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Prologue
全ての物語は一人の男から始まった。
神と対峙するは一人の名もなき男、その男から放たれた一言が全ての引き金となる。
『俺の望むもの全てをよこせ!』
言葉だけを聞くならこれほどに傲慢で身勝手な言葉はない、だが男の瞳を見れば誰もがそれを違うと知るだろう。男の眼は純粋な願いと底知れない悲しみで溢れていたからだ。
男は血の涙を流し、その腕には女の躯を抱いていた。
『俺に全てをっ!』
誰が男を責められると言うのだろう
誰が男を咎める事が出来るのだろう
ただ、男は愛する物を取り戻したかっただけ
その想いを否定する資格など誰にも無い
たとえ、その想いが破滅を紡いだとしても……