一声 オフ会 の Ⅴ
だからこそ意味があるはずなのだ。
さてさて、場所は移動して某有名ドーナツ屋の中、秋以外は三人とも席を守っていた。その時だけは、三人ともつい話すのをためらっていた。
やはり、初対面というものは話しにくいものだ。聖徒でさえも、口を閉じている。
「おーい、待ったか? はい、歩と聖徒はオレンジジュース。それで鈴李さんはコーヒー」
秋はお盆を持って席に戻ってきた。どうやら、ドーナツは買わなかったようだ。
「あっすみません、お金……」
鈴李はあわてて財布からお金を出して秋にわたそうとするが、秋は「いいって」といって笑い、その金を受け取らなかった。鈴李はすみませんというように礼をしてからコーヒーを飲む。
そんな中、歩は上がりまくっていたりする。
上がるのは当たり前。1年ぶりに外に出たと思ったら回りは知らない人ばかり(否、それは好都合なのだが)。
しかも、ジュースまでおごられてしまっている。もう逃げ出せない。
歩はうつむいていた。
「さて、まず自己紹介でもするか、俺から時計回りで」
秋は顔を上げテーブルを囲んでいるメンバーを見回してから、確認するように言う。
「ってことは、俺・歩・聖徒・鈴李さんの順番か」
「えっ次私!?」
歩はとっさに顔を上げる。声が裏返ってしまっている。
(自己紹介なんてできっこないよ。まじめに人と話すのだって久しぶりなのに……。せめて反時計回りな
ら!)
なんて思いながらまた大きく歩はため息をつく。
「そうだけど、俺と同じようにやれば大丈夫。俺は秋。年は14歳の中学二年生。誕生日は八月十七日、以上。じゃ、次は歩」
秋は歩に向って笑いかけるけど、歩の顔から緊張の色は消えない。それでも歩は口を開く。
「はじめまして、歩です。年は11歳で小学六年生です。誕生日は三月二十六日です。えっと、よろしくお願いいたします」
歩はそう話しきると、ゆっくり息を吸ってはぁーと吐いた。すると顔色もよくなり少し落ち着いたみたいだ。
「んじゃ、次は聖徒だな」
「嗚呼、よっ! 俺は聖徒、もっともクリスチャンじゃないけどな。年は十歳の小4だ。誕生日は秘密。特徴はこの長髪。ロンゲとか言ったら許さないぞ」
確かに、聖徒の髪は長かった。体つきが華奢だし顔も女の子っぽいのでたまに女子に勘違いされるが、喋り方からしてどう考えても少年でしかないが。服だって、少年の着るようなチェックのシャツに短パンでしかないし。
「最後は、鈴李さん」
「はじめまして、鈴李ともうします。年は十五歳で中学三年生です」
「えーー!」
歩と聖徒はつい同時に叫んでしまう。
「高校二年生くらいかと思ってた!」
「確かに、中学生っておとなっぽ過ぎるよ!」
「そう、ありがとう。それで、誕生日は十二月九日です。得意技は催眠術。さっき歩ちゃんもかかりかけてたわよ」
「えっ本当ですか? それって聖徒君が来る直前のとき……」
「ええそうよ、いきなりごめんね」
鈴李はにっこり優しそうに微笑む。みんなの気はやっぱりたちまち鈴李に奪われてしまっていた。それと同時に歩はまぁいいかっていう気持ちになって行く。
「なんてね? 今のもそう。尤も、本当に催眠術ってわけでもないんだけどね。もどきもんよ」
鈴李がそういうとみんなもそのことに気づき、笑い出す。この一つのテーブルは早速笑いに包まれていく。
その時はもうはじめてという緊張は、歩の心からもこのメンバー全員の心からも消えていた。
「で、今回オフ会をやろうといいだしたのは何でだと思う?」
秋はみんなを順に見て行く。歩はよくわからないからまた、つい下を向いてしまう。
歩は学校に通っていた時も、そういうことが多かった。わからないから、できるだけ先生に指されたくない。恥をかきたくない。と思うと、歩はついうつむいてしまう。それは人間の心理としては結構自然だと思う。
そして、秋はみんなを一回見てからもう一度歩のほうを見た。歩は視線を感じ顔を恐る恐る、ゆっくりとあげていく。
「歩はわかる?」
秋はその時、一言ただそう言った。歩はその姿勢のまま固まりながらも、目だけきょろきょろと右へ左へやった後、また秋のほうを見る。答えなきゃ駄目かと問うように。秋はこくりとうなづく。歩はこうべをたれた。
(どうしよ。全然わかんないよ、人のことなんか……。だって進意外と会うのなんて何年ぶり? そんな私がわかるわけないよ……。だからといってわからないなんていえるわけない)
相変わらずネガティブに歩は思いをめぐらす。だけど、結局は答えは出ず「わかりません」と歩は答えた。
「ふーん、わからないっか。そうそう、それが正しい答え。俺はその答えが聞きたかった」
「?」
歩は秋のことは結構好きであった。インターネット上であった人の中ではきっと一番だろう。さっぱりしたような性格と、面白いことも言ってくれる優しいお兄さんって言う印象があったからだ。そしてそのイメージは今も崩れてはいなかった。
が、ただこの答えにはその優しいお兄さんという印象とはいささかずれていた。
「あ、訂正。俺は歩がわからないって言う時の声がききたかったんだ。ほら、可愛い声だから」
「そんなことありません! こんな声なんて……」
歩は叫ぶ。店の中って言うことも忘れてつい叫ぶ。
歩にとっての声というものはコンプレックス他ならなかった。歩は自分の声が大嫌いであった。だからこそ、声のことを言われるとついいらついてしまう。進とも声の話をするとそんなふうな叫びあいになることもしょっちゅうである。
でも、秋は大人でそんなことは分かりきったように優しく笑う。
「起こった顔も可愛い」
「へ、変体!」
「……、まぁ確かに可愛いって言いたくなるのもわかるかな?」
「鈴李さん!!」
「にこっ」
鈴李は声に出して笑う。――2対1……かぁ、などと歩は思ってたりするが口には出さない。
「そいつの何処が可愛いんだよ?」
「そうメント向っていわれるのも傷つく」
「おまえ、なんなんだよ」
さらに聖徒はまくし立てる。
「あれ、聖徒君が可愛く見えてきた」
「確かに」
「俺で遊ぶな!!」
何て感じで、軽く軽くオフ会は始まった。
はい、途中からネタが……って感じでした。
もうちょっとちゃんと考えるべきでしたね★




