領主 2
俺は別室で、東郷領主と対面することになった。
何故こうなったのかを必死で考えるに、最初の対面で「我が国の体制を確かめようとしたのは初めてだ。」と言われたことが頭をよぎる。
どうも俺が信義を使って、東郷の体制に挑戦している様に思われているらしいので、最初にその誤解をとかなくてはならないと考えた。
良いのか悪いのかわからないが、三川の様に領主に会うのがそれほど面倒でない。
俺が入室して、「どう話すべきか?」と考え始めたと思ったら、もうすぐ来ると言う。
頭を下げて待っていると、「楽にせよ。」といきなり後ろから声を掛けられた。
俺がいきなりで、びっくりした表情をしていると、それを見て面白そうに笑ってきた。
そしていきなり、「約束通り感想を聞かせてくれ。」と言われた。
そこで俺は、先程から考えていたとおり、「最初に信義を連れて来たのは、ただ単に彼の剣術がどの程度通用するのか見たかっただけであり、東郷の学校制度を否定するつもりは毛頭ござりませぬ。」と話し始めた。
すると、領主は「そちは堅苦しくていかん。もっと肩の力を抜いて、気楽に話してくれ。」と言われてしまった。
そこで、一瞬何を話すか迷ったが、彼は俺に東郷の学校の称賛を求めているわけではないことは直ぐに分かったので、気になったところを述べる事にした。
確かに領民全てを平均まで持ってくるという発想は素晴らしい。
実際、水穂の領民は教育水準という点では、東郷の足元にも及ばないであろう。しかし逆にこの平均が足かせになってしまっているという指摘を行った。
実際に東郷の学校で見た例として、ある生徒は既に授業で教師の言わんとすることを完璧に理解しているが、他の生徒はそうではないために、教師は大変の生徒にあわせて授業の進行速度を明らかに落としてしまったを紹介した。
そして、「これでは、優秀な生徒のやる気をそいでしまっていることは間違いありません。」と指摘した。
そして、今回何といっても、彼は信義のことが頭にあると思われたので、「例えば、信義のような天才は東郷に生まれたとしても学校教育ではうまく育てることができないでしょう。」とまで言ってしまっていた。
「何故なら、通常の教師に彼の指導ができるとは思えません。」と続けた。
そして、「個人的感想」と断ったうえで、信義を生み出すために、結果として、どれだけの資源(人材)が投じられているかという話をした。
彼のようになろうとして、多くの者が道場の門をくぐるが、才能がないために又努力を継続させることができなかったが故に、大勢の者が挫折する。
信義は、そうした者たちの犠牲があって、言葉が悪いがそうした者を肥料として、初めて花咲く1人の天才と言っても過言ではない。
そしに対して、東郷の学校教育は並みの生徒を100人作ろうとする体制だ。
それはそれで大変だが、何をどうすれば一定水準に達することができるかということは既にわかりきっているので、一人一人のすべきことはそれほど難しくない。
反面、信義の獲得したものをうまく後世に伝えられるかというと、はっきり言って難しいだろう。
彼自身うまく説明できないだろうし、実際、俺も何度聞いても本当の意味で理解できているとは思えない。
最も大事な部分は、彼が隠すつもりはなくとも、本当の意味で理解できるのはそれなりの才能を持ち、すごい努力をした者だけだ。
そうなると下手をすると、本当に大切な部分は、そのまま彼一代限りで終わってしまうという可能性も否定できないという話をした。
ただ、彼のような天才より凡人100人の方が強いのは間違いわけで、実際今回の模擬戦は40対40だから信義を全面に立てた戦略が通じただけで、最後の80対80なら通用しなかったことを付け加えておいたことは言うまでもない。
それに東郷の学校教育でも今の成績別の組分けをもっと徹底されるとか、特定の分野の教師を更に養成すれば、こうした問題は解決するのではないかと俺の意見を付け加えさせてもらった。
そして、領主は「最後に。」といって、「東郷のような学校を水穂でつくる予定はあるかな?」と聞いてきた。
俺はしばらく考えた後、「東郷程まで徹底できるかどうかはわかりませんが、似たようなことはやりたいと思っております。」と答えた。
「やはり、学校を?」と聞かれたので、「造ると思いますが、人材登用は別の形で行おうと思っています。」と答えていた。
「しまった。」と思ったときは既に遅く、「どういうことか?」と聞かれてしまった。
そのため、「これも俺の個人的感想です。」と断って、「兵を育てるのであれば、俺の指示にきちんと従い、見事な陣を敷いてくれたように、学校という教育が、そうした人材を育成するのに適しているのはまちがいありません。」
「しかし、指揮官となると、実際今回のような40名ほどの指揮では、実践にほど遠いと思います。」と指摘した。
そのうえで、俺が勝利したように、集団戦とは本来相いれない信義という一人の天才の要素で相手が負けてしまったことを付け加えた。
つまり、ただ与えられたことをやるだけの人間を育成するのなら、学校はかなり適した施設だが、それ以上の、指揮官とか、実際の国のまつりごとを行う人間となるとどうなのかという話をさせてもらった。
それに頭でわかっていても実際できないことは多くあるので、学校で教育を受けてわかったような気になっている者はダメだという話や、学校で万遍なく成績をとれる人間より、俺はどこか偏った人間の方が好きなので、一芸に秀でた人間を登用したくなってしまうのです、とも答えていた。
ただ、これがうまく体制として機能するかとなれば難しいわけで、下手をすれば100と思って登用したら0だっということもあるかもしれない。
今は数も少ないから、俺の気に入ったものを選んでいるが、数も増えればそうはいかないだろう。そうなると、選定基準が間違いなく必要となってくるだろう。
その点、学校を優秀な成績で卒業したものなら、間違いなく50以上はあるわけで、選定という意味では容易だと思うので、どちらをとるかという選択かと思います、とも付け加えさせてもらった。
俺が話終わると、「いろいろ考えさせられた。」と言って、東郷領主峯藤琢磨は、一人で何かを考え始めたので、俺はそのまま退室することとした。
昨日は夜遅く半分眠りながらの更新だったので、かなり読みにくい文章になってしまっており、すみませんでした。
修正しましたので、少しは読みやすくなったかと思います。




