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ギャグのつもり
昔、昔。
ヘルマン家の次男。ケネス・ヘルマンは運命に出会った。
「初めまして、お嬢さん。私の名はケネス。ヘルマンと申します。失礼を承知ですが、貴女のお名前を教えてください」
王都のある学園。
貴族のほとんどは通う――何でほとんどかと言えば家の都合で家督を継ぐ事になって通えない貴族もいるからだったが、その学び舎に家督を継がなくていいから自分のしたい事を探せと言われたケネスは、家督を継ぐ兄のためにならば政治的話術でも学べればいいなと思ってとりあえず、交友関係でも築こうと思った矢先だった。
正門に停めた馬車から降り立った紫色の髪の毛の女性。我が国では見た事ない衣装に身を包んでいるのでおそらく他国からの留学生だと思われる。
その女性の桜色の瞳と目が合ったと思ったら瞬間に自分の生きている意味を悟った。
自分の一族は愛が重い一族という異名で有名だった。
かつて、侍女の娘を口説いて口説いて口説いて口説いて………etc.etcという執念で結婚式を挙げた時の領主は新婚生活の矢先にドラゴンが現れたと聞いてあっさり被害も少なく倒してしまった。
また、魔女に呪いを掛けられて絶世の美女になってしまった夫のためになぜか男装の麗人になって、件の魔女を倒した女傑とか。
不遇の扱いされて囚われていた王族を素手で塔を登って助け出し、公爵家の礎を築いた夫人もいる。
つまり、愛が重い一族なのだ。
「えっ、あっ、えっと……妾はホウライ国のカグヤ・タケトリというが………」
「そうですか。タケトリ家ご令嬢と呼べばいいでしょうか。それとも、カグヤ嬢と……」
にこやかに話し掛けながらぐいぐい迫ると、
「無礼者」
と従者が薙刀で攻撃してくるのでそっと薙刀を奪い取る。
「そうでした。無礼者でしたね。失礼しました」
深々と頭を下げると。
「貴方様は強いお方ですね。カイソンから薙刀を奪うなんて………」
信じられないと驚く様に、彼女の国では強い方なのだろうかと思いつつ、父の技よりも早さが足りないし、兄よりも力が弱い。
「貴方の事をもっと知りたいですが、申し訳ありません。妾は……」
沈んだ表情で頭を下げるカグヤ嬢が、
「この国の魔物対策に張られた結界で安全に「がははっ、やっと見つけたぞカグヤぁぁぁぁ!!」暮らしたいし……「煩いカグヤ嬢の声が聞こえないだろう」ある巨大な悪(ばきっ!!)に狙われて…(げすげすっ)いて貴方も巻き込まれ………」
カグヤ嬢の話に割り込んできた珍しいしゃべる魔物を蠅叩きのように叩き、何度も踏みつける。
「すみません。話を遮って……」
続きをと催促すると。
「妾は魔物の王――魔王と名乗る者に妻にならなければ民を殺すと言われて、民の被害も出さず、妾を愛する者たちが犠牲になるなどと許さないと僅かな希望を抱いてこの結界に守られたこの地に留学という形で逃がしてくれたのじゃ」
「そうですか……じゃあ、貴女のために魔王とやらを倒して見せましょう」
なあに、ヘルマンの者は魔物退治の専門家なので安心してくださいと微笑むと。
「それが………」
信じられないような目でカグヤ嬢は話を遮ったしゃべる魔物(の死骸)を指差して。
「それが魔王じゃ………」
と告げたが、
「えっ。こんな弱いのが?」
「妾の国では最強なのじゃが……」
「結界を超えて弱体化したのでは……」
カイソンという従者が信じられないがありえそうな事だと口を挟む。
「ならば憂いはないですね」
よかったと告げるとじっとこちらを見ているカグヤ嬢の顔が赤くなっていき……。
「もう、誰も巻き込まぬのじゃな………」
そういえば、巻き込むから近付かないとか言われたような気がするなと思っていると。
「そなたは妾の恩人じゃ」
と抱き付かれた。
で、その後なんやかんやと話があり、我が国の王族と結婚の話が水面下にあったようだが、それも立ち消えて、ケネスはホウライ国の皇女の元婿入りする事になったとさ。
めでたしめでたし。
という感じでヘルマン家の血筋は広がっている