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3話

 学校が終わり部活に出る生徒と、帰宅する生徒で下駄箱が混み合う。 それを避けるために、少し教室で友達とだべってから教室を出た。

 期末勉強のために教室に置いていたものも持って帰らないといけない分、かばんが重い。 何度か背負い直して下駄箱に向かうと、立花が待っていた。

 立花は俺を見つけると、「ちょっといいか」と食堂のある方向を指差した。 俺は頷いて、立花について行った。




「近江とは本当に付き合ってないんだよな」


 食堂前の自販機にお金を入れながら、そう言われた。


「付き合ってない。 ただの友達」

「……そっか。 何度も聞いて悪いな。 昼間のことを見てたらついな。 気に障ったら悪い」


 ジュースを差し出しながら人当たりの良い笑顔を向けられた。 初めて会う人ではあるが、性格も良いのだろう。 ただな————


「フォローするのは俺じゃないだろ」


 差し出されたジュースを押し返しながら言った。


「告白はするな、とは言わないけど場所と時間ぐらいは考えてやれ。 あいつ、人目が着くの嫌いだから」

「だよなー。 一応謝ったには謝ったんだけどな。 実は目も合わせてくれないんだ。 よほど嫌だったんだろうな……」

「つーか近江の場合、自分に好意を向ける男子を遠ざけようとするからな」

「……何それ」


 プルタブを何度も爪にひっかけながら、俺の話に耳を傾けてくれる。


「近江は昔から男ウケが良くて、それが原因で中学で仲の良かった友達と仲がこじれてな。 それ以来トラウマになってんだよ」

「……よく知ってるんだな」

「知ってる。 だから俺は友達に徹している」


 プルタブから手を離して、俺をじっと見た。


「君も……」

「話しは、もう終わりでいいだろ」


 逃げるように去ろうとしたら、声をかけられた。


「その、近江の不安を拭ってやれないか」

「……んなのどうやって」

「例えば、まわりのことなんか気にならないぐらい男のことを好きになる……とか」


 なに言ってるんだ、こいつ。


「もちろんできればの話しだけどな……。 それに今の話し聞いてたら、俺が決定的に嫌われてる訳じゃないんだなって。 希望が持てた」

「お前を励ますために話したんじゃねぇ」

「だろうな」


 へっと立花は笑い、すぐ真面目な顔になった。


「でも近江の為っていうなら、このままにもしておけない。 人の好意を受け入れないままじゃ辛くなるだろ。 もっと根本的に解決してやりたい。 俺はそう思う」




 もてる者の見解……。 長い間一緒にいても、分かってやれない感情はある。

 靴を履き替えて、モヤモヤするような感情を持ったまま帰宅した。

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