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光の中で神喰いにそう問いかけたのは創造主ソロモンの死後に産まれた新たなる『創造主アダム』であった。アダムは消えゆく世界を見届け、新たなる世界の創造へと旅立とうとしていた、その右手に小さな木の苗を持ち、左手を男に差し出した。
『汝、生を欲すると言うのなら、我が手をとれ、名も無き狼の子よ』
神喰いは迷わず創造主アダムの手をとり、導かれた先は新世界『ルーフィア』、そこは緑溢れる美しい世界だった。アダムは世界の創造の間、男を傍らに置いて好きにさせていた。
アダムが神喰いを連れ、その上自由まで与えた訳はアダムの中に残る先代の創造主『ソロモンの記憶』の為だった。先代のソロモンは神喰いを酷く憐れんでいた、流れゆく時に翻弄され、それでも流されまいと足掻く神喰いの姿は心優しいソロモンの哀れを誘い、そして抗いがたい『知りたい』という欲求を沸きあがらせた。
『創造主』とは世界を創る唯一無二の絶対的存在であると同時に、世界とは如何なるものかと言う事を『学ぶ』無垢な存在でもあった。創造主は世界を学ぶ為だけに世界を創り、始まりから終わりを備に観察し、一つの結論を出すと再び新たな世界を創り、世界とは何かを学び続ける。
『学習』とは創造主にとって抗いたい本能であり唯一の目的、神喰いを新世界に迎え入れたのも神喰いという道を選んだ男が行く先を『知りたい』という想い、ただそれだけであった。
そして新世界はアダムが古い世界から持ち込んだ苗を新たな大地に植え形が完成した。アダムは最後に世界を閉じ、自分は世界を外から観察する計画をしており、まさに世界を閉じようとしたその一瞬の隙を付き、神喰いはアダムに襲いかかった。
アダムの持つ創造主の力を狙っての襲撃、一瞬の遅れをとったアダムは多くの血肉を奪われるも一命を取り留め、前の世界から持ち込んでいた木の苗に逃げ込んだ。その木の苗は先代のソロモンが自分の死後に生まれる新しい創造主の為に寝床として造った木で、新しい創造主の力を手に入れた神喰いでも手出しの出来ない不可侵領域であった。
その後、アダムは弱った体の回復の為に木と共に長く眠りに就くこととなる。