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タネナシとキュウコン  作者: 有象む象
5/12

薬物と過去(中)

女性陣とおじさんの過去の会話。

東江の過去とナンシー過去。

朱美のオチ。

賛否あると思いますが。下手なりに書きました。



 「あの子。7歳超えてないもの。お勤めしていたんでしょ」


 あのお喋りが。刑事が、個人情報を漏洩して。元反社には、人権も無いのか。


 俺は、7年勤めたなど。喋んでいないはずだ。


 今、ナンシーとキッチンで。肉じゃがを、こっちの鍋に移動をしているが。


 少し前に、一悶着が会った。




 俺は、ナンシーを追い返そうとしたのだが。


 ナンシーは、「小さな鍋を持って帰る」と言い出して。家に、上がった。


 俺の抵抗は虚しく、あっさりと破られた。


 京子の格好に、驚いたが。


 俺が貸した。スウェットの上着を、京子に渡して。


 「見窄らしい。少しは、隠したらどうなの」


 ナンシーは、最初から攻撃的だった。

 ナンシーのボディーは、グラマラスで。黒人特有のお尻の大きなボディーを持ち。

 普通の日本人には無い、体型だった。


 京子は、カチンと来て。

 ナンシーからの上着を、たたまれたままローテーブルに置き。


 「東江さん。お洋服お借りしますね」


 京子は、仏間へ行き。

 スウェットを裾や袖を折り。


 誰も見ていないが。半裸になり。

 堂々と着替えた。


 朱美は、『我関せず』を、貫いて。天音ちゃんを、宥めていた。


 京子は、濡れたナース服を、縁側に干して。


 1Rが、終わったのか。

 まだ、記者会見のエキシビジョンなのか。

 だが、俺の定位置は決まっていた。


 ナンシーは、一人のシートを使い。大きなお尻を、浅めに腰掛けていた。


 京子も、またスウェットに着替えて。リングインした。

 こちらも、浅めに腰掛けて。三人がけの右端を、占領していた。


 真ん中に、天音ちゃんを挟み。

 朱美は、奥に深く座り。

 左の肘置きの小さな穴を、気にしている。



 俺は、薄い座布団を引っ張ってきて。

 眠気や痛みが飛ぶほど、ピリ着いた空気を味わった。


 開戦の前に、ナンシーが名前を名乗った。


 「表のアパートの201号室に、住んでいます。松田ナンシーです。東江さんとは、ここに越してきた時からの関係で。助けていただきました」


 ナンシーは、ボヤ騒ぎの前に。助けていただいた事を、アピールして。朱美の方を見ていた。


 京子を、見下し。色気で、東江さんに迫って。失敗したのだろうと。勝手に、思っていた。


 そして、東江に対して。

 奥ゆかしい女が好みだと、勝手に思い込んでいる。




 「比嘉朱美です。32歳の独身で。東江さんには、ボヤ騒ぎでお世話になりました。よろしくお願いします」


 拍子抜けの挨拶になったが。

 これが出ないように。羽瀬との戦いには、喋らせなかったのだが。

 最後に見せた、島袋くんにキスしたシーンで。皆を、驚かせた。




 「私は、横井京子。アパートの405号室に住んでます。看護師してます。誤解しているようだけど。東江さんを、お風呂に入れてあげただけなの。

お風呂場で、服が濡れたから。シャツを借りただけで。彼とは何も無い」


 間違では無い。俺は、2R終了だと思っていた。



 「この人嘘をついています。私に、不貞を働いたと、言っていました」


 朱美は、京子が謝罪をした時に。『不貞をした』と言ったのを、覚えていた。


 ナンシーは、更に浅く座り。

 前のめりになった。


 「何も無い。未遂よ。彼が、私に反応するか。口で確かめただけよ。この子に邪魔されたけど」

 京子は、自爆をした。


 ナンシーは、ローテーブル越しに手を伸ばして。

 天音ちゃんは、ナンシーとハイタッチをした。


 「ナイスゥー」

 天音ちゃんは、はにかんだ笑顔を見せた。


 「何が、未遂よ。ちゃんとやっているじゃない。ギルティよ」

 ナンシーが、尻軽をみるような目で、見下した。


 「ギルぴー。ギルぴー」

 天音ちゃんが、ツボに入り。少し騒ぎ。


 「ねぇ。ギルぴーだねぇ」

 朱美も、一緒になった。


 「貴女方は、アレを見ていないから。そういう事が言えるのよ」


 ナンシーは顔をしかめ。朱美は、興味を示した。


 俺は、噛み合ってないことは、理解できたが。アレを、2億だと言い出せなかった。


 「不潔よ。アレだなんて。卑猥過ぎる」

 貴方の体も、十分に卑猥です。エロです。


 「えっ。大きいの。違うの。聞いたらだめなの」

 朱美は、子供の前で。聞こうとしていた。


 「貴女と、一緒にしないで」

 京子が、明美に対して。怒りを表した。


 「横井さんと、私は違います。私は、その日のうちに、寝たりしません」


 京子は、ストレスが溜まっていたのか。先程、中途半端で終わったのが原因なのか。

 朱美が、ラインを越えた。


 「あの子、歳は幾つよ」

 京子は、声を荒げて。


 「貴方は、あの子が、いくつの時に離婚して。幾つで、新しい男を作ったの。私を、そんなふうに見たら。許さないわよ」


 朱美にとっては、ブーメランだった。

 ぐうの音も出ない。


 「確かに。東江さんとは、そんな風になりかけたけど。全然違う理由だから」


 朱美の役得だった。強い言葉に弱く。委縮して、深く反省を見せた。

 京子も、強く言えなくなり。言い過ぎたと反省を見せた。


 「ごめんなさい。言い過ぎました」

 だが。反省は、一瞬だった。


 「でも、彼がいたから。東江さんとも出会えたわけで。慰謝料もいただけたし。私達にとって、愛のキューピットだったのかもしれません」


 頭が、お花畑に戻った。


 2人に対して、もっと萎縮したのが、ナンシーだった。


 「お二人は、離婚されて。何人の方と、お付き合いをされたのですか」


 包み隠さず。京子が、語り始めた。


 「私は、離婚して5年くらいかな。お付き合いした方はいないし。その場限りの恋はあったけど。5人くらいよ」


 年間1人くらいで。ストレスの溜まる職場では、少ない方なのかと、考えてしまった。


 「私は、1年前に離婚したの。結婚していた時も。元旦那が、何回も浮気をして。私は、何度も泣かされてきたの。半年前に、羽瀬と出会って。東江さんと、恋に落ちたの」


 朱美は、俺を見つめて。パチパチと瞬きを繰り返していた。


 ナンシーも、少し興味を示した。


 「貴女は、どうなのよ。そんなスケベな体をして。職業柄、何度も誘われたんでしょ」


 京子は、『私は話したのに。逃げるの。話しなさいよ』なんて考えていた。


 朱美の方も、ナンシーの話に。興味を示していた。


 そして、ナンシーは、重たい口を開いた。


 「私、知らないの。元旦那とも、死別で。皆さんのように、離婚した訳では無いの。ごめんなさい。

もう、6年になるから、忘れた訳では無いのだけど。怖いの」


 ナンシーの、6年間頑張り続けた何かが、崩れ始めた。


 「何度も、そんな話も。食事を、誘われた事もあったけど。私には、普がいたから。同じ女性からも、何度も疎まれて。店を変えて。沖縄に戻ってきて。スナックナンシーを、作ったけど。向いて無く。そんな時に、東江さんに助けて貰ったの。生きる勇気を貰ったの。あの人を、思い出に、しても良いのかなって。思えたの。だから」


 俺が、聞くに耐えられなかった。

 そして、元旦那の事も知りたかった。


 「申し訳ございません。俺が、相楽を地獄に落とさなかったばかりに。松田学さんが、亡くなってしまった。松田さんさえ良ければ、この家と、アパートと家のお金を、受け取ってもらえないだろうか」


 俺は、無理に土下座をして。頭を床に擦り付け。謝罪をすることが出来た。



 京子は、驚き。

 朱美は、両手の指を口に当てて。

 天音ちゃんは、俺の背に乗った。


 ナンシーは、涙を流していた。


 「何で。悟さんがここに来たの。違うの。悟さんは。でも、そうじゃ、ないの」


 ナンシーさんの壁は、崩壊していた。


 「その前に、東江さんの事を教えて欲しいの。相楽死刑囚の事も、知りたいの」


 ナンシーは、椅子から降りて。俺に手を差し伸べていた。


 俺は、背中から天音ちゃんを降ろして。

 過去を語り始めた。




 『俺は、ここで17まで育った。

 父親は、外に女を作り。

 母親は、ここで肩身の狭い思いをしていた。 

 祖母は、母親の財布から、パチンコ代を抜き取り。

 祖父は、見て見ぬふりを、繰り返していた。

 俺は、そんな家庭が、嫌だった。

 見て見ぬふりする。祖父に、似ているとも感じていた。


 そんな時に、両親が離婚をした。

 一人息子だった俺は、ここに残ると。誰しもが、思っていた。


 あの母親でさえも。横浜に付いて来るとは思った無かった。


 俺は、高校を転校して。バイクにハマり。

 バイトに明け暮れ。高校を、ギリギリで卒業し。

 喫茶店のバイトから、スナックのボーイとなり。ソープの呼び込みになった時に。


 始めて、傷害罪で。起訴されて。そのまま2年半お勤めを果たした。


 24歳で出所して。黒井組の組長から、盃を貰った。

 そんな時に、沖縄に戻ってきた。

 畑だった場所は、大きなアパートに変わり。

 母が手入れしていた花壇は、黒い影を落としていた。

 俺は、この家のチャイムを鳴らした。


 祖母は、俺が戻って来たと叫び。

 祖父は、玄関まで迎えに来た。

 父親は、遠くで新聞を読んでいて。

 俺は、玄関にも入って無く。


 入口で、母が亡くなった事を伝え。日帰りした。


 そこから1年して、2年のお勤めをして。


 27歳の出所後に、組長に呼ばれた。

 黒井組長は、俺を一人娘のお世話係として任命して。

 菊乃お嬢様のアプローチに負けて、お付き合いをスタートさせた。

 黒井組長に、報告する時は、緊張していた。


 その頃、黒井組の若頭をしていたのが、前田だった。

 前田は、俺と菊乃嬢との交際を、喜び。

 黒井組の若頭を降りて、組を抜けると言い出して。

 黒井組が、2つに割れて。

 半分が、前田について行き。

 半分が、残ってくれ。俺を支えてくれた。


 割れたけど。前田の奥さんは、蜂峯組の娘で。いずれは、蜂峯組に行く事にはなっていて。早まっただけだった。

 前田に、付いて行った組員達も、出世コースだった。


 順調に交際は進み。

 俺は、避妊をしていたが。100%では無い事を知り。


 まな板と出刃包丁を手に、組長室へと入った』



 「ストップ。ストップ。パパ。無精子症だったよね。パイプカットなの」


 朱美が、ツッコミを入れた。


 「聞いてないんだけど。無精子症って何。あれ。種無しって事。何で、組長の娘が妊娠してるんです、答えて下さい」


 真剣に聞いていた。京子が聞いた。


 「焦るな、落ちもある。その前に、トイレ行っていいか」


 俺は、モゾモゾしながら。立ち上がり。トイレへと向かった。


 2人は、動かず。

 京子が、立ち上がり。後を追ってきた。


 狭いトイレに、2人が入り。

 京子は、右手の使えない俺を、介助していた。


 後ろで、三人がトイレの戸を空けて。用を足す俺を、後ろから見ていた。



 トイレから戻ると、ダイニングの椅子が移動されていて。

 俺が、椅子に座ると。天音ちゃんが、膝に座った。


 『俺が、組長室に入ると。黒井組長は、筆を執り。何度も、書き直していた。


 俺は、言うタイミングを伺っていたが。

 黒井組長は、『桃彦』と命名した紙を持ち。

 俺に駆け寄ってきて。


 俺は、小指を落とさずに済んだ。


 妊娠16週目、辺りから男でない確率が上がり。20週目で、報告をした。


 黒井組長は、最後まで諦めてなかったが。桃彦は生まれず。加奈と名付けられた。


 加奈と同時に、

 祖母が逝き。

 立て続けに、祖父が逝った。

 俺は、2人の葬儀を、焼香だけ済ませ。

 2回とも、日帰りをして。


 父親は、1人で葬儀を見送っていた。

 独り身らしい。


 この頃は、加奈も生まれて。俺は、父親を許そうと思い始めていた。


 32歳の時に、組の問題で。4年のお勤めが決まり。黒井組長から、加奈を取り上げることが出来ずに。若頭だった俺が、身代わりに出頭した。


 俺がお勤めしている間に。


 菊乃は、友達と出歩くようになり。

 温泉は、当たり前で。

 海外にも、加奈を置いて、出かけていた。

 旦那の若頭が、お勤めに出てる分。

 黒井組長が、大目に見ていた。


 事件は、そんな時に起きた。


 加奈が、熱を出して。病院に、駆け込んだ。

 黒井組長は、『アレルギーはお持ちですか』と、聞かれて。菊乃に電話をしても繋がらず。

 アレルギー検査を、受ける事となった。


 結果は、問題なかったが。

 俺を嫌っていた、菊乃の母親。

 志乃が、診断書を見て。怒り。


 「男共は、皆お馬鹿で、良いね。加奈は、東江の子じゃないよ。十中八九。前田の子だよ」


 そう言い残して、スナック4件を持って。志乃さんも、前田の元に向かった。


 海外から戻ってきた菊乃は、悪怯れる事無く。

 スカートを捲り。前田と、フィリピンで、コカインパーティーをしていたと語り。加奈の父親は、前田だと白状した。


 その後、黒井組長は、入退院を繰り返し。


 俺が、出所すると。病院に呼び出されて。

 事実を突き付けられた。


 菊乃は、俺と付き合う前に。前田の愛人をしていた。

 それが、組長にバレて。

 出所して直ぐの俺に、彼女の有無を聞き。

 菊乃のお世話係を、させられていた。

 俺は、当て馬だった事を知った。


 マンションに帰ると。加奈は、ガリガリに痩せていて。菊乃は金の催促をしてきた。


 加奈を、病院に送り。菊乃は手切れ金を渡して。消えてくれた。


 俺は、上納金を運ぶ度に、 種無し若頭と揶揄され。黒井組長が亡くなる少し前まで、馬鹿にされ続けた。


 菊乃が、風呂に沈められたのは、聞いた事あったが。亡くなったと知り。

 黒井組長は、志乃の店にカチコミをかけていた。


 単独で、乗り込んで。袋叩きにされたらしい。


 70近い年寄に、相良は容赦なかった。

 俺は、迷惑料として。蜂峯組に、200万置いたが。それが、相楽の勘に触れた。


 「なぁ。俺より下が。指を、10本持っているのはおかしい。東江、1本置いてけ」

 

 俺は、タコ糸の代わりに、イヤホンでぐるぐる巻き。組長が、持参したドスを少し借りた。


 スナックのカウンターから、20年モノのロマネコンティを取り出して。道具を揃えて。


 ボロボロの組長に、手伝いをお願いした。


 俺は、組長が支えるドスの下に、小指を合わせて。思いっきり、ロマネコンティを振り下ろした。


 俺の小指は、左手から離れて。

 ガラス片と、ワインに紛れて消えた。

 辺りは、酒臭くなり。

 俺は、組長を連れて。病院へ向かった。


 2日後、事務所に呼ばれて、包帯を巻いたまま顔を出すと。

 組に、2千万と相楽の左手の親指が、置かれていた。ホルマリンの中で、プカプカ浮いて。

 相楽の分際で、黒井組の若頭の小指を跳ねたのがいけなかったらしい。


 俺は、2000万から、800万使い。

 黒井組長を、会長に上げて。俺が、三代目黒井組の組長を襲名した。


 その後、40歳で、黒井組長が亡くなり。

 黒井組を、解散させた。

 暴対法がきつくなり。土地やソープを売り。加奈が、20歳になったら。800万に渡るように。弁護士に頼み。残りを、組員で分けた。


 俺は、最後に相楽と会った。

 相良は、喫茶店を任されていて。

 俺の方から、会いに行った。


 喫茶店の奥の席に着くと。

 相良は、直ぐに対面の席に着いた。


 俺は、ホルマリン漬けされた。相楽の親指を見せて。


 「SNSで、出品したら。30万の値が付いたよ」

 相良は、大分金欠らしい。

 俺から、奪い取るように、右手を伸ばし。

 俺は、スタンガンを、相楽の右手に当てて。

 相良は、気を失ってくれた。


 俺は、シガーカッターを、相楽の右手の親指に当てて。思いっきり踏んづけた。


 糸を巻くのを忘れた俺は、相楽の血を少し浴びた。


 ホルマリンの親指を2本にして。

 買い手に、サービスした。


 俺は、カウンターで、コーヒーを飲んでいるアンちゃんに、瓶を渡して。30万を受け取った。


 アンちゃんを逃がして。

 警察に電話をして、自首したが。

 非情で悪質と言われ。情状酌量の余地が無く。

 7年の実刑を食らった。

 その間に、父親が他界して。この家とアパートを相続した』


 「これが、俺の過去で。相良との接点だ。前田勝紀って名前に、聞き覚えないかい」


 天音ちゃんは、暇なのか。俺の左の手の平を、叩いて遊んでいる。


 「すみれさんの旦那さんです。あの人が、スナックナンシーを、ハチャメチャにしたんです」


 俺は、驚いた。すみれ姉さんも、関わっていた。


 「すみれ姉さんも、関わっていたのですか。前田の単独じゃなかったのか。蜂峯組は、確か薬物は御法度のはずだが。野田の若頭が、許したとは思えん」


 東江は、難しい顔をして。額に手を当てて、頭皮をマッサージした。


 「違うと思います。すみれさんは、凄くいい人で。私は、旦那さんが怪しいと思います」


 俺は、すみれさんの存在が、気になっていたが。

 ナンシーを、見ていた。


 「学さんのは、事故です。正義感の強い人でしたが。他人に、恨まれる事をしたとは、思えません」


 弟とは、違う感じだ。


 「それに、相良死刑囚は、呂律も回らず。かなりふらついていたと聞いてます。そんな方が、町中で拳銃の引き金を引いて、6発中、5発当たっていたそうです。事故ですよ」


 2人は、同情していた。


 「俺が、あの時に。相楽を仕留めていたら。普くんは、父親を失わずに。貴女も、幸せに暮らしていたと思いますよ」


 俺は、天音ちゃんを、左手で降ろし。

 もう一度、膝を付こうとした。


 「辞めて下さい。そんな事をされても。学さんは、帰ってきませんし。それに……」


 朱美が、口を開いた。


 「結局、アレって何なの。ゾウさんじゃ無いんでしょ」


 京子は、2億を思い出した。

 (この時点では、5000万程失っている)


 「危ない。危ない。お金の事を忘れていた。危うく、同情するとこだったわ」


 京子は、ティシュボックスを抱えていた。


 「だけど。あのお金は、私の老後にするの。ナンシーさんは、可哀想だけど。それはそれ。これはこれよ」


 本人を目の前にして。ズケズケと包み隠さずに、よく言えたものだ。


 「違う。決して、お前の老後資金ではない。あのお金は、少しの間、俺が管理しているだけだ」

 朱美が、お花畑に戻った。


 「マネー、ロングリングでしょう」

 3人は、少し呆れたが。


 「そうね、ロングリングだね」

 京子が、突っ込んだ。


 「何処に有るの。教えて」

 朱美が、言うと。天音ちゃんが、走り出した。


 「ママ。ここ」

 天音ちゃんは、仏間で奉納されている。100万円を指した。

 女性陣が、ゾロゾロと大移動をして。テンプレ営業をした。


 「アレって、これなの。嘘でしょ。これで全部なの。私が、聞いた時は。もっと出しても良いって。強がってた感じ、無かったわよ」


 ナンシーが、玄関での会話を思い出し。少な過ぎると感じた。


 「パパ。お金が、必要になったら。私が貸すね」


 今の朱美は、2800万持っていて。3200万は、俺が立て替えている。


 「もう少し、大丈夫だ。お気遣いありがとう」

 俺は、リビングから、答えた。

 

 「嘘でしょ。貴女いくら持っているのよ。アレが、簡単に無くなるの」 

 京子は、箪笥の下に敷き詰められた現金を、思い出した。


 「そうよね。これが、全財産なわけ無いわよね。アレって何処に有るの」


 ナンシーは、京子の老後資金にされたら。また、東江さんが、たぶらかされたら。阻止、妨害、防壁、私が、東江さんを守る。


 京子は、イソイソと歩き。裏のタンスまで着た。


 「何。女装の服でも入っているの」

 2人は、朱美に幻滅し。


 「あの背中に、女装は無い。逆に嫌」

 ナンシーは、京子よりも早く反応して。


 「身長は、有るけど。細いから、服はいると思う。彼の趣味だったとしても、私の前では辞めてほしい。そうね、却下ね。私の趣味じゃない」


 京子も、無理だと答え。引き出しを開けた。


 「何、BOSSが好きなの」

 BOSSのシャツやズボンとネクタイが、新品の畳まれたままの状態で、出て来た。


 京子は、ナンシーの言葉を無視して。

 綺麗なまま重ねて、引き出しから服を出した。


 出てきたのは、引き出しの下に敷き詰められた、100万円の束が有り。


 「絶対に、マネーロングリングだね」

 朱美が、現金を指した。


 「マネーロンダリングよ。ワザとやってるでしょ」

 ナンシーは、天然を疑った。


 「やっぱり。そう思うわよね」

 京子は、マネーロンダリングの事を語った。


 「ねぇ、パパ。私のお金を、ここに入れても良いかな。アパートよりは、安全だから」

 朱美は、2人を見て。


 「パパに、変な事をしないでね。直ぐに帰ってくるから」

 朱美は、裏から出て。仏間から天音ちゃんを連れて。東江の膝に乗せた。


 京子は、お金が増えると思い。

 ナンシーは、朱美のお金を計算して。区別してもらおうと思った。


 「ねぇ。家とアパートも。このお金も。受け取るつもりなの」

 皆さんの疑問を、京子が聞いた。


 「このお金も、借りたお金も。精算するつもりです。今は、休業してますが。いずれは、店を持たずに。雇われで、働こうと思っています」


 ナンシーは、店を持つ事に。難を示していた。


 「『勿体無い』と、思うけど。『良かったが』正解かな。同情は、するけど」

 京子の本音が漏れた。


 「待って。夜の仕事をしたら、軽い女と思われないかしら。私は、尽くすタイプなのに」

 元旦那以外、知らない体が。 よく言うよ。


 「はい。はい。私は、直ぐに股を開く人ですよ」

 京子が、皮肉交じりに言うと。


 ドタドタと、忙しない女が戻って来た。

 ボロボロの黒い大きなバックをぶら下げて。

 2人の間を、割って入り。


 「チョット何なの。『退いて』とか言えないの」

 京子は、『ムッ』とした口調で。朱美のお尻を叩いた。


 「なに。なに。貴女、幾ら持ってるの。それに、見窄らしい鞄は捨てたら。私のお古を、差し上げましょうか」


 ナンシーは、少し興味が湧いて。カバンを触りつつ。中身の方も、確認しようとした。


 「2700万円。ボヤ騒ぎを起こした、羽瀬からの慰謝料。パパが、引き出してくれたの」


 ナンシーは、100万の札束を数え。

 京子は、白い封筒を見つけた。


 京子の病院の封筒で。中からは、東江の診断書が出てきた。


 「無精子症って。本当だったんだ」

 京子が、診断書を封筒に収め。お金の引き出しに仕舞おうとした時に。


 「ストップ。ストップ。ストップ。そんな物入れないで。お金と一緒にしないで。お願いだから」


 ナンシーが、朱美のカバンを奪い。

 一つ上の引き出しを開けて。中身を抜き取り。

 朱美の玩具が詰まった、カバンを仕舞った。


 「もう、ベッド横に。鍵付きのサイドテーブルを置かないと、いけないわね」


 ナンシーは、チラッと。カバンの中身が見えて。

 デンマ以外にも、大量に入っていて。ズッシリと、重たかった。


 「アレ。全部使ったの」

 ナンシーは、引き気味に効いた。


 「何で、使うから。買ったんでしょ」

 ナンシーと京子は、開いた口が塞が塞がらず。

 しばらく、お互いの顔を見ていた。


 1人で使う、物も有ったが。

 2人で使う、拘束具も有った。

骨折治療中に、家を建て替えて。

リベンジです。復讐します。

リベンジポルノっす。


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