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短編集

はじめ人間オギャーっとるず

作者: 西田啓佑

とあるエッセイを読んで、カッっとなって書いてみました

不愉快に思えたらごめんなさい

でも反省はしません

文:西田啓佑


 三千世界のとある場所、仏様ともリンボとも関係の薄い世界に、口下手賢者くちべたけんじゃという人間の男が居ったとさ。


 この男、たいそう屁理屈を捏ねるのは上手いのじゃが、なにぶん面倒くさがりがこうじて、それはもう乱暴者と評判じゃった。

 ある時、好奇心といたずら心の旺盛な坊やが、この男に無謀にもこう尋ねおった。



「ねえ、おじさん。どうちて魚は魚って言うの?」

「ああ?おめぇ。日本語のアンチだな?日本語に不満があるのなら、日本語使うな!肉体言語でかかってこい!」



 男は、そういうが早いか、絶妙な手加減で坊やにサマーソルトキックを食らわせ、問答の締めくくりにこう言い捨てるのじゃった。



「坊やにも、ててじゃとははじゃは居るんだろう?早く、故郷に帰るんだな」



 これが、二人の運命の出会いじゃった。故郷に帰った坊やは、その後研鑽を積み、面壁数年めんぺきすうねん、さらなる屁理屈の飛躍を得て、再び男の前に姿を現しおったのじゃ。



「口下手賢者よ。なぜ動物は殺して良くて、人は殺してはいけないのか」

「あ?」



 その瞬間、口下手賢者が身に纏ったのは、殺意。坊やだった男への明確な殺意だった


「俺を殺したいのなら、最初からそう言えばいいだろう?それとも何か?お前は、殺す相手にいちいち、殺して良いですか?と聞かないと我慢できない性分なのか?その質問の返事になぜなんだろうな?とかわかんねぇとか返したら、アウトじゃねーか!」



「馬鹿な!私は、貴方に殺意など持っていない。私はただ尋ねただけだ」

「だから答えは単純だ。殺害予告に対する返事は先制的防衛だ。動物を食い殺して生きているのなら、人を食い殺して生きるも同じだと言いたいのだろう?なら、メシは他所で食えばいいだけだ。わざわざ、俺にそれを言った以上、それはお前が俺を食うという意味だろう?」



「違う。私は生命の尊さと人間の倫理の欺瞞を……」

「ごちゃごちゃうるせぇ!おめぇ。人間のアンチだな?俺を殺したいんだな?だったら、ヤッてやるよ!さあ、屁理屈なんて捨ててかかってこい」



 口下手賢者はそう言うと、懐からバタフライナイフを取り出し、舌でナメナメしながらつぶやく。


「知性なんていらねぇ」



 その舌使いは、とても官能的で、見るものが見れば口が下手などとは決して言えない技巧じゃった。そして、坊やだった男ににじり寄りながら更につぶやく。


「論理なんていらねぇ」



「おめぇは、ムカついてんだろぅ?この俺に、なによりこの世の中ってヤツによぅ!かかってこいよ!てめぇの質問の皮をかぶった屁理屈なんて聞き飽きたぜ!」



 そして、男が男に飛び掛かる。ついに、一つの考察に究極の解決策が提示されるのじゃった。




 後世、口下手賢者と呼ばれた男を偲ぶ記録は残されていない。

 ただ、路傍にある朽ちた墓碑銘に、誰に気づかれることなくその痕跡を見て取れるのみであった。


 「月の教えに導かれしものたち、此処に眠る」



最後までお読みいただきありがとうございました

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