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水穂戦記  作者: 江川 凛
第1章 水穂の国
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我が国の状況

前章


 俺の名は三條茜、女の様な名前だが、れっきとした男で、一応大名の御曹司などをしている。一応と断ったのは、大名とは言っても名ばかりで、実際は隣にある葛川家に支配されているようなものだからだ。

 俺が生きている時代は後の世では「戦国」と呼ばれている時代で、大名と呼ばれるそれなりの支配地域を持っている者たちが互いに相争う状態となっていた。

 ただ、一口に「大名」といっても、小国を滅ぼし、支配拡充を目指す国と、いつ他国から攻撃を受け、滅ぼされるか戦々恐々としている国等、様々である。

 我が三條家は、それなりに由緒はあるようで苗字に数字がついているということは、それなりの位も以前は持っていたという意味だという話を散々家臣などから聞かされたものである。

 ただ、現実問題として既に今そのような力がない以上、俺にとっては殆ど興味のないことであった。


 最初に我が国のことについて少し説明をしておこう。我が国の名は「水穂」といい、それなりに農作物が豊かな国である。

 だからこそ、以前はかなりの力を誇っていた様であるが、はっきり言ってどうもお人よしが過ぎたようで、力が全てという時代では良いようにやられてしまっているというところであった。

 実際、隣国の葛川家は家臣たちの言葉を借りれば「成り上がり」の新興国で、以前は歯牙にもかけていなかったのだが、今では天と地ほどの差がついてしまっている。

 その葛川家が我が国を併合してしまわないのは、これも家臣たちの言葉を借りれば先祖の「威光」ということだが、俺には別の理由があるように思えてならない。


 実際問題支配されているわけで、毎年かなりの税を葛川家には収めている。葛川家にしてみれば、自分たちで支配するより効率的に税をとることができるというわけだ。

 それに正直かなりの高率であるが、その結果農民達の恨みをかうのは、直接税をとりたてている三條家なわけで、もしそれで、国が多少乱れたとしても彼らの腹は少しも痛まないというわけだ。

 そして、もし本当に国が乱れてしまえば最後は併合してしまえばよいだけの話だ。


 そうなる前に併合しようとすれば、間違いなくそれなりの抵抗はうけるだろうから、如何に大国とはいえ、下手に併合に手こずっているとその間他国がどう動くかわからないという計算もあったのだろう。

 もちろん、俺も家臣の言うように「先祖の威光」が全くないとは思ってはいない。

 一応名門なわけで、既に形だけのものになってしまっているとはいえ、「帝」の威光はまだまだそれなりのものがある。

 帝とは、以前からそれなりのつきあいがあったようなので、その点も考慮しての実質上の属国化で済んでいるというところかと考えている。


 一応国としての形態は保たれているし、国内の自治は保障されてはいるわけであるが、何といっても毎年収めなくてはならない税は高額であったし、葛川家が戦をするとなると否応なしに兵を供出しなければならないのがどうも面白くないというのが実際のところであった。

 それも正直かなりひどいところに配置されるのが現実で、捨て駒とまでは言わないが、それに近い扱いをされたこともあったと散々聞かされてきた。


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