58 終章
これで完結です!
◇◇◇
三ヶ月後。
俺は南方の荒野にいた。
「ここを開拓するのか。大仕事だな」
そこには岩と砂ばかりが目立つ広大な荒野が広がっていた。
だが、やりがいがある。
千年前、俺は室内で研究と開発、製造ばかりしており、たまに外に出るときは戦闘をしているときだった。
「錬金術で開拓。人々の暮らしを豊かにするのが錬金術の本懐ならば、戦闘より開拓の方がずっと錬金術者にふさわしい」
「ここを豊かな土地にすることは我ら魔族の悲願だ。ルード。そなたの力頼みだ。頼りにしている」
ケイナが腕を組み、真剣な表情で言う。
「ああ、微力なら全力を尽くそう」
「ありがとう。もちろん我ら魔族も協力する!」
魔王軍副総裁であったケイナはたった三か月の間に魔王軍を解散させた。
魔族は新たな村の住人とし、反発する魔人は力でねじ伏せて黙らせたのだ。
「ですがルードさん。開拓は収益が上がるまで時間がかかるので、それまで鉱石を採掘してもいいかもしれません」
ヨナがそんなことを言う。
ヨハネス商会は、営業停止処分を解かれたうえ、錬金術製品を王都で扱う許可を得た。
それで莫大な利益を上げたお礼といって、開拓を手伝ってくれることになったのだ。
商会長であるヨナ自ら、ホルト領にやってきて、支店を作ってくれるらしい。
とてもありがたい話だ。
辺境伯家の城は、交易の中継地点とするつもりだ。
城には行政経験が豊富なレイナに入ってもらえることになった。
尚書は優秀な副官であるレイナを手放すことを渋ったが、ホルト領の重要性を説いてなんとか了承してもらったのだ。
そのとき、遠くから、
「ルード様! 今日はごちそうです!」
カタリナの大きな声がした。
カタリナは俺が強化した全身鎧と剣を身につけて、猪の魔獣を肩に担いで歩いてくる。
その横には、カタリナの新しい仲間の冒険者たちもいる。
カタリナの仲間には魔族も人族もいる。みな優秀な冒険者だ。
その仲間たちもそれぞれ魔物を肩に担いで歩いている。
ちなみにカタリナ指揮下の騎士たちは、城を守ってくれている。
「わあ、おにくだ! 先生! リホ、肉すき!」
「そうか、良かったな。あとで食べよう」
「うん!」
俺はリホの頭を撫でる。
王都外の集落の人たちも、ホルト領に移り住んでくれた。
開拓した土地は自分のものにできると言って勧誘したのだ。
元々、農業をしていた者たちも多く活躍してくれるだろう。
「ルード様、肉の処理をするので、魔法の鞄を貸してください!」
「いいぞ」
「ありがとうございます!」
カタリナたちは、魔物の肉を魔法の鞄に入れてから、一体ずつ処理するようだ。
「毛皮も貴重な素材ですからね!」
「肉も!」
「そうだね、肉も貴重だね」
カタリナはリホの頭を撫でる。
カタリナの髪は肩ぐらいまで伸びた。
育毛剤を毎日塗布している効果だろう。
「さて、俺も働き始めるか。まずは村づくりからだな! 家をどんどん建てていくぞ」
「先生! 手伝う!」
「ありがとう。でも大丈夫だよ。リホはリアたちの面倒を見ていてくれ」
「わかった!」
そして、リホは子供たちが遊んでいる場所に駆けていく。
「リア、まてまてー」
「りゃあ!」
リアは子供達と追いかけっこをし、
「ガウ、ほらいくよ!」
「がうがう」
ガウはタルホの投げた枝を追いかけて、
「ぐるるのせてー」
「ぐる~」
グルルは子供を背中に乗せて、嬉しそうだ。
集落の子供たちと、魔族の子供たちが、仲良くリアたちと遊んでいる。
「子供たちが遊べるのは良いことだな」
「そうですね。生き生きしてます。王都周辺は子供にとって快適な環境とは言えませんでしたから」
ヨナはタルホたちをみてそう言った。
「そうだな」
俺が言った子供たちには、リアとグルルが含まれる。
特にリアは魔王らしい。
伸び伸びと心身共に健やかに育ってほしいものだ。
人族と魔族の良いところと悪いところをみて、みんなに可愛がられて、虐められることなく、平穏な環境で育って欲しい。
「りゃあ~~」
リアは人族と魔族の子供に挟み撃ちにされてつかまり、楽しそうに尻尾を揺らす。
「りゃむ!」
そして、リアは人族と魔族の子供の頬を順番にペロリとなめた。
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