薬物と過去(前)
東江昴と松田ナンシーの過去の接点が明らかになる。
横井京子が、参加して。モテ期が、始まった。
俺は、モニターを見ていた。
ナンシーの部屋に、スーツの男が来ていたからだ。
この男は、昨日も来ている。
玄関を、大きくに開けて。
家の中に入れず。
かと言って。追い返す様子はない。
男は、目立たないグレーのスーツで。
玄関に、手をかけず。
時折、2人で笑っていた。
ヤクザでは無さそうだが。
「一緒になろう」と誘っている場面もある。
ナンシーは、断っていたが。
男は、後ろ髪を引かれながら、引き下がったが。
ナンシーは、大きく頭を下げて。見送った。
ナンシーは、直ぐにドアを閉めた。
スーツの男は、帰らずに。こっちに来た。
防犯カメラを、確認するように。
堂々と、ガレージを通り。玄関に現れた。
『ピンポーン』
俺は、居留守を使おうとしたが。
出てしまった。
「どちら様ですか。来る家をお間違えではありませんか」
俺は、理解できなかった。
「間違っちゃいない。東江昴さんですよね」
俺は、フルネームで聴かれた事に。違和感を覚え、警戒した。
「そうだが。あんたは誰だ」
スーツの男は、内ポケットに手を入れて。手帳を見せて来て。
松田 悟 刑事とあった。
「松田悟だ。東江さんには、2、3質問をさせてくれ」
年にして、30代前半だが。知らない刑事だ。
「分かることなら、お答えしますが。知っての通り。最近出てきたばかりなので、ご期待に添えかねるぞ」
いくら考えても、松田悟を知らない。7年前だと、若過ぎる。組長まで務めたのだぞ。20台前半のガキなどあてがうはずもない。誰だ。
「問題無い。お前の関連の事件だ。早速だが、松田学巡査を知っているか。横浜の巡査だ」
完全に知らない。俺がいた黒井組は川崎だ。横浜は、蜂峯組の島だ。スピード違反も駐車違反もした事がない。ましてや、巡査であって。4課ではないヤツなど知らない。
「正直、全然知らない。勘違いをしていないか。誰なんだ」
松田悟は、眉間にシワを寄せて。別な質問をした。
「相良 宗勝は、知っているだろ。指なし相良。お前が、最後に指を落としたのだから」
流石に、否定は出来なかった。
俺は、相楽の右手の親指を落として。刑に服した。言い逃れも出来なかった。
「蜂峯組の相良は知っている。町中で制服警官を射殺して。死刑になった筈だ。薬物反応も出たんだろ」
俺は、違和感を覚え始めた。
「松田学巡査は、横浜の駅の近辺で相楽に撃たれた。ロレツが回らない程に、シャブを射って。至近距離からの、5発の弾丸を食らったそうだ」
俺は、嫌な予感がした。
「松田学は、俺の兄だ。そして、ナンシーさんの旦那さんで。普くんの父親だ」
俺は、恐ろしさを感じた。世間は狭いと誰が言ったか知らないが。狭すぎた。
しばらく間があった後。
「すみませんでした」
感情無く。棒読みで。答えた。
こいつに謝るのは、違うと思った。
「もういい。ナンシーさんには、金輪際近づくな、いいな。分かったな」
そう言いはり。消えて行った。
そこからの俺は、反省をした。
何故。あんな事を言ったのだろう。
何故。もっとお金を積まなかったのだろう。
何故。優しく接しなかったのだろう。
何故。何故。何故。何故。
松田悟が、帰ってから酒を飲み始めて。いつの間にか、酔っぱらい爆睡していた。
さらに、不幸は続いた。
仏壇のお金が無くなっていた。
カメラのお陰で。犯人は、特定出来たのだが。
裏のタンスのお金は、無事だったので。
犯人を問い詰めようとはしなかった。
気付いた時は、辺りが真っ暗な深夜で。
酒と水がなくなり。
スーパーが開いている時間でも無く。
俺は、コンビニへと、向かった。
コンビニでは、若者が多く。
その中に、真琴を見つけた。
この頃は髪が長く。茶髪で化粧も濃かった。
俺は、コンビニの中に入り。
歳のせいか、アルコールが抜けてないのか。蛍光灯の光に目がなれず。
暗闇からの光に、目を慣らすのに時間がかかった。
コンビニの中は静かで、外のガキ共が営業妨害をしていた。
俺は、籠を取り。
最初に氷を取った。
業務用のデカいヤツでなく。小さなヤツを籠に入れ。次に、ビールの6缶パックを入れ。
スモークチキンとチーズをチョイスし。
レジへと向かった。
レジでは、未成年と思われる男女が。
タバコの銘柄で争い。
俺は、もう一度、飲料コーナーに戻り。
常温の2Lの水を、2つ追加した。
先程のガキは、女が負けたようで。男が叫んで、喜びを表していた。
俺は、会計を済ませ。重たい荷物を、両手にぶら下げて。帰路についた。
二度あることは三度ある。
不意打ちを食らった。
右手に激通が走り。2Lの水2本を落とした。
それと同時に、数人の笑い声が起こり。
俺は、振り返らずに、街灯まで走った。
左手の荷物を落とし。
力の入らない、右手を支えた。
街灯を通り抜ける時に、右手を確認すると。
腕が、紫色になり。膨らんでいた。
距離ができた所で、振り返ると。
ガキ共が、バイクに跨っていた。
公園やアパートの敷地なんかを通り抜け。逃げる事ができたが。
アパートの前で、近所迷惑なバイクが、数台止まっていた。
ここは飽くまでも、住宅街だ。
辺りの家々が、電気をてけ始めて。
住人達は、外には出てこないが。カーテン越しや暗い部屋から、ガキ共を見張っていた。
俺も、便乗して。左手で、110へ電話をかけた。
「浦添の住宅街で、女性らしき影が暴漢に襲われています。至急来て下さい」
間違ってはいかない。影なのだから。
俺は、警察が来るまで。かくれていたが。
尿意を催して、公園のトイレで用を足し。
右手を、水で冷やしている時に、見つかった。
俺は、煙草は吸わずに。運動もしてきた。
『逃げるだけなら』なんて事にはならなかった。
『若者には、負けるかもしれない』そう感じた時に、パトカーが、サイレンを鳴らし来てくるた。
袋小路で、バイクを置いて行く者。
パトカーの横を、すり抜けて行く者。
何処かの家に飛び込み。隠れる者。様々で。
俺は、左手を上げて。警察に身元を明かし。
警察が呼んだ、救急車で病院へ向かった。
俺の右手は、折れていた。
全治、3ヶ月だそうだ。
俺は、ギプスのままで、家に戻り。
駐車場に、並べられたバイクを眺めていた。
俺は、鍵の刺さった。バイクから鍵を抜き。
アパートの花壇に投げていた。
警察に、アパートの駐車場に置くことを許可して。
警察は、タイヤがロックかかったバイクを、移動させたらしい。
俺は、病院で治療を受けていた。
数人の若者が、アパートにやってきた。
その中に、リーダーの宮城がいた。
俺は、宮城の口から、懐かしい名前を聞いた。
「東江。前田さんが、港でお待ちだ。『前田勝紀』の名前を出したら。従うって、言っていたぞ」
前田勝紀。現蜂峯組の若頭補佐だ。
俺の兄貴分に、当たる人だった。
相良の指が落ちたのは、この人が原因だ。
「すまんな。鍵は返すから、俺には会わなかったと伝えろ。そして、あの人と、関わるな。これは忠告だ」
俺は、花壇から鍵を出して。ガキ共に返した。
「そんなんじゃないんだよ。お前は、俺達と一緒に港に行くの。そうしないと、『葉っぱ』貰えないだろ」
ガキ共は、前田の手足として使われていた。ヤツの手だ。女子供でも、薬漬けにして使う。腐ったヤツだ。変わってないらしい。
「お前達の為だ。諦めろ。そして、マリファナは辞めろ」
まぁ。無理だよな。他人が、言ったって。はい、そうですがで辞めれる理由ないよな。
「煩い。ゴタクは、いいから来い」
俺は、前田と対峙する為に。バイクの後ろに跨り。港へと向かった。
着いた先は、倉庫街でなく。漁港だった。
数隻の船が、専用の台車に載せられて。陸に上げられていた。
人気は少なかったが。前田が居た。
数年ぶりに会ったが、変わってなかった。
「前田さん。俺は、黒井組を潰して。足を洗ったんですよ。関わらないでもらえますか」
俺は、最初からヤクザに戻る気もなく。薬物を売る気などサラサラ無かった。
「今回は、俺が悪くない。お前が、悪いんだ」
前田は、コンビニ袋をチラつかせて。
「おい。あいつをシメろ」
ガキ共が、16人。束になって、向かってきた。
俺は、逃げた。ポケットのお金を、すべて撒き散らし。必死で走った。
途中で、ガキ共がお金を拾い。僅かだが、距離を離したが。
ガキ共は、馬鹿で。手加減を、知らず。
バイクで追いかけて来て。
漁網で、俺を捕らえた。
そこからは、バイクに引きずられて。
袋叩きに遭い。
気付いたら、前田に蹴られて。起こされた。
「なぁ。これ以上は、松田ナンシーに関わるな。命令だ。いいな。分かったな」
ガキ共は、前田からコンビニの袋を受け取り。漁港の奥へと消えた。
「前田さんが、嫌がるなら。トコトン松田ナンシーに関わりますから。何が有るか、知りませんが」
前田は、俺の腹に体重を乗せて、ケリを落とした。
俺は、くの字に曲がりながらも、意識を保ち。
「あんたの尻を拭く。相良は、もう居ないぞ。相良も、ナンシーの件に絡んで、捨てられたのか」
前田は、半笑いで。
「アイツほど、良い捨て駒はいない。死刑にはなったが。良い仕事をしたぞ」
松田ナンシーの過去は、根が深そうだった。
「間違でも、手を出すなよ。今度は、殺すからな」
そう言って、前田は消えた。
俺は、全身打撲で。
上着は、半分脱がされ。ギブスで、止まっていた。
ズボンとパンツは、踝まで下げられ。
パンツを上げる気力もなかったか。
しかし、真琴が現れた。
泣きながら、謝罪を続けていた。
「ごめんなさい。私が、東江さんの家から。お金を盗んだばっかりに。こんな事件になって」
俺は、必死になり。手を伸ばし。パンツに指をかけて、引き上げようとした。
数秒前まで、何とも思ってなかったが。
異性で、未成年だったため。必死でパンツに左手を伸ばした。
だが、体のあっちこっちが痛く。片手でも厳しいのに、利き手でない、左手だけでは、上がらなかった。
最終的に、真琴が恥じらいなから。パンツも、ズボンも上げた。
耐えられない、屈辱の中で。
俺は、必死に真琴を遠ざけた。
「相手は、ヤクザだぞ。知っているのか。ポルノとか。お風呂場に、沈められるぞ。逃げろ」
何度も、説得したが。
真琴は、謝罪を繰り返し。
「ごめんなさい。私のせいで。私が、53万円盗んだから」
俺は、救急車を頼むと。
「ごめんなさい」
安心したのか。この場を離れてくれた。
ナンシー以外の人を、巻き込んではいけなかった。
俺は、日に2度も救急車で運ばれて。ギブスを新調して。肋骨と左足にヒビが入っていた。
俺は、全身に包帯を巻かれ。病院から出た。
左足を、引きずるように歩き。
無一文で、タクシー乗り場に、向かおうとしていた。
京子が、左脇に頭を入れて。
「こっちじゃないでしょ」
俺を、駐車場に誘導し始めた。
俺は、最初に誰だか分からなかったが。
数秒して、真琴の母親だと気付いた。
「き……、横井さんですよね」
これが、京子との接点だった。喋った事は、あまり無く。会釈する程度だった。
「よ~く、ご存知で。ヤクザの大家さん。最近、お盛んすぎるわよ。一ヶ月前に、越してきて。3週間前に、ボヤ騒ぎ。昨日は、子ども達とパーティーって。いったい、幾つだと思っているの」
申し訳なく。好きでしている訳ではない。
降りかかる火の粉だ。
「申し訳ありません。なるべく平穏な日常を、心がけてはいるのですが。沖縄の気候からか、パッションや拳で語り掛けられて。色々と迷惑を被っております」
誰が、好き好んで。袋叩きを受けたがるか。
「まぁ、良いわ。好き好んで、パーティーをしているようにも見えないし。お肌の曲がり角に、立つ身としては。寝不足は、対敵なのよね。静かにしていただけるのであれば、不問にしてあげても良くってよ。ヤクザな大家さん」
お肌の曲がり角。何回曲がった。
「骨身に染みております。それでは、私はこの辺で。タクシーを拾おうと思います」
なんだ。早く逃げよう。俺は、左脇を空けて、体重をずらした。
「だから、そっちじゃないでしょ。独り身なんでしょ。色々と、食料や身の回りの物を、買い足さないと、不味いんじゃないの。買い物に行くわよ」
忘れていた。足りないものが多すぎる。
確かに、そうなのだが。
「生憎と無一文で。家に帰れば、何とかなると思いますので。お気遣い感謝致します」
京子は、意外と世話焼きだった。
(意外ではないでしょ。人の事を、棚に上げてるけど。貴方も、意外とズボラよ)
「無一文なら、尚の事こっちでしょう。人様に迷惑をかけない。お天道様の大通りを、歩きたいんでしょ。立ち止まらないで、さっさと歩く」
完全に、京子のペースだった。
諭される感じで。
京子の、軽自動車の助手席に座っていた。
「良い。ドア閉めるわよ」
『バタン』
力強く。車のドアが閉まり。
怒られていないのに。反省させられた、気分になった。
不愉快と、屈辱の音がした。
俺は、助手席からの車窓に、時が止まったかのような、錯覚を覚え。
幼き頃に体験した。何も出来ない、歯がゆい気持ちを思い出していた。
俺達は、道路沿いの大きなスーパーに着いた。
現実に引き戻され。体のあっちこっち痛いが。カートに、体重をかけて。少しぎこちないが、店内を歩くことが出来た。
「ねぇ。アレルギーとか。嫌いなものとか、有るの。左手で、食べられるように。カレーライスにする予定だけど」
京子は、ゴロゴロとした野菜を、カートに入れ始めた。
「納豆」
これ以上、弱いところは見せたくないが。
買われたら困るので。小声で答えた。
「納豆ね。了解」
納豆を、入れる予定だったのか。
京子の手が、少し止まった。
「別に良いよ。レトルトで」
俺は、京子のそばを離れて。レトルトや乾麺のコーナーに移動した。
京子は、卵を入れては戻り。お肉を入れては戻り。を繰り返し。最後は、俺が京子のお尻を追いかけていた。
レジで、38672円と表示されて。
「カレー込みで、3割増で良いよ」
味の良し悪しよりも。
ゴリゴリのオラオラ営業だった。
「払わさせてもらうけど。ぼったくってんな」
京子は、笑顔で。
「私の特製、愛情たっぷりカレーよ。特製よ。特製。追い納豆は、買ってないけど。とっても美味しいわよ。期待してて」
京子は、自画自賛している。
俺も、自炊の経験はあるが。そんなに、香辛料を買わずに。市販のルーを2種類買うだけだった。
また、助手席に1人で座っている。
こんな、デートしたこと無かったな。
経験を、しておくべきだったな。
まぁ。菊乃が相手だったら、無理だな。今更だ。
1人で、ニヤついていると。
カートを片付けに行っていた、京子が帰ってきて。
運転席のドアが、いきなり開き。
俺は、大きく驚いた。
「そんなに、驚く事ある。変な妄想していたんじゃ、ないでしょうね。変態」
京子は、少し嬉しそうに言ったった。
そして、京子の軽自動車で、帰路にいたのだが。
疑問になったので。聞いてみた。
「なんで、あの時声をかけたんだ。素通りしても良かったんじゃないかとか」
俺は、無視して欲しかったんだが。
「何を言っているの。あの場で、無視できるわけないでしょ。アパートの大家を、無視したら。後々問題にされかねないわよ」
京子に、正論を吐かれたが。
「それに、一等地のペントハウスじゃないけど。住宅街で、アパートと一軒家を持っていて。そこそこミドルな、おじさんと。仲良くなっても、罰は当たらないと思うの」
聞いた俺が馬鹿だった。
「なんだそれ」
京子は、遠回しに。
「ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッーって来たの」
『昭和のアイドルか』と、突っ込もうかと思ったが。
「きっと、それはアラートだ。危険を知らせているんだよ。アレだ、守護霊に守られているんだよ」
俺は、適当な事を言った。
思春期の子供を抱えた、シングルマザーが、ヤンキーとパーティーしたり。ボヤ騒ぎに巻き込まれたりする人と、一緒になりたがる。
物好き、過ぎるだろ。
「私は、見る目だけは、持っていると思うのよね」
それこそ、色々とツッコミどころ満載だが。
言わないまま、家に着いた。
京子は、あろう事か。
俺に、バックパックを背負わせて。
お米や缶詰、野菜等を背中に背負わせて。
自分は、カップ麺やトイレットペーパーを、両手いっぱい抱えて。
家の中に上がった。
古くボロボロの物は、畳や布団と共に、軽トラで焼却施設へ運び。
殺風景な家に、真新しい冷蔵庫や家電は、違和感があった。
京子は、もう一度車に戻り。
残りの荷物を、家の中に運び入れた。
そして、俺は京子に襲撃された。
上着に手をかけられて。
俺は、必死に抵抗したが。
肋骨のコルセットに、手をかけら時に。
京子の一言で、抵抗をやめた。
「ギプスを、濡らさなければお風呂に入れるよ」
俺は、汗や漁網の磯の香りを引き連れて、スーパーや京子の車に乗っていた事を知った。
鼻が、麻痺していたのか、慣れていたのか。
流石に、京子は慣れていた様子だった。
背中の閻魔大王を見ても、動揺しなかった。
バスタブの縁に座らされて、髪を、洗っただけで。清々しい気分になった。
そのまま、歯磨きをされて。
右手を、ビニール袋で包み。
体を洗われた。
介護されている気分だった。
京子は、車に戻った時に、車の中が異常に臭く。
戻ってきた時に、俺の体臭に。怒りがこみ上げての行動だった。
俺は、濡れた体で。仏間まで行き。
収納箪笥から、バスタオルを取り出して。体を拭いてもらっていた。
その時に、東江家のお約束が始まった。
「このお金本物なの。良く盗まれないね」
俺は、濁しながら。
「問題無い。一度だけだ。盗まれたのは。それより、そこから、5万円取っといてくれ」
俺は、買い物のお金を、支払おうとした。
しかし、京子は、7万円抜き取り。
「今月、ピンチなの。助けて」
七万円を、両手で挟み。俺を、拝んだ。
「良いよ。お陰で、スッキリできたし。感謝してる」
その時の、俺の頭の中に。
松田悟も、
ナンシーも、
ヤンキー共も。
前田のクソも。
真琴がお金を盗んだことも、
忘れるくらい。スッキリしていた。
京子は、真琴と違い。一物が、ファールカップに収まるように。上げすぎず。下げすぎず。定位置で止まっていた。
俺は、火照った体を。キッチンのダイニングの椅子に座り。冷ましていた。
古い扇風機から、強風を受けて。
パンツ一丁で、肋骨のコルセットに苦戦を強いられていた。
京子は、俺のせいで。服が濡れて。
俺の代わりのシャツを渡して。奥で着替えていた。
京子は、俺が渡したシャツ違い。
二億のカモフラージュに置いていた。
BOSSの黒のシャツを着ていた。
襟のボタンは開け。胸を2つのボタンで、シャツを留め。
乳首が、何処にあるのか分かった。
下は、ベージュのフルバックだった。
(パンツスタイルのナース服で、エッチな下着は、ちょっと違う)
京子リターンズ。また、襲撃された。
今度はマジで。椅子から、押し倒されて。
パンツを脱がされ。
「7万円は、体で返すから」等と言い。
力強く、俺の頭にお尻を乗せていた。
「7万円は、差し上げるから。辞めてくれ」
時間の概念は無くなり。
京子は、俺の一物を咥えて。
俺は、手を伸ばして。京子の胸を揉んでいた。
そして、時は動き出した。
「パパ」
天音ちゃんの声だった。
「パーパ」
『ピンポーン』
「御免下さい。向かいのアパートの比嘉です。お口に合えばよろしいのですが。豚汁をお持ちしました」
『ガラガラガラ』
『パパ』
「すみません。天音が、お宅に上がっちゃいました」
天音ちゃんは、キッチンでは無く。寝室の方に向かい。隠れんぼを、していると勘違いをして。
子供らしい所を、探していた。
俺は、急いでパンツを履き。
京子は、俺を疑っていたが。
俺は、否定をし続けた。
俺は、バスタオルで隠しながら。玄関に向かい。
「すみません。少しお待ちいただけますか」
朱美に、一言入れて。
仏間に行き。スウェットを着た。
俺は、朱美と天音ちゃんを、追い返そうとしたのだが。
京子は、何を勘違いしたのか。
多分、天音ちゃんの『パパ』が原因なのだろう。
逃げられないと思い。不倫をしてしまったと、勘違いをして。
パンツと黒シャツ姿で。朱美に謝罪をした。
ブラジャーを付けておらず。パンツ一枚。
朱美も、動揺していた。
『天音。帰るわよ』
こちらは、天然だ。
動揺していたが、謝罪された事に。違和感を、感じていなかった。
「こういう事は、その場で解決したほうが、のちのちの為です。奥様が、居たとは知らず。ご主人様に不貞を働いた事を、反省しております」
京子は、家の玄関で。朱美に、謝罪をした。
「いえ。お取り込み中だったみたいで。こちらこそすみません。出直します」
全然噛み合ってなかった。
俺は、着替えを終えて。
天音ちゃんは、鬼の首を取ったかのように。ズボンの裾を、強く握っていた。
そして、苦しい説明を始めた。
「こちらは、横井京子さん。看護師師をしてまして。お風呂に入れてもらってました」
大分、言い訳が苦しいが。半分は事実だ。
「こちら、少し前に起きた。ボヤ騒ぎの比嘉さんです。天音ちゃんは、実子ではありません」
そこへ、ナンシーが、登場した。
『ピンポーン』
「松田ですけど。肉じゃがを、作りすぎたので。おすそ分けに来ました」
ナンシーは、女物の靴が目に留まり。
少し、動揺したが。帰らなかった。
俺は、2人に向けて。唇に指を当た。
2人は、頷き。天音ちゃんが、玄関に駆け出した。
いきなり。ナンシーに向かって「しー」ってアピールをしたが。
ナンシーは、さほどの動揺を見せず。
「この子、ボヤ騒ぎの子でしょ。東江さんに、全然似てないもの」
俺は、慌てて。天音ちゃんに追い着き。
ナンシーを、追い返そうとした。
「ワザワザすみませんね。肉じゃがですか。美味しそうじゃありませんか。これは、有り難くちょうだい致します」
俺は、ナンシーから鍋を奪い。追い返そうとした。
相良宗勝、前田勝紀、との因縁の過去に。
松田学の死の真相。
スナックナンシー2事件へ