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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
一巻 アース・スターから発売中!

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30 冒険者ギルドに戻ろう

 それから衛兵は改めてガウを見る。


「それにしても、あんたをかばって火傷したのか?」

「ああ、肉を分けてやったら恩義を感じたらしくてな」

「ほう。なかなか立派な狼だ」

「そんな狼を怪我したまま放置できなくてな」

「……そうか、お前は忠義の狼だったのだな」


 そう言いながら、衛兵はいきなりガウの頭を撫でた。

 頭を撫でたのは、ガウを褒めるためというのもあるだろう。


 だが、街の中に入れても大丈夫な大人しい魔狼か調べる意味もあるに違いない。

 だから、いきなり撫でたのだ。


「それにしても大きいな」

「立派だろう」

「それにいきなり撫でられても唸らないし、噛みつかない」

「賢い狼だからな」

「うむ、これなら、王都の中に入っても大丈夫だろう」


 ガウが王都に入る許可が出た。


「その肩に乗っているのは?」

「竜の赤ちゃんだ。傷ついていたのを保護したんだ」

「竜だと? 赤ちゃんとはいえ竜か。果たして大丈夫――」

「りゃあ?」


 衛兵は竜を街に入れるということが不安なようだった。

 だがリアが可愛く首をかしげながら鳴くと衛兵の顔がにやけた。

 リアは可愛いので仕方がない。


「さ、さわっても?」

「リア、大丈夫か?」

「りゃ」

「触ってもいいみたいだ」

「うむ。ではお言葉に甘えて……」


 衛兵はそっとリアに手を伸ばす。

 そしてゆっくりと優しい手つきで頭を撫でた。


「りゃ~」

 衛兵はリアにデレデレである。


「ちなみに、リアは従魔登録済みだ」

「へー。……竜に触るのは初めてだが、温かいのだな」


 衛兵にとっては、従魔登録済みという事実より、リアの可愛さの方が大事らしい。


「竜によっても色々違うんだろうがな。リアは温かいな」

「そういうものなのか」


 しばらく、衛兵はリアを撫でていた。

 リアを堪能した後、衛兵が言う。


「うむ。大丈夫だろう」

「りゃあ!」

 衛兵の許可が降りたので王都に入った。



 王都を歩きながら、ガウに注意事項を話しておく。

「ガウ、街中ではよほどのことがない限り、大きな声で吠えたらだめだからな」

「ぁぅ」


 大きな声で吠えるなという俺の指示を守って、ガウは小さな声で鳴く。


「俺以外の人に飛びついたりしても、だめだからな」

「ぁぅ」


 ガウは真面目な顔で尻尾を振っていた。

 王都の中を歩いていくと、好奇心が刺激されるのかきょろきょろしている。


 街の人たちのほとんどはガウを見て少し驚く。

 そしてすぐに距離を取った。

 大きいことと毛が生えていないことで、びっくりしているのだろう。


 俺が冒険者ギルドに入ると、ギルド中がざわめいた。

 食事をしていた冒険者たちが集まってくる


「ルードの兄貴! でっかい魔獣ですね。新しい従魔ですか?」

「ああ、そうだ」

「さすがです! どうやって従魔にしたかお話を聞かせてください!」

「先に従魔登録を済ませてから話そう」

「はい! 邪魔してすみません。待ってます!」


 冒険者たちは大人しく自分たちの座っていた席へと戻っていった。

 戻らなかったのはカタリナだけだ。


「可愛いな。撫でてやろう。ルードさま、この子の面倒はわらわにお任せください!」

 そういってガウを撫でまくる。ガウは嬉しそうに尻尾を揺らした。


「撫でるなら飼い主に聞いてからにしろ」

「そうなのですか?」

「ただの犬でも、それが礼儀だ。人が怖い犬だっているんだ」

「それは、申し訳ありませぬ」

 軽く注意しただけなのに、カタリナは思いのほかしょんぼりしてしまった。

「そこまで気にしなくて良いけど。これから動物を触るときは気をつけたほうがいいぞ」


 そういって、俺は受付へと向かう。

「任務達成の報告と、いや、先に新しく従魔登録を頼む」

 カタリナはガウを撫でながら付いてきた。


「……その子は、えっと種族は?」

 毛がはげてしまっているので、受付担当者は魔狼だと思わなかったようだ。


「魔狼だ。ガウと名付けた。毛がないのは怪我をしたからだ」

「魔狼? すごく大きいですね……。本当に魔狼ですか?」

「魔狼だと俺は思う」

「そうですか。突然変異とかかもしれないですね……」


 受付担当者は納得したようだ。


 そこにギルマスのギルバートが、奥からゆっくりやって来る。

「ルード、無事に戻って来たか。ずいぶんと早かったな」

「そうか? それほど早くないと思うが……」

「一週間はかかると思っていたぞ。赤字覚悟で馬でも借りたのか?」

「ああ、そうか」


 元々俺が受けたクエストは街道に出没したゴブリン退治。

 そして、そのゴブリンが出没した場所に向かうには、徒歩で片道三日かかる距離だ。


「馬は借りてない。肉体を強化して高速で走っただけだ」

「それは凄いな。流石はルードと言ったところか」

 それを聞いていた、ギルドの中にいた魔導師が二人立ち上がって走ってくる。


「つまり、それは身体強化機能のある薬を使ったってことですか? すごい」

「そうだぞ。魔法による身体強化より、錬金薬の身体強化の方が効果が高いんだ」


 魔法は生物に直接作用できない。

 だが、自分だけは例外なのだ。自分の肉体を強化することは魔法でもできる。


「えっと、ちょっと待ってください」「お待ちください」

 魔導師とカタリナの声が重なった。


「どうした?」

「ルードさまは身体強化効果のある魔法が使えるのですか?」

 魔導師たちもうんうんと頷いている。カタリナと魔導師は同じことが聞きたかったらしい。


「もちろん使えるが……」

「どうやるのですか!?」

「剣聖なのに? 使えないのか? 本当に剣聖か?」

「いくら剣聖でも、出来ること出来ないことがあるのです! そのような魔法聞いたこともありませぬ。ちなみに私が、当代最強の剣士、剣聖カタリナなのは間違いないことでありますが」


 俺が魔導師たちをみると、うんうんと頷いている。

 カタリナの言うとおり、身体強化の魔法は一般的ではないらしい。


 魔法による身体強化は、魔法の初歩の初歩だ。

 千年前においては、魔導師ではない戦士なども普通に使っていた。 


「……もしかして、身体強化の魔法は知られていないのか?」

「はい。宮廷魔導師とかなら……使えるかもですけど……」

 肉体を強化をしなければ、前衛も後衛も強敵と戦うことは難しい。


「いや、あやつらも使えませぬぞ?」

 カタリナが自信満々に言う。


「そうか、そういうことなら……。身体強化の魔法は後で教えよう」

「ありがとうございます!」

「従魔登録と任務達成報告を済ませたら、そっちに行こう」

「はい!」


 魔導師二人は元気に自分の席に戻っていった。

 冒険者たちは何かあるたびに走ってくる。

 もしかしたら俺が何を話しているのか、何をしているのかに注目しているのかもしれない。


 ギルバートは戻っていく魔導師を見て、戻らないカタリナを見て目をそらす。

「……色々とありがとう。ルードは何でも教えてくれるんだな」

 ギルバートは、ガウを撫でるカタリナを気にしないことにしたらしい。


「俺が教えないせいで若者が死んだら寝覚めが悪いだろう?」

「ルードも充分若者だがな」


 そういえば、肉体は二十歳前後になっていたのだった。

 つい高齢者の感覚で接してしまう。


「ルード。で、従魔登録だったな。その魔狼だな?」

「ああ、ガウと名付けた。クエストを終えた後、色々あって仲間にしたんだ」


 ギルバートは、標準よりずっと大きく、毛もはげているガウを一目で魔狼だと見抜いた。

 さすがは熟練の冒険者である。


「色々か。……従魔登録には、その従魔以上の冒険者の力量が必要なんだが……」

「不足か?」

「一般的には、冒険者ランクで判断するんだ。ルードの実力は疑っていないが、Fランクだからな」

 どうやら魔獣の討伐ランクより冒険者ランクが高くないと従魔登録は認められないらしい。


「魔狼の討伐ランクはいくつなんだ?」

「群れならA。はぐれならBだな。ガウは特に立派だからはぐれでもAかもしれないな」


 だが、俺はガウとは一緒に暮らすことに決めたのだ。

 従魔登録が認められなければ、王都の外に住むしかない。


「そこをなんとかならんか? ガウは身を挺して俺をかばってくれたんだ」

「わらわからもお願いいたします。剣聖が保証人になりましょうぞ!」


 カタリナがそんなことを言って、ガウを撫でまくっている。

 ガウは不安そうに俺の方を見上げていた。


 吠えないように指示したので、無言のままだ。

 ギルバートはにこりと笑うと、いきなりガウの頭を上からワシワシと撫でた。

 ガウは大人しく撫でられている。


「まあ、カタリナさん、落ち着いてください。ふむ。怯えもしなければ、威嚇もしないか」


 慣れないイヌ科を撫でる際は、ゆっくりと下から手を伸ばすのが基本だ。

 ギルバートはあえて乱暴にふるまうことで、ガウの反応を見たのだろう。


 歴戦の戦士であるギルバートならガウが噛もうとしても対処できる。

 だが街の中でギルバートと同じことを子供がやって、噛みつかれたら取り返しがつかない。


 城門の衛兵もいきなりガウのことを撫でた。

 それと同じく、ギルバートもガウの性格をチェックしようとしたのだ。

 ギルバートはガウの全身をひとしきり撫でると満足そうにうなずいた。


「うん、充分だ。安心しろ、俺が特別推薦しよう」

「いいのか?」

「この魔狼、ガウが大人しくて賢いということが分かったからな」

「助かる」

「それにルードが規格外の魔導師、いや錬金術師なのは皆知っている」


 そしてギルバートは周囲の冒険者を見る。

 すると冒険者たちが笑顔で言う。


「文句言う奴は冒険者ギルドにはいねーよ」

「ああ、ルードさんの実力がF程度じゃないってことはみな知ってるからな」

「文句言ってきたやつがいたら、決闘でねじ伏せてやればいいさ」

「わらわがぶっとばします!」

 俺はみんなに頭を下げた。


「ありがとう。助かる」

「くーん」

 ガウも嬉しそうに尻尾を振った。

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