会談 2
俺たちが居候先に戻ると、隆明が重症だとの知らせが既に五島家にも届いていた。
それを聞くなり十蔵は、小夜に「至急玄悟と話がしたい!大至急だ!」と叫んだ。
俺は、十蔵が語気をあれほど荒くしたのを初めてみた。
それから2時間もたたないうちに、五島家のまき小屋で話し合いが行われることとなった。
当然の権利として俺も中に入ろうとすると「今回だけは玄悟と2人きりで話がしたいのです。」と十蔵が低くはっきりとした口調で制した。
彼に何が起こったのか理解できなかったが、俺はあんな十蔵を見たのは初めてで、とてもそれに逆らった中に入る気にはなれなかった。
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十蔵「正直なところが聞きたい。岩影は暗殺を行ったのか。」
玄悟「むろんだ。」
十蔵「もう一度聞く、私は遠くからだが、現場を見ていた。正直なところが聞きたい。岩影は暗殺を行ったのか。」
玄悟「半分は行った。」
十蔵「どういう意味だ。それは直接隆明に手をかけていないという意味で良いのか。」
玄悟「そうとってもらって構わない。」
十蔵「具体的に聞く、つまり隆明を落馬させただけということか。」
玄悟「そう思ってもらって構わない。」
十蔵「はじめから暗殺ができると思っていたのか。」
玄悟「とても思ってなどいなかった。今回どのような結果がでるかまだわからないが、もし死んだら隆明にとって運が悪かったということだ。」
十蔵「では、何故暗殺を引き受けた。」
玄悟「けがでもさせることができれば、遠征はなくなると思ったからだ。遠征が続けば信夫地方はいずれ平定される。そうなれば水穂の国もどうなるかわからない。せめて若がもうすこし大きくなるまで時間が稼げればと思っただけだ。」
十蔵「それに証文もとれたしな。」
玄悟「確かにその狙いがあったことは否定しない。実際武士になるというのは我々の悲願だからな。おぬしにはこの気持ちはわかるまい。」
十蔵「隆明暗殺以降の話は若から聞いているな。」
玄悟「聞いてはいるが、荒唐無稽としか思えない。どうやって新右衛門を寝返らせるというのだ。あり得る話ではない。」
十蔵「主君の思いを実現するのが、家臣のつとめ、私が実現させて見せる。」
玄悟「気でも狂ったのか。」
十蔵「はっきり言って若の考えは甘いし、かなり無理がある。しかし、私は当初暗殺が実現するとはとても思えず、若に失礼な態度をとってしまった。」
玄悟「それは・・・」
十蔵「ところが、もっとも難しいと思われたことがいきなり実現しようとしている。結果、ここまで来れたのだ。確かに運もあろう。それでも千載一遇の機会が巡ってきたのは間違いない。私はこの機を無駄にするようなことだけはしたくない。」
玄悟「それはこちらも同じだ。」
十蔵「であれば、明日、若と信三殿が出かける機会をつくるから、その時を見計らって信三殿を襲ってくれ。むろん間違ってもけがをさせるようなことがあってはならない。意味はわかるな。」
玄悟「それは承知したが。どういう・・・」
十蔵「あとは私が全て段取る。下衆と言われようが、構わぬ。水穂の国のためにいろいろ1人で考え頑張っている若の思い、私が実現させてみせる。」
玄悟「受け賜った。わしも正直若には期待している。何といっても発想が面白いし、何にしろ動きがあるのは良いことだ。これまでのような停滞が一番面白くない。」
十蔵「最後に、暗殺のことは私から若に話をしておく、岩影を使うと、領主暗殺でも可能だなどと思われた日には、いろいろ不都合が生じて困る。」
玄悟「そうしてもらえると助かる。」
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しばらくして十蔵たちが出てきた。
少なくとも十蔵の顔からは入ったときのような険しい気配は消えている。
それでもいつもと雰囲気は異なっており、中でどのような話がなされたか、俺は聞いてみたかったが、とても聞けるような感じではなかった。
十蔵が俺に言う。「明日久しぶりに信三殿を誘って外に出かけてみて下さい。」
しかし、隆明の命がどうなるかわからない時に、訪問するのはどうかと渋っていると、「そんな時だからこそ行くのです。」ときた。
十蔵がそこまでいうのならと俺は明日、信三に会いに行くことにした。




