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そして、男は次々と神を喰らっていった。
目的も未来も全く見えなかった、いくら神を喰らった所で少女を取り戻す方法は見つからず、いつしか男は『人間』ですらなくなり、神々から恐れと侮蔑を込め『神喰い』と呼ばれる存在へと変わっていた。
そして幾千もの時が過ぎた頃、愛しい少女を取り戻す為の方法を男は【過去を司る神】を喰らう事でようやく手に入れたのだ。男は狂ったように笑い声を上げ狂喜した。
そうだ、世界を一から創りなおせばいいのだ
世界の歴史を手に入れた男は文字通り歴史を一から作り直せばいいと考え付いたのだ。創世から作り直せばいずれ愛しい少女も産まれてくるという妄想に、男はとりつかれたのだ。
男に漸く目的がうまれた瞬間だった。
だが創造主ソロモンの『死』により、男の望みは永遠に叶わなくなった。
男は再び目的を失った
世界を創れるのは創造主のみ、その唯一の存在であったソロモンは寿命を迎えこの世を去ってしまった今、男が望む力は無くなってしまった。
そして、ソロモンの死後まもなく世界は崩壊を迎えようとしていた。
それは、創世より定められた審判であった。ソロモンの死と共に生まれたのは『審判者、光の神デルト』、創造主と対極に位置する『破壊の神』眩いその光で触れる物すべてを消しさる原初の光。
審判者は世界の存亡を見極める唯一にして絶対の存在、光の神デルトは長い年月をかけ世界を巡り、人を、神を、大地を、海を、空を、生きとし生けるもの全てを余すことなく見まわし最後の審判を下した。
『私はチャンスを与えたつもりであったが、人も神もそれを正しく理解せず、神は人に与えすぎ、人は神を軽んじすぎた。人も神も『世界』への感謝を忘れ、醜い争いと血により尊い世界を穢した罪は重い! 未来を繋ぐ事を忘れた者たちに世界など必要ない。審判者デルトがここに最後の審判を下す、世界は存続するに値せず、全ては光に回帰せよ!』
薄々感づいていた神々は涙を流して悲しみながらも世界の終焉を受け入れ、終焉を受け入れられなかった人は、なおも神から与えられる恩恵を争い、ある者は殺し合い、ある者は神に縋り、ある者は審判者に刃を向け終末に逆らおうとする者もいたが世界の終末は止まらなかった。
それでも、神喰いは最後まで喰らい続けた。
眩い光が世界を覆い全てを消し去ろうとしたその時、神喰いの耳に声が聞こえた。
『汝、生を欲するか?』