表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水穂戦記  作者: 江川 凛
第5章 信夫攻略1
64/135

行商人

 さて信夫攻略だが、まともに考えれば、兵糧が豊富な今の時期に行うのが定石だ。

 雪が降ってしまえば、身動きが取れないため、敵の格好の餌食になってしまう。

 それを避けるためには、雪の溶ける春まで待つしかない。

 しかし、山岳地帯は雪が溶けるのが遅い。

 そこまで待っていると、代かきや田植えの準備の時期になってしまう。


 すると、戦争のためにかき集められた普段は農作業に従事している歩兵は自分の田のこと等が気になり、戦に身が入らない。

 そうした事を考えると、雪の降るまでが勝負な訳だが、余りにも時間がなさ過ぎる。

 旧秋山家の受け入れや、解放されたことに伴う免除された税をどう配分し直すか等、家臣達にしてみれば、目下の急務が控えていた。

 それに比べれば、信夫攻略等、俺が一人で勝手に約束してきたことくらいの認識だろう。

 最悪、岩影と旧秋山家だけで、攻略しろという話になるかもしれないということも頭をよぎる。

 そうなると、用意出来るのはせいぜい百から二百といったところだろう。


 信夫地方の国は基本的に皆小国だが、それでも五百位は用意出来るであろう。

 それが十残っているから、皆集めれば五千にはなる。

 地の利もある。そういうことを考えると、三川が常に、二万もの大軍を動員して攻略していたのには訳があったわけだ。

 それを、国中の兵をどんなに集められてもせいぜい二千程度の水穂が落とす。

 

 確かに悪い冗談にしか聞こえない。三川の使者がばかにしたような態度をとっていたのも、わからないではない。

 しかし、やるしかない。


 小夜の紹介で、水穂から信夫地方に行商に行っている人たちから話を聞くことが出来ることになった。

 十蔵も一緒に話を聞きたいといってきた。

 やはり信夫地方は山岳地帯なので、行商に頼っている小さい部落が結構あるとのことだった。

 行商に携わる、こうした人たちはひもでいくつもの荷物を括って、背中に担ぐのだが、結果自分の背よりも高い荷物を背中に背負って、山道を一歩一歩上っていくことになる。


 かなりしんどい仕事であることは間違いないが、それでも四季それぞれの楽しさはあるようで、春の花、夏の暑さ、秋の紅葉、冬の寒い中での山越えの話は、確かにいろいろ興味深くはあった。

 その中で、ある中年女性の話が、俺の注意を引いた。

 同時に、もしかしたらという思いが心に広がる。


 十蔵を見ると、十蔵も俺の方をしきりに見ている。どうやら同じことを考えついたようだ。

 さっそく、岩影玄悟に連絡をとり、可能かどうか確認する。

 かなり難しいが、体重が軽い女性なら、もしかしたら可能かもしれないと言ってきた。

 何にしろ、現場がわからないことには話にならないので、俺、十蔵、小夜の3人は、行商人の恰好をし、その中年女性と一緒に、彼女が話をしてくれた現場に向かった。


 山の中なので、そこまで気を使わなくても良いのかもしれないが、もし途中で敵兵などに見つかっていろいろ詮索されるのもいやだったが故の策だ。

 確かにそこには話のとおり、かなり大きな洞窟があった。

 これなら無理をすると、100人くらいは何とか入れるかもしれない。

 その他あたりの地形を確かめる。


 「何とかなるかもしれない。」それが俺たち3人の下した結論だった。というか何とかするしかない。

 実際増えた三川兵を問題なく家臣団に受け入れされるためには、信夫地方を攻略し、そこの領地を彼らに割りあてるしか方法がない。


 ところが、下手にその際に水穂の古参兵などを使うと、また取り分を寄こせという話になりかねない。

 十蔵を通じて片桐家を使うという方法もなくはないが、1家だけ特別扱いするわけにもいくまい。

 すれば、中心は三川兵でそこに岩影を追加した100名程度で信夫攻略を果たすしかない。

 俺たちは水穂に戻ると、水穂が丹呉、庭先を攻略しようとしているという噂を積極的に流した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ