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タネナシとキュウコン  作者: 有象む象
1/12

始まりと終わり

東江昴は、大きな平屋に1人で住んでいるて。

不動産の収益と色々している。

のうのうと自適な生活を送る予定だったが。



 朝5時を迎え。スマホの液晶が光り。聞き慣れた電子音が、防音室の部屋で鳴り響いた。


 東江昴は、目を覚まし。スマホのアラームを止めると。辺りが、輪郭を消す。


 クイーンサイズのベッドを、寝返りしながら縁に着き。重い頭を、ゆっくり起こし。昨日、1人で深かった事を反省した。


 もう一度、スマホのを触り。

 スヌーズと予備のアラームを解除して。

 お腹にかかった、タオルケットを剥ぎ取り。転がっている、スウェットの上着を肩にかけ。

 朝の仕事をしようと、アラフィフの体にムチを打ち。寝室のドアを開ける。


 寝室と廊下の気圧の差で。冷気が、廊下に流れ。

 まだ、目が慣れておらず。廊下の間接照明が、眩しく感じ。

 隣のトイレは、眩しすぎた。


 明るい照明に、白いタイル。年なのか、簡単に目が開かない。


 今は、漏らさないが。数十年後は、漏らすかもしれない。

 ちなみに、こちらは大人用で。介護が出来るように、広く作られている。


 俺は、用を足し。廊下を奥に進み。

 裏の脱衣所に着いた。

 ドラム式の洗濯機に、スウェットの上下と黒のシャツに下着を入れて。

 電源とスタートボタンを押し。


 肌寒いので、足早に風呂場に入る。

 ヤッてはいけないと、分かっているつもりなのだが。熱いシャワーを、頭から浴びて。1日のスタートを感じてしまう。

 ヒゲを剃り。耳の後ろは、念入りに洗い。風呂場で、歯磨きを済ませ。


 気分的には、サッパリして。備え付けのラックの下から、丸められたタオルを取り。

 体を拭いている間。

 前傾して、少し摘める脂肪に。ランニングマシーンの量を、増やそうか悩んだ。


 洗面所のドライヤーは、女性用で。坊主頭には必要なく。

 そのまま、ブラブラさせながら。仏間に到着した。

 俺は、5LDKsの平屋に1人で住んでいる。


 若い子向けの、派手なバンツを履き。

 黒の長袖シャツに袖を通し。

 今日の気分は、紺のアディダスの上下にした。

 時計は、身に付けず。タバコも吸わない。


 寝室に一度戻り。スマホでサザンを流し。キッチンに向かった。


 最初に、炊飯器のチェックして。

 大きな冷蔵庫から、お釜を2つ取り出し。セットした。これは、昨日の夜漬けたお米だ。

 もう一つは、味噌汁が入っている。

 具は、大根とポーク(スパム)だ。


 次に、専門業者が送ってくる卵を、箱から10個取り。

 ボールに一度落としてから、軽くかき混ぜ。

 別なピッチャーに、濾しながら出汁を混ぜる。

 四角いフライパンに、冷凍庫から取り出した、ミックスベジタブルを乗せて。弱火で蒸し焼きにし。もう一度、冷凍庫を開けて、湯煎のミートボールを取り出す。


 ミックスベジタブルに、卵を混ぜて。オムレツ作りから始まった。

 だし巻きを作りながら。昨日の残りの金平とチャーシューを冷蔵庫から取り出して。

 ダイニングテーブルを、埋めて行った。


 7時を廻った頃に、ドタドタと音を立てて。キッチンに、姫がやって来た。


 気付かないフリも重要だが。

 火を止めて、包丁を安全な所に有るか。確認して。右足で受けた。


 天音ちゃんは、上を向き。満面の笑みで。


 「パパ、おはよう」


 右足にしがみついた。


 俺は、天音ちゃんを落とさないように、右足を持ち上げ。

 体重を両手で支え。右に2歩移動をして。流し台で手を洗い。

 酒造メーカーの前掛けで、手を拭いて。

 天音ちゃんを持ち上げると。


 「おはよう」


 天音ちゃんを、ハグしていると。

 時間差で、朱美がキッチンに入って来た。


 天音ちゃん越しに、軽くキスをして。

 2人にプレスされた天音ちゃんが。


 「ママはラメー。パパと天音がちゅ~するの」


 天音ちゃんは、母親の朱美を押して。キスの邪魔をする。これも、テンプレだ。


 俺は、少しほっこりして。俺は、天音ちゃんの頬にブチューとキスをし。


 天音ちゃんは、喜んでいた。


 「ごめん、時間無いから。先に手を洗ってきて。準備するから」


 俺は、天音ちゃんを朱美に渡して。

 天音ちゃんのオムレツプレートを作り。

 朱美のご飯と味噌汁を運び。おかずの卵焼き(のり無し)を、リビングのローテーブルに並べる。



 比嘉 朱美 31歳 バツイチ独身。

 俺の会社の経理をしてもらっていて。向かいのアパートに住んでいる。


 比嘉 天音  4歳 朱美の娘


 俺は、キッチンに戻り。お弁当用の卵焼きを仕上げていると。


 京子が、キッチンに入って来た。

 自分の弁当箱を、棚から取り出して。大好きな金平を詰め始めた。


 「おい。そんな事やっていると。また、日の丸弁当の二段にするぞ」


 京子は、過去を思い出して。


 「あれ、すっごく恥ずかしいんだからね。女だから、5倍は恥ずかしくなるのよ」


 自分が悪いのに、俺が怒られたみたいになった。


 「お弁当は、俺に任せて。手を洗って、席に付いててくれ」


 京子は、洗面所に向かってくれ。


 横井 京子 40歳 バツイチ 看護師

 身長が、150cm無く。パワフルな女性だ。あえて多くは語らないが。寝室で、深夜にオペラを歌うので。彼女の要望で、寝室が防音なった。


 リビングに食事を運ぶと、兆志がテレビを見ている。


 横井 兆志 14歳 中学生。

 時折、危ない雰囲気を見せる思春期。

 

 振り返り。横井真琴に。


 「今トースト焼くから」


 横井 真琴 17歳  高校2年生

 族に、属した過去と。PTSDを抱えた少女。


 俺は、急いでキッチンに戻り。トーストをセットして。コーヒーの準備をした。

 3人のマグに、3人のそれぞれのマメを入れ。2人は、ブラックだが。真琴は、茶色の砂糖とフレッシュを添えた。

 兆志と天音ちゃんは、牛乳を出している。


 冷蔵庫から、サラダの小鉢を取り出して。真琴の前に、置いて。


 「押忍。お世話になります」


 散らかった皆の靴を、きれい並べて。

 ランドセルを、玄関の横に置いた。


 松田 普  11歳  小学生

 褐色の肌を持ち。クォーターで。週2で、空手道場に通う。真っ直ぐな小学生。


 俺は、京子の味噌汁を置いて。キッチンに戻るタイミングだ。


 「早く手を洗って、席に付け。ご飯は、運ぶから心配するな」


 普は、空手のポーズを決めて。


 「押忍。有難うございます」と言い。

 急いで、洗面所に向かった。


 俺は、普の食事を運び終えて。

 お弁当を詰める作業に、専念できた。


 しばらくして、朱美が着替えて。メイクも終えていた。


 軽く、キスをして。


 「ごめん、来ちゃった」と少し嘆いている。

 昨日は、朱美のお泊りの日だったが。生理が来たので、アパートに帰った。


 仕方がないことだ。

 俺が、悪いのだから。謝られても困るが。

 ハグとキスを繰り返して。


 アラームが鳴った。消し忘れたわけでわ無い。


 「天音を、お願い」


 最後に、チュと軽く触れ。

 お弁当と車の鍵を持ち。逃げるように消えた。


 「おじさんの蟹座は、今日4位だって。ラッキーアイテムは、油揚げって。それじゃ学校に行ってくる」


 キッチンは、暗黙の了解だが。兆志は、空気が読めない。

 だが、ギリギリも困る。


 「東江さんの財布から、バス代借りててってお母さんが言ってた」


 真琴の声だ。

 俺は、一息ついて。自分のマグに、コーヒーの豆を入れる手前だ。休む暇が無い。


 「仏壇の一万円札抜いてくれ」


 東江家の仏壇には、帯の着いた一万円札100枚が、奉納されている。


 「一万円だと、バスで両替が出来ない」


 俺は、コーヒーを中断して。

 玄関横の固定電話の横に置かれた、蚊取り線香の空き缶に手を入れて。

 レシートと5,000円札を弾き。

 クシャクシャの千円札を3枚取り出して。真琴に渡した。


 タイミング良く。『ピンポーン』と鳴り。

 磨りガラスの向こうに。真琴と同じ、制服の女子が見える。

 俺が、玄関を開けると。

 麻美と早苗がいて。俺が喋る前に。


 「お早うこざいます。東江さん」


 朝から、普とは違う。気合のこもった、挨拶を受けた。

 俺が、タバコを吸っていたら、3秒以内に火が付くレベルだ。


 学校での、真琴の状況を確認しようと思っただけなのだが。


 真琴が、俺の横をすり抜けて。


 「東江さん。行ってきます」


 女子高生らしく。トーストを咥えて。ダッシュした。


 「東江さん。失礼します」


 2人は、言葉より長く頭を下げて。真琴を追いかけて行く。


 俺が、キッチンにも取ると。京子が待ち構えていた。


 いきなり、俺の後頭部に手を回し。

 体重と力で、俺を引き寄せ。

 舌を絡めるキスをした。


 「今日から3日間は、子種を全部私に出して。他では、浮気してもいいから」


 京子の危険日のセリフで。何回も聞いている。


 「だから。無理なんだって。お義父さんの方にも、そう伝えてくれませんか」


 横井 龍三に、直接言いづらいから。京子に、お願いしている。


 「年内に、妊娠しなかったら。体外受精も考えているから」


 京子は、積極的に舌を絡め。こうなると…。


 「今日、仕事を休んで。今から、可愛がって貰おうかな」


 俺は、京子をなだめようと。


 「今晩は、 京子の好きな麻婆を作るから。お仕事頑張ってきて」


 京子は、甘えたい気持ちを抑えて。

 俺に、テッシュボックスを渡し。


 「ごめん、口紅ついてる」


 俺は、ボックスからティッシュを2回抜いて。口紅を拭き取った。

 

 俺の仕草に、『むっ』としているが。

 明日、明後日と連休を入れている手前。簡単に、休むことは出来ず。

 お弁当を持ち。仕事に向かった。


 俺は、リビングに向かい。天音ちゃんの食べ残しを摘みながら、食器を片付け始め。

 水を張った、流しに入れて。

 天音ちゃんの歯磨きをし。

 戸締まりを終えると。保育園に向う。


 途中までは、普の奴も一緒に登校するが。

 友達を見つけ。集団登校の輪に、入って行った。



 天音ちゃんの登下校は、あまり歩かない。


 俺が、前傾すると、腰を痛めそうで。

 天音ちゃんが、ずっと手を挙げているようで。辛そうだからだ。


 月曜日と土曜日のお布団以外は、平気だが。

 買い物をし忘れて、スーパーに寄る時は。魔女っ子のウエハースチョコを買い与え。キラキラシールが出るまで辞めない。


 日常の会話や、童謡を歌いながら。

 小学校の校門に着くと。


 「押忍。行ってきます」


 普は、ポーズを決めて。友達に、置いて行かれたことに気付き。ダッシュで追いかけていた。

 俺達は、手を振ったが。見てももらえなかった。


 俺と天音ちゃんは、歌の続きを歌いながら。

 保育園に着いた。


 「パパ、一番最初に迎えに来てね」


 天音ちゃんの決め台詞で。朱美が仕込んでいる。 


 少し前まで、保育園を出禁になっていたが。最近少し許され。後ろ指を指す母親は、まだ多くいる。

 綺麗には許されていない。


 俺は、帰りに。お豆腐屋さんにより。

 島豆腐2丁半とゆし豆腐を購入して。


 スーパーでは、野菜と挽肉を購入した。

 オヤツのアイスは控え。

 油揚げも買っていない。


 それなりの量の荷物を持ち。家に着くと。

 ナンシーが、縁側で待っていた。


 松田 ナンシー 30歳 独身

 スナックナンシーのママで。グラマラスなボディーと、のど自慢に出られそうな歌声を持つ。褐色のハーフだ。


 俺の腕に、大きな胸を当てて。


 「今日の夕飯な〜に」


 少し甘えて、絡んできた。


 「まぼうふ」


 小さな声で、言葉を濁しながら。


 ナンシーは、怪しんで。マイバックを覗いた。

 豆腐屋さんの豆腐で、『むっ』としている。


 11月の沖縄だが。家の戸を開けると。

 蒸した熱気が、体を通り抜けた。


 俺は、キッチンに向かい。買い物した食材を、冷蔵庫に仕舞。


 食器棚から、ナンシーのマグとお客様用を出し。それぞれの豆を入れて。ケトルのお湯を注いだ。



 ナンシーは、家の空気を入れ替えて、窓を開けて回っている。


 俺は、流しの洗いモノに手を出して。

 ナンシーは、お客さんの愚痴を始めた。

 お尻を触るオヤジから、ケチ臭いジジイに。女の子の恋愛に、ボックス席のソファー問題。


 俺は、相槌ばかりになっていた。


 「ねぇ。ホントに聞いている。こう見えても、まだまだモテるんだよ。私は。年齢層は少し上だけど」


 ナンシーは、ダイニングテーブルの椅子から立ち上がり。

 俺の背中に、胸を押し付けた。

 洗剤が付いている、俺の左手に指を絡めて。


 小指を、天音ちゃの魔女っ子プレートに落とした。

 アディダスのスウェットを捲り。黒いTシャツも捲った。

 背中に。頭を押し付けて。5回打ち付けた。


 何が始まるんだ。新しい、嘘発見器か。


 ナンシーは、自分のTシャツとブラも捲り。直接胸を押し当てて。


 「ねぇ。私も可愛いがってよ。昔みたいに、抱いてよ」


 俺は、洗い物を続けながら。


 「俺は、普の足枷になるかもしれない。背中の閻魔大王は、レーザーで消せるかもしれないが。醜い跡も残るだろう。だけど、過去は消せない。元ヤクザで、前科もある。真琴の事件も、運が良かっただけで。懲役に行っていたかもしれない」


 ナンシーは、泡の付いていない手で。ズボンの中に手を入れて。


 「何だ。勃ってんじゃん。私の体を使うか。変態」


 ナンシーは、水を出して。手を洗い。

 備え付けのタオルで、手を拭き。

 自分のマグを持って、リビングに消えた。


 リビングから、テレビのボリュウム音が上がり。


 俺は、洗い物を続け。早く終わらす事も。遅く終わらす事も出来ずにいる。

 丁寧に、指サックも洗い終え。


 リビングに、恐る恐る向かうと。

 ナンシーの姿は無く。

 テーブルの上のリモコンを取り。

 テレビを消して。リモコンを定位置に戻した。


 俺は、冷めたコーヒーに一口つけて。

 大きなため息を付き、ソファーに深く座った。


 天井を見つめて。1年半の月日を重く感じた。


 東江 昴 48歳 バツイチ独身

 元ヤクザで。アパートから収入を得て、生計をたてている。

 また、無精子症を抱え。家族の絆を求めている。

羽田空港で、女と別れのキスを済ませ。

沖縄で、父親が残した遺産を受け取り。

地元のヤクザと。馬鹿な社長と、スケベな弁護士に、出会い。

天涯孤独の身に、家族ができる。物語のスタート。


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