表裏一体
カギ。
それは開かせるためにあるものであって。
ドア。
それは開くためにあるものであって。
ゲーム。
それは楽しむためにあるものであって。
勇者。
それはなにかを救うためにいるものであって。
カチリ
カギをまわす。開いたような音はする。その手ごたえもある。なのに――、
ドアは開かない
ガチャガチャガチャガチャ…
何度も何度もノブをまわしてみる。やはり開かない。
もしや、反対…?そうか、反対なのかもしれない。開いていたのを逆に閉めてしまった。それならば、開かない理由もわかるではないか。実に単純な仕掛だ。などとかすかな希望をもって、絶対に開く、開かない筈が無いと自分に言い聞かせながらもう一度カギをまわす。
カチリ
…手ごたえあり。もし今までしまっていたのだったら、開いている筈だ。
ガチャリ
ノブをまわして、ドアを引く。
ガタンッ
ドアが開くのを「なにか」が防いでいるようだ。何故自分は拒まれるのだろう。
カチリ
もう一度ノブをまわしてドアを引く。
ガタンッ
やはり開かない。何故、自分が…この部屋の主が、こんなにも拒まれなければいけないのだろうか。
はああ、と大きくひとつため息をついて、この開かない、忌々しいドアにもたれかかる。すると――、
ガチャリ…ドサッ
急にドアが開いたことに反応しきれず、思い切り背中から玄関へと倒れてしまった。
…ああ、そうか。このドアは押す式だったのか――…
『チャラリラリラリーン♪
勇者はドアの悪魔を倒した。レベルアップ!
力 +1 魔法 +1 防御 +1 武器(賢者のカギ) +2 』
カギ。
それは閉めさせるためにあるもので。
ドア。
それは閉めるためにあるもので。
ゲーム。
それは終えるためにあるもので。
勇者。
それは傷つくためにいるもので。
勇者。
それはなにかの代価。