8話
テストが終わり、やっと肩の荷が下りた。
関とはまだぎこちない感じだけど、前のように話してくれる。 たまに睨んでくるけど、気付かないふりをした。
「静ー、かーえーろー」
夕莉がイキイキした顔で俺の教室に顔を出した。 一斉に男子が話すのをやめて夕莉がいるドアを見る。 一瞬静かになった教室で「え?」と一言、夕莉が言うと場が盛り上がった。
学校あるある。 騒がしかった教室がなぜか一瞬だけ静かになって、その後なぜだか笑いがこみ上げてくる。
教室はまた騒がしさを取り戻し、みんながそれぞれ帰る支度を再開した。 夕莉は少し恥ずかしそうに教室のドア付近で小さくなって待っていた。
教科書を机に突っ込んで、カバンを掴み教室を出た。
「関は?」
「日直でやることあるから、先に帰ってだって」
「そうか、日直か」
「うん、日直。 気怠そうにしてた」
関のいる教室をちらりと見て、下駄箱に歩き出した。 夕莉は小走りになって俺の横に並んで歩いた。
夕莉とたわいのない会話をしながら下校した。 「数学はどうだったのか」とか「あの動画が面白かった」とかいろいろ。
俺が楽しいと思うのはこういうのだ。
そして俺がやりたいのは————
俺は歩みを止めると、不思議そうな顔をして夕莉も歩みを止めた。
「どうしたの?」
「この前、夕莉が言ってたこと、少しだけ考えてた。 迷ったら楽しいことをやれってやつ」
夕莉は「あ~、あのこと」と思い出したように頭を縦に振った。
「それで、スッキリしたの?」
「まぁ、一応」
「聞いてもいい?」
「青い春を感じるからヤダ」
「え~、自分から話しといてそれはないわ~」
夕莉はケタケタ笑って、執拗に迫ることもなく歩き出した。 俺もその後に続いた。
俺がしたいこと
夕莉と関といつまでも一緒にいたい。
ただそれだけ。 それだけでいい。 特別な関係はいらない。 気を使わない、友達程度でちょうど良い。
俺はもう一度勝手に約束した。
俺はこれからもずっと友達でいる、と。




