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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第58話-3 生速瞬撃

前回までのあらすじは、李章の右足の蹴り攻撃がアグレーによって防がれ、その後アグレーは李章に向かって攻撃してくるのであった。どうする李章!!?

今回で、第58話が完成します。予想以上に長くなってしまいました。

 「はあああああああああああああ。」

と、アグレーは叫ぶ。

 李章へ向かっていながら、李章に自らの攻撃をあてるために―…。

 そして、李章の近く一メートル前後に辿り着くと、アグレーは、自らの武器を装着している右手を今度も四角いリングの表面に向かってパンチする。

 そのパンチは、四角いリングの表面に向かい垂直に接するかのように李章からも見えた。実際に、アグレーがそのようにパンチをしているからだ。

 (また、さっきのような攻撃ですか!! 距離を取るべきです!!!)

と、李章が心の中でアグレーから距離を取ろうと判断した。理由は、アグレーの最初の攻撃で、アグレーが前を向いた時に見える方向に向かって四角いリングの表面が割れて、真っすぐと半円状に裂け目が拡大していくことを実際に見ていたからだ。

 アグレーの今の攻撃も、最初の攻撃と同様のものではなかった。四角いリングの表面が亀裂が入り、裂け目ができるという面は同じであった。

 今度のアグレーの攻撃は、裂け目がそこまで拡大しなかったのだ。アグレーの李章のいる向きの周囲を半円状に半径一メートル強ほどの距離までに裂け目が形成された。

 その様子に李章は、

 (? 前の攻撃よりも裂け目の長さがない…? どういうことですか。)

と、李章は心の中で疑問に感じる。そう、アグレーの最初の攻撃のように、裂け目が拡大していく距離が長くなく、短ったことに対して、違和感を感じたのだ。

 (何かあるのですか。)

と、李章は心の中で警戒しながら―…。李章の表情にそのアグレーに対する警戒感を出して―…。

 一方で、アグレーは、

 (チッ!! 範囲を短くして威力をあげる攻撃をしてもダメか!!! ここは、もう俺の最大限の攻撃でいくしかないか。)

と、心の中で自らの攻撃が李章にあたらなかったこと、そして、李章の回避能力を予想以上であることを理解し、最大限の攻撃が必要であると判断した。

 アグレーは、すぐにパンチした右手を元の高さへと戻しながら、自身の体を普段の姿勢にしていった。

 その間、李章はアグレーのパンチ攻撃によって亀裂が入って、裂けていない場所へと自らの足を着地させるのであった。

 (危なかった。アグレー(相手)の方は罠を仕掛けていないのでしょうか?)

と、李章は心の中で思うのであった。そう、アグレーが、裂け目を利用して追い打ちをかけるような攻撃をしてくるのではないかと思っていたからだ。第二回戦の時にセルティーと戦った相手であるファグラがしたように―…。李章は推測していた。アグレーの扱っている天成獣の属性が土であることを―…。

 この推測は正しいが、全員がファグラのように、土を造形して、攻撃を仕掛けてくるわけではない。そう、土の属性をもつすべての天成獣が土を成形して、攻めてくることを得意としているわけでもないし、それができるわけでもない。

 ファグラの天成獣の属性として土の力は、成形できるということでやや強くなりやすいが、アグレーはそれをも凌駕するパワーを天成獣が本来秘めているし、成形をなすこともできないわけではない。しかし、アグレーは、成形をなすことなしに、自らの天成獣の属性とパワーをうまく引き出して使うことができるために、成形なすということを必要としていないのだ。そして、アグレーは、成形することが得意ではないのだ。

 つまり、アグレーは、パワーで地面の裂け目をつくり、それを拡大させることで相手の多くを倒すことができるのだ。どんな強い相手で負けて成形をなすことをしたとしても、全然うまくいかないのだ。想像している以上に、アグレーは、物を創るという才能をあまりもっていないのだ。

 結果として、アグレーという人物は、パワーへと、裂け目をつくって拡大していくことに重点をおくということに向かっていったのだ。

 さて、第七回戦第三試合に話を戻す。

 再度、李章とアグレーは、視線で相手のことを見る。それは、相手をどうやって倒し、勝利を得るか探るために―…。いや、李章の方は、倒す方法をすでに決めている。むしろ、その好機到来のために相手の隙を伺っているといったところか。

 アグレーは、思考の中で、自らの最大限の力での一撃の方法を決定する。単純なものでしかないが―…。

 「素早い奴め。これで李章(お前)を倒してやろう。」

と、アグレーは言う。声の大きさとして低く目であり、大きなものではなかった。さらに、表情は怒りではないが、物凄く強い相手だと思わせるものであった。

 そして、アグレーは、

 「こうなったら、さっさと決めてやろう。この俺の最大の一撃で―…!!!」

と、叫ぶように言う。それは、これから繰りだす一撃で李章を倒そうとしているからだ。後先のことを考えずに―…。

 アグレーが叫ぶように言った後、アグレーの右手の装着して武器の手の裏側の中央から指先に向かって、槍先のようなものがくっついているものが伸びた。そう、手の指の先よりも前に―…。シャッキンという小さな音をならせながら―…。

 そして、右手に装着している武器で四角いリングの表面へとパンチするように動く。いや、振り下ろすといったほうがいいのだろう。

 しかし、今度は右手があたるのではない。

 槍先のようなものが四角いリングの表面に突き刺さる。そういった方が表現としてはいいのであろう。

 槍先の部分の半分が四角いリングの中に突き刺さる。そこを起点として、李章の方に向かって、四角いリングの表面にひびが入っていく。そのひびによって拡がっていき形成されていくのは、大きな四角いリングの表面のひびによって分かれた破片であった。

 「はあああああああああああああああああああああああああああ。」

と、アグレーが叫ぶ。その叫びは、まるで動物の咆哮(ほうこう)を思わせるほどに強く、それは、野獣よりも強いかもしれないと観客席にいる感じさせるほどであった。

 李章は感じた。

 (!!!)

と、自らの危機が迫っていることを―…。それは、緑の水晶によって警告信号のように―…。ゆえに、李章は、素早く緑の水晶を用いて安全な方法を探ると同時に相手の隙を狙うべきチャンスであるかどうかを探った。そして、その結果は、

 (これで大丈夫です!!!)

と、李章に自らの勝利を確信させるものであった。

 アグレーが、右手に装着している武器の槍先の部分を突き刺して所から李章に方向へ向かって拡大していったひびは、槍のような先端が少し鋭く、上へ突きあげるようになっていった。

 そう、これがアグレーが狙っていた最大の一撃である。

 そして、この裂け目は李章に向かっていった。そう、裂け目を上へと突き上げることで李章を倒そうとしたのだ。

 その上への突き上げと同時に、四角いリングを造るときに盛った土の部分を巻き込んでしまい、裂け目の付近から土煙が形成されていった。それは、アグレーと李章のいる方向に壁を作るかのように覆ったのだ。つまり、李章とアグレーの双方に目で相手を見ることができなくなってしまったである。

 (……これで…、倒されろよ…。)

と、アグレーは心の中で思う。アグレーは次の攻撃をおこなうことは可能であるが、このような最大の攻撃でもダメになると、次の攻撃方法が存在しなくなるのだ。最大限の攻撃に関しては、アグレー自身いくつかあるにはあるが、それは、今のとそんな変わらないのである。ゆえに、アグレーの今現時点での経験、実力では、打つ手が存在しないのだ。つまり、この攻撃がダメとなると、アグレーはよくて引き分け、敗北の可能性が高くのなるのだ。


 そして、数分の時間を経過した。

 ようやく土煙が晴れていって、李章とアグレーの双方が目で視線を合わせることができるようになっていった。

 (これで、李章(あいつ)は倒されたか。さ~て、どうだ。)

と、アグレーは心の中で思いながら、目の前にあるであろう倒れている李章の姿を確認しようとする。

 土煙は完全に晴れ、視界が完全に確保されて、アグレーは見る。

 (!!!)

と、アグレーは驚く。驚かざるをえない光景が目の前に見えたからだ。

 (いない!!!!)

と、アグレーは心の中で動揺する。

 そう、アグレーの目の前には土煙に覆われる前まではいたであろう李章がいなかったのだ。

 (一体、どうして!! 土煙から何かが動いたような感じなかった。そんな不自然な動きなんて―…。)

と、アグレーは心の中で考える。動揺している表情はすでに、心の中ではなく、顔面に見事にでてしまっていた。それだけ、李章が土煙が晴れた時にいなかったことと、土煙を通り抜けたようなものがなかったからだ。

 そんなことを考える時間をアグレーは作ってしまった。そう、これこそが自らの敗北への危機を招いたのだ。

 そう、すでに、アグレーに蹴りの攻撃をあてられる位置に李章はいたのだ。

 (!!!!!)

と、アグレーは驚かずにはいられなかった。心の中で、(いつの間に)、を言いかけたアグレーは、そんなことを実際に言う時間もなかった。

 すでにその時には、李章の右足の蹴りによる攻撃が猛烈な勢いであたっていたのである。そう、アグレーは李章の蹴りの攻撃を受けてしまったのだ。それは、時間にして、一秒よりもはるかに少ない時間が経過してのことであった。

 「生速瞬撃」

と、李章が言う言葉が、蹴り終わった後に聞こえるほどに―…。

 この李章による右足の蹴りの攻撃は、観客席にいる者の誰をも驚かせることになってしまった。いや、驚かずにはいられないだろう。目で追えず、(まばた)きする時間すらなく、一瞬でアグレーがぶっ飛ばされたのだ。その光景に驚かないほうが無理であろう。

 「何なんだ。あの少年、一体何をやったんだ。」

 「いや、どうやって攻撃をあてたんだよ。瞬間移動でも使うのか。」

 「………。」

と、言葉にする者も、言葉にできなかった者も、同様に李章の今の攻撃、生速瞬撃に対して目をはっきりとさせて見入っていたのだ。驚きは見入られることを発生させたのだ。李章の生速瞬撃という攻撃が―…。

 「ガッ、アッ・・・。」

と、アグレーは声を漏らしながら、李章の生速瞬撃を受けて、アグレーが李章の攻撃を受ける前に向けていた視線とは反対側へと向かってぶっ飛ばされていく。

 その中で、アグレーは、

 (グッ!! なんて(パワー)だ。こんな一撃は―…。)

と、心の中で呟きかけて、意識を飛ばしてしまったのである。それほど、李章のこの一撃がアグレーをそうさせるには十分なほどの威力を有していたのだ。

 そして、アグレーは、四角いリングの外へと飛ばされ、それを理解したレラグが、アグレーが飛ばされるであろう位置へと向かっていくが、それも間に合わず、観客席と中央の舞台を隔てている壁に衝突するのであった。そこには、数十秒の間、煙のようなものたちこめることとなった。

 四角いリングの外へと飛ばされるのを確認したファーランスは、アグレーがその壁に衝突した時に、

 「勝者、松長李章!!!」

と、第七回戦第三試合の勝者を告げるのであった。


 勝者の宣言とともに、観客は、歓声をあげる。

 勝者と勝負に酔いながら―…。

 そして、勝者となった李章は、すぐに四角いリングを下りていった。

 その中で、

 (かなりの攻撃力だった。それに防御力も―…、この程度の実力の相手に苦戦するとは―…、もっと強くならないと―…。)

と、李章は心の中で己の弱さを恥じるのであった。自らの守りたい人を必ず守りきるために―…。


 レラグはいた。

 李章の生速瞬撃を受けて、飛ばされた先にあり、アグレーが衝突した中央の舞台と観客席を隔てる壁に、である。

 (アグレーは、無事か。)

と、レラグはアグレーが中央の舞台と観客席を隔てる壁に衝突した場所の近くで心配する。

 そこには、土煙みたいなものがたちこめていた。

 その土煙みたいなものも晴れてきて、レラグから見えていなかったアグレーの様子がはっきりと見えるようになった。

 「!!」

と、レラグは驚く。

 (気絶だけみたいのようだな。見た感じでは―…。とにかく安全な場所へと運ばないと―…。)

と、レラグはアグレーに元へと近づいていって、レラグを抱えて、レナとマーグレンがいる場所へと戻っていくのであった。

 その時、レラグは、

 (これで、こちらが三連敗か―…、チームとしての勝利のためにはもう負けることはできないっということか。まあ、私たちのチームが負けても構わないとランシュ様が考えられていたとしても、こっちはチームとしての意地がある。それに―…、俺以外の二人は、レナ、マーグレン、アグレーの三人よりもはるかに強い。瑠璃チーム(お前ら)に簡単に勝利など与えやしない。)

と、瑠璃チームに勝利するための意志を固めるのであった。


 【第58話 Fin】


次回、クローナが戦います。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。

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