41 スタンピードの様子
俺はギルバートに尋ねる。
「どうやって防衛する予定なんだ?」
「王都の城壁を使うしかあるまい」
「まあ、妥当ではあるが……」
王都の城壁で防衛するとなると避難民の集落は壊滅する。
その俺の懸念が伝わったのか、ギルバートが言う。
「避難民の者たちには王都の中へ入ってもらうつもりだ」
「命を守るためには当然だな」
王都の中に入ったとしても、集落の者たちの生活基盤は全て壊滅するのは同じだ。
俺の家も当然壊れる。作った井戸もそうだ。
俺の家はともかく、集落の者たちの生活基盤が壊れるのは非常に厳しかろう。
「できれば城壁の外、川の向こう辺りで防衛したいが……」
「俺だって、そうしたいが……難しいだろう?」
「そもそもだ。ドラゴンなどの大型魔獣を含むスタンピードだろう?」
「ああ」
「王都の城壁が、果たして持つのか?」
「……だが、他に手がない」
ギルバートも王都の城壁なら防げると思っているわけではないようだ。
「城壁の外に壁を作るか」
「そんなことができるのか?」
「人の足を作るよりははるかに簡単だよ」
「そういわれたら、そうかもしれないが……」
「その代わり資材が欲しい。石材木材、ガラス瓶。硫黄、水銀、その他金属類。オリハルコンとミスリルはあればあるだけいい。あと炭だ。大量に欲しい」
「わかった。用意する。王都中の商会に出させよう。費用は国に出させる」
「俺の金も使っていいぞ」
「そういうわけには、……いや足りなくなったら、ルードの金も使わせてもらうよ」
「それでいい」
「他に必要なものはあるか?」
俺は少し考える。
「ケルミ草とレルミ草を大量に。あとは武器防具類も大量に欲しい」
「ケルミ草とレルミ草はわかるが、武器防具は何のために?」
「錬金術で強化しよう。俺が強化すれば、継戦能力と生存率が上がるはずだ」
「わかった」
「全部俺の家に持ってきてくれ。全部揃ってからでなくていい。材料が届き次第錬金術で加工していくからな」
そして、ギルバードは動き出す。
俺も家の中に作った錬金工房へと向かう。
「リア、ガウ。忙しくなった。遊んであげられなくてすまない」
「りゃあ~」「がう」
俺はまず身体強化のポーションを作ることにした。
身体強化に限らず、ほとんどのポーションはヒール、キュアポーションの亜種だ。
ヒールポーションは基本的に身体活動を活発にする。
それにより治癒能力を向上させて傷を癒すのだ。
そしてキュアポーションは身体の状態を強制的に平常時に近づける。
それにより病をいやすのだ。
ヒールポーションもキュアポーションも、人体の限界を超えて作用する。
切断された手足も、ヒールポーションを使えばくっつけることもできる。
キュアポーションも致死性の病で瀕死の状態からでも回復できる。
身体強化のポーションは、ヒールとキュアの効果を上手に組み合わせることで作るのだ。
つまり主原料はケルミ草とレルミ草だ。
「夜間戦闘の可能性も高いし、夜目がきくようになる効能も加えておくか」
俺は夜目対策に身体強化ポーションの工程に一つ手間を加えた。
「冒険者たちはまだまだ、身体強化の魔法が下手だからな」
身体強化ポーションが戦の推移を決めると言っても過言ではない。
俺はどんどん作って、ガラス瓶に詰め、魔法の鞄に入れていく。





