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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
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43/108

43 魔王軍の襲来の日の朝

 次の日の朝。


「りゃっりゃ! りゃああ」

「はっはっはっはっふ」


 俺はリアにおでこに乗られて、ガウにベロベロと顔を舐められて目を覚ました。


「起こしてくれてありがと」

「りゃあ」「がぅー」


 リアもガウも一仕事終えたような、満足げな表情を浮かべている。

 リアとガウを撫でてから窓の外を見ると昨夜作った壁が目に入った。


「影の感じから判断するに、日の出後二時間ってところかな?」


 ギルバートが言っていたスタンピートの到達は今日だ。

 お昼かもしれないし、夜かもしれない。


 当然、もっと早くなる可能性もあるし、遅くなる可能性もある。


「リア、ガウ。まずは朝ご飯を食べよう」

「りゃ!」「がぅー」


 俺はリアとガウと一緒に朝ご飯を食べる。

 それからガウに皮膚のお薬を塗ってマッサージをする。


「ガウ。毛がだいぶ伸びて来たな」

「がぅ」


 ガウは魔力が高いためか、回復力が高く、毛が伸びるのが早いようだ。

 俺の作る薬との相性がいいのかもしれない。


 朝の日課を済ませると、俺はギルドに顔を出す。

 ギルバートに全体の作戦を聞くためである。


 とはいえ、難しい作戦はなにもない。

 冒険者や騎士たちは王都城壁を利用して大量の魔物と戦うようだ。


 打ち合わせを終えると、ギルバートはどこかへ走って行った。

 人員やポーション食料などの物資の配備、補給路の確保、伝令システムなど、色々と整えなければならないのだろう。


 騎士団と冒険者、二つの組織が関わる作戦なので、ギルバートの苦労は並大抵ではないはずだ。

 冒険者ギルドの職員も全員真剣な表情で慌ただしく動いている。

 冒険者たちも、暇そうな者は一人もいない。


 第一防壁に向かうため、外に出ようと歩き出したとき、カタリナに声を掛けられた。


「ルードさま!」

「カタリナか、足の調子はどうだ?」

「ほとんど全快です! ルードさまのおかげで、わらわも戦えます、ありがとうございます!」


「無理はするなよ? まだ怪我をする前のようには動けないだろう?」

「無理ぐらいいたしますよ。家族の、仲間の、王都の民の命が掛かっておりますから」


 カタリナの意志は固そうだ。


「そうか。武運を祈る」

「はい! ありがとうございます! ルードさまはどこで戦われるのですか?」

「南側城壁の外に作った防壁、俺は第一防壁と呼んでいるんだが、その上だ」

「むむ? 城壁の上ではないのですか?」


「敵の中には大型魔獣がいるんだろう? ドラゴンが目撃されたとか」

「ああ、それはわらわも聞きました」

「ドラゴンの突撃を食らったら、城壁が持たないだろう。だから城壁の手前で止める」


「なるほど。素晴らしい案です。わらわもその第一防壁で守備につきましょう」

「うーん」

 果たしてカタリナが第一防壁で活躍できるだろうか。


「こう見えてもわらわは剣聖とまで謳われた剣士。ルードさまほど強くはありませんが、お役に立てるはずです」

「そうか、そこまで言うならいいだろう。自分の身は自分で守れよ?」

「当然です!」


 冒険者の配置を担当しているギルバートに、カタリナが第一防壁に行くことを報告してからギルドを出る。

 すると五人の騎士が駆け寄ってくる。


 その騎士にカタリナが言った。


「付いてこなくてよい」

「ですが」

「どうせ、魔物を止められなければ、皆死ぬのだ」


 カタリナはとても小さな声でささやくように言った。

 民に聞かせて怯えさせないようにするためだろう。


「……しかし、……逃れるという手も」

「馬鹿なことを申すな。民あっての王族。民を捨てた時点で王族ではない」


 カタリナに睨まれるように見つめられ、騎士たちは黙って頭を下げた。


「わらわは第一防壁に行く。お主たちも、それぞれの持ち場で全力を尽くせ」

「御意。ご武運を」

「そなたたちもな。……さて、ルードさま行きましょう」

「お、おお? そうだな。行こうか」


 俺はリアを肩に乗せ、カタリナとガウと一緒に、王都の外に向かって歩いて行く。

 慌ただしく冒険者や騎士たちが走り回り、民も何かあったのだと察しているようだ。


 そんななか、俺もカタリナも口を開かない。

 ガウだけが、走り回る冒険者を見て、嬉しそうに尻尾を振っていた。



 王都の外に出ると、一気に静かになった。

「カタリナ。王族なのか?」

「はい、そのとおりです。王の娘です」

「なるほど、王女か。いい鎧を着ていると思ったぞ」


 義足付き全身鎧など、ただの冒険者や一介の騎士が手に入れることができる装備ではない。


「あの騎士は護衛か」

「はい。ですが、ことここに至っては、護衛など何の意味もありませぬゆえ」


 現状において王都が滅びれば、国が滅びる。

 他国に逃げて、再興するという手もあるが、民を見捨てては王族ではいられない。


 そう考えているのだろう。

 逃げ出した貴族に比べて、立派な心がけだと思う。

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