話のネタがつきないおばあちゃん
とあるカフェで休憩している時だった。この店のフレンチトーストを食べてみたいと思っていたので、ちょっと寄ってみた。
二人がけの席につきフレンチトーストを食す。分厚くて甘さ控えめでおいし〜♡ と幸せ気分に浸っていると、一席挟んだ右側からおばあちゃんの声が聞こえてきた。友達とお茶をしているようだった。ちなみに私の隣にはアイスコーヒーを啜りながらスマホを見ている中年サラリーマンが座っていた。
私は特定の音を捉えるとそればっかりが耳につき、集中できなくなる。おばちゃん、おばあちゃんの話し声は私の耳にとって大敵なのだ。別に普通の話し声でも捉えてしまう。
話しているおばあちゃんは七十代後半から八十代前半。そこまで大声ではないものの、もうちょっと静かにしてほしいな〜くらいの音量だった。
嫌でも話の内容がガンガン入ってくる。
「携帯のデーター移行、アプリ一つ移すのに三千円って言われてん。d(携帯会社)は高いねん!」
まぁそうなんだな、と聞き流す。
「あとな宅配会社から電話がかかってきてん。最初は応じててんけどな、途中で『何で私の番号知ってるん?』って思ってね。途中で切ってん。ほら、いろいろ詐欺とか怖いやろ」
おばあちゃん。それはね、宅配便の伝票にあなたの電話番号が依頼主によって書かれていたんだと思いますよ。切ってはいけない電話だったのではないでしょうか。
「それからな携帯に知らん番号から電話がかかってくるねん。怖くて出ぇへんねん。でもな、何回も何回も同じ番号からかかってくるから、しびれをきらした家族から『お母さん出たら?』と言われて嫌やってんけど出てん。そしたら息子やったわ」
息子やったんかーい!
っていうか息子の番号登録しなよ。
「でもなぁ息子の声でも私わからへんわ」
ツッコみつつ、そうか実の息子でも声はわからないのか。オレオレ詐欺はやっぱり怖いな、と思った。
おばあちゃんの話はまだ続く。
「若くてめっちゃ感じのいい女性が家に来てな『宝石のケースありませんか』って訊くねん。『ケース』しか言わへんねんで、でも、私、はっとしてん。この人宝石買わせるつもりやって。あんな若くて感じのいい女性やのになぁ」
「H県警が来てな『事件のことを詳しく知っている人いませんか?』って訊くねん。え? 服装? スーツ姿やったわ。何の事件かはその警察官の話を聞いて知ってん。詳しい人のことは知っていたけど、知らないって答えてん。その家庭の事情とか私、全部知ってるんよ」
なぜか突然のマウントを挟む。
「でな私も名前とかいろいろ聞かれてな。大丈夫なんかなと思って……」
おばあちゃん。今、普通にお茶できてるなら大丈夫だと思いますよ。
その後もおばあちゃんは延々と喋り続けそうな勢いで話していた。もっと聞いていたいと思ったのだけれど、私は予定があったので後ろ髪を引かれながら席を立った。
読んでいただき、ありがとうございました。




