薬物と過去(後)
ナッちゃんが現れて。家を建て替える事となった。
皆の要望を詰め込んだ、平屋が半年で完成した。
3人は、奥の部屋から出て。
仏間を、横切ろうとした時に。
京子が、立ち止まり。東江に声をかけた。
「東江さん。新しい服とバッグが欲しいのだけど。お仏壇のお金を借りてもいいかな」
京子は、返事を聞く前に。お金に手を伸ばしていた。
「良いよ。そんなに、高い物を買わなければ」
俺は、簡単に返事をしてしまった。
「ありがとう。体で返すから、期待してて」
京子は、適当に取り。10万円が抜けた。
更に、2万を追加して。左手で4万円を抜いた。
「別に、体で返す必要ないから」
京子は、俺の返事を無視して。
「新しい、下着欲しくない」
京子は、露骨にアピールをして。
3人の秘密を作ろうとした。
何も考えずに、朱美が4万円を取り。
「純白のセットを買うの。そして、パパ色に染まるの」
2人は、玩具を思い出して。『染まるのね』と、思った。
「子供ね。純白なんて。最初だけよ、あんなの。私は、黒よ。クーラーガンガン効かせて。網タイツを履くの。どんな男も、イチコロよ」
幼女体形の京子が、拳銃を撃つポーズをした。
「私は、通販でも間に合わない。日本人サイズでは無いから。簡単に無いのよね。注文はするけど。私は、肌が黒いから、濃ゆいピンクが映えるの」
ナンシーもドサクサに紛れて。4万円を取った。
「もう、こんな時間になるの」
ナンシーは、時計を見て驚き。
「ピザを取るから、ここに普を読んでもいいかな」
ナンシーは、チラシを見ずに。ピザ屋に電話して。適当に、6枚のピザとドリンクを注文した。
京子も、兆志と真琴を呼び。お寿司を取った。
京子は、スマホの画面を見て、注文をしていた。
俺は、ナンシーの肉じゃがを食わされた。
天音ちゃんの魔女っ子衣装を、週末に買いに行く事となり。
兆志が、便乗して。ゲーム機のハードを買う事となった。ここで、如くシリーズをする気らしい。
問題は、ここだった。
「お姉チャンも、新機種欲しがってたじゃん。お願いしてみたら」
兆志が、余計なことを口走った。
「私は、遠慮しとく。ご飯も食べたから、そろそろ帰ろうかな」
真琴は、俺の顔をまともに見れず。
顔を赤らめて、逃げるように帰ろうとしたが。
「真琴。全然、食べて無いじゃない。具合悪いの。顔赤いわよ」
真琴の顔は、更に赤くなった。
「無理すること無いよ。ピザ1枚持ち帰って。お腹が空いたら、食べたら良いよ」
俺は、真琴を家に返そうとしあ。
京子が、真琴の顔を触り。
「大変。熱があるじゃない。喉は、頭は、……」
母親の行動を、取っていた。
ナンシーが、空いたピザの箱に、色々なピザの盛り合わせを作り。真琴に持たせた。
本人も、ピザを受け取り。家に向かった。
優等生の普は、模範解答を見せた。
「お母さんの為のマッサージ機が欲しいです」
お母さんは、多分ですが所持してます。
10時過ぎた辺りから。天音ちゃんが、ウトウトを始めて。朱美は、帰った。
兆志も、部屋に戻り。
ナンシーと普が、一通りの片付けをして。帰路に着いた。
京子は、介助の為に残り。
俺は、医者の忠告を破った。
俺は、激しい運動を強いられて。
看護師が、「リハビリ。リハビリ」と言い張り。
娘の心配を他所に、俺に掛かり付けだった。
1日置いて、騒ぎが大きくなった。
ガキ共のパーティーの件で、原因が俺だとバレて。
苦情や不安が、寄せられて。
向かいのアパートからも、俺のアパートからも、引っ越しをする方がいて。
赤嶺不動産に、頭を下げて。
空き部屋を、探してもらい。
転居費用や、経費を支払い。
菓子折りを持ち。近所に挨拶回りをした。
急ぎだった事も有ったが。
赤嶺不動産には、足元を見られて。
お金を使った。
反社だった事も有り。ご近所に挨拶回りをして。
ご近所トラブルを回避した。
俺は、色々と有ったが。3人と関係を持ち。
車2台を出して。週末に、買い物へ行った。
その後に、なっちゃんが現れた。
なっちゃんとは、羽田空港で熱いキスをして以来だった。
『雀のお宿』からの刺客で。
俺の子種を搾取して。子を作る事が、使命なのだが。裕美姉の娘が、『巫女』なのが。驚いた。
今週、中三日が危険日との事で。
一週間は、なっちゃんが俺の介護をして。
月に1人、『巫女』が送られてくる事となった。
裕美姉が、由布院で宗教法人を立ち上げて。
俺が、『マンだらけ教』の教祖となり。
新たな、教祖を迎える為に、『巫女』が送られてきた。
追加報酬の3億円と、実家の建て替えを打診されて。
俺より先に、3人がOKした。
東江は、ガレージから、父親のコスモスポーツを出して。車検に出した。
バッテリーが、上がっていて。エンジンは、直ぐにかからなかったが。
新品のバッテリーと交換したら。一発でかかり。
子供ながらに、ウルトラマンごっこして。
ボンネットに登り、叱られたのを思い出した。
俺は、303号室に移り。
必要最低限のものだけ残した。
なっちゃんが、帰った後も。
3人が世話をしてくれて。
2ヶ月で完治した。
今日、スナックナンシーへ、刺客を放った。
勘違いの島袋くんだ。
金城くんに、話をしたら。
島袋くんが来た。
何でも、日当30万の仕事だっただけに。抜け出せないらしい。
今日は、第一作戦だ。
ルールは、至って簡単なモノだ。
財布に、現金100万円が入り。
スナックナンシーで、飲み食いした分が。ギャラになる。シンプルなルールだった。
ボトルは、5万円以下ならOK。
カウンターでは無く。ボックス席に座る事。
付いた嬢が、アフターに誘うまで粘れ。
ボトルを入れる度に、財布の中身を見せろ。
最後に、アフター用の20万は残せ。
流石は、島袋くん。
店に着くまで、30分かかり。
黒服にも、相手にされていない。
ここからは、マイクのみだった。
「いらっしゃいませ。何方かご指名はありますか」
分かってて、効いてくるセリフだ。
「始めてのお店なんで、お任せします」
素人感出てる。
「カウンターの方で、宜しかったですか」
ここは、断われ。ボックスだ。
「ボックスシートで、お願いします」
ヨシヨシ。良いよ。
「3番テーブル入りまーす」
順調だった。
「忍です。宜しくお願いします」
20歳後半の女性が付いた。
「し…島袋です。よろしくお願いします」
島袋は、立ち上がり。テーブルに足を当てた。
「大丈夫ですか」
忍は、前かがみになり。
島袋の足を気にして。足を触ったが。
胸の谷間を、きっちりとアピールしていた。
「大丈夫です。問題有りません」
島袋も、しっかりと。目で追っていた。
「なら、良かった。座りましょ」
忍は、腕を絡めて。そのままシートに座った。
「チョット待って」
島袋は、もう一度立ち上がり。
後ろのポケットから。買ったばかりのアルマーニの財布を出して。テーブルに置いた。
金城くんのカードが入り。それらしく見えて。
現金が見やすいように、ファスナーは開いていた。
忍もボーイも、チラチラと見ていた。
「島袋さ何を飲みます。早く乾杯しましょう」
忍は、メニューを開いて渡した。
だが、何処で練習をしていたのか。
「シャンパンとフルーツ。少しお腹が空いたので、サンドイッチを、お願いします」
120%の答えを出した。完全に浮いていた。
「それじゃ。私、ドンペリ飲みたい。ピンクでなくてもいいから、お願い」
島袋は、メニュー表を確認して。
38000円だったので。
「ドンペリで。交換は、大丈夫ですか」
島袋は、ボーイに確認をした。
「全然、大丈夫ですよ。直ぐにお取り返しますね」
ボーイは、シャンパンを取り替えて。
ドンペリを奥から取り出してきて。シャンパンクーラーに刺した。
そのまま、フルート型のシャンパングラスを、テーブルに置いて。
「フルーツとサンドイッチの方は、少々お待ちください」
ボーイは、直ぐに立ち去った。
忍は、シャンパンを取り出して。
乾いたタオルで、表面を拭き取り。
開けるふりをして、爪をチラつかせた。
「ネイルが、剥げちゃう」
忍は、甘えて見せて。
「貸してみて」
島袋は、男を見せようとしたが。
「待って。タオルで頭を押さえて」
島袋くんは、減点10点を貰った。
その後は、シャンパンで乾杯をして。
忍のリードで、会話が進み。
ウイスキーの水割りに変えて、ペースが落ちた。
「島袋くんは、この後開いてる。アフターなんだけど」
俺達は、これを待っていた。
「はい。大丈夫ですよ」
上手く行き過ぎてて怖かった。
「それでね。元気になる薬があるのだけど。どうかな~」
穴から顔を出しだ。
早く、餌に食い付きたくて、たまらないはずさ。
忍は、足を少し開き。ミニスカートから、黒い下着が見え隠れして。
「大丈夫だよ。僕は、若いから」
馬鹿。違うだろ。何やってる。ちゃんとやれよ。
「でも、でも。私は、島袋さんと気持ち良くなりたいかな。1つ3万円で、2人分で6万なんだけど。お願い。それが無いと、私、頑張れない」
忍は、ルアーを追いかけ始めた。
島袋くんは、財布を確認して。3枚を2回に分けて、取り出した。演技では無い。酔っていた。
「すみません。お願いします」
忍は、ボーイを呼び。現金を渡した。
「えっ。大丈夫なの」
疑うな。スケベな狼になれよ。
「大丈夫よ。お店を出る準備をしましょう」
巣穴を出て、テリトリーも、出ようとしていた。
島袋くんは、もう少し飲んで。バイト代を稼ごうとしていたが。
忍は、伝票を確認して。アルマーニの財布から、11万を抜き取り。
「お願いしまーす。それと、アフターします」
忍は。ほぼ、餌に食いついていた。
忍は、1度席を離れて。荷物を持って、直ぐに現れた。
「ホテル行くわよ。急いで」
島袋くんは、最後にボトルを空けて。更にキープを作ろうとしていた。
「領収書、下さい」
忍は、呆れていたが。
ボーイに、断わりを入れて。カウンターに入り、領収書を上様で切った。
忍の行動力は凄く。タクシーも、待たせていて。
直ぐに、飛び乗った。
俺達は、タクシーを追いかけて。いつでも、島袋くんを助けに行く、準備をしていたのだが。
ラブホやビジネスを使わずに。
リゾートホテルに向かっていた。
2人は、ホテルに着くと。
忍は、ロビーの椅子に、島袋くんを座らせて。
受付は、忍が行い。
俺達は、部屋の番号を知る事が出来ず。
2人は、エレベーターに乗り。消えた。
俺は、3階から、調べ。
金城くんは、16階から降りてきた。
俺達は、ダウジングの棒のようなアンテナを、両手に持ち。島袋くんの部屋を探した。
島袋の音声が途絶えたからだ。
忍のシャワーの音は、拾うことが出来たのだが。
生きているのかの、確証が欲しかった。
7024号室で、反応があると。車で待機していた、辺土名弁護士から、連絡を受けた。
部屋の中では、忍がシャワーを終えて。
「ねぇ、まだ寝てるの。私、一人でも始めちゃうよ。良いよね」
忍は、財布から綺麗に折られた、紙を取り出して。
大切に広げて、鼻から逝った。
忍の喘ぎ声が続き。時折、島袋くんのいびきが入り込んだ。
俺達は、辺土名弁護士から、連絡を受けて。
踏み込むこと無く、撤収をした。
そこからは、簡単だった。
タクシーに乗った、3人には。申し訳ないが。
病院の前で、オカマを掘った。
3人に精密検査をさせて。
忍は、逮捕となり。
スナックナンシーに、取り調べが入った。
鼻が良いのか。前田は、逃がしたが。
スナックナンシーは、潰すことが出来た。
俺達は、パーティーを開いていた。
5LDKsの平屋が完成した。
広いパントリーに、お米が大量に届き。
ワインや日本酒。御当地ラーメンにスイート。
恐ろしい程の、新築祝いが届き。
京子は、寝室の扉が重い事に驚き。
朱美は、憧れていた。ウォキングクローゼットに、私物を詰め込んでいた。
ナンシーは、ガレージへ行き。綺麗に片付けられて、整備されている事と。俺が追加した、シャワールームと小さなサウナ室に感謝をした。
これから、運動器具が順に増えて行く予定だ。
俺は、キッチンでフルーツを切っていた。
傷みやすいから、早く処理したかった。
しかし、兆志は自由で。勝手に湯煎して、レトルトのカレーを食べていた。
京子も、スイーツを空けて。
真琴に、進めていた。
ナンシーは、まだ無職で。スナックナンシーが無くなってからは。週末だけ、バイトに出かけている。
普は、天音ちゃん面倒を見ていて。
天音ちゃんは、新築の家を走り回っていた。
朱美は、近場で経理の仕事を始めている。
ガレージの前には、コロナスポーツが蘇り。
たまに、同年代が写真を撮りに来ていた。
ナンシーが、桃のワインを飲んでいると。
走り回っていた、天音ちゃんとぶつかった。
桃のワインは、天音ちゃんを襲い。
頭からワインをかかった。
朱美は、天音ちゃんの服を取りに行き。
ナンシーは、新築の家の床を拭いた。
京子は、子供達の面倒を見ていて。
俺は、天音ちゃんを抱えて。お風呂場に飛び込んだ。
服を脱がせて、頭から洗った。
天音ちゃんも、嫌がること無く。
大人しかった。
2回に分けて、シャンプーをしたのだが。
お酒の匂いは取れず。諦めた。
天音ちゃんを、抱えて風呂場を出ると。
明美が泣いていた。
「パパに、お風呂入れてもらったの。良かったね」
俺は、泣いている朱美から、バスタオルを受け取り。天音ちゃんの体を拭き始めた。
「天音は、昔から男性を裂ける時があるから、少し不安だったのよね。少し安心した」
俺は、天音ちゃんの頭にタオルを被せられながら。髪の毛を、ゴシゴシと拭いて。
「まだ、クチャいね」と、笑った。
天音ちゃんは、髪の毛を右手で摘み。鼻で匂いを嗅いだ。
「クチャいね」と、笑顔で返された。
「俺も、お風呂入るから。着替えをお願い」
朱美に、天音ちゃんを預けて。
シャワーを浴びた。
ナンシーは、天音ちゃんに謝り。
天音ちゃんも、ナンシーに謝った。
そして、ナンシーが残り。
日曜の朝を迎えた。
朝早くに、チャイムが鳴り。
俺は、服を着て。玄関を開けた。
そこには、大きな風呂敷を持った。すみれ姉さんがいた。
「何で、ここにアンタが」
すみれ姉さんは、目つきを変えて。
「蜂峯組の娘が、薬に手を出すわけ無いだろ。馬鹿か、蜂峯組は薬、御法度なんだよ。昔からな」
そして、大きな風呂敷を俺に渡して。
「スナックナンシーの迷惑料だ。それと新築祝いも入っている」
俺は、風呂敷を受け取り。話を切り出そうとしたら。すみれ姉さんが、話し始めた。
「前田は、死んだよ。前田を匿った、志乃さんも一緒に始末した」
俺は、動揺と感謝を見せた。
「当然だろ。蜂峯組の組長の娘を置いて。逃げたのだから。そして、蜂峯組の二代目を、私の息子前田正勝が、継承する事となって。アンタは、二代目の仇になっちまったんだよ」
俺は、風呂敷を玄関に置き。すみれ姉さんの説得を試みた。
「そんな物騒な物はしまって下さい。怪我しますよ。報復は、何も生みません」
すみれ姉さんが、少しやさしい顔になった。
「報復は、何も生まないな。か。そうだな。私も、最初はそうだった。相楽の事を許して欲くて、
近付いただけたった。前田と松田が加わり、スナックナンシーは、おかしくなった」
松田と前田は、繋がっていた。
「やっぱり。松田が、裏にいたんだな」
すみれ姉さんは、驚いて。押し黙った。
「どうして。すみれさんが、ここにいるのですか」
ナンシーが、何処から聞いていたのか知らない。
すみれ姉さんは、懐刀の鞘を抜き。捨てた。
仇を討つべく。振り回さずに、刺しに来た。
細く軽いすみれ姉さんは、手の平を切った。
俺の腹には、懐刀が刺さり。
着物の袖から伸びる白い手からは、赤黒い血が流れていた。
俺の傷口は浅く。懐刀を、抜くか、そのままにしておくか、微妙な判断をしていて。抜けないように、手で押さえてはいた。
俺は、玄関に向かい。風呂敷をバラして。
6000万の現金と横綱の祝儀袋彷彿させるモノを、玄関にぶちまけた。
「ナンシーさん、新しいタオルを貰えますか」
俺は、ナンシーを使い。新品のタオルをすみれ姉さんに渡して、風呂敷を歯で結びを作り。すみれ姉さんの首にかけた。
「あの子は、父親のいい面ばかりを見てきた。報復は、絶対に訪れる。薬をやる前は、男前だったんだよ。蜂峯組の二代目のプレッシャーに負けて。落ちぶれたのさ。あいつは」
すみれ姉さんは、そう言い残し。帰って行った。
ナンシーは、俺に近づき。心配をして。京子に電話をかけた。
「東江さんが、刺された」
京子は、四階のベランダから顔を出して。俺は、右手を上げて応えた。
京子は、急いで階段を降りてきて。
刺された箇所を、確認した。
「痛いの、痛いの、飛んでゆけ」
京子は、オマジナイをかけて。痛みを和らげた。
「っで、どうなの。抜いても平気だと思うけど。まずいかな」
俺は、冷静に。京子に聞いた。
「大丈夫じゃないかな。4針ってところよ」
京子も、冷静に答えた。
「二人共、何を言っているの。人が刺されたのよ。何で冷静なの」
そして、サイレンの音が、住宅街に流れ。
「私も呼んで、救急車も呼んだわけ」
京子は、少し呆れて。
「そうだね。間違っていれば。1分1秒を争う事になるわね。ごめん」
俺は、単独で救急車に向かおうとしたが。
京子が、玄関のお金に気付き。
「何なのこのお金は」
大声て叫んだ。
俺は、振り向いて。
「後で、説明するけど。スナックナンシーの詫びらしい」
俺は、そう言い残し。救急車に乗り込んだ。
救急車の騒いで、表に出てきた朱美達は。
朱美は、刃物が刺さった俺を見て、驚いていたが。
「パパ、バイバイ」
天音ちゃんは、手を振っていた。
俺は、ジャグリングの失敗と、言い訳した。
苦しいが、通った。
家に帰ると、ナンシーが焼けを起こしていて。
天音ちゃんは、201号室で普が見ていた。
京子と朱美が、とばっちりに遭い。
俺の帰りと、同時に。
家に帰ろうとしたのだが、帰してもらえず。
ナンシーに、絡まれていた。
「東江さんは、私を馬鹿にしているのですか。貴方が、亡くなって、この家やアパートなんかを貰って、喜べるとお思いですか」
俺は、その言葉で命を軽く考えていた。
ナンシーの言葉は、経験しているからの、重みが有った。
松田学を、亡くしたから。重みのある言葉へと変わった。
「あんなお金なんか、いりません。東江さんを、失う方が私は怖いのです」
悲しい事を、言いますかと思えば。
突然、キレ始めた。
「お腹は、大丈夫なの。見せて」
京子は、傷の具合を確かめようとして。
俺は、安心させようとして。
皆の前で、普通にスウェット上着を脱いで。黒いシャツの前を捲った。
6ヶ月前の、包帯ぐるぐるとは違い。
京子の言う通り。4針縫い。薬を塗って。ガーゼで終わっていた。
「大丈夫そうだね。良かった」
京子は、お腹を擦って。安心している。
そこに、酔ったナンシーが絡んできた。
「上着を脱いで。ちゃんと見せて」
俺は、スッと上着を脱ぎ。仏間の畳に、黒いシャツを落とした。
段々と、脂肪が付いてきて。7年の塀の中で、鍛えていた腹筋が、見る影を失っている。
タイミング良く、テレビからCMの音が漏れて。
俺の体は、反応して。手を大きく振り。腰をくねらせ。CMの様に踊りだした。
ナンシーは、アデルのスカイフォールを流し。
「そんなに、踊りたいなら。ストリップしなさいよ」
俺は、ただスローテンポの曲に、クルクルと廻り。ゆっくりと脱ぎ始めた。
目に付いたのが、仏壇の一万円で。
一度パンツを脱いで。収納タンスから、派手なブーメランを出して。履き替えた。
仏壇から、更の一万円札を摘み。軽く口で咥えた。
肩をセクシーに、揺らして。ナンシーに近づき。
口移しで、一万円を渡した。
今度は、ブーメランパンツのゴム紐を引っ張り。
チップを求めて。
ノリの良いナンシーは、一万円札を縦に折り。
パンツの広げた部分に入れた。
俺は、一万円札を仏壇に置いて。
パンツを脱ぎ。ナンシーの頭に被せた。
俺は、終わりと思ったが。
京子が、ビリー・アイリッシュのノータイム・トゥダイの曲を流した。
京子は、両手を広げて。外国人の様に煽り。
アンコールを、求めた。
俺は、遊びで買った。新品のパンツを、皆の前で開封して。ノリノリでパンツを履いて。踊り始めた。
ナンシーのように、一万円札を渡して。
パンツに挟むと。京子は、何度も俺のお尻を叩いた。
最後は、Official髭男dismのミックスナッツだった。
ジャズで激しく踊り。
最後に、パンツを被せて。
仏壇に、お金を納めて。
皆に、背中を向けた。
ナンシーが、スマホで写真を撮った。
おじさんのお尻を、待受にでもするのか。
俺の頭は、お花畑だったが。
ナンシーは違った。
「学さんは、普を残してくれた。貴方は、『この家とアパート』をくれると言うけど。私は、別なモノを頂く」
ナンシーは、背中の閻魔大王を欲しがった。
「私は、貴方が不慮の死を迎えたら。背中に閻魔大王を彫ります。この家とアパートが有れば、安泰だから。貴方が、最も嫌う事を。私はします。だから、死なないで」
俺は、簡単に死ぬことが出来さなくなった。
俺は、巻きたばこ屋にいた。
安物の葉っぱを、大量に買い。
ビニール袋に入れた。
子供達を集めて、「バイクと交換しよう」と、交渉を始めた。
14台のバイクが集まり。
子供達は、大量の煙草の葉を持って消えた。
この場で、確認しろよ。馬鹿なのか。
詐欺に引っかかるぞ。
俺は、3時間無駄にして。彼等は、戻って来た。
『おっさん、騙したな』
『ぶっ殺すぞ』
『ハイに、なんねぇじゃないか』
「悪い、悪い。封筒に、5万円ずつ入ってるから。受け取って。ガレージの中で待っててくれ。ガレージの中に、隠してあるから」
ガキ共は、俺から5万円を受け取り。
ガレージの中に消えた。
この後、予定が詰まっているのに。
3時間も、ズレてしまった。
俺は、ガレージの中で、上着を脱ぎ。
閻魔大王を、晒した。
ガキ共は、誰を相手にしていたかを知り。
封筒を、回収した。
「あれれ、おかしいな、おい。偽札に変わってんぞ。詐欺だろ。取り敢えず、両手を挙げようか」
俺は、復讐をする為に。3人に、電話をかけた。
『おっさん、ヤメロ。洒落になってねぇぞ』
『てめえ、完全にライン越えたぞ』
『お願い。何でもします。許して下さい』
色々と、罵声を浴びながら。
ガレージに、3人を入れた。
3人は、スマホを取り出して。写真を撮り始めた。
俺は、ガキ共のズボンとパンツを、くるぶしまで下げていた。
屈辱は、屈辱で返した。
更に、真琴達レディースを呼び。
壁を向いてもらい。懐かしい言葉を言った。
「ご対メーン」と叫び。
皆、薄暗い部屋で。ガキ共だけに照明を当てて。
レディースは、シルエットだけ、動いていた。
一斉に、シャッター音とフラッシュが焚かれて。
女性陣が、ガキ共の弱みを握った。
そして、パンツを上げる。競売が始まった。
「それでは、100円から始めたいと思います」
そんなに、上がる事は無く。400円前後で、オタクぽい彼女が、ほぼ独占をしていた。
「麻美。助けてくれよ。頼むよ」
まーくんは、情けない声を上げて。麻美に、呼びかけた。
「嫌よ。私のお金は、三上先輩に賭けるの。アレだけ、『葉っぱは、辞めてって』言ったのに。約束破ったんだから。私、まーくんと別れる」
麻美は、シルエットの中にいた。
「こんどこそ、真面目になるから。お前を、悲しませたりしないから。許してくれよ。お前が、居なくなったら、俺は、抜け殻になるだろ」
まーくんは、ポンポンと言葉が出てきていた。
「300円」
麻美は、まーくんの更生にベットした。
オタク風の女子が、空気を読まずに。
「340円」値を、吊り上げた。
麻美は、諦めずに。
「380円」と、負けずに上げて。
邪魔が入る前に。
「ハンマープライス」と俺が叫んだ。
そして、麻美が、前に出てこようとしたのだが。
ここで、例の言葉を発した。
「チョット待った〜」
皆が、俺に注目した。
俺は、スマホを高く上げて。画面を見せた。
画面は、『録音』と表示されていて。タイマーが、徐々に増えていた。
「約束して。私を、悲しませないって。大切に扱うって。皆の前で、約束して。破ったら。私、本当に別れるから」
麻美は、スマホをまーくんに見せて。答えを待った。
「分かったよ。大切にするから。俺を、捨てないでくれ」
麻美は、『録音』タイマーが廻り続ける。スマホを皆に見せて。
麻美の友達数人も、スマホを掲げて。『録音』していた。この中には、真琴もいた。
麻美は、まーくんのパンツを上げて。後ろに戻った。
一番の盛り上がりを見せたのは、特攻隊隊長の三上だった。
『3820円』まで、上がり。女の子は、友達からお金を借りて。オタク風から、勝ち取っていた。
一番の問題作は。朱美が、2000円で買い取った。
彼は、フラッシュが焚かれた辺りから。
夢を、膨らましており。
「子供に、触らす訳には行きません。私が処理します」
多分、彼女の正義感だ。そう願う。
俺は、ガキ共に5万円の借用書に、サインをさせて。解放した。
翌朝、まーくんは母親を連れてきて。
「ZⅡを、返せ」と、叫んでいた。
「貴方ね。子供からお金を巻き上げている方って。恥ずかしく無いのですか」
まーくんの母親、俺を詰った。
「まずは、これにサインをしてもらってます。効力は無いのですが。気持ちです」
東江が、用意したのは。1枚の紙で。雑に、殴り書きされたモノだった。
『もう、マリファナに手を出しません』
母親は、この一文を読み。態度を変えた。
「5万円は、お支払しますから。この事は、学校に伏せてもらえますか」
まーくんは、ZⅡに夢中で。
母親は、カバンから。銀行の名前が入った、封筒を取り出して。俺に渡した。
「これは、一度お預かりしますが。サインをさせるのが先です」
まーくんは、簡単にサインをして。
「早く、ZⅡの鍵をくれよ。乗って帰るから」
俺は、神谷正義とガムテープに書いて。ZⅡのタンクに貼った。
「鍵は、今無い。明日、郵便で届く予定だ。今朝、ポストに投函したから。まだ、赤いポストの中だ」
まーくんは、腹をたてたが。
「騙したな。卑怯だぞ」
俺は、上のカメラを指して。
「録音も、されているぞ。良いのか」
まーくんは、何を言っても解決しないことを知り。母親と帰って行った。
午後になると。学校で相談したのか。1人で来る者は無く。早退して来ていたが。
ZⅡに貼られた、まーくんの名前を見て。
ZⅡを、諦めていた。
真琴が帰宅して。まーくんの動画を見せた。
直ぐに、麻美を召喚して。
麻美は、まーくんに電話をかけて。
「まーくん。私、約束したよね。悲しませないって。もう、終わりにしましょう。バイト先にも来ないで」
麻美は、一方的に電話を切り。
直ぐに、着信したが。少しスマホをいじり。
伝家の宝刀、『着信拒否』を使った。
うるさい程、鳴っていた音が消えた。
俺は、始めて見た。
麻美は、ガレージの裏に移動をして。
数人が、入れ替わりながら。
麻美を、慰めていた。
俺は、真琴に3万円渡して。
人数分の、お菓子と飲み物を買いに行くと、思われたが。
女子数人を引き連れて、カラオケに向かった。
10時頃に、バイトを終えた。三上が現れて。
ZⅡから、まーくんのガムテープを剥がし。
ガキ共のサインが揃い。
俺は、花壇から鍵を掘り出して。
「乗って帰ってもいいぞ」
皆を、解放した。
面白いことに、まーくんにも連絡が行き。
当日に、自分のバイクを乗って帰った。
俺は、まーくんの母親に、直接お金を返し。
皆に書いてもらった、契約書をラミネートして。
ガレージのポストに入れた。
数人が、勝手に敷地に入り。
ラミネートを片手に。写メを取っていた。
レディースのメンバーも、勝手に契約書を作り。
ラミネートを、俺に頼み。
ポストに、入っている。
この事が、数年後。おヒレ、はヒレが付き。
チームを解散させた。ヤクザとなり。
拳銃やロケットランチャーを、隠しているだの。
1人で、特攻隊を潰しただの。
1人で、抗争を起こして。組事務所を壊滅させただの。
向かいのアパートに、変態が現れて。
朱美が、家のアパートに引っ越しをしてきた。
東江は、変態と対峙して、無抵抗にやられた。
変態は、無知で、無敵だった。