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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
一巻 アース・スターから発売中!

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29 王都への帰路

 次の日の朝、俺が起きると、リアとガウも目を覚ました。

 一緒に小屋の外に出て、魔猪の肉を焼き、朝ご飯を食べる。


「りゃむりゃむ」「がふがふ」


 俺にとっては塩気の足りない魔猪の肉だが、リアもガウもおいしそうに食べる。

 竜と魔狼にとっては薄味の方がいいのかもしれない。


 食事が終わると治療の時間だ。


「ガウ、こっちに来なさい」

「がうー」


 ガウは大人しく俺の足元に来て伏せをする。

 俺はそんなガウを優しく撫でてから、薬を作る。


 育毛と発毛の効果のある薬だ。


 材料はヒールポーションの主原料のケアリ草。

 それにキュアポーションの主原料であるレルミ草。


 ヒールポーションは身体の回復しようとする力を高める作用がある。

 そしてキュアポーションは身体の恒常性機能を向上させる作用がある。


 その二つの作用を絶妙に組み合わせて、発毛と育毛を促進させるのだ。

 普通のヒールポーションやキュアポーションよりも製作難度は高い。

 だが、俺にとってはさほど難しくない仕事だ。


「よしできた」

 作った薬を事前に買っておいた瓶に入れる。


「さて、ガウ。薬を塗るから大人しくしなさい」

「くぅーん」

「大丈夫。しみないし、痛くないはずだ」


 俺はマッサージしながら、ガウの肌に優しく薬を塗りこんでいく。

 最初は少し緊張気味だったガウも気持ちが良さそうにリラックスしていた。


「うん、順調だな。元通りに生え揃うまでにはまだかかるが……」


 一週間ぐらいで、犬の短毛種ぐらいの毛の長さまでは伸びると思う。


「少しだけかゆくなるかもだが、掻いたらだめだぞ」

「がう」

「舐めても身体には悪くないはずだが、もしかしたらお腹が緩くなるかもしれない」

「がう」

「薬の臭いが気になって舐めたくなるかもだが、舐めないようにな」

「がぅ!」


 ガウは機嫌よく元気に返事をしながら、さっそく後ろ足で首の後ろを掻こうとした。

 その後ろ足を手で抑える。


「だめ」

「がう?」

「掻いたらだめ」


 言い聞かせたので、ガウもわかったようだ。

 安心した直後、自分の前足を舐めようとするのですぐに手で抑える。


「だめ」

「……がう?」

「舐めたらだめ」


 言い聞かせたので、ガウは理解したようだ。

 褒めるために撫でてやる。


 治療を終えると、俺たちは王都に向けて出発する。


「ガウは、まだ走らない方が良いよな」

「がう?」


 だが、歩いて帰ると、三日はかかる。


「抱っこしてあげよう」

「がぁう?」


 俺は大きなガウを抱っこする。

 お尻を押さえると、ガウのお腹が俺の顔の前に来る。


「頭の上に前足を置きなさい」

「がうう~」


 そして、リアはガウの頭の上に乗る。


「じゃあ、走るぞ。疲れたらいうんだよ」

「りゃ!」「がう!」


 そして、俺は王都に向けて走った。

 身体強化のポーションを飲み、馬よりも早く駆ける。

 昼過ぎになり、やっと王都の門に到着した。


 門をくぐろうとすると、衛兵が少し慌てた様子で飛んできた。


「ちょ、ちょっ、ちょっと!

「どうした? ちなみに俺はルードヴィヒという冒険者だ」


 そう言って、俺はどや顔で冒険者カードを提示した。


「ああ、うん。昨日出ていった奴だったな。覚えているよ」

「それは光栄なことだ」

 Fランク冒険者のことを覚えているとは、衛兵は記憶力が良いらしい。


「そんなことより、その……魔物は?」

「魔狼のガウだ」「がぁう」

「え?なんで抱っこしているんだ? というか、力が凄いな」

「怪我したからな。かわいそうだろう?」

「そうか……いや、そうか?」


 説明しても、ガウを抱っこしていることが、腑に落ちないらしい。


「まだ従魔登録はすんでいないが、すぐに登録するから安心してくれ」

「……本当に魔狼なのか? 大きすぎるが……、それに毛がほとんど生えてないが……」

「俺をかばって、大きな火傷をしてしまったんだ」


 俺はやけどを治療したことを説明した。

 説明しながら、ガウを地面に降ろす。


「がう~」

 ガウは少し寂しそうに俺の手をペロペロなめる。 


 そんなガウの様子を見ながら衛兵は言う。

「……君は薬師なのか? いや、毛を失うような火傷をすぐに治すなど薬師にも無理だが」

「俺は薬師ではなく錬金術師だ」


 胡散臭がられるのを覚悟して、錬金術師を名乗った。

 錬金術を広めるために、少しずつ活動しなければならないのだ。


「ん? 錬金術師? 冒険者ギルドのカードには魔導師と書かれていが……」

「魔導師でもあり、錬金術師でもある。錬金薬は知らないか?」

「ああ。聞いたことがない。まともなものは」

「本物の錬金術師が少ないからな。俺も俺以外にあったことないしな。だが本物の錬金術師が作った錬金薬の効果は非常に高い」

「ふーん。俄には信じがたいが」

「信用できないかもしれないが、昨日大やけどを負った魔狼がこの状態だぞ?」

「ふむ?」


「病気でも怪我でも、何かあれば冒険者ギルドに来てルードヴィヒを呼んでくれ」

「ああ。わかった覚えていたらな」

「宣伝のためだ。初回は無料でいい。二回目からも普通の薬ならば十ゴルド以下で作ろう」

「それは安い。だが錬金薬だろう?」


「もちろん珍しい症例などなら、高くなることもあるが、まずは相談してくれ」

「相談料は?」

「無料でいい。薬師が匙を投げた患者でもかまわない。衛兵仲間にも言っておいてくれ」

「わかった。一応伝えておこう。だがなあ。錬金術だからなぁ。いや、あんたを疑っているというわけじゃないんだが……」


 衛兵はまだ信じていなさそうだ。

 今はそれで充分。少しずつ俺の薬の評判を上げて行けばいいだろう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 背負っていたガウを地面に降ろす。 とありますが前のほうに「抱っこしてあげよう…」云々とあります。どちらかに合わせたほうがいいのではと思いました。 多分ですが後の文章を見ると「背負う」行…
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