表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

序章

「や、やめてくれ。殺さないでくれ。あ、あ、か、金か? いくらでも払う! だから、どうか……」


 目の前の金髪のチャラ男が惨めったらしく、命乞いをする。それなりにいい顔が、今や見る影もない。涙や鼻水で顔面がぐしょぐしょだ。勿体ないな、と思いながら男を見下ろす。今の私はきっと、酷く冷めた目をしているだろう。


「何? 今更命乞い? あんたから仕掛けてきたんだろうが。そもそも、どっちかが死なないと終わらないしな」


 我が愛刀の切先を男の首に当てる。男は小さく悲鳴をあげ、後退りしていく。ああ、何やってるんだろう、私。そう思いつつも、私は容赦無く刀を横に薙ぎ払う。すると、男の首から血が吹き出した。私は血飛沫を浴びないように、一歩飛んで、後ろに下がった。


「プレイヤーの死亡を確認しました。10分後に自動返送されます。生存したプレイヤーは帰還準備をしてください」


 女性の声がそう告げた。ゲーム終了時にいつも流れるアナウンスだ。私は男のスマホを手に取り、アイテムボックスとスキルを確認する。


「はあ、ろくなの無いじゃん。親が金持ちでも、ステータスは雑魚、か。まあ、ルーキーだからなぁ。仕方ない」


 うーん、と唸りながら首を傾げる。長い、10分が長い。私は地面に胡座をかいた。地面は芝生で、座り心地は悪くない。しかも、この空間の芝生は不思議なことに、座っても服が汚れない。今の私は着物を着ている。真紅の袴に桜色の着物、撫子色の羽織の上に、向こうが透けて見える素材の羽織だ。そのまた上にカーキ色のフード付きマントを身に纏っている。靴は茶色の編み上げブーツで、腰には紫の鞘の刀、スマホが入るほどの茶色のウエストポーチ、ポーチの中にはポーションが2本。傷を癒すポーションと魔力回復のポーションだ。太股にはサバイバルナイフが1本。袴で隠れるようにしている。


 このゲームでは銃を使う人が多い。刀なんて長い得物、日常での試合ならともかく、イベント時はホテルなどの室内戦闘が多く、不利でしかない。だから、否が応でも私は目立つ。レベルも高く、プレイ歴も2年で、期待の新人として注目されてしまっている。


「5秒後に転送します。3、2、1、0」


 そう聞こえると、世界は光に包まれた。


 眩しくて目を閉じていたが、光が収まったのを感じ、目を開ける。そこは、大通りから1本入った路地だった。転移させられた時と同じ場所。何百回と試合をしてきたが、未だに慣れない。


「ん、三千万か。あと二百万でレベルアップできる」


 スマホで入金額と残高、経験値を確認する。とりあえず、今の格好は目立つため、左手の人差し指に嵌められた金色の指輪を叩く。指輪にはアメジストのような紫色の石が嵌め込まれている。石が僅かに光り、私の服が半袖のシャツとガウチョに変化した。


「相変わらず、不思議な現象だなぁ」


 目の前には男が着ていた服と所持品、画面がバキバキに壊れたスマホ。男が使っていた銃などの武器は完全消滅していた。これで、このゲームが明るみに出ることはないだろう。最近連日ニュースになっている、連続行方不明事件として処理される。刑事の1人や2人、疑問に思っても、上からの圧力で、捜査なんて遅々として進まなくなる。


 こうやって、全て、闇の中に葬られるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ