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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
一巻 アース・スターから発売中!

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32 冒険者たちとの交流

 ギルバートも受付担当者も、話を聞いていた冒険者たちもみんな驚いていた。


「すげー。流石はルードの兄貴だ!」

「規格外ってのは、このことだぜ!」


 興奮気味の冒険者もいる。

 俺が足を治した冒険者など「この足見てくれ、魔人殺しのルードの兄貴に治してもらったんだ」と足を見せびらかしていた。


「ルード。三匹? 魔人を三匹も倒したのか?」


 混乱から立ち直ったギルバートが言う。


「そうだな。倒した魔人は三匹だな」

「そうか……。錬金術師ってのは、戦闘力も高いのか?」

「もちろん力量差はあるが、強い奴が多いかもな」


 そのとき、受付担当者が悲鳴のような声をあげた。


「し、しし、しかも! 最後の一匹は魔王軍幹部の炎の魔人です!」

「はっ? なんだとっ! 本当かそれは!」


 ギルバートが慌てた様子で、再び魔導機械の表示を確認しにいった。


「ふぇ……ほのおのまじん……」

 カタリナは唖然としている。


「本当に、炎の魔人だな……」

 確認したギルバートの言葉を聞いて、冒険者たちのざわめきが一層大きくなった。


「炎の魔人って言うと、辺境伯の砦を一匹で落としたって言う、あの」

「第三王子と魔王軍との決戦でも、大隊を一匹で燃やし尽くしたと聞いた」


 冒険者たちの話を聞くに炎の魔人はどうやら有名な魔人だったようだ。

 炎の魔人はとても強かったので、納得である。


「えっとえっと、ランク昇格手続き……あ、報奨金手続きに、王宮連絡もしないと」


 再び受付担当者は混乱し始めた。

 冒険者が魔人を倒すと、色々な手続きをしなければいけないようだ。


 もしかしたら受付担当者は新人なのかもしれない。

 だから優しい口調で笑顔で言う。


「急いでいない。ゆっくりやってくれ」

「は、はい。ありがとうございます。ルードさん」


 ギルバートもにっこりと笑って、優しい口調で言う。


「驚く気持ちはわかるが、落ち着け」

「はい、ギルマス」

「王宮連絡とランク昇格の手続きは他の奴に任せろ。報奨金手続きだけしてくれ」

「わ、わかりました」


 それから、ギルバートは奥にいた職員に指示を出しはじめる。

 さすがはギルドマスターである。


 一通り指示を終えると、ギルバートは俺に向かって言う。


「さて。俺は王宮に行ってくる」

「魔人討伐の報告ってやつか?」

「ああ、そうなる。義務だからな。ルードは今日はヨハネス商会に泊まるのか?」

「いや、ガウがいるからな……。他に宿をとることになるだろう」

「ヨハネス商会に泊まれなかったら、冒険者ギルドの宿舎に泊まれ。宿賃はいらん」

「いいのか?」


「ああ、今日明日はすぐに連絡取れるようにしておいて欲しいんだ」

「わかった」


 適当な宿に俺が泊まると連絡を取りたいときに困るということだろう。

 恐らくだが、魔人について軍人が話を聞きに来たりするのかもしれない。

 ギルバートは職員に指示を出し終えると、きちんとした服に着替えて出かけていった。


 そして俺はその場にいた冒険者たちにおごることにする。

 大金が入ったときはそうした方が妬まれずに済む。


 少なくとも、千年前はそういうものだった。

 俺もみんなと一緒に酒を飲んでつまみを食べる。

 リアとガウのために薄味の食べ物を頼むのもわすれない。


 そして、俺は食事をしながら、リアにご飯を手から食べさせつつ冒険者たちとお話する。

 ちなみにカタリナは俺の隣に座ると、色々と世話しようとしてくれる。


 足を治してあげたことに恩義を感じているらしかった。


「魔人はまじやべーからな。俺は遠目に見かけたことがある」

「ああ。Bランク冒険者のパーティでも出会ったら逃げるしかねーんだ」

「それをソロで倒すとはルードの兄貴はソロでAランクパーティ並みだな」


 前衛職の冒険者たちは俺が魔人を倒したことで一目置いてくれたようだ。

 そして魔導師も目を輝かせて寄ってくる。


「ルードさん、身体強化の魔法を教えてください」

「あ、わらわも教えていただけたらうれしいです」

「ああ、わかった。魔導師だけでなく、戦士もできる簡単な方法があって……」

「なに? 教えてくれ、ルードの兄貴!」

 戦士たちも集まってくる。


「わかった。まずは基本的には……」


 俺は冒険者たちに、身体強化の簡単にコツと練習法を教える。

 元々魔法が使える魔導師なら、コツさえわかればそう時間がかからず習得できるはずだ。


「戦士でも、まあ、そのうちできるようになるよ」

「本当か? 俺たち、魔法なんて全く使ったことないが……」


 戦士の一人が不安そうにいう。


「じゃあ、そうだな。戦士の中で一番ランクの高いのは誰だ?」

「わらわです。Sランクですから」


 カタリナが自信満々に言う。Sとは最高位のランクだったはずだ。

 剣聖というのは伊達ではないらしい。


「そっか、じゃあ、カタリナ。ちょっと鎧を脱いで剣を振ってみてくれないか?」

「わかりました」

 そういって、カタリナは鎧を脱ぐと剣を振るう。


「うん、さすがはSランク、身体強化ができている」

「え? 本当にできているのでしょうか?」


 ヨハネス商会の護衛、トマソンたちもできてはいた。

 だが、この時代の戦士も魔導師も、身体強化がとても未熟なのだ。


 その中では、カタリナの身体強化は頭抜けて巧みだった。

 千年前の見習い騎士ぐらいは上手い。


「ああ、無意識なんだろうし、上手ではないがな」

 そういいながら俺はカタリナの背後に回る。


「ちょっと、触るぞ」

「ふわぁ」

「変な声を出すな」


 俺は手を魔力で覆って、戦士のツボを押す。

 魔法ではない、微弱な魔力を流すだけだ。


「このまま剣を振ってくれ」

「わかりましたわ。……おおっ?」

「速く動けるだろう?」

「動けます! ルードさまが触れているところから、力がわいているような」

「その感覚が基本だ。しっかり覚えて素振りをしていれば、身体強化も上手くなる」

「わかった気がしますわ。ありがとうございます、ルードさま」


 すると、戦士たちの目の色が変わった。

「お、俺にも教えて欲しい。ルードの兄貴! 頼むよ!」

「わかったわかった。順番な」


 俺は一人一人に身体強化のコツを教えていく。

 戦士が終わると、スカウト職。次に魔導師だ。


 数十人いる冒険者全員にコツを教えていった。


 そうしている間、リアとガウも俺の真似をしていた。

 リアとガウなりに、身体強化を練習しようとしているのだろう。


 全員に教え終わると、

「剣聖であるわらわも、新たな境地に進めた気がしますわ」

 カタリナが感動した様子で呟いた。

 他の冒険者も頷いている。


「身体強化自体は難しい術ではないからな。それにみんな無意識に身体強化の魔法を使っていたし」

 初心者ほど、コツを教えたら上達しやすいものだ。


「ただ、油断はするなよ。急に強くなったと思った時が一番危ないんだ」

「「「わかりました!」」」」

「あとは慣れだ。慣れればそう難しいことではない。練習あるのみだ」

「「「はい!」」」

「他の魔導師、いや戦士連中にも教えてやってくれ」

「「「わかりました!」」」


 魔法も錬金術と同様に、身に着けた技術を術者が自分だけのものにしがちなのだ。

 宮廷魔導師しか使えないということは、そういうことだ。

 排他的な秘密主義。それが衰退の主要因だ。


「わからないことがあれば、いつでも何でも聞いてくれ」

「「「はい!」」」


 冒険者たちは、まるで素直な生徒のようだ。

 先日、カタリナの足を再生させたことで、俺と錬金術師を見る目が変わったのだろう。


 その後、俺は酒を呑み肉を食べ、他の冒険者と話をする。

 リアとガウは大人気だ。みんなに撫でられ、お肉をもらったりしている。


 人懐こいリアは机の上に乗って羽をパタパタさせていた。

 リアのそんな姿を見て、冒険者たちは感動していた。


「かわいい……」

「撫でてもいいですか?」

「リア。いいか?」

「りゃ」

「いいようだ。だが、そっと頼む」

「わかりました」

 冒険者たちは、順番にリアのことをそっと撫でていた。


 まったりそんなことをしていると、魔導師の一人が言う。

「ルードの兄貴は身体強化の薬も作れるんですよね?」

「ああ。魔法による身体強化よりも効果は高いぞ。魔力消費もないしな」


 身体強化の魔法は便利だが、発動している間、魔力を消費し続けてしまう。


「だが、いざというとき、薬を飲んでいる時間があるとは限らないからな。魔法も使えた方がいい」

 そう言うと冒険者たちは納得したようだった。


「あの、ルードの兄貴……」

 おずおずと話しかけてきたのは魔導師の一人だ。


「どうした?」

「錬金薬の作り方を教えてもらうことって……できませんか?」

「もちろんいいぞ。だが……それなりに難しい」

「構いません!」

「俺も!」「俺も教えてくれ!」


 魔導師たちは、薬製作技術を習得する気があるようで何よりである。

 とはいえ、すぐに習得できるようになるわけではない。


「錬金術の習得の前に、魔力操作の練習をする必要がある」

「「がんばります!」」


 やる気があるようで何よりだ。

 俺は基礎的な練習法から教えておく。


 具体的には魔力の操作技術を向上させる練習法である。

 薬製作しなくとも、魔導師としての技術も向上するので無駄にはなるまい。


「はい! 頑張って練習します!」


 魔導師たちは嬉しそうにさっそく練習をはじめた。

 それを見て俺は錬金術の基礎的な技法書を書こうと考えた。


 そんなことをしていると、受付担当者から声がかけられる。

「ルードさん、報奨金の準備が終わりました! 窓口まで来てください」

 そして、俺はギルド受付へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ギルバートまで教えてくれと言うので教えてやった。 とありますが、ギルバートは外出したのでは? 後日という認識でいいのでしょうか。
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