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水穂戦記  作者: 江川 凛
第3章 跡目
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鷹狩 2

 秋祭りは盛況だった。

 普段はどこにこれだけの人がいるのだろうという位の人出だ。

 神輿が出され、それぞれ地区に分かれて、神社まで競争をしている。

 よそ者の俺にとってはどこが勝とうが関係ないが、そこに住んでいる者にとっては「名誉」をかけた大事なことなのだろう。

 かなり気合が入っているのがわかる。

 勝った者は本当に嬉しそうだし、負けたものは本当に悔しそうだ。


 かなりの数の出店も出ている。

 正直、俺はこれ程の数の出店を見たことがない。

 数があればやはり面白い店はあるし、見ているだけでも楽しい気分になる。

 やはり、こうしたことが国力(人口)の差かとつくづく思い知らされた。


 ま、無礼講だということで、結構喧嘩なども起こっているようだったが、皆基本的に笑っていた。

 刈り入れ(収穫)も終わり、皆心が緩んでいるのであろう。

 確かにこの刈り入れまで苦しい農作業をしてきた農民にしてみれば、この時期位はという気持ちもわからないではない。


 秋祭りが終わるといよいよ鷹狩りだ。

 俺は鷹狩りには殆ど参加したことがない。

 理由は極めて単純で、俺の父親はどうもこういうことがあまり好きではなく、水穂の国では殆ど開催されたことがなかったからだ。

 武士にとっては、秋祭りはただの参加者として楽しんでいればよいが、こちらは自分たちが当事者だからそうはいかない。

 

 秋山家、青柳家あたりはさすがというか、一目でその一族とわかるように新しい衣装を新調し、揃えてきているし、恰好も良い。

 どちらも100人規模の家臣を引き連れてきているが、これだけの衣装、装備を揃えるのには、かなりの金がかかっていると思われる。

 麻生家も頑張ってはいるのだが、今一恰好が見栄えがしない。

 それに何とか頑張ってこちらも100人程度は連れてきているのだが、末端の者となるとどうも装備が統一されていない。

 やはりここいらにその家の勢いというのが現れている感じがするのは否めない。


 俺は思ってもみなかったが、家臣の側ではなく、克二や信三と同じ領主側に席が用意されていた。

 本当に特等席で見物することができたわけだが、家臣団が頑張るのは良く理解できる。

 以前見ていたときは良くわからなかったが、まさに合戦と同じだ。

 獲物を追い込むということは、敵を追い込むのと同じなので、どれだけ早く軍を展開できるかということにも通じる。

 

 つまり、鷹狩りは単にこの日のために新調した衣装や装備を見せるだけの場ではなく、領主の前で自分の部下が役にたつところ、何より自分が部下をきちんと使いこなしているところを見せる場だということを初めて理解した。

 見ているとやはり秋山家、青柳家の動きは全く違う。

 当然数が多いので、優位というのはあるが、それだけではない。

 きちんと当主の指示通りに動いているのが良くわかる。


 俺は克二の出陣式の、秋山風見の粗暴な様子を見て、彼がわかったような気がしていた。

 ただ、あの軍を指揮をしている様子を見ていると、俺は自分の不明を恥じた。

 全く何度恥じれば気が済むのかという感じで、自分自身でも嫌気がさしたが、どうしようもない。

 おそらく風見には、粗暴な一面だけでなく、部下を思いやるところとか、自分が真っ先に先陣をとるところとか、部下をひきつける何があるのであろう。

 でなければ、部下があれほど彼のいうことを聞くはずがない。


 青柳新右衛門だけでなく、秋山風見についてもしっかり情報を収集しなければなるまいと思った。

 俺はどうも人を見くびるところがあるようだ、己惚れていると言っても良い。

 他人を簡単にわかったような気になっているが、他人がそれほど単純なはずはなく、それは克二や西の方で嫌というほど思いしらされたはずだが、まだまだな様だ。


 何にしろ、これほどすごい鷹狩りを見たのは間違いなく初めてだった。

 そして指揮の下、陣が展開されていく様は見ていて本当にきれいだった。

 ただ、これは俺が領主側から見ているからそう思えるだけで、これが敵側から見ていれば、気が付けば目の前に陣が広がってくるという話で、恐怖を覚えるだろうと思ったのも確かだった。


 そんなことを考えるうちに、秋山家から獲物を囲い込んだとの連絡がはいり、鷹が放たれ、当主の葛川隆明が馬に乗ってそれを追いかけ、皆がそれに続いた。

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