第6話 物体再生(リボーン)〜ノリコ
ヨウコは更に遠隔催眠を続けた。
その間、今から起こる光景を見せまいと、ユウタは深い眠りにつかせられていた。
初めに見つけた人物には結局、接触出来ず、三人目も、ユウタの時みたいに、直ぐには見つからなかった。
膠着状態が、凡そ30分経過し・・・。
気持ちが途切れ、ふと、油断しかけたその時、遂に、3人目のイオとコンタクト出来た。
<え!?なに!?>
<・・・>
ヨウコは、今回もまた、交信が繋がると同時に、すぐさま、テレメスにより、ジンが自分の総隊長だという催眠をかけた。
同時にキャッチしたジンも、先ほど同様、時空操作で、空間にトンネルを開け、その人物を見の前にした。
だが・・。
そこは、男子禁制の場所。。女湯。
当然、こっちの都合でディメンションを使う訳だから、そういうこともあるだろう。
ジンは自分にそう言い聞かせて、次の行動に出ようと試みた。
だが、ジンはそのシチュエーションが耐えれず、一度開けたトンネルを直ぐに塞いでしまったのだ。
ダメだ・・・。
そう言いながら、時を戻した。
(あの状況では、とても行動できるわけがない。時を早めよう。)
実は、ジンは知らない女性にはめっぽう弱く、会話するのもままならない弱点があった。
幸い、ヨウコは仕事上のパートナーだったため、特に問題なく接触出来ていたが・・・。
少し動揺した状態のまま、さっきの情景を薄っすら浮かべ、時を1時間ほど進めた・・。
これくらいか。
再び、トンネルを開けると、浴衣姿の美しい女性が、鏡の前で髪を櫛で梳かしていた。
だが、ジンはまたも、慌ててトンネルを塞いでしまう。
今度は、・・・鏡・・・。
これはイオにとって、最も脅威となる。
ミラーワールド・・・
今でこそ、鏡は、現実を投影された世界と信じられているが、かつては、影と鏡像こそが真の姿であり、現実世界の人間は、ミラーワールドの者達に生かされている、と語り継がれていた。
イオの伝説は、そのミラーワールドから生まれていた。
イオは能力発動時に、鏡を見続けると、ふるさと「ミラーワールド」へ帰る・・・そういう言い伝えがある。
「危うく、ミラーワールドに引き込まれるとこだった・・・。」
ジンは、更に時を進めた。
今度は、いつもくらいの大きい穴ではなく、覗き穴程度の小さいトンネルを開けた。
そして、ヨウコに一層強力なテレメスをかけるように指示を出す。
ジンはその覗き穴から、恐る恐る覗いたその時!
ジンは腰を抜かしそうになりながら、後ろへ大きく仰け反った。
なんと、その女性は、止まった時間のまま、その穴から、こちらを覗いているではないか。
<バカな!時を止めてからトンネルを繋いでいるんだぞ!>
<・・・ジン。彼女の能力はおそらく、外敵から身を守る能力じゃないかしら。>
<外敵から身を守る能力?!>
<だから、初めに女湯だったのも、二度目が鏡の前だったのも、全て彼女の無意識の中で、ジンが嫌う世界を作り出したんじゃないかと思うの。>
<何だって!?だが、確かに、それなら、今までのも説明がつくな。>
<今は強力なパワーで彼女を催眠にかけているから、危険を察知して、その穴の方向に自ずとカラダが向いてたんだと思うの。>
無意識の弱点攻撃による防御。。。
これほどの能力者までいるのか。。。
<それにしても、ヨウコのテレメスなしでは捉えきれない能力だな・・・>
ジンは小さな穴を大きくして、その女性を抱え上げ、こちらの空間へ引き込んだ。
そして、時を再び戻す。
「・・・」
「大丈夫?」
ヨウコが優しく声をかけた。
「ヨウコさん!・・・そ、総隊長!!」
「お、おう。気がついたか。」
ジンは、動揺を見せまいと、その女性の方を見ないように、反対側を見ながら、腕を組んで威風堂々とした姿を示した。
「自分の名前と能力は覚えている?」
ヨウコが女性らしく、優しく質問した。
「はい。私の名前は大林 紀子。」
「!!!」
ジンは自分の嫁と同姓同名だったことに驚きを隠せないながらも、顔を見れなかった。
「能力は物体再生です。」
<物体再生!!?>
<・・・まさか・・・>
自分が招集依頼をかけておきながら、いざ、彼らを目の前にすると、震えが止まらなかった。
その震えは恐怖からではなく、これから満ち溢れる組織への期待からのものだった。