力と感じられる攻撃であった。ゆえに、ミーグールは単純に戦っているようで、相手の隙さえあれば攻撃方法を変更し、その攻撃方法が、自らの武器に宿っている天成獣の属性を相手に理解させてしまうものであるとクローナは、推測したのだ。これは、正解かもしれないであろう。答えは戦いが進んでいけばわかってくるのだから―…。
(さらに、もう数回ほど攻撃を加えるか。すでに仕込みは完了させている。念のために―…。)
と、ミーグールは心の中で呟く。そう、ミーグールは、試合を開始した時から、少しずつではあるが、準備をしていた。第三の攻撃方法をしなければならない時に備えて―…。
ミーグールは、動き始める。いや、走っているのだ。クローナに向かって―…。
そして、クローナに自らの攻撃を武器によってあてることができる範囲まで到達すると、素早く薙刀を振り上げ、一歩、足を前にだして、薙刀を振り下ろして攻撃する。
それが、わかっていたので、クローナはすぐに後ろへと避ける。この時も、視線は、ミーグールにいる方を向いて―…。
(また避けたのか、……なら。)
と、心の中でミーグールは言う。今度の攻撃もクローナは平然とした感じで避けていたのだ。
そして、再度、クローナのもとへ向かって行く。自らの攻撃を決めるために―…。
攻撃できる範囲に辿り着く前に、薙刀を上に振り上げ、クローナに攻撃できる範囲に辿り着くと、すぐに上に上げた薙刀を振り下ろしたのである。
(!!)
と、クローナは少しだけ驚く。ただし、冷静さを欠くのようなものではなかった。ゆえに、対処もしっかりとすることができる。
クローナは、右手に持っている武器を、自らを守るために、攻撃してきている薙刀の攻撃を防げる位置へと横に振るうのであった。そのクローナの武器には、風を纏っていた。
クローナの片手に持っている武器と、ミーグールの持っている武器がぶつかった。
キーン、と、金属音をならせながら―…。
その後の状況としては、両者ともに均衡するという結果となっていた。
(くっ!! うまく防いでくるのか…。そろそろ第三の攻撃方法に戦い方を移していくべきか!!?)
と、ミーグールは心の中で呟く。思っている以上にクローナに苦戦しているので、ミーグールは状況を打開するために、第三の攻撃方法を試みようと考え始める。
(こっちも風の威力を最大にはしていないが―…、それでも互角なんて―…。強い。それに、ミーグールはまだ、自らの天成獣の属性を明かしていないし、使っていない。)
と、クローナは心の中で思う。
クローナが心の中で思っている間に、今度は、
(距離をとるか。)
と、ミーグールは考え、クローナとの距離をとるのであった。
理由は、
(こっちが攻めてもクローナは、避けるか、攻撃を自らの武器で防御するかのどちらかだ。これ以上攻めすぎても意味がない。むしろ、攻撃してきた時に仕掛けていくのがいいな。)
と、ミーグールが心の中で考えたからだ。クローナが攻撃する前に、ミーグールが攻撃していたので、クローナに攻撃する時間はなかった。これを言うと、間違いかもしれない。クローナにも攻撃、いや、反撃するチャンスはあった。それでも、クローナは、ミーグールに攻撃を仕掛けていない。そう、クローナは、ミーグールの持っている武器に宿っている天成獣の属性が何かがわかっていないのだ。
なぜ、天成獣の属性がわかっていない状態でも、クローナは攻撃をしないのか。それは、クローナが攻撃に転じた時、ミーグールが自らの武器に宿っている天成獣の属性を用いた罠を仕掛けているかもしれないと思ったからだ。そう考えたクローナは、慎重をきし、必要以上に攻撃をしないようにした。ただし、攻撃が確実に必要な場面では、クローナもミーグールに対して攻撃することにしていた。これまでは、攻撃するべき時ではないとクローナ自身も思っていた。
しかし、クローナが感じるほどの攻撃のチャンスが訪れたのである。クローナは気づいた。
(あれ、薙刀の刃先がなくなっている。)
と、クローナは心の中で驚きながら呟く。これは、ミーグールに聞えなかったが、小さな声になっていた。
(これは、好機!!)
と、クローナは続けて心の中で言い、今度は小さな声にもなっていなかった。
そして、クローナは攻撃へと転じるのであった。あれほど、攻撃に対して慎重であったのに―…。
クローナは、ミーグールへと向かって行く。走りながら―…、ミーグールに攻撃を加え、勝利を得るために―…。
クローナは、警戒していたことを忘れたわけではないが、対戦相手であるミーグールが自らの武器の薙刀の刃先がなくなっているのだから、これ以上のチャンスというな好機はないだろうと考えた。そのために、リスクを承知で攻撃へと移行したのだ。
ミーグールは弱くはない。第七回戦の今までの試合で出場したレラグ率いるチームのメンバーの中でナンバー3からナンバー2ぐらいに強い実力をもっている。ゆえに、薙刀のような刃先を失くしたり、紛失したりすることはほとんどない。
そう、考えられるのは、ミーグール自身が考えて、実行しようとしていた第三の攻撃方法であった。つまり、ミーグールは第三の攻撃方法に必要なことを薙刀の刃先であったものを使ってしようとしたのだ。
もう、ここまでくれば、ミーグールの武器に宿っている天成獣の属性については、答えがわかったものであろう。
クローナも、ミーグールに走りながら近づく途中で、ある可能性に気づいていた。
(!! ミーグールのような実力者が薙刀の刃先を消すわけがない。ある程度は警戒しようとしていたが、そういうことか。ミーグールの天成獣の属性は―…。)
と、クローナは心の中で言う。
クローナは、心の中で言ったのと同時に、走るのを止めて、すぐに後ろへと後退した。いや、しなければ確実に突き刺されてしまっていたのだ。クローナの自らの体を―…。
クローナが走るのを止めた所に灰色をした針のようなものが四角いリングの表面から突き上がったのである。それも何本も、である。灰色をした針のようなものは、円状になっており、四角いリングの表面と接する所では直径一メートル前後で、四角いリングの表面から遠くになるにしたがって針の先のように尖っているために、直径が四角いリングの表面のものよりも小さくなっていき、最後には直径がゼロになっているのだ。そう、相手を突き刺せるような形をして―…。
(ぐっ!! 一歩、勘に従うのが遅れていたら、殺されて、あの世行きだった。)
と、クローナは心の中で危なかったと思うのであった。
クローナがさっきのミーグールの攻撃を避けるのを見て、ミーグールは、
(この攻撃も避けたか。これで、俺の第三の攻撃方法で、俺の持っている武器に宿っている天成獣の属性が鉄であることに気づかれたか。まあ~、それでも構わない。結局、倒すことさえできればいいのだから―…。)
と、ミーグールは心の中で思うのであった。たとえ、相手に自らの持っている武器の天成獣の属性に気づかれたとしても、自らが試合に勝利すれば、結果として良いのだから―…。
中央の舞台。
瑠璃チームのいる場所。
アンバイドが前に出てくる。
「風と鉄の戦いかぁ~。こりゃぁー…、クローナにとってはかなり不利だな、属性的に―…。」
と、アンバイドは冷静に言う。すでに、さっきまでの悩みを終わらせてものであった。もう悩んでいても意味がないという結論に至ったからだ。
「ですね。天成獣の属性が鉄の場合、物理的な攻撃に対する防御力は土よりも強い。それに、火のように溶かされること、光や闇の攻撃による消滅以外はそれなり強いからなぁ~。特に、風との相性は良すぎるくらいです。」
と、セルティーが付け加えるように言う。セルティーもミーグールの天成獣の属性が鉄とわかった時点で、クローナにとって完全に勝利することが難しいぐらいの状況になっていることを理解した。
そう、天成獣の属性が鉄である者は、風である者に対して圧倒的に優位なのである。
そして、アンバイドとセルティーの話しを聞いた瑠璃、李章、礼奈は、ただ静かにクローナの試合を見守るのであった。たとえ、不利であったとしてもクローナが勝つことを瑠璃と礼奈は信じていた。一方で、李章は、クローナの不利に対して、今のところはまだ静観するのみであり、緑の水晶の能力を使うことをしなかった。
【第59話 Fin】
次回、鉄を切る風?
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。