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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第58話-2 生速瞬撃

前回までのあらすじは、アンバイドが悩み始めました。かなり深刻なものです。

 四角いリングの上。

 第七回戦第三試合に出場する両チームそれぞれ一人が向かい合っていた。

 そう、自らの対戦相手へと視線を向けていた。これから、相手がどのようにしてくるのかを探るために―…。

 ファーランスは、第七回戦第三試合で出場する者たちが揃ったことを目で確認した。

 それを終えるとファーランスは、

 「両者とも試合を開始してもよろしいでしょうか。」

と、四角いリングの上にいる李章とアグレーに尋ねる。

 それを聞いた両者は、

 「試合の準備はできています。いつでも試合を開始しても構いません。」

 「OKだ。さっさ試合を開始してくれ。」

と、李章、アグレーの順でファーランスに向かって、試合を開始しても大丈夫であることを言う。

 それらの言葉を聞いたファーランスは、右手を上にあげ、

 「これより―…、第七回戦第三試合―……、開始!!!」

と、言うと、あげた右手を下に向かっておろす。

 こうして、第七回戦第三試合が始まった。


 李章とアグレーは、試合開始後、ほんの数十秒の間、両者を見る。

 お互いに何を仕掛けようか。そして、どうすれば相手を倒して勝利できるのか。

 そんなことを考えている両者であったが、アグレーの方が止めてしまったのか、すぐに言葉を発する。

 「さ~あ、始まったぜぇ~。李章(お前)を倒してやるよ。」

と。

 アグレーは、自らの右腕とその手の先にかけて武器を装着していた。アグレーの武器は、腕から手の先まで、灰色のものであり、指の形がはっきりとわかるようになっていて、手の裏側の中央から指先に向かって、槍先のようなものがくっついているものであった。

 「倒す!!」

と、アグレーは叫ぶように言うと、装着している自身の武器を四角いリングの地面に殴りつける右腕を下ろす。その様は地面に向かってパンチをするといったほうがわかりやすいであろう。いや、そのままであるといったほうがいい。

 「!!」

と、李章は驚きながら、アグレーの四角いリングの地面へのパンチの様子を見る。李章にとって、アグレーがどのような攻撃をしてくるかわからなかったからだ。それを理解せずに攻めていくのは危険であると己の本能から感じていた。勘が自らの危機を救うこともあることも経験上李章は知っていた。さらに、緑の水晶が無理矢理に李章に向かって、攻めるのは危険であると告げてくる。

 そして、アグレーの武器に覆われている右手が四角いリングの地面に触れて攻撃した時―…、触れている部分のアグレーがいる場所とは反対の半円状に伸びるように地面が割れて、地面の表面が浮かびあがっていくのである。


 【第58話 生速瞬撃】


 辺りは煙のようなもので覆われていた。

 これは、アグレーの攻撃によってなされたのだ。

 それは、さっきの述べた方法の攻撃である。

 そう、アグレーは右手から右腕にかけて装着した武器を用いて、四角いリングの表面へとパンチしたのだ。

 その結果、アグレーから見れば前のほうへと半円状に地面が割れていき、それが李章へと向かっていった。

 そして、地面から浮かび上がってきた砕かれた四角いリングの表面は、しだいに李章へと砕けながら衝撃を伝えていく。そんななかで、四角いリングが砕かれる中で生じた土煙がアグレーと李章のそれぞれを見えないようにした。そう、土煙にて李章とアグレーの前の視界を遮ったのだ。

 それでもアグレーにはわかった。見えたのだから―…。

 (ぐっ、()けられた!!)

と、アグレーは心の中で悔しそうに言う。その表情は、心の中で言ったことを一瞬ではあるが、現れていた。心の中での感情が、強かったゆえに―…。

 そう、アグレーの目の前で李章が避けているのを見ることができたからだ。意識的に見ようとしたのではなく、李章を動きを追っていたがために―…。

 そんな中で、土煙が李章とアグレーの双方を見るという視界を遮ったのだ。ゆえに、双方ともどの位置にいたかは、土煙が覆われる寸前の時までの位置しか把握できていなかった。

 しかし、それを理解してさえいれば十分であった。李章にとっては―…。

 (あのパンチでの攻撃……、四角いリングの表面(フィールド)を抉るほどの力があります。かなりものとして考えていいでしょう。力に関しては―…。しかし、位置ある程度把握しました。それに、水晶もその方法が安全であるとわかりました。)

と、李章は心の中で呟く。アグレーの攻撃力を分析しながら、その凄さにアグレーの実力がかなりのものであると把握する。さらに、同時に力があるとしても、パンチの速度から決して、速く動けるわけではないと現時点で理解もした。後者の速く動ける可能性は緑の水晶を用いて、アグレーが速く動けないことがわかった。さらに、緑の水晶によって、アグレーへと攻撃するベストな位置とそこまでの移動方法を知ることができた。

 ゆえに、アグレーへと攻撃することができるベストな位置へと移動する。土煙を通って―…。

 時間にして、ほんの数秒のことであった。

 その間、アグレーは目の前を自らの身長以上に土煙が覆われる前に李章が判断可能な位置から一歩も移動していなかった。

 移動することができなかったのだ。自らの攻撃でそうなったのであるが、アグレーが移動して攻撃することは難しかった。アグレー自体が素早い移動をなすことができないのだ。ただし、天成獣の能力の宿った武器を用いることができるため、異世界における一般人(天成獣の能力が宿った武器を用いずに)よりも速く動くはできる。それでも、天成獣の能力を宿った武器を扱っている者の平均よりは下回る。それでも、スピードの分を補うものはある。

 そして、李章は土煙を通り抜け、アグレーの近くへと辿り着く。アグレーの左横に―…。ただし、アグレーの最初の攻撃によって抉れていない面に着地して、である。距離としてはすでに一メートルもなかったし、蹴りを入れれば李章は確実にアグレーにそれをあてることができるほどであった。

 李章は右足のみを四角いリングの表面上に接していた。

 そして、李章はすぐに左足を四角いリングの上につける。そこは、アグレーの攻撃で影響を受けていなかった所である。

 李章は、左足が四角いリングの上に接すると、すぐに、右足を横に上げ、それと同時に、アグレーのいる左側へと垂直に向き、その回転による威力を用いて右足でアグレーに攻撃を蹴りの攻撃を与えようとする。

 アグレーは、土煙の何かがこちらへと通り抜けてくるかのように、前へ伸びながらも同時に左右へとそれぞれ線対称に流れていることから、気づくことができた。そう、李章が攻撃しに向かって来ているのではないかというアグレーにとっては、まだ自らにおける推測でしかないものであったが、理解することができた。ゆえに、攻撃がくるということを自覚することができた。

 その後、アグレーは何かの気配を感じた。土煙から何か通り抜けようとしているところから―…。

 そして、李章が右足でアグレーの左横にある四角いリングの上に立って、辿り着いたとき、アグレーは左に垂直に向きを変えた。

 アグレーは向きを変え終えると、すでに、李章は、右足での攻撃を開始する寸前であった。そのため、アグレーは迷うという時間を与えられなかったがゆえに、李章の右足の蹴りがくると思われる部分に素早く両手をクロスさせるのである。李章の右足の蹴りによる攻撃を防ぐために―…。

 その時、アグレーは、

 (くる!!!)

と、心の中で強く言った。それぐらいに、アグレーが思考を心の中の言葉にする時間をも李章の右足の蹴りの攻撃は与えなかったのだ。

 そして、李章の右足の蹴りがアグレーの胸部の高さに、そう、両手クロスした点に当たったのだ。それも、バンという音をならせながら―…。言葉よりも実際にその音を聞いたほうが迫力そのものはより伝わっていたであろうと思えるほどであった。

 李章の右足の蹴りによる攻撃は、アグレーを後ろへと動かせることはできなかった。できるはずもなかった。

 アグレーは、天成獣の能力を破った武器を扱っている者の中で、決して素早い動きができるわけではなかったのだ。しかし、攻撃力や防御力に関しては、同様の一般的な者の平均よりは高いのである。そう、李章の天成獣の能力を用いておこなうそこまで強いとはいえない攻撃を防ぐぐらいの防御力がアグレーにはあるということだ。

 ゆえに、アグレーに対して、ダメージを与えるような、後ろと動かせるような一撃とはならなかったのだ。

 まるで、アグレーに自らの蹴りの攻撃が効いていないように見た目の様子から感じた李章は、

 (……!!)

と、心の中で驚く。動揺する。しかし、表情にだすことはなかった。李章は理解していた。表情にだせば、アグレーに今の自らの感情を確実に悟られ、アグレーをこの試合における優位を築かせてしまうと感じたからだ。

 一方のアグレーは、

 (なかなか―…力を持っているのかよ!!)

と、心の中で李章のさっきの右足の蹴りに対してこう思ったのだ。

 アグレーは、李章の蹴りの強さが、見た目から感じられる印象よりも力強かったのだ。そう、まだ、体格においても大人のほどの強さはなく、子どもと大人の間のものと感じていからだ。その印象は、さっきの右足の蹴りの一撃でその印象は崩されたのである。そして、同時に脅威に感じながらも、

 (これほどの力の強さなら、褒めてやるよ!!)

と、心の中で李章のことを褒めるのであった。それも、アグレーは心の底からそうしているのであった。

 そして、李章が少し後ろへと距離を取った。次の攻撃をどうするかを考えるために―…。

 同時に、アグレーが李章を追って攻撃しようともしなかった。アグレー自身、自らの移動スピードで李章を追うことは不可能と考えていた。それは、アグレーが自らの天成獣の能力を知っているということや、他者の戦いによる経験上のことであった。仮に、無理して李章を追ったとしても、返って李章に反撃を加えられ、アグレー自身が不利な状況へと陥ってしまう。そのことがわかっているからこそアグレーは、何もせずに次の李章の攻撃へと備えるか、むしろ、アグレー自身が攻撃しやすい状況で攻撃を仕掛ける方が自らの勝利の可能性が高く、あえて無理矢理にリスクを冒さないことを選択した。

 (さて、どうしますか。)

と、李章は心の中で、次の攻撃をどうしようかを考え始める。

 (今のような蹴りでは、絶対に勝つことはできません。なら―…、あの技を使ったほうがいいかもしれません。力を温存しながら全力をださずに戦ってしまえば、アグレー(相手)に倒されてしまうだけです。何もすることができなかった、第二回戦(あのとき)のように―…。)

と、李章は、ほんの数秒で次に自らがすべきを決めるのであった。第二回戦第五試合において、敗れた時のようなことを二度としないために―…。

 一方で、アグレーも次にどうやって李章に攻撃すればいいかを考えついていた。それは、李章が次に自らすべきことを頭の中で考え付いた時とほぼ同時であった。

 「ふぅ~。」

と、アグレーは息を吐く。その時に、声が漏れる。

 それと同時に、アグレーは、李章の方へと顔と視線を向ける。李章の目の位置に、自らの目の位置が会うかのように―…。

 「なかなかの力の持ち主とみたいだなぁ~。まあ、俺と比べたらそこまでねぇーんだけどなぁ~。だけど、その―…、李章(お前)のスピードは俺よりも速くて厄介なものだ。だけど、俺には李章(お前)のスピードをも凌駕する(パワー)がある。だから、安心するといい。この俺によって、倒してやるからなぁー―…。二度と戦えなくするぐらいにはなぁ――――――――――――――――――。」

と、アグレーは、冷静にほとんどの部分を言うが、最後のほうで叫ぶように言う。アグレーは思っていたのだ。李章という人物は、自らの予想以上に油断できないということを李章のさっきの右足の蹴りで理解した。さらに、スピードもアグレーよりもある。しかし、アグレーは、自らのパワーが李章の能力、攻撃とスピードをも凌駕することが可能であることを―…。同時に、アグレーが最大の力を発揮することができれば、確実に李章を倒す事は可能であると感じていたのだ。予測していたのだ。誤った推測を―…。

 そして、しばらくの間、四角いリングの上では、声がなかった。それは、李章は返事をしなかっただけなのだ。

 決して、李章がアグレーの声を聞いていたわけではなかった。むしろ、はっきりとさっきのアグレーの言葉を聞いていたのだ。

 それでも、李章の心が揺れることもなく、感情的になることもなかった。そんなはずない。李章は、待っていたのだ。好機が到来するのを―…、自らの勝利をもたらすことのできるものを―…。ゆえに、今の李章にとって、アグレーの言葉よりも、アグレーの隙というもの以外は、ほとんどどうでもいいぐらいであったのだ。

 さすがに、アグレーのさっきの言葉で李章が反応しなかったので、アグレーは、

 「返事がなしか。これは、徹底的に俺が―……。」

と、冷静に言い、その後に、言葉を終えて、ためを数秒程つくって、

 「やってやる!!!!!」

と、叫ぶのであった。その叫びは、もしも、叫びの度数によって相手を傷つけることができるのであれば、その相手に重傷もしくは最悪戦闘不能にでもしそうな感じであった。つまり、それほど、叫びは強く、観客席にいる者の中には、アグレーに対して恐怖と怯えをも抱かせたのである。

 そして、アグレーは李章に向かって移動を開始する。自らの一撃を李章にあてるために―…。


第58話-3 生速瞬撃 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


セリフよりも地の文が増えてしまっているような―…。次回こそは、第58話が完成させていきたいです。

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