第5話 衝撃波(インパクト)〜ユウタ
ヨウコが遠隔催眠で探し始めて、僅か数分。
先ず初めに、直ぐに、探していた一人と交信出来た。
だが、その交信は直ぐに断ち切られてしまう。
「え?どういうこと。。私の能力は一方的に心の中に入る催眠なのに。。なぜ打ち消せるの?」
次の瞬間・・・。
<ははは。これが、僕の能力だからさ。>
その声の主は、さっきヨウコが初めに呼びかけた人物だ。
<驚いたよ。この能力は僕だけのものだと思っていたからね。>
<実は私も驚いているわ。世の中に、こんなたくさんイオと呼ばれる人たちがいるだなんて。>
<ところで、君の能力は、テレメスかい。そうやって、みんなに催眠をかけて、自分の手下にしようとしているんだろうけど、それは俺には無理ってもんだよ。>
<・・・>
<ね。今、催眠かけようとしたでしょ。でも、ムダムダ〜。ははは。>
ヨウコは怖くなってきた。
自分の能力が絶対だと思っていたのに、なんと、同じ日に、二度も、催眠にかけれない人物に出会ったからだ。
<と、言うことで。またっねぇ〜。>
<ちょっと待っ・・・>
交信は途切れた。
なぜ読めなかったのか。。。
今の人物の能力は何だったのか・・・。
納得がいかないまま、再度、別の人物にチャレンジした。
次は比較的早くキャッチ出来た。
<なんだ!>
その声の主は、今度は何事だと言わんばかりに怯えていた。
さっきとは別の人物だ。
ヨウコは今度こそ交信が途切れる前に、テレメスで催眠を掛け、自分の意のままに操る様に持っていこうとした。
<・・・>
<・・・。。わかりました。>
非常に催眠がかかりやすい相手だった。
早速、ジンが察知し、時空操作でその人物の確保に乗り出す。
ヨウコは、その一部始終を見て、改めて、ジンのパワーの脅威に驚かされた。
◇
先ず、ジンはディメンションで空間に穴を開け、テレメスで催眠にかけた人物を出した。
一見、ただ、映像が空中に投影されているだけだと思っていたものが、実は、こちらの空間とあちらの空間が繋がっていて、一種の距離のないトンネルになっているのだ。
その人物は、ちょうど20歳後半といったところか、まだ、あどけなさが残った、177cmほどある、今風のスポーティーな青年だ。
トンネルが繋がった場所を見る限り、そこは、道場なのか、畳の上で、道着を着た人たちが、組み手の練習をしているところだった。
だが、驚くことに、その練習風景は静止画の様に、そう、まさに一枚の写真の様に、全員が停止していた。
そう、まさに、向こう側の空間だけ、時間が停止していたのだ。
◇
(ジンの能力、、、信じられないわ・・)
ジンに脅威さえ感じた。
(この能力ですら、適わない相手って、一体・・・)
ヨウコは今すぐ、ここから逃げたい衝動に駆られていた。
ジンは、練習途中の格好のままの青年をこちらの空間に移動させ、
「ヨウコ。今、この道場にいる、いや、彼に関連した全ての人に、テレメスをかけて、彼の存在を記憶から消してくれ。ちょっとの間、彼を借りるんでな。」
ヨウコは、すぐさま、言われた通り、その道場以外にも、親族や友人に至る、関係あるであろう全ての人に、テレメスをかけた。
そして、パラジンは開いた空間のトンネルからその青年を抱え上げ、こちら側へ引き寄せた。
そして、時を動かした。
青年はテレメスにより、「ジンは総隊長」と思い込んでおり、
「あ!総隊長!ここで何をされているのですか?!」
「自分の名を先ずは名乗れ。」
そう言いながら、知るはずもない初めて会うこれからの仲間に、あたかも、無礼者と装い、自己紹介をさせた。
「え?・・あ。はい。自分は、清水 優太です。」
「よし。ユウタ。いいだろう。では、自分の特技を言ったまえ。」
「どうしたんですか?総隊長。忘れちゃったんですか?」
「ばか者!気を失っていたんだろ?!再確認をしてるんだ。」
「は!私の能力は衝撃波。私の手に触れたものは全て衝撃で爆破します。」
「!・・気体も、か?」
「・・はい。もちろんです!空気であろうと、水であろうと、地面であろうと、私が触れるもの全てに衝撃を与えます。だから、総隊長は私を特攻隊長に任ぜられました。」
「・・・そうだったな。記憶は問題なさそうだ。」
そういいながら、ヨウコの方をちらっと見た。
<こいつはヤバイぞ。しっかりと催眠かけ続けてくれよ>
<・・・わかってるわ>
<ところで、特攻隊長って・・・?>
<その肩書きをつけた方が良さそうだったんで、勝手に植え付けたの。>
「わかった。そこに座っててくれ。」
そう言いながら、ジンはユウタの催眠が切れたら・・と考えただけで恐ろしくなった。
時間を止めるよりも早く飛ばされるかもしれない・・・。
しかし、笑みがこぼれた。
「最強の仲間」が出来たことに。