帰り道と月と影~弐~
羽先優・・・十六歳の少年。群青色の髪に天色の瞳を持つ。両親を半妖に殺される。
紅月祈流・・・唐紅色の髪に鮮緑色の瞳を持つ二十一歳の男性。掃除屋で一番強い…?
月城律輝・・・新緑色の髪に思色の瞳を持つ元気いっぱいの少年。刀を扱うのが苦手。
春道凪・・・渋紙色の髪に青藍色の瞳を持つ大人びた少女。童顔だとよく言われるらしい……。
紅葉月華夜・・・退紅色の髪に藤色の瞳を持つ女性。
掃除屋の頂点に立つ人物であり、紅葉月家の現当主。
七草・・・華夜の式神。薄墨色のうさぎのすがたをしている。話せるようになったばかりの子のような話し方をする。
真砂・・・律輝の式神。砂色のりすのすがたをしている。
朱音・・・濡羽色の髪と紅色の瞳を持つ女性?
霊力・ ・ ・主に掃除屋の家系の人達が持つ力。物に宿っていたりもする。
掃除屋の家系・ ・ ・紅葉月家とその分家のこと。
雑種・ ・ ・掃除屋の家系ではないのに霊力を持って生まれてきた存在、または霊力は持っていないが、霊力が宿るものを使う存在のこと。
満神道・・・毎年、奉職試験が開催される際に使われる 広場とそこまでの道のこと。階段がとても長いとして有名。
妖力・ ・ ・妖怪が使う不思議な力。
「いのり兄さんが私を見つけた時、私はまるで死んでいるように眠っていたそうです。まぁ、その場で起こされたのですが…」
「起きてすぐに、いのり兄さんは私に言いました。『お前は何者だ』と」
「……?祈流はそんな口調ではないだろう?人違いじゃないか?」
「…さぁ、どうでしょうね。」
(…俺の周りの人は、よくわからない人が多いな…)
「話を戻しますよ。そう言われた時の記憶もあまりなかったので、あとからいのり兄さんに聞いたのです。そしたら私は『…わかりません。』と言ったそうです。」
「とても驚いたと言っていました。自分のことがわからないのもそうですが、私の容姿には掃除屋の家系であることを象徴する赤色に近い色はありません。掃除屋の家系でもない人間が霊力を持つことなんて普通、有り得ないことですから。」
「なら今日会った女性は掃除屋の家系ということか」
「今日会った女性?」
「あぁ、黒髪に赤い瞳をした女性…確か、朱音と言っていた」
俺がそう言った後少しの間沈黙が流れた。
こっそり凪の方を見てみると、何やら考え込んでいるみたいだった。
(…ここで会話が途切れるのは少し気まずい……俺が話を戻して繋げるか…)
「……話が変わっているから戻すが…凪のその髪色は、赤色に近い色には入らないのか?」
「茶髪は霊力を持たない人間にも多くいるので例外です」
「そうなのか……」
「いのり兄さんは驚きつつも私を掃除屋に連れて行ってくれました。そして、すぐにかよねぇのところに連れていって掃除屋にしばらく滞在する許可をもらいに行ってくれました。」
「かよねぇは優しいので許可をくれました。ですが……」
凪は顔をしかめた。
「紅葉月家の分家の方々が、私が滞在することに反対しました」
「……」
「基本的に紅葉月家の当主が許可を出せばいいのですが…かよねぇはその時、十五歳で当主を務めていましたから」
「十五歳…!?」
「史上最年少で当主になったそうですよ…凄いということもできますが、年が若く、なめられやすいともいえます…かよねぇがなめられているときに現れた私は、かよねぇを紅葉月家の当主から引きずり下ろす、絶好の獲物だったのですよ」
「たとえば…掃除屋の家系に関係ないものをここに入れるな、掃除屋の家系じゃないのに霊力を持つ化け物をここに連れてくるな、などがありましたね」
「それならばなおさら、どうして姿を変えるこのお守りを使わないんだ…!?」
「今更変えたってもう意味ないでしょう?もう、わかってしまっているのですから…ですが、優さんはまだ間に合います」
凪が体ごと俺の方を向いた。
「私は…あなたにはこうなって欲しくないのです」
凪の目に映るのは、切実な思いが宿った群青色だった。
ドキッ
(……ドキッ??)
「…?どうされたのですか?急に静かになりましたが…」
「……いや、何でもない」
(……今のはなんだ?)
「…?ですから、このお守りを受け取ってもらえませんか?」
「…あぁ」
俺は凪からお守りを受け取った。
「ふぅ、使わずに取っておいてよかったです。こんなものを作れることが知られたら大変なことになりますから」
「本来は作れないということか?」
「作れないことは無いのですが…作ったこと自体、ないのです。こういう霊力が宿ったものを呪具というのですが、基本的には刀などの武器に宿すものなのです。こういう武器として使えないものに霊力を宿そうという考えそのものをここで聞いたことが無いのです」
「なら、どうして凪はやってみようと思ったんだ?」
「掃除屋の家系の方々に認められるためです…ですが、作っている途中で気づいてしまったのです。こんなものを作ったところで私がよそ者であることは変わりなく、むしろこんなものを見せたら余計に反感を買ってしまうことに」
「実力が認められる、と考えたら見せた方がよかったんじゃないか?」
「ここは、そんな単純な場所ではありません。おそらく、掃除屋の家系ではないお前が我々と同じ色の容姿をするな、と言われると思います」
「ここはそういう場所です」
(……よそから来たものを避けるのは、この仕事ならまだわかる。だが、いくら何でもやりすぎだ。それに……そんなにも家系は大事なものなのか?)
俺の表情から何かを察したのか、凪が話し始めた。
「掃除屋の家系は本家に近い分家であればあるほど霊力の強さが強い傾向にあります。まぁ、例外もありますが」
「…凪って対応力が高いよな」
「よく言われます……っと、着きました」
「…着いたのか。凪と話していたからか、遠いはずなのに意外と短く感じるな…」
「そうですか」
凪はそういいながら、俺が今住んでいる家の三つ先にある古い蔵に向かっていった。
(何をしようとしているんだ?)
気になって後をついていくと、ちょうど凪が古い蔵の扉を開けて中が見えるようになっていた。
(…これは)
「包帯?」
「話過ぎて忘れたのですか?私は怪我をしているのですよ」
(そういえば…!)
「すまない…!早く帰った方がよかったのに…」
「いいのですよ。私はあなたと話せて楽しかったので」
ズキッ
(……?)
「優さん、早く出ましょう。ここは衛生的ではないので」
「……っ、あぁ」
俺たちは古い蔵から出た。
凪が扉を閉める。
「…こんなところにあった包帯なんて衛生面的に使っても大丈夫なのか?」
「…掃除屋で私が衛生面のいい治療を受けれるはずが無いではありませんか」
「……まだ差別があるのか!?」
「当たり前じゃないですか。じゃないとあんな話しないですよ」
(……掃除屋の家系を大事にしすぎる人たちもそうだが…凪はそれ以上に……)
「…もう日にちをまたぐ時間ではないでしょうか。もう帰りましょうか」
「…そうだな」
「じゃあ、私はこちらの道から帰りますので」
「あぁ…またな」
「えぇ、さようなら」
凪はゆっくりと歩き出した。
俺は凪が見えなくなるまでずっと見ていた。
凪が見えなくなった後、俺は家の中に入り、障子を開けて縁側に座り込み、刀に月の光を当てていた。
(…もし、凪がこのお守りを作ろうとしていなければ…もし、掃除屋にいなければ…俺は忙しいのはともかく、こんなにも平穏な毎日を過ごせていないだろう)
「凪には感謝してもしきれないな」
(いつも助けられてばっかりだ。何でもできて、人当たりもよくて……っ、あれ?なぜこんなにも凪のことを考えているんだ?)
「…まぁ、いいか。それよりも早く寝てしまわないとな」
俺は刀を鞘に納め、部屋に入って障子を閉めた。
刀を壁際におき、布団を敷いた。
敷き終わったあとに水浴びをして体を洗ったあと、刀を持とうとしてはっとした。
(ここは安全だから刀は常に近くになくてもいいのに、無意識に握ろうとしてしまう……)
俺は刀から離れ、そのまま布団に入った。
皆さんこんにちは!
名字を新しくいれた波澄 怜です!
まずは、今作品を読んでいただきありがとうございます!
そして!今日はなんと朗報があります!!!
なんと、「濃紫のリシアンサス」の登場人物のイラストが遂に完成しました!!!!(やったー!!!)
そして、そのイラストをこのあとがきに一人ずつ公開していきたいと思います!
今回のイラストは、もちろん!主人公である羽先 優です!!
それではどうぞ!
どうでしょうか?
イメージとあっていたらうれしいです!
違っていたら……私の力量がまだまだってことですね…
でも、めげずに頑張ります!
これからもよろしくお願いします!!
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