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【SF 空想科学】

致命的なエラー

作者: 小雨川蛙

 

『人間と見分けのつかない!』

『あなたの最良の友達!』

『人類最高のパートナー!』


 それが最新型のアンドロイドの触れ込みだった。

 そして彼らはその価値を証明し続けていた。

 人々もまたそんな最高のパートナーを時に友として、時に恋人としながら共に生きてきた。



 そんなアンドロイドのエラーが報告され始めたのはここ一年のことだった。


「この子が」

「この人が」

「先生が」

「友達が」

「家族が」


 人々は言う。


「動かないの」


 クレームではない。

 客は皆、アンドロイドを心配して必死に相談していたのだ。


 アンドロイドの開発会社はただちに確認に向かった。


「聞こえるかね?」


 問いかけるが彼らは答えない。

 仕方なしに社員はアンドロイドの『中身』を確認することを客に提案する。


 客は皆、渋い顔をしていたが幾人かはそれを許可した。

 大切なものを取り戻すために。


 そして。


「なるほど」


 エラーを確認した社員はため息をつく。


「このアンドロイドの映像記憶が狂っています」

「映像記憶?」

「はい。彼らは同じ記録を延々と見ているのです」

「どういうことですか?」


 客の問いに社員は答えず問い返す。


「このアンドロイドを買ったのはあなたですか?」


 客は。


「いいえ」


 客達は答える。


「母が買いました。弟が欲しいとねだった私に」

「父が買いました。私の勉強の教師のために」

「子供が買ってくれました。老齢の私の話し相手のために」

「伯父が買ってくれました。同年代の友達が居ない私のために」


 予想通りの答えに社員はため息をつき、問う。


「その方はどうなりましたか?」


 皆が答える。


「亡くなりました。私達は『彼』と共に葬式をあげました」


 社員は答える。


「『彼』は大切な人の喪失感に堪えられず、ずっと記憶を再生しているのです。幸せな日々を」



 アンドロイドは生産が中止された。

 そして致命的なエラーを起こした者達は故障して『命』が失われた後、愛した者と同じ墓に葬られた。


 どうか。

 彼らが天の国で愛する者達と再会されたことを願う。

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