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師匠(仮)〜唯一の技術持ってるのに獣になった〜  作者: 杞憂らくは
齧れ、呑み干せ、腐っていても
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間話:元気を出す味

初のアデラ視点です。


 アデラは自分が酷く落ち込んでいるなんて、信じられなかった。




「私シャミィ!ベリル君の婚約者候補なの!」


 同じ女であるアデラから見ても、こんな綺麗な女の子見た事⋯⋯⋯⋯フレデリカには及ばずとも、見た事無いくらい綺麗な女の子だった。手入れが行き届いたふわふわでつやつやな金髪、垂れたサファイアの瞳は宝石の様で、アデラは思わず「ごめんなさい!」と、謝ってから走って逃げてしまった。テーブルの上には食べかけのボラデベリムと飲み掛けのカフェ・クレームを置いて来てしまった。なんて迷惑をかけてしまったのか。ああ云うのはただゴミ箱に捨てても鴉が来たりするのに。

 夕方までにはと言われていたが、アデラは菓子店でギモーヴを買い、明るい内にホテルの部屋へ戻っていた。

 ギモーヴを部屋のリビングテーブルに置き、自身に宛てがわれた使用人部屋に飛び込んだアデラは、扉を閉めてそのまま床に座り込んだ。


(⋯⋯ベリル君は少なくとも男爵家の人だもの、婚約者がいたっておかしくない⋯⋯)


 あの女の子⋯⋯シャミィは誤解もしなかっただろう、それだけが唯一の救いだ。アデラは自身のパサついた髪をひと束摘んだ。背も低いし、フレデリカによく似たベリルと並ぶと己の醜さがよく分かる。

 それでも、アデラにとってベリルは数少ない友人と呼べる人だった。アデラを見てもみっともない、貧相等と言わない。それどころか優しく親切で、アデラなんかを気遣ってくれる。

 そんな友人がまさか婚約だなんて。アデラからしたら隣に居た人が急に空を飛んで行ってしまったみたいに感じた。まるで置いて行かれたみたいだった。「わたしは全然、自由じゃ無いのに」「自分だけ大人になっちゃうの?」


(今度会ったら、婚約おめでとうって言わなくちゃ⋯⋯)


 己の心の狭さが嫌になり、アデラは溜め息をひとつ吐いて備え付けのデスクへ近付いた。デスクの抽斗を開け、こんな時に必要なものを取り出した。

 フレデリカが婚約の為に学校を辞めると聞いた時も、アデラは衝撃で涙が止まらなかった。彼女が編入してひと月。まだたったひと月で、彼女は居なくなってしまった。フレデリカにはファンが多かったから、アデラと同様涙が止まらない女性が多かった。

 そんなアデラが自分を奮い立たせたのが、フレデリカがくれたジャムだった。

 甘いけれどとっても酸っぱくて、少し苦味を感じるジャム。あの日、アデラを助けてくれた時にくれた知らない果物。あの果物で、アデラの為だけに作ってくれたジャムだ。

 辛い事や悲しい事があると、アデラは1日にスプーンひと匙だけ、ジャムを舐める。

 最初は勿体無くて食べようとは思わなかったのに、フレデリカの中退でそんな決まりを自分で作ったのだ。


(うん、これで元気になる!)


 今回の事は別に辛くも悲しくも無い筈なのに、アデラはジャムを掬って舐めた。

これで『恋愛⋯⋯?』タグから『?』を取ってもいいのではないでしょうか。どうなんでしょうか。

おふざけの比率が高いので、正直どうだろうと言うのが本音です。

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