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09 魔王の噂

 たかが噂と片付けることは出来ない。

 魔王の魔法に巻き込まれた俺が、実際にこの時代へ転移しているのだ。


 魔王もこの時代の前後に来ている可能性は高い。


「詳しく聞かせてくれ!」

「あ、ああ。今、魔王軍副総裁と名乗っている何者かが暴れていてな」

「何者か? ってのはなんだ?」


 自称副総裁はここよりさらに南の地域に突然活動を開始したのだという。

 そして、活動開始してすぐに近隣の名のある魔人等を力で従え始めた。


「南と言うと……千年前に魔王城があった辺りか?」


 ここから南と言うと魔王城があった場所だ。そして俺が目覚めた場所でもある。


「む? 魔王城ってどこにあったんだ? 俺は知らねーが……」

「魔王城跡地よりも、さらに南に徒歩で二日ほど行った辺りですね」

 そう教えてくれたのはヨナだ。


 千年前の魔王城の位置は歴史に詳しい者でないと知らないようだ。

 俺は念のためにヨナから、自称魔王軍副総裁が活動を始めた具体的な場所を聞いておいた。


 それが済むと、俺はトマソンに再び尋ねる。

「魔人を従えるとはいうことは、自称副総裁は、よほど強い魔物なのか?」

「自称副総裁は謎だらけなんだ。正体はわからねーが、とても強いのは確かだな」


 その者が魔人なのかアンデッドなのか、魔獣なのか。それもわからないそうだ。

 ただ人型だと伝わっているという。

 ちなみに魔人とは人間の魔獣のようなもの。非常に強力な魔物である。


 トマソンは説明を続ける。


 自称副総裁は周囲の魔人や魔物を力で従えると、次の行動に移った。

「辺境伯家の城に攻め込んだんだ」


 南方を治めていた難攻不落で知られた辺境伯の城は、三日で落城した。

 その際に、王国一精強と謳われた辺境伯家の軍も壊滅したという。


「そして魔王軍は、その難攻不落で知られた辺境伯の大きくて強固な城を占拠したんだ」

「ウドー王国はそれを許したのか?」

「もちろん国王も軍を編成し魔王軍討伐を命じたさ。だがな……」


 武勇で知られた第三王子を総大将とし、魔王軍の三倍の兵数を要する討伐軍が編成された。

 王国の皆が勝利を信じていたという。

 だが、城から出てきた魔王軍に討伐軍は全滅させられてしまったのだ。


「半日もかからなかったって話だ」


 その勢いのまま、魔王軍が王都に攻め込んでくると、王国の民は怯えていたらしい。

 だが、そんなことは無かった。


 なぜか、魔王軍は辺境伯家の城に引きこもり、大人しくしているという。


「それは解せないな」


 本気で王国を潰したいならば、勢いに任せて攻め込む方がいいだろう。

 魔王軍の兵数が少ないのならなおさらだ。

 時間を掛けたら、王国側に準備を整えさせるだけである。


「その行動の謎は、例の魔王復活の噂とも関係があると思われているんだ」

「ふむ?」

「魔王が復活する時のために城と軍を用意したのだと、副総裁は言っているらしい」

「ほう。侵攻は魔王が復活してからと言うことか?」

「噂が正しければ、そう言うことになるんだろうな」

「いつ頃復活するとかは?」

「具体的にはわからん。だが非常に近いうちに復活すると魔王軍の奴らは信じているようだ」

「それは……ありうるかもしれないな」


 魔王の魔法に巻き込まれた俺がこの時代へと転移してきているのだ。

 魔王自身もそう遠くない時期に転移している可能性は高い。


 少なくとも副総裁には確信があるのだろう。

 確信がなければ、リスクを冒して城に引きこもる理由がない。


 もしかしたら副総裁は長命種で千年前から生き延びている幹部かもしれない。

 その場合、魔王から何か情報を託されていたとしても不思議はない。


 俺は、俺に抱きついて眠っているリアを見た。

 赤い鱗が魔王に似ている。


「まさかな」

「ルードさん、どうしました?」

「いや、なんでもない」


 俺は気を取り直して、尋ねる。


「ところで、城に引きこもっているだけと言う話だが、辺境伯家の領地はどうなったんだ?」


 領民を支配し、税を取り、国と運営していくのは、城を落とすより難しい。


「領土は手つかずだよ。だが、たくさんの領民たちが魔王軍を恐れて、王都に逃げてきているが」

「まあ、それは怖いだろうな」

「もちろん、逃げてない領民もいらっしゃいます」

 俺が乗っているこの荷馬車も、逃げていない民と商売するためのものらしい。


「危険ではないか?」

「もちろん危険ですけど、魔王軍は城に引きこもっていますから」

「そうか、領民はなぜ逃げないんだ?」

「住み慣れた土地から離れがたいというのもありますし」

「なにより税金を払わなくて良いからな」


 税を徴収していた辺境伯家がいなくなったのだ。

 そして、魔王軍は城に引きこもって統治していない。

 だから税を徴収する者がいないのだ。


「南方の村は税がない分、物資が余っているのです。ですが、村で自給自足できるわけではありませんから、そこに商機があるわけです」

 そういってヨナが笑うと、トマソンが呆れた様子でため息をつく。


「また、ヨハネスの旦那はそういうことを言う。儲けなんてほとんど出てないでしょう」

「そ、そんなことは」

「なるべく高く買って、なるべく安く売っているのは知っていますよ」


 トマソンが言うには、ヨナは非常に優れた商人だという。

 いつもは海千山千の商売人たち相手に荒稼ぎしているらしい。

 だが、王都が難民であふれ出し、皆が困っているのを見て赤字覚悟で動き出したのだそうだ。


「それは、素晴らしいことだな」

「ええ。本当に。ヨハネスの旦那は尊敬できる商人ですよ」

「私はそんな善人ではありませんよ」

 ヨナは照れた様子で、顔を真っ赤にする。


「王都が安定しないと、商売もままならなくなって困るというだけですから」

 ヨナ自身はそうは言うが、よくできた商人なのは間違いなさそうだ。

 俺もできる限り協力したいものだ。

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