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水穂戦記  作者: 江川 凛
第4章 内戦
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使者

 父親との対面が終わり、退席すると殆ど同時位に、岩影の使者が手紙を運んできた。

 彼の名は「須走」と言った。

 ただでさえ運動能力の高い、岩影の中においても特に走ることに特化しており、重要な場面では、常に使者を務めてきたそうだ。

 克二の元を離れる時に、紹介し、今後は彼を通じて連絡を取り合うように話をしておいたが、さっそく役に立ったようだ。


 手紙の内容を見て驚いた。

 明日にも本格的な戦が始まるという。

 というのは、俺が三川を抜け出したちょうどその夜に、小競り合いがあり、どちらの陣営がやったのか正直わからないが、火を放ったものがいるらしい。

 幸いすぐに消し止められたが、秋山家も青柳家も城下でこれ以上争いが激しくなるのは望ましくないという結論に至った。


 当然だ、どちらにしても、自分がこれから治めようと思っている土地なのだから、そこが焼け野原になることなどあっては困る。

 ここまで来た以上は、下手に小細工をするのはなく、正面から正々堂々と決着をつけようということで話が急きょまとまったらしい。

 場所はあの一番最初に鷹狩りが催された狩野原だ。

 そこで明日、両者が雌雄を決するわけだが、秋山家、青柳家の見事な陣さばきを初めてみた場所でとなると、なんとも言えない感慨が浮かんできた。


 それが今日の朝で、克二が急いで手紙を書き、半日程で手紙を届けてくれたというこわけだ。

 実に早い。

 昨日、俺は夜、出発したという不利はあるにしろ、一晩近くかかってここまで来たわけだから、ほぼその半分程度の時間でたどりついたことになる。


 しかし、あまりにも事態が動くのが急すぎる。

 俺の予想では後2,3日は余裕があると思っていたが、まさか自分が離れたその日のうちに事態がここまで動くとは全く予想できなかった。

 正直あせるが、幸いこれから家臣団の説得を行うことができる。

 ここで何とかできれば間に合うはずだと必死で自分で自分に言い聞かせる。


 どう説得するか考える時間が欲しいところだが、克二への返事もすぐに書かなければならない。

 俺は迷ったが、「これから出陣の用意をして、何とか明日の戦闘には間に合わせるので、できるだけ時間を稼いでおいてほしい。」と書いて渡した。

 本当に、軍を出せるかどうかは、誰にもわからないが、出せなければ俺に未来はない。

 克二が負けたら言うまでもないが、勝っても裏切り者扱いされるだけだ。


 そうであれば、「これから向かう。」と書くしかないというのが正直なところであった。

 一瞬、軍の派遣が決まってから返事を書くべきではないかとも思ったが、いつになったら決まるか誰にもわからない。

 下手に遅くなって手紙が届かないという事態になっては意味がない。

 この点を考慮しても、さっさと書いて出してしまうしかないと思った。


 同時に、手紙を出したということは、何が何でも説得しなければならないということを意味している。

 説得が失敗すれば俺だけでなく、水穂の国の破滅だという自覚はもとからあるが、更に自分を追い詰めるという意味でもこうした方が良いのではないかと考えたという次第だ。 


 城からの火急の用ということで、続々と集まってくる家臣団。

 ただ、あらかじめ慎介から話を聞いた者もいれば、その者を通して話を聞いたものもいるので、皆その要件についてはある程度の予想はついているようだ。

 気のせいか、「やれやれ。」といった感じが伝わってくるような気がしてならない。


 当初はこれまでの例にならい大広間に集まるという連絡がなされていだが、今回は俺のたっての希望で、わざと庭に集まってもらって立ったまま話を聞いてもらうことにした。

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