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【アニメ第6話放送記念】残骸6 生還者たち

 



 ある日、西区の大通りから外れた路地では、二人のゴロツキが言い争いをしていた。


「だから本当なんですって、兄貴ィ!」


 弟分の小柄で細い男が、目の前にある樽や木箱を指して必死に主張する。


「けどどう見たって無いじゃねえか!」


 兄貴分の大柄な男が、怒鳴り声でそれを否定する。


「そうなんっすけど、ほらここに何か動かした形跡があるじゃないっすか。こっから金を持ち出したに――あっ」

「お?」


 そのとき、二人の声を聞いた何者かが路地に入って様子を見に来た。


「……ん?」


 フラムである。

 彼女の姿を見た途端、ゴロツキたちの顔が引きつる。


「何その気まずそうな表情」

「い、いや、なんでもねえよ……」

「金がどうとか言ってたよね。こんな場所で何か悪さでもしようとしてたの?」

「そりゃ早とちりだ! あっしはただ、ここに大金が隠してあったのを見たって話をしてただけでぃ!」

「バカ、こいつに話してんじゃねえよ!」

「いってぇ! すんません、兄貴!」


 兄貴分に殴られる弟分を見て、フラムはため息をつく。


(ここって奴隷商人の拠点のすぐ隣だよね。隠し財産かな……でもさっき、持ち出したって言ってたよね。一体誰が?)


 フラムが腕を組んで考え込んでいると、兄貴分の方が敵意を感じない口調で話しかけてくる。


「言っておくが、俺らはあんたと敵対するつもりはねえよ」

「デインとつるんでたとこ見た気がするけど」

「それこそ早とちりだ。今の西区はデインのやつが勢力を広げてるからな、従うしかねえんだよ。頭が変わりゃあ、今度はそいつについていくだけだ」

「長いものには巻かれるってやつっすね、兄貴!」

「バカ、言い方ってもんがあるだろうが!」

「すんません……」

「ふぅん、まあ悪さしてないならいいんだけど」


 ゴロツキと言っても、タチの悪さは人それぞれだ。

 あくまでフラムのイメージだが、デインに近い人間ほど直接的な悪事を働いている気がしていた。


「なああんた、まさかここの奴隷商のとこにいたのか?」

「だとしたら?」

「こいつが言ってる話に心当たりはねえか。あんただって奴隷商には恨みがあるはずだ、隠し財産が他人に利用されようがどうだっていいだろ」

「付き合う義理もない」


 フラムが冷たく言い放つと、弟分がやけに下から頼み込んできた。


「待ってくだせえ。ここに金髪の妙に色っぽい女がいたのを見かけて、それを知らないかだけでも!」

「本当に知らないから!」


 軽く叱りつけるようにそう言い放つと、弟分は気圧されながら道を空けた。

 フラムは大股で表の通りに戻る。

 そして、ゴロツキの言葉を思い出しながら再度考え込む。


(奴隷商の近くで見た、金髪の色っぽい女……フィノさん?)


 他にも金髪の奴隷はいるだろうが――フラムの脳裏に浮かぶのは、先日馬車から見かけた、フィノそっくりの女の姿。

 どうしてもあれがフィノと別人だとは思えなかったのだ。

 フラムはフィノが死んだことを知っている。

 しかし死ぬ場面を、直接目撃したわけではない。

 彼女が生きているということは、何らかのトリックが仕掛けられているということ。

 それを暴いたところでフラムの生活が好転するわけではないのだが――


「うぅーん、どうしても気になる。やっぱり一回探してみるべきな気がする。私自身のためにもっ!」


 拳を握ってそう宣言すると、フラムはあることを思いつき、一旦家へと戻ることにした。




 ◇◇◇




 翌日、東区を歩くフラムの横にはミルキットの姿があった。


「東区でお買い物は珍しいですね」

「たまにはいいかなー、と思って」


 王都の商店は大半が中央区に集中しているが、東区にも存在している。

 当然ながら富裕層向けの店ばかりで、店の入口の佇まいの時点で西区住まいのフラムたちを寄せ付けない気品と迫力があった。

 当然、並ぶ商品の値段も桁違いに高い。


「まあ、あんまり高いのは買えないけど」

「さすがに東区のお店は桁が違いますね。果物ですらすごい値段です」

「リーチさんならこういうのも簡単に買えちゃうんだろうなあ」


 Sランク冒険者になれば、日常的にこういった高級フルーツを食べることもできるかもしれない。

 だが今のフラムにとっては、手の届かない品々だった。

 しかしわざわざ東区に来たということは、何かを購入するという目的があってのこと。

 二人は東区の閑静な住宅街を歩き――その一角にぽつんと建つ、落ち着いた雰囲気のカフェの前で足を止めた。


「以前にさ、キリルちゃんといつか行ってみたいねなんて話をしてたんだ」

「私で……いえ、ご主人様と食べるケーキ、とても楽しみです」

「うんうん、楽しみだね!」


 私でよかったのですか、という言葉を飲み込んでくれたことに、フラムは強い喜びを感じる。

 そしてミルキットの手を引いて、入店した。

 店員は奴隷紋を見てわずかに驚いたが、すぐに笑みを作って席へと案内する。

 注文してからしばらくして、二人の前にそれぞれケーキが運ばれてくる。

 フラムの前には、顔を反射するほど表面が黒に輝いた、楕円形の美しいケーキが。

 ミルキットの前には、赤い花の形をした、真っ赤なケーキが。

 どちらもチョコケーキだが、特にミルキットの方は見た目だけではチョコに見えないほど、いつも食べているものとは外見からして別物だった。


「おおぉ……さすがに東区のケーキとなると、見た目にもこだわるんだねえ……」

「参考になるかと思いましたが、このような砂糖細工、真似できそうにありません」

「このチョコのツヤなんてどうやって出してるんだろう。砂糖でコーティングしてるの?」

「もったいない気もしますが、食べて確かめてみましょう!」


 そうして、フラムとミルキットはケーキを口に運び、目を閉じてその味と香り、舌触りを味わった。

 そして感じたことを互いに言葉にする。

 続けて二口目、三口目と味わい――四口目は互いに食べさせ合い、また別のフレーバーを味わう。

 そしてまた感じたことを語り合うのだ。

 それを何度も繰り返していると、ふいにフラムが笑い出す。


「……ふふっ」

「どうなさいましたか?」

「二人でケーキを食べにきてるのに、じろじろと観察して分析ばっかしてるからさ。おかしくなっちゃって」

「こういうとき、どういうやり取りをするべきなのでしょう」

「人によって違うよ、だから私たちはこれでいいのかも」


 デートと呼ぶにはケーキの味に集中しすぎているが、それもまた幸せなのだとフラムは思う。

 そのとき――カランコロン、と店の扉に取り付けられたベルが鳴った。

 新たな客が店に入ってくる。

 二人組の女性のようだ。

 彼女たちは店員に案内され、フラムたちより奥のスペースへと案内される。

 そのすれ違いざま、フラムはドレス姿の女性の横顔を目撃した。


「……今のは」

「お知り合いですか?」

「うん……とりあえず、ケーキ食べよっか」

「いいのですか?」

「こっちが最優先。せっかくミルキットと来れたんだから」

「はいっ」


 ミルキットは嬉しさを隠しもせずに微笑むと、フォークでケーキをすくいあげる。

 フラムも今は余計なことを考えず、ミルキットとの優しい時間を楽しむのだった。




 ◇◇◇




 それから少しして、ケーキを食べ終えたフラムとミルキットは席を立つ。

 そして先程入ってきた二人組の女性の席に近づき、声をかけた。


「お取り込み中のところすいませーん」


 フラムがそう言うと、ドレス姿の女性は慌ててそっぽを向く。

 その様子を見ていじわるに笑ったフラムは、女性に顔を近づけて追い打ちをかけた。


「今さら顔を隠したって無駄だよ」


 まるで悪人のようなセリフを吐くと、女性と一緒に来ていた少女が立ち上がり、声を荒らげた。


「やめてくださいっ!」


 そしてテーブルを回り込んでフラムの前に立つと、女性をかばうように両腕を広げる。


「お姉さまには指一本触れさせませんから……!」


 フラムを睨みつける少女。


「あー……大丈夫よ、アデリッサ」


 女性はやんわりとそれを止めた。


「ですが!」

「敵ではないから。そうよね、フラムちゃん」


 観念した女性は、ようやくフラムに顔を見せて気まずそうに笑った。


「うん、敵じゃないよ。なんで生きてるのか、説明はしてもらうけどね!」


 頬を膨らましご立腹のフラムを前に、フィノは困ったように頬をかいた。




 ◇◇◇




 フィノとアデリッサはケーキを食べ終えると、一足先に店の外に出ていたフラムとミルキットと合流する。

 込み入った話になるため、フィノの提案で彼女たちは近場の公園へと向かっていた。

 歩きながら、フラムはフィノとの関係をアデリッサに語る。


「そうだったんですね、まさか奴隷商人のところで一緒だった人がいたなんて」

「そ、お隣さんよ」


 軽い調子でそう言い放つフィノに、フラムは呆れ顔だ。

 ミルキットは会話の邪魔をしないようにしているのか、黙ってそのやり取りを聞いている。


「フィノさんが言うほど生ぬるい場所じゃなかったけど。こっちはトラウマになってるんだから……」

「お肉食べれなくなった?」

「それは食べれてたけど!」

「図太いわね。というかなんでタメ口?」

「あんな騙し方をしてくるフィノさんに敬語は必要ないと思ったから。だいたい、こんな風にまともに話すフィノさんを見るのも初めてなんだから、これは初対面みたいなものだよ」

「あたしの演技、すごかったでしょう」

「本当におかしくなった人だと思ってた。まあ、ある意味で今もおかしなことしてるけど」

「お姉さまは、一体何をされてたんです……?」


 アデリッサがそう問うと、フラムはジト目でフィノを睨んだ。


「話してないの?」

「まだ全部はってところよ」

「わたしの方の覚悟はとっくにできていますから、今日こそ聞かせてください」

「んー……」

「アデリッサ、とりあえずフィノさんと話させて。込み入った話になりそうだから」


 フラムの提案にアデリッサは不満げだったが、フィノに頭を撫でられると、しぶしぶこくりと頷いた。

 四人は公園に到着すると、フラムとフィノは残る二人から離れ、ベンチに腰掛けた。


「実を言うとね、こっちもあなたが生きてたことに驚いてる」


 フィノは第一声でそう告げた。


「かもね。私も自分が生きてることに驚いてるぐらいだから」

「大変だったのね」

「フィノさんもね。どんなペテンを使ってあの奴隷商から逃げたの?」

「あたしが生きてるって気づいたからあの喫茶店に来たんじゃないの? それなら察しはついてそうだけど」

「フィノさんのことを探してたけど、会えたのは偶然。まあ、仮説は立ててるけど……商人に隠し財産を賄賂として渡して逃がしてもらった、とか」

「正解」


 隠し財産の在り処は、あのゴロツキ二人組が話していた場所。

 おそらく娼婦時代から溜め込んでいたお金をあの場所において、いざというときに奴隷商に渡せるようにしていたのだろう。

 そして奴隷商の死後、回収しにきたものと思われる。


「叫び声は食すために自分の体を買った誰かを騙すためのフェイク」

「またまたせいかーい」

「実際に調理されたのは別人で、食べたやつもそれに気づいていない。死んだと思わせるために一芝居を打った」

「正解正解大正解、いい探偵になれるわよ」

「でも、そこまでする目的がわからない」

「必要だったのよ、ある人物にかけられた首輪を外すためにね。おかげさまで今は自由に動けてるわ」

「誰……って聞いても教えてくれないんだろうね。私には関係ない話だし」

「復讐に協力してくれるなら教えるわよ」

「しない。こっちも色々抱えてるし」

「でも無関係でもないんじゃない?」


 そう言って、フィノはフラムが腰にぶらさげている籠手に手を伸ばした。


「見たとき驚いたわ。知り合いが持ってた籠手を、なぜかあんたが持ってるんだから」

「これが……森の死体から回収した装備なんだけど」

「道理で貧相な骸骨だったわけね。彼、何かメッセージとか残してなかった?」

「内側に、HARVESTって書いてあった」


 フラムの答えに、フィノの目が見開かれる。


「あいつ、そこまで掴んでたのね」

「ハーヴェストって何なの?」

「ちょうど今日ね、頼んでもないのにアデリッサが父親の資料を盗んできたのよ。まあ、そこから大したことはわからなかったんだけど――収穫って文字が書いてあったわ」

「収穫……ハーヴェスト……アデリッサの父親って誰なの?」

「アンヴォロ・レデンプターよ」

「アンヴォロ……!」

「フラムちゃん、知ってるの?」

「数日前にエニチーデに行ってたんだ。フィノさんの故郷にね」

「あの田舎に!?」

「そこでフィノさんだけじゃなくて、アンヴォロの名前も聞いた」

「そういうこと……懐かしいわね、あいつの甘い言葉に乗せられて、王都に出てきてしまった愚かな自分を思い出すわ」

「ちなみにさ、アンヴォロって教会と関係ある?」

「アデリッサが持ってきた資料にそれらしき文章はあったけど。どうして?」


 大きくため息をつくフラム。

 彼女は俯いたまま、フィノに問いかける。


「こっから先は、首を突っ込んだら後戻りできないかもしれない」

「とっくに手遅れよ」

「それもそうか。じゃあ話すけど」


 復讐のために命すら捨てられる人間に、遠慮など不要だろうと思った。

 フラムはエニチーデの地下で見た光景をフィノに語る。


「教会がクソ田舎で人体実験を!?」

「アンヴォロがあの村を訪れたのは十二年前。偶然とは思えない。もしあの村を訪れた目的が、地下の研究施設を視察するためだとしたら」

「ハーヴェストとも関連がある……」

「こっちも聞きたいんだけど、アンヴォロってやつはフィノさんに何をしたの? 復讐したがるぐらいだから、相当なことだと思うけど」

「何もかもよ。エニチーデから連れ出したところから、私が薬物中毒の奴隷に落ちぶれて、あいつに食われるところまで全て」

「……裏から誘導してた? そんなことありえるの?」

「そうやって落ちぶれさせた女を最終的に食らうのが趣味なんでしょう。人肉趣味の変態野郎ってわけ」


 引きつるフラムの顔を見て、フィノは満足気に笑った。


「正直なことを言ってもいい?」

「むしろ聞かせて」

「そんなやつ相手に、今のフィノさんが戦えるとは思えない」


 フィノには戦う力がない。

 あるのは憎悪と執念ぐらいのものだ。

 しかしそれすらも、今は足りていないようにフラムには思えた。

 フィノもその自覚があるのか、今度は自嘲っぽく笑う。


「捨て身の自分なら気にせず突っ込めたのに。あーあ、余分なものを背負っちゃったわ」

「アデリッサのことだよね」

「まさか本気で惚れられるとは思ってなかったのよ」

「見てる限りだと、惚れると思ってなかった、の間違いな気がするけど」

「……それもあるわね。頭の中があの子でいっぱいなの。自分に女の子を抱く趣味があったんだって驚いてるわ」

「いっそ二人で逃げちゃえば? 死人のフリをしてる今ならできると思うけど」

「アンヴォロがアデリッサを放っておくと思う?」

「そっか……大きいね、あの子の存在」

「結局、やるしかないのよね。二人で逃げるには、アデリッサから家柄も何もかもを奪うしかないんだから」


 フィノの瞳には決意が宿っていた。

 彼女は余分なものを背負ったと言ったが、彼女が抗う理由は今や復讐だけではない。

 アデリッサを己のものにするため――二つの決意が重なり、以前より強固な意思へと変わった。


「でもアンヴォロには大きな人望がある。生半可な情報じゃ、誰もあたしみたいな奴隷の告発を信じやしないわ」


 リーチも同じように、アンヴォロのことを根っからの善人と評していた。

 たとえそれが裏の顔を隠すための仮面だったとしても、貫くのは難しい。


「だから今のところ、ハーヴェストが何か暴いて、ぶち壊しにするぐらいしか復讐が思い浮かばないのよね」

「私も同感。だけど――」

「ハーヴェストを追うのは危険、って言いたいんでしょう? わかってる、わかってるわよ。だから協力者がほしいの」

「協力者か……」

「安心して、同じ奴隷紋を背負ってる子に頼もうとは思ってないから」

「心遣いどうも。正直、私もやっと生活が安定したところで、積極的に『手伝う』とは言えないかな」

「それでも、味方になってくれそうな人を知ってたら嬉しいな、とは思ってるわ」


 期待の眼差しを向けられ、フラムは困った様子で口をへの字に曲げる。

 あまり気乗りはしないが、彼女には心当たりがあった。


「……教会ではなく、アンヴォロに標的を絞った上でって前提になるけど」

「えっ、本当に助けてくれそうな人がいるの!?」

「リーチ・マンキャシーって人なら、事情を話せば力になってくれるかもしれない。アンヴォロのこと、疑ってるみたいだったから」

「それはいい話を聞いたわ!」

「でもその人、私の恩人でもあるから――」

「わかってるわよ、あたしだって無関係の人間を巻き込んで犠牲にしようとは思ってないわ、頼るのはほどほどにしておく。後味悪い終わりなんてまっぴらだもの」


 それに『後味が悪い』と言えるフィノなら、ひとまずリーチを危険な目に遭わせようとはしないだろう、と信じられる。

 しかし相手が相手だ、変に巻き込まれなければいいのだが――そうなれば自分のせいなのでは――と不安になるフラム。

 だが、かといってフィノを見捨てるわけにもいかない、難しい立ち場だった。

 すると二人の会話が一区切りしたのを嗅ぎつけたのか、アデリッサとミルキットが近づいてくる。

 アデリッサは駆け足でフィノに近づくと、恥ずかしげもなくぎゅっと抱きついた。


「お姉さまー、終わりましたかっ?」


 フィノは抱き返すと、慣れた仕草でその額にキスをした。


「甘えん坊ね」

「寂しかったですから。これからホテルに向かうんですよねっ?」

「こーら、人前ではしたないことを言わないの」

「そうしたのはお姉さまなのにぃー」


 二人の甘いやり取りを前に、フラムは周囲の空間が一気に桃色に染まったような気がした。

 結局、フィノとアデリッサはこの場で別れることになった。

 フラムとミルキットは二人、手をつなぎながら西区の自宅へ向かって歩く。


「なんだか……すごい人たちでしたね」

「女の子同士で付き合ってるなんて、びっくりしちゃうね」


 そんな話をしていると、フラムはふいに繋いだ手の感覚が気になった。

 いつの間にか当たり前のようにつなぐようになった手と手。

 女友達同士で繋ぐのは普通のことだ。

 だが同時に、恋人同士でも手を繋いだりはする。

 ミルキットの手のひらは柔らかく、滑らかで、温かい。

 何より握ると、しっかりと握り返してくれる。

 フィノたちのことを思い出したせいだろう。

 なぜだか急に、手のひらにミルキットの柔らかな手の感触が触れているという事実が、恥ずかしく思えて――


「ご主人様、顔が赤いですが暑いのですか?」

「う、うん、熱い……ね」


 誤魔化すようにそう言うと、余計に恥ずかしくなってくる。

 フラムはなんでミルキットを急に意識してるんだ、と自分を叱り、ミルキットはそんなフラムを不思議そうに見つめ――二人は我が家へと戻っていくのだった。




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