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タネナシとキュウコン  作者: 有象む象
4/12

薬物と過去(前)

東江昴と松田ナンシーの過去の接点が明らかになる。

横井京子が、参加して。モテ期が、始まった。



 俺は、モニターを見ていた。

 ナンシーの部屋に、スーツの男が来ていたからだ。

 この男は、昨日も来ている。


 玄関を、大きくに開けて。

 家の中に入れず。

 かと言って。追い返す様子はない。

 男は、目立たないグレーのスーツで。

 玄関に、手をかけず。

 時折、2人で笑っていた。

 ヤクザでは無さそうだが。


 「一緒になろう」と誘っている場面もある。

 ナンシーは、断っていたが。


 男は、後ろ髪を引かれながら、引き下がったが。

 ナンシーは、大きく頭を下げて。見送った。


 ナンシーは、直ぐにドアを閉めた。



 スーツの男は、帰らずに。こっちに来た。


 防犯カメラを、確認するように。

 堂々と、ガレージを通り。玄関に現れた。


 『ピンポーン』


 俺は、居留守を使おうとしたが。



 出てしまった。


 「どちら様ですか。来る家をお間違えではありませんか」


 俺は、理解できなかった。


 「間違っちゃいない。東江昴さんですよね」


 俺は、フルネームで聴かれた事に。違和感を覚え、警戒した。


 「そうだが。あんたは誰だ」


 スーツの男は、内ポケットに手を入れて。手帳を見せて来て。

 松田 悟 刑事とあった。


 「松田悟だ。東江さんには、2、3質問をさせてくれ」


 年にして、30代前半だが。知らない刑事だ。


 「分かることなら、お答えしますが。知っての通り。最近出てきたばかりなので、ご期待に添えかねるぞ」


 いくら考えても、松田悟を知らない。7年前だと、若過ぎる。組長まで務めたのだぞ。20台前半のガキなどあてがうはずもない。誰だ。


 「問題無い。お前の関連の事件だ。早速だが、松田学巡査を知っているか。横浜の巡査だ」


 完全に知らない。俺がいた黒井組は川崎だ。横浜は、蜂峯組の島だ。スピード違反も駐車違反もした事がない。ましてや、巡査であって。4課ではないヤツなど知らない。


 「正直、全然知らない。勘違いをしていないか。誰なんだ」


 松田悟は、眉間にシワを寄せて。別な質問をした。


 「相良 宗勝は、知っているだろ。指なし相良。お前が、最後に指を落としたのだから」


 流石に、否定は出来なかった。

 俺は、相楽の右手の親指を落として。刑に服した。言い逃れも出来なかった。


 「蜂峯組の相良は知っている。町中で制服警官を射殺して。死刑になった筈だ。薬物反応も出たんだろ」


 俺は、違和感を覚え始めた。


 「松田学巡査は、横浜の駅の近辺で相楽に撃たれた。ロレツが回らない程に、シャブを射って。至近距離からの、5発の弾丸を食らったそうだ」


 俺は、嫌な予感がした。


 「松田学は、俺の兄だ。そして、ナンシーさんの旦那さんで。普くんの父親だ」


 俺は、恐ろしさを感じた。世間は狭いと誰が言ったか知らないが。狭すぎた。


 しばらく間があった後。


 「すみませんでした」


 感情無く。棒読みで。答えた。

 こいつに謝るのは、違うと思った。


 「もういい。ナンシーさんには、金輪際近づくな、いいな。分かったな」


 そう言いはり。消えて行った。


 そこからの俺は、反省をした。

 何故。あんな事を言ったのだろう。

 何故。もっとお金を積まなかったのだろう。

 何故。優しく接しなかったのだろう。

 何故。何故。何故。何故。


 松田悟が、帰ってから酒を飲み始めて。いつの間にか、酔っぱらい爆睡していた。


 さらに、不幸は続いた。


 仏壇のお金が無くなっていた。

 カメラのお陰で。犯人は、特定出来たのだが。


 裏のタンスのお金は、無事だったので。

 犯人を問い詰めようとはしなかった。


 気付いた時は、辺りが真っ暗な深夜で。

 酒と水がなくなり。

 スーパーが開いている時間でも無く。


 俺は、コンビニへと、向かった。


 コンビニでは、若者が多く。

 その中に、真琴を見つけた。

 この頃は髪が長く。茶髪で化粧も濃かった。


 俺は、コンビニの中に入り。

 歳のせいか、アルコールが抜けてないのか。蛍光灯の光に目がなれず。

 暗闇からの光に、目を慣らすのに時間がかかった。


 コンビニの中は静かで、外のガキ共が営業妨害をしていた。


 俺は、籠を取り。

 最初に氷を取った。

 業務用のデカいヤツでなく。小さなヤツを籠に入れ。次に、ビールの6缶パックを入れ。


 スモークチキンとチーズをチョイスし。

 レジへと向かった。


 レジでは、未成年と思われる男女が。

 タバコの銘柄で争い。


 俺は、もう一度、飲料コーナーに戻り。

 常温の2Lの水を、2つ追加した。


 先程のガキは、女が負けたようで。男が叫んで、喜びを表していた。


 俺は、会計を済ませ。重たい荷物を、両手にぶら下げて。帰路についた。



 二度あることは三度ある。


 不意打ちを食らった。


 右手に激通が走り。2Lの水2本を落とした。


 それと同時に、数人の笑い声が起こり。

 俺は、振り返らずに、街灯まで走った。

 左手の荷物を落とし。

 力の入らない、右手を支えた。


 街灯を通り抜ける時に、右手を確認すると。

 腕が、紫色になり。膨らんでいた。


 距離ができた所で、振り返ると。

 ガキ共が、バイクに跨っていた。


 公園やアパートの敷地なんかを通り抜け。逃げる事ができたが。


 アパートの前で、近所迷惑なバイクが、数台止まっていた。


 ここは飽くまでも、住宅街だ。

 辺りの家々が、電気をてけ始めて。


 住人達は、外には出てこないが。カーテン越しや暗い部屋から、ガキ共を見張っていた。


 俺も、便乗して。左手で、110へ電話をかけた。


 「浦添の住宅街で、女性らしき影が暴漢に襲われています。至急来て下さい」


 間違ってはいかない。影なのだから。


 俺は、警察が来るまで。かくれていたが。

 尿意を催して、公園のトイレで用を足し。

 右手を、水で冷やしている時に、見つかった。


 俺は、煙草は吸わずに。運動もしてきた。

 『逃げるだけなら』なんて事にはならなかった。


 『若者には、負けるかもしれない』そう感じた時に、パトカーが、サイレンを鳴らし来てくるた。


 袋小路で、バイクを置いて行く者。

 パトカーの横を、すり抜けて行く者。

 何処かの家に飛び込み。隠れる者。様々で。


 俺は、左手を上げて。警察に身元を明かし。

 警察が呼んだ、救急車で病院へ向かった。


 俺の右手は、折れていた。

 全治、3ヶ月だそうだ。


 俺は、ギプスのままで、家に戻り。

 駐車場に、並べられたバイクを眺めていた。


 俺は、鍵の刺さった。バイクから鍵を抜き。

 アパートの花壇に投げていた。


 警察に、アパートの駐車場に置くことを許可して。

 警察は、タイヤがロックかかったバイクを、移動させたらしい。

 俺は、病院で治療を受けていた。



 数人の若者が、アパートにやってきた。

 その中に、リーダーの宮城がいた。


 俺は、宮城の口から、懐かしい名前を聞いた。



 「東江。前田さんが、港でお待ちだ。『前田勝紀』の名前を出したら。従うって、言っていたぞ」


 前田勝紀。現蜂峯組の若頭補佐だ。

 俺の兄貴分に、当たる人だった。

 相良の指が落ちたのは、この人が原因だ。


 「すまんな。鍵は返すから、俺には会わなかったと伝えろ。そして、あの人と、関わるな。これは忠告だ」


 俺は、花壇から鍵を出して。ガキ共に返した。


 「そんなんじゃないんだよ。お前は、俺達と一緒に港に行くの。そうしないと、『葉っぱ』貰えないだろ」


 ガキ共は、前田の手足として使われていた。ヤツの手だ。女子供でも、薬漬けにして使う。腐ったヤツだ。変わってないらしい。


 「お前達の為だ。諦めろ。そして、マリファナは辞めろ」


 まぁ。無理だよな。他人が、言ったって。はい、そうですがで辞めれる理由ないよな。


 「煩い。ゴタクは、いいから来い」


 俺は、前田と対峙する為に。バイクの後ろに跨り。港へと向かった。


 着いた先は、倉庫街でなく。漁港だった。

 数隻の船が、専用の台車に載せられて。陸に上げられていた。


 人気は少なかったが。前田が居た。

 数年ぶりに会ったが、変わってなかった。


 「前田さん。俺は、黒井組を潰して。足を洗ったんですよ。関わらないでもらえますか」


 俺は、最初からヤクザに戻る気もなく。薬物を売る気などサラサラ無かった。


 「今回は、俺が悪くない。お前が、悪いんだ」


 前田は、コンビニ袋をチラつかせて。


 「おい。あいつをシメろ」


 ガキ共が、16人。束になって、向かってきた。


 俺は、逃げた。ポケットのお金を、すべて撒き散らし。必死で走った。


 途中で、ガキ共がお金を拾い。僅かだが、距離を離したが。


 ガキ共は、馬鹿で。手加減を、知らず。

 バイクで追いかけて来て。

 漁網で、俺を捕らえた。


 そこからは、バイクに引きずられて。

 袋叩きに遭い。

 気付いたら、前田に蹴られて。起こされた。


 「なぁ。これ以上は、松田ナンシーに関わるな。命令だ。いいな。分かったな」


 ガキ共は、前田からコンビニの袋を受け取り。漁港の奥へと消えた。


 「前田さんが、嫌がるなら。トコトン松田ナンシーに関わりますから。何が有るか、知りませんが」


 前田は、俺の腹に体重を乗せて、ケリを落とした。

 俺は、くの字に曲がりながらも、意識を保ち。


 「あんたの尻を拭く。相良は、もう居ないぞ。相良も、ナンシーの件に絡んで、捨てられたのか」


 前田は、半笑いで。


 「アイツほど、良い捨て駒はいない。死刑にはなったが。良い仕事をしたぞ」


 松田ナンシーの過去は、根が深そうだった。


 「間違でも、手を出すなよ。今度は、殺すからな」


 そう言って、前田は消えた。


 俺は、全身打撲で。

 上着は、半分脱がされ。ギブスで、止まっていた。

 ズボンとパンツは、踝まで下げられ。

 パンツを上げる気力もなかったか。



 しかし、真琴が現れた。

 泣きながら、謝罪を続けていた。


 「ごめんなさい。私が、東江さんの家から。お金を盗んだばっかりに。こんな事件になって」


 俺は、必死になり。手を伸ばし。パンツに指をかけて、引き上げようとした。

 数秒前まで、何とも思ってなかったが。

 異性で、未成年だったため。必死でパンツに左手を伸ばした。


 だが、体のあっちこっちが痛く。片手でも厳しいのに、利き手でない、左手だけでは、上がらなかった。


 最終的に、真琴が恥じらいなから。パンツも、ズボンも上げた。

 耐えられない、屈辱の中で。

 俺は、必死に真琴を遠ざけた。


 「相手は、ヤクザだぞ。知っているのか。ポルノとか。お風呂場に、沈められるぞ。逃げろ」


 何度も、説得したが。

 真琴は、謝罪を繰り返し。


 「ごめんなさい。私のせいで。私が、53万円盗んだから」


 俺は、救急車を頼むと。


 「ごめんなさい」


 安心したのか。この場を離れてくれた。


 ナンシー以外の人を、巻き込んではいけなかった。


 俺は、日に2度も救急車で運ばれて。ギブスを新調して。肋骨と左足にヒビが入っていた。


 俺は、全身に包帯を巻かれ。病院から出た。


 左足を、引きずるように歩き。

 無一文で、タクシー乗り場に、向かおうとしていた。


 京子が、左脇に頭を入れて。


 「こっちじゃないでしょ」


 俺を、駐車場に誘導し始めた。


 俺は、最初に誰だか分からなかったが。

 数秒して、真琴の母親だと気付いた。


 「き……、横井さんですよね」



 これが、京子との接点だった。喋った事は、あまり無く。会釈する程度だった。


 「よ~く、ご存知で。ヤクザの大家さん。最近、お盛んすぎるわよ。一ヶ月前に、越してきて。3週間前に、ボヤ騒ぎ。昨日は、子ども達とパーティーって。いったい、幾つだと思っているの」


 申し訳なく。好きでしている訳ではない。

 降りかかる火の粉だ。


 「申し訳ありません。なるべく平穏な日常を、心がけてはいるのですが。沖縄の気候からか、パッションや拳で語り掛けられて。色々と迷惑を被っております」


 誰が、好き好んで。袋叩きを受けたがるか。


 「まぁ、良いわ。好き好んで、パーティーをしているようにも見えないし。お肌の曲がり角に、立つ身としては。寝不足は、対敵なのよね。静かにしていただけるのであれば、不問にしてあげても良くってよ。ヤクザな大家さん」


 お肌の曲がり角。何回曲がった。


 「骨身に染みております。それでは、私はこの辺で。タクシーを拾おうと思います」


 なんだ。早く逃げよう。俺は、左脇を空けて、体重をずらした。


 「だから、そっちじゃないでしょ。独り身なんでしょ。色々と、食料や身の回りの物を、買い足さないと、不味いんじゃないの。買い物に行くわよ」


 忘れていた。足りないものが多すぎる。

 確かに、そうなのだが。


 「生憎と無一文で。家に帰れば、何とかなると思いますので。お気遣い感謝致します」


 京子は、意外と世話焼きだった。


 (意外ではないでしょ。人の事を、棚に上げてるけど。貴方も、意外とズボラよ)


 「無一文なら、尚の事こっちでしょう。人様に迷惑をかけない。お天道様の大通りを、歩きたいんでしょ。立ち止まらないで、さっさと歩く」


 完全に、京子のペースだった。

 諭される感じで。

 京子の、軽自動車の助手席に座っていた。


 「良い。ドア閉めるわよ」


 『バタン』


 力強く。車のドアが閉まり。

 怒られていないのに。反省させられた、気分になった。


 不愉快と、屈辱の音がした。


 俺は、助手席からの車窓に、時が止まったかのような、錯覚を覚え。

 幼き頃に体験した。何も出来ない、歯がゆい気持ちを思い出していた。


 俺達は、道路沿いの大きなスーパーに着いた。


 現実に引き戻され。体のあっちこっち痛いが。カートに、体重をかけて。少しぎこちないが、店内を歩くことが出来た。


 「ねぇ。アレルギーとか。嫌いなものとか、有るの。左手で、食べられるように。カレーライスにする予定だけど」


 京子は、ゴロゴロとした野菜を、カートに入れ始めた。


 「納豆」


 これ以上、弱いところは見せたくないが。

 買われたら困るので。小声で答えた。


 「納豆ね。了解」


 納豆を、入れる予定だったのか。

 京子の手が、少し止まった。


 「別に良いよ。レトルトで」


 俺は、京子のそばを離れて。レトルトや乾麺のコーナーに移動した。


 京子は、卵を入れては戻り。お肉を入れては戻り。を繰り返し。最後は、俺が京子のお尻を追いかけていた。


 レジで、38672円と表示されて。


 「カレー込みで、3割増で良いよ」


 味の良し悪しよりも。

 ゴリゴリのオラオラ営業だった。


 「払わさせてもらうけど。ぼったくってんな」


 京子は、笑顔で。


 「私の特製、愛情たっぷりカレーよ。特製よ。特製。追い納豆は、買ってないけど。とっても美味しいわよ。期待してて」


 京子は、自画自賛している。

 俺も、自炊の経験はあるが。そんなに、香辛料を買わずに。市販のルーを2種類買うだけだった。


 

 また、助手席に1人で座っている。 


 こんな、デートしたこと無かったな。

 経験を、しておくべきだったな。

 まぁ。菊乃が相手だったら、無理だな。今更だ。


 1人で、ニヤついていると。


 カートを片付けに行っていた、京子が帰ってきて。

 運転席のドアが、いきなり開き。

 俺は、大きく驚いた。


 「そんなに、驚く事ある。変な妄想していたんじゃ、ないでしょうね。変態」


 京子は、少し嬉しそうに言ったった。


 そして、京子の軽自動車で、帰路にいたのだが。



 疑問になったので。聞いてみた。


 「なんで、あの時声をかけたんだ。素通りしても良かったんじゃないかとか」


 俺は、無視して欲しかったんだが。


 「何を言っているの。あの場で、無視できるわけないでしょ。アパートの大家を、無視したら。後々問題にされかねないわよ」


 京子に、正論を吐かれたが。


 「それに、一等地のペントハウスじゃないけど。住宅街で、アパートと一軒家を持っていて。そこそこミドルな、おじさんと。仲良くなっても、罰は当たらないと思うの」


 聞いた俺が馬鹿だった。


 「なんだそれ」


 京子は、遠回しに。


 「ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッーって来たの」


 『昭和のアイドルか』と、突っ込もうかと思ったが。


 「きっと、それはアラートだ。危険を知らせているんだよ。アレだ、守護霊に守られているんだよ」


 俺は、適当な事を言った。


 思春期の子供を抱えた、シングルマザーが、ヤンキーとパーティーしたり。ボヤ騒ぎに巻き込まれたりする人と、一緒になりたがる。

 物好き、過ぎるだろ。


 「私は、見る目だけは、持っていると思うのよね」


 それこそ、色々とツッコミどころ満載だが。

 言わないまま、家に着いた。



 京子は、あろう事か。


 俺に、バックパックを背負わせて。

 お米や缶詰、野菜等を背中に背負わせて。

 自分は、カップ麺やトイレットペーパーを、両手いっぱい抱えて。

 家の中に上がった。


 古くボロボロの物は、畳や布団と共に、軽トラで焼却施設へ運び。


 殺風景な家に、真新しい冷蔵庫や家電は、違和感があった。


 京子は、もう一度車に戻り。

 残りの荷物を、家の中に運び入れた。



 そして、俺は京子に襲撃された。


 上着に手をかけられて。

 俺は、必死に抵抗したが。

 肋骨のコルセットに、手をかけら時に。

 京子の一言で、抵抗をやめた。



 「ギプスを、濡らさなければお風呂に入れるよ」


 俺は、汗や漁網の磯の香りを引き連れて、スーパーや京子の車に乗っていた事を知った。

 鼻が、麻痺していたのか、慣れていたのか。


 流石に、京子は慣れていた様子だった。

 背中の閻魔大王を見ても、動揺しなかった。


 バスタブの縁に座らされて、髪を、洗っただけで。清々しい気分になった。

 そのまま、歯磨きをされて。

 右手を、ビニール袋で包み。

 体を洗われた。

 介護されている気分だった。



 京子は、車に戻った時に、車の中が異常に臭く。

 戻ってきた時に、俺の体臭に。怒りがこみ上げての行動だった。


 俺は、濡れた体で。仏間まで行き。

 収納箪笥から、バスタオルを取り出して。体を拭いてもらっていた。


 その時に、東江家のお約束が始まった。


 「このお金本物なの。良く盗まれないね」


 俺は、濁しながら。


 「問題無い。一度だけだ。盗まれたのは。それより、そこから、5万円取っといてくれ」


 俺は、買い物のお金を、支払おうとした。


 しかし、京子は、7万円抜き取り。


 「今月、ピンチなの。助けて」


 七万円を、両手で挟み。俺を、拝んだ。


 「良いよ。お陰で、スッキリできたし。感謝してる」


 その時の、俺の頭の中に。


 松田悟も、

 ナンシーも、

 ヤンキー共も。

 前田のクソも。

 真琴がお金を盗んだことも、

 忘れるくらい。スッキリしていた。 


 京子は、真琴と違い。一物が、ファールカップに収まるように。上げすぎず。下げすぎず。定位置で止まっていた。


 俺は、火照った体を。キッチンのダイニングの椅子に座り。冷ましていた。


 古い扇風機から、強風を受けて。

 パンツ一丁で、肋骨のコルセットに苦戦を強いられていた。


 京子は、俺のせいで。服が濡れて。

 俺の代わりのシャツを渡して。奥で着替えていた。


 京子は、俺が渡したシャツ違い。

 二億のカモフラージュに置いていた。


 BOSSの黒のシャツを着ていた。


 襟のボタンは開け。胸を2つのボタンで、シャツを留め。


 乳首が、何処にあるのか分かった。


 下は、ベージュのフルバックだった。


 (パンツスタイルのナース服で、エッチな下着は、ちょっと違う)



 京子リターンズ。また、襲撃された。


 今度はマジで。椅子から、押し倒されて。

 パンツを脱がされ。


 「7万円は、体で返すから」等と言い。


 力強く、俺の頭にお尻を乗せていた。


 「7万円は、差し上げるから。辞めてくれ」


 時間の概念は無くなり。

 京子は、俺の一物を咥えて。

 俺は、手を伸ばして。京子の胸を揉んでいた。




 そして、時は動き出した。


 「パパ」


 天音ちゃんの声だった。


 「パーパ」


 『ピンポーン』


 「御免下さい。向かいのアパートの比嘉です。お口に合えばよろしいのですが。豚汁をお持ちしました」


 『ガラガラガラ』


 『パパ』


 「すみません。天音が、お宅に上がっちゃいました」


 天音ちゃんは、キッチンでは無く。寝室の方に向かい。隠れんぼを、していると勘違いをして。


 子供らしい所を、探していた。


 俺は、急いでパンツを履き。


 京子は、俺を疑っていたが。

 俺は、否定をし続けた。


 俺は、バスタオルで隠しながら。玄関に向かい。


 「すみません。少しお待ちいただけますか」


 朱美に、一言入れて。

 仏間に行き。スウェットを着た。


 俺は、朱美と天音ちゃんを、追い返そうとしたのだが。


 京子は、何を勘違いしたのか。

 多分、天音ちゃんの『パパ』が原因なのだろう。


 逃げられないと思い。不倫をしてしまったと、勘違いをして。


 パンツと黒シャツ姿で。朱美に謝罪をした。


 ブラジャーを付けておらず。パンツ一枚。


 朱美も、動揺していた。


 『天音。帰るわよ』


 こちらは、天然だ。

 動揺していたが、謝罪された事に。違和感を、感じていなかった。


 「こういう事は、その場で解決したほうが、のちのちの為です。奥様が、居たとは知らず。ご主人様に不貞を働いた事を、反省しております」


 京子は、家の玄関で。朱美に、謝罪をした。


 「いえ。お取り込み中だったみたいで。こちらこそすみません。出直します」


 全然噛み合ってなかった。


 俺は、着替えを終えて。

 天音ちゃんは、鬼の首を取ったかのように。ズボンの裾を、強く握っていた。


 そして、苦しい説明を始めた。


 「こちらは、横井京子さん。看護師師をしてまして。お風呂に入れてもらってました」


 大分、言い訳が苦しいが。半分は事実だ。


 「こちら、少し前に起きた。ボヤ騒ぎの比嘉さんです。天音ちゃんは、実子ではありません」


 そこへ、ナンシーが、登場した。


 『ピンポーン』


 「松田ですけど。肉じゃがを、作りすぎたので。おすそ分けに来ました」


 ナンシーは、女物の靴が目に留まり。

 少し、動揺したが。帰らなかった。


 俺は、2人に向けて。唇に指を当た。


 2人は、頷き。天音ちゃんが、玄関に駆け出した。


 いきなり。ナンシーに向かって「しー」ってアピールをしたが。


 ナンシーは、さほどの動揺を見せず。


 「この子、ボヤ騒ぎの子でしょ。東江さんに、全然似てないもの」


 俺は、慌てて。天音ちゃんに追い着き。

 ナンシーを、追い返そうとした。


 「ワザワザすみませんね。肉じゃがですか。美味しそうじゃありませんか。これは、有り難くちょうだい致します」


 俺は、ナンシーから鍋を奪い。追い返そうとした。


 

 

相良宗勝、前田勝紀、との因縁の過去に。

松田学の死の真相。

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