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「…俺はフェン。…よろしくね。」
ふわんと綻ばせた口元は、更に弧を描く。けれどそう一言告げた彼は突然、首を垂れて動かなくなった。
「もう〜!ちょっとフェーンー!
寝ないのお!」
今ので寝たの?!
フェン以外の4人の彼等とクレアは大して驚いた様子を見せない。もしかしなくても、「いつもの事」なのだろうか。
苦笑したレオから発せられた言葉はそれを十分に裏付けていた。
「申し訳ありません。
フェンはその、少々特殊でして。代わりに私が紹介致しましょう。」
レオは眉をハの字にし、顎に手を掛けて困ったように笑う。しかしそんな様でも、彼は十分絵になっていた。
「フェンディオ・リーベルタス・アルフレッド。
我々はフェン、と呼んでいます。
アルフレッド王家の第2王子で、彼はフェティート。
妖精とウォーロックの混血種です。」
「彼も希少種の内なんだけど、その中でも特異な体質でね。」
ロドフは憂いを帯びた表情でフェンを見る。
「彼の瞳の色を見ただろう?
金色、それは妖精にしか許されていない色なんだ。」
と言うことは。彼は限りなく妖精側に近いのだろう。でもそこに一体何の問題があるのだろうか?
訴えるような彼女の視線を受け止めて、ロドフはゆっくりと頷いた。
「妖精と僕達種族は一線引いた関係でね。
詳しくは君が回復してから追い追いになると思うけど…兎も角、彼があの調子なのは仕方がない事なんだよ。」
それに、とレオが続ける。
「ここ最近は特に酷いですね。
私達の方でも対策案を模索しているのですが、何分、今存在しているのかすら不明な妖精の事ですからね…。」
「…皆んなごめん。ありがとう。」
眠りこけてしまった筈のフェンが、再びマントから顔を出した。今にも瞼を閉じそうだが、それでも何度も瞬きする事で眠気に耐えている。
「……ほんとごめんね。」
喉から絞り出した微かな声と、途端にそれぞれ思案顔になった彼等。それだけでも十分、5人の絆を感じた。元々目が開かない時から気付いていたが、彼等の仲はとても良いと思う。あくまで5人引っ括めての話だが。
それをより強固にしているのは、フェンの存在なのかも知れない。彼には誰からも好かれる性が滲み出ていた。それに加えて思わず世話を焼きたくなるような、そんな温かい心が芽生えてくる。
彼女が感じた事は当たっていたらしく、クロードが彼に歩み寄った。
「…フェン。もういいだろう。
俺ならお前の状態を治す事ができる。」
「だめ。生命力を削る気でしょ。」
話の流れを汲むと、どうやらクロードが唯一の打開策を持っているらしい。けれどそれは、代償を支払う何か。構わず更に歩みを進めたクロードに対してレオは眉を潜めた。
それでもあからさまなリアクションが無いという事は、彼にしか出来ない「何か」を暗黙の了解としたのだろう。それほど切羽詰まった状況なのだろうか。
クロードはフェンの頭に右手をかざすと、両目を閉じた。




