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悪役令嬢ふくしゅうものがたり

作者: 伊崎てんり

勢いで書き上げました。

初投稿です。

許せないと思った。

絶対にあんなやつには負けたくなかった。

これはふくしゅうを誓った私の、私による、私のためのものがたりである。


事の始まりは二年前、私の14歳の誕生日パーティでのことだ。

私の生家ピトルモーリア伯爵家は宝石業で栄えている。

だからその一人娘の誕生日パーティとなれば両親はとびきりに豪華にしたがって来賓には特に力を入れているため、侯爵家の子息であるアンドレ・ルナールがいても全くおかしくはない。

おかしくはないのだか、彼の姿を見た瞬間に私の脳は衝撃を受けた。


そして思い出した。

私、クロエ・ピトルモーリアはある少女漫画でヒーロー、アンドレ・ルナールの婚約者としてしゃしゃり出てきて二人の恋路を邪魔する悪役令嬢だったことを。


顔が青ざめていくのがわかった。

このままだと、ヤバい。

直感的に思ったのはこれだった。


別にこの悪役令嬢はその後両親が決めた別の人と結婚して、結構幸せに生涯を全うしたので死刑になるとか家族から見放されるとかはないのだが


このクロエちゃん優秀、有能なご両親の元で育ったはずなのに、なのに、とってもおバカなのである。


前世での私は都内の超難関進学校に通うはずだったので勉強に対しては異常にプライドがある。


うん、自覚してる。

ちょっとおバカキャラのほうが男受けはするんでしょ

しかし、私はバカが嫌いだ。

なによりも嫌いだ。


クロエのキャラクター性なら異世界転生チートライフも能天気にこなせただろうが、私にとってはそんなことどうでもいい。

ちやほやされたいけど、されたいけど、バカなのは嫌だ


私であるクロエが、バカなのは頂けない。

本当によろしくない。


軽くスピーチをして席に戻る道すがら私はものがたりが始まる17歳の夏までに賢くなることを決心した。


私がまず初めにやったのは優秀な家庭教師を雇うこと。

これは両親に頼んだら一発で了承された。

今までの家庭教師さんは私のレベルにあったものを選んでたけど、ホントはもっとしっかりとした勉強させたかったんだって。


理解の早い両親で良かった。

でもクロエちゃん前世思い出すまで勉強大嫌いで逃げ回ってたんだよね。

急に難しくして大丈夫かな、なん心配したけど前世の私ならこの時代程度の学問余裕かな。





なんて思ってたけど緊急事態発生。

数学の先生が腹黒すぎるというか意地が悪い


国史とか外国語とかは前世でそりゃ勉強しましたもの内容は違ってもやり方は同じをモットーになんとか先生について行ってますのよ


数学のリュカ・ジュベール先生は別。

リュカ先生は庶民の出ながら数学の才を見出されて大学に特待生として入学した人なので前世の得意教科は数学な私としてはとっても楽しみだったのに!


最初の授業で小テストした後は

小テストの内容が嘘みたいに難しい問題を宿題にしてくるようになったのだ。


前世の得意教科は数学といっても

私が得意なのは中学数学までなのに。

私は高校の入学式で不慮の事故にあって死んだ...らしい。

つまり、高校内容なんて知らないのに。

あの野郎バンバン出してくる。


「習ってないから、分からないんですか?

違うでしょう。貴方は考えてないだけなんですよ」

なんて平然といってくるのだ


その一言が私に火をつけた。

毎日、家庭教師が帰ってから

一に復習

二に復習

三四は予習で

五に復習


の日々が始まった。

私の得意教科は数学。

たかがこの時代の少し頭のいい程度の教師に負けるわけには行かないのである。


こうして私は教師たちと鎬を削り、とてもいい関係を築き上げた。


私は明日16歳になる。

アンドレ・ルナール様とは15歳の時に婚約をした。

ルナール侯爵の意向で私は16の誕生日を迎えたら今までの家庭教師たちとの時間はすべて花嫁修業に変わることになった。


もっと、学びたいのに。

もっと、難題にぶつかりたいのに。


私は侯爵夫人となるために

アンドレ様に相応しい花嫁になるために


今日で大好きな家庭教師たちと別れなければならない。


国史のアンナ先生は厳しいけど国史が大好きで仕方がなくて、定説や新説を偏見なく語ってくれたからこれからの国がどうなるのかなんて疑問を二人で議論したりした。


外国語のジェレミア先生は自由奔放な人たけどめちゃくちゃわかりやすくて、いつか外国を旅したいと思って二人で夢を語り合った。


数学のリュカ先生はいっつも難しい問題ばっかり宿題にして、最初はすっごく嫌だったけど段々楽しくなってきちゃって。先生がそれに気づいてからは答えにメッセージ性を付けだしてくれたからパズルみたいで楽しくってたまらなくなった。


先生たちとの最後の授業はまた明日も授業があるような、そんないつも通りの始まりと終わりだった。


でも悲しくて泣いてしまった私を優しく抱きしめて先生達はゆっくりと家の門に向かった。


リュカ先生は最後なのに宿題なんか出してきて。

それがリュカ先生らしくてとても笑ってしまった。


リュカ先生の一言が私に火をつけて、悪役令嬢なんて関係なく学問が楽しくなって、両親も驚く程に勉強に熱をあげた。

お世話になった先生たちに最後は笑ってまたねって言うんだ。


リュカ先生の宿題はいつもと違って提出期限がなかったからゆっくり解いてみようかななんて考えるくらいには、虚無感が私を襲っていた。


だからといってこれから来る花嫁修業に手を抜くようなクロエ・ピトルモーリアではないけれど。






私が17歳になった年の夏のある日。

アンドレ様は運命の女の子に出会った。


二人の恋は出会った瞬間から静かに

でも確実に激しくはじまった。


私は恋のスパイスとして悪役令嬢を立派にこなしていった。

が、周りの目は私に同情的だった。


18歳の秋にアンドレ様は正式な手続きを経て

私との婚約を破棄した。


これから私は両親の決めた相手に嫁ぐ。


相手の顔を見たら1番最初に言ってやるのだ。

「先生、宿題解けたよ」

って


そうしたら彼はきっと悔しそうに笑って

答えを教えてくれるはずだから。




ちなみに先生の宿題は

R=sin90°=1=Lのとき

sin(9°+360°×n)=sin9°(ただし、nは共に過ごす年月)


答えは活動報告に

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― 新着の感想 ―
[一言] タイトルに騙されました。 でもすっきり、サラッと、大変面白かったです。
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